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ラウンドリム0011

己の常識が此処ら辺では通じないようだと気付いたダリュート。

(こりゃぁ、前途多難かもな)などと。


散髪も終わり整えられた(おの)が見姿を鏡で知ったダリュートは、久々に見た自分の顔をマジマジと鏡越しに。

別にゴワゴワと硬いと言う訳でもない髪と髭であるが、いざ切るとなると刃が立つ得物がなかなかに。

それもあり放置気味であったため己の髭が全くない素顔を確認するのも久し振りだったりする。


「うむ、久々に自分の素顔を見たが…以前よりも引き締まったか?」などと。

「いやいや御武家様…何時から御髭を」っと、思わず床屋が。


「ふむ、そうさなぁ…数年は髭の無い素顔を拝んではおらなんだな。

 しかし…どうも髭が無いとスースーして落ち着かぬ。

 まぁ、致し方ないのではあるがな」


髭を失い、何やら心もとない気分になるダリュートであった。

その後で勘定を済ませる訳だが…

「ぬ?店主」

「どうかなさいましたか?」

ダリュートに告げられ何事かと確認を。


「この値段であっておるのかね?」っと。

他国から来たと聞いていた床屋がダリュートへ恐る恐る尋ねる。

「此処らの相場で御座いますが…高過ぎますかね」っと。

そんな店主へダリュートが頭を振りつつ。

「逆だ、安過ぎぬか、これは?

 商売が成り立つのかね?」そのように。


(おの)が懸念とは逆方向の返答に胸を撫で下ろす床屋。

相手は武家であり明らかな武威を誇れるような相手である。

機嫌を害させ暴れられでもしたら堪ったものではあるまい。


安心した床屋がホッとしたように

「この町の物価は安く抑えられておりまして。

 それに従い各々の店が掲げる価格も抑えられております。

 まぁ、町からの助成金もありますので…」

(また、それか…)っとダリュートが思い尋ねる。


「宿でも助成金を受けておると聞いたが…そんなに金をばら撒いて成り立つのかね?」っと。


すると床屋が苦笑いしつつ

「実はですね、此処が他所よりも物価が安いって言うことで訪れる者が絶ちません。

 そうなると通行税などが多く得られましてね。

 それを鑑みるに、町の収益税と人頭税を合わせると儲かるのだとか。


 まぁ、お上のことは詳しくはありませんが、少なくとも損はされてはないようですよ」

そう告げてニッコリと微笑みつつ代金を受け取る床屋であった。


サッパリしつつも色々とカルチャーショックを受けながら床屋を出るダリュート。

(まさか、床屋で文化の違いを実感することになろうとはな)っと苦笑。

それがニヒルな感じな笑いと見え、更にその美貌が湛える笑みを直視した女性が硬直。

ポーっと立ち止まり…それを訝しく見た女性が彼女の視線を追い硬直。

床屋付近でポーっと立ち尽くす多くの女性が現れたことで、後々噂となり広まるのであった。


さて、床屋を出たダリュートは女将から貰った地図と床屋の店主に聞いた情報を元に服屋へと。

若者が出入しており、なかなか繁盛しているように見受けられた。


ダリュートは無造作に服屋へと赴き入り口を潜る。

店内へ居た者達は、ぬっと入り口から現れたダリュートにギョッとする。

明らかに自分達とは異質な者が自分達の領域へと分け入った現場に立ち会ったと言えば良いであろうか。


武家者は庶民の店へ現れることはない。

それは武家者としての矜持という心根が、そのような店へ赴くことを邪魔するからである。

また庶民も、それを心得ており、安心して己のテリトリーで買い物をするのである。

まぁ、武家者が扱う店へ晴れ着を誂えに庶民が訪れることはある。

それに対して武家者は広い矜持で寛容に黙認する、それが粋とされているのだ。


そんな慣例を破り、武家者が庶民の、しかも若造が愛用するような店へと足を運ぶとは…

天と地が引っくり返る面持ちで唾を飲み込み固まる者達。

そんな中、ダリュートの美貌に気付いた女性が別の意味で固まる。

その美貌に見とれて固まってしまっているのである。


ちょっと異様な雰囲気となった店内を不思議そうに見渡した後、ダリュートは店員を見付けて近寄る。

近寄るが…店員が硬直して身動(みじろ)ぎしない状態へと陥っていた。

そんな女性店員に声を掛けるが反応がなく戸惑うダリュート。


「もし、あい済まぬが…

 どうしたのだ、この者は…」

首を捻る彼へ男性店員が、恐る恐る近寄り…

「あの~、御武家様」っと。


「おお、此処の店員かね?」

声を掛けて来た彼へとダリュートがニコヤカに。


「はい、そうですが…お武家様は、どのような御用件で」っと。

「これは異なことを?

 ここは服屋であろ?」

困ったように尋ね返すダリュートへ店員が困惑しつつも返答を。

「左様でございますが」っと。


「なれば、服を買いに来たに決まっておろうに」と呆れる。

そんな彼をマジマジと見ながら店員が困惑気味に。

「御武家様が、ですか?」っと。


「そうだ。

 俺は昨日、船でこの町へ着いたばかりでね。

 昨日、武家者以外の仕事もしてみたいと口入屋の店主へ告げたところ身形を整えることを進められたのだ。


 旅者である俺には多くの衣装が無くてな。

 この鎧と鎧下、替えの鎧下以外は下着しか持っておらぬのだ。

 故に身軽な庶民的な衣服とやらを得たくてな」

そう気楽に告げて来る。


こんなことは前代未聞である。

武家者が庶民の身形を望む…聞いたことも、いや、有り得ない。

だが、実際に求められ…混乱状態となった店員であった。

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