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ラウンドリム0012

「庶民的な…で、すか?」戸惑い再度問う店員へ頷くダリュート。

どうやらラウンドラム、いや、この辺りの武家者とは違う者ではあるようだ。

故に庶民的な衣装を薦めても怒りを買うと言うことはなさそうではあった。


ゴクリっと(つばき)を飲み込んだ彼は「畏まりました」っと。

そう告げてダリュートに合いそうな品を探して店内を見回す。


庶民が纏う衣装でと言うが、仕事着とも言っていた。

他国では勤め人が仕事着としてスーツを纏う場合があるが、此処には、そのような品は置いてはいない。

あくまでもカジュアルな感じの品々を扱っているのである。


なのでカジュアルで簡単な仕事へ赴いても無難と思われる品物を選ぶ。

数世代前から丈夫な生地で仕事着などに用いられているジーンズ生地。

それを使用したジーンズとジージャン。

ジージャンの下には肌触りの良いTシャツを。


色違いを何種類かとアクセが付いている物なども選んでダリュートの前へと。

それを促されたダリュートが試着して着心地などを確認していく。


「しかし…既製品に俺が着れる品があるとはな」っと感心するダリュートへ店員が苦笑して告げる。

鬼人族(きじんぞく)などの体が大きな方が求めに来られることもありますので」っと。

「では、人族用ではないと?」

そう尋ねるダリュートへ店員が困った顔で

「左様ですねぇ。

 お客様のサイズとなりますと、人族用の代物はありませんので。

 まぁ、他国は知りませんが、この辺りでは種族差別はありませんので」

困惑したように告げる彼へダリュートがニコヤカに

「それは良いことだ。

 俺は自分の出自が分からぬ故、人族以外の血が混じっておるのかは知らぬ。

 まぁ…恐らくは混じっておろうな。


 その意味では迫害される地域では迫害対象であろうよ。

 とは言え、体の大きさ以外は人族と変わらぬ故、迫害地域であっても差別されたことはないがな。

 ま、敢えて人族以外の血が混じっているらしいなど言ったこともなかったが…」


「そうなんですね。

 まぁ、ある学者さん曰く、今の世界に人族の純潔種など存在する筈がないそうですよ。

 人族は様々な種族の血を受け入れれる種族でもあり、純潔種が最も残り難い種族なのだとか。


 それと言うのも、ドゥーヤ文明が栄える遥か太古の昔には人族しか世界には存在せず、多種族は太古に人族が争いの手段として生み出したのだとか。

 争いが収まった後、役職、職業に特化した種族を生み出したりもしたそうです。


 ドゥーヤ文明時代にはドゥーヤ人達が使役する種族を生み出したとの記録もあります。

 小鬼とかゴブリンやコボルトにミーギットなどがそれですね。

 知能が低く今では害獣扱いですが。


 亜人のブラウニーとかインプやクー・シーにケット・シーが誤認されることがありますが、全く別の存在です。

 彼らは人語を解し操れますが、小鬼、ゴブリン、コボルト、ミーギットなどは動物レベルでしか理解が及ばないようです。

 人としてコミニュケーションを取ることは不可能とされていますので」


「そうなのか…やけに詳しいな。

 ケット・シーとやらが亜人で居ることは聞いたことはあったが、そこまでは知らなかったぞ」

驚いて告げるダリュートへ、はにかんだ彼が告げる。


「実は学者先生に学んでおりまして…

 講義が無い日には此処で生活費を稼いぐために働いているんです」

そのように…苦学生?っと言うヤツなのだろうか?


「ほぅ、学者の卵…っと言ったところかね?

 立派なものだ。

 また、羨ましくもあるな。

 俺は生きるのに精一杯で誰かに付いて学んだと言うことがない。


 まぁ、兵士であった故、兵士の義務として色々と学ぶ機会はあったがな。

 だが、専門的に学ぶことは無かった故、羨ましくもあるぞ」

そのように。


「そうでしたか御武家様は仕官されていたことがあったのですねぇ」っと尊敬した眼差しで。

「昔のことだし、遥か遠い異国の地でだがな。

 さて、この服とこの服が良い感じであろうか?


 これらの上下と下服3点を頂こう」

そう告げたダリュートが選んだ衣服を店員へと。

ジージャンとジーンズのセットが紺色と薄水色で2セット。

白無地のTシャツ1つと柄物が2つ。

それらを受け取った店員が会計を。


そして衣服を袋へと入れてダリュートへと。

「また寄らせて貰おう」っと告げるダリュートへ店員が慌てて告げる。


「あのですね、此処は普段着の店なのです。

 スーツなどを誂えるならば別の店が良いですよ」

そう告げて、予めわら半紙へ記された地図をダリュートへと。

どうやら姉妹店のようだ。


「ちゃっかりしたものだ」っと苦笑するダリュートへ店員が頭を掻きつつ。

「そちらの店はオーダーメイドの店なんです。

 ですから頼んでから出来上がるまで時間が掛かりますので。


 それと、その店の横には靴を専門で取り扱っている店もありますよ。

 立ち寄られては如何でしょう」

そう薦めるのだった。


「うむ、そうだな。

 行ってみることにしよう」

そう告げたダリュートは店を後にして進められた店へと歩みを進める。


そんな彼の後をポーっとした眼差しの女性が数人、彼を見送っているのだが…

(あれは、何事かね?)と不思議に思うダリュートは自分のせいだとは気付かないのだった。

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