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最終兵器「俺」  作者: 焼林檎
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プロローグ

「なん‥‥‥なんだよ、これ‥‥‥。一体ここはどこなんだよぉ!」


 俺の名前は草薙務(くさなぎつとむ)。自分で言うのもなんだか、文武ともに極平均値の、そりゃもうどこにでもいる十六歳の高校生だった‥‥‥はずだ。


  今俺の目の前に繰り広げられているのは、テレビや映画のスクリーン、漫画アニメでしか見たことのない‥‥‥いやそれ以上に極めて現実味があり、それでいて受け入れがたい光景だった。

  まるで怨念の集まったようなどす黒い炎がうずます空。見ているだけで喉が焼けてしまいそうだ。

  さらにその中を飛び交って炎を吐き、敵の肉体を爪でえぐるドラゴンのような生き物。

  地上では鎧を着た兵士やおぞましい姿をしたクリーチャー、ローブに身を包み怪しげな呪文をひたすら唱え続ける者もいる。

  皆共通しているのは、鋭く相手を突き刺すような冷たい眼をしていることだった。


  やばい。やばいやばいやばいやばい‥‥‥!


  ドクンドクンと、痛いほどに心臓の鼓動が速まる。

  いまだかつて無い未知の感情が全身を支配した。尻もちをついた大勢のまま、立ち上がることも後退りすることもかなわなかった。


「だ、誰か‥‥‥助けて‥‥‥!」


  やっとの思いで出すことのできた言葉は、擦れてしまっていて聞き取るのも困難だと思えるほどか細い声。それでも脳が、全身が、生まれて初めて命の危機というものを感じ取っていた。


  しかし、その救いを求める声は救済者に届くことは無く、俺の存在に気が付いたのは全身の鎧に返り血をベットリと浴びた、一人の兵士だった。


「死に‥‥‥たくない。死にたく‥‥‥ない。死に‥‥‥」


  ぶつぶつとそう唱えながら、兵士はぐったりとした様子でこちらに近づいて来る。兵士の持つ剣は、鎧同様に多量の血が付着していた。剣先からぽたぽたと血が滴り落ちる。

  ギラリと鏡のように光る剣に、一瞬俺の顔が反射する。


  その顔は笑っていた。



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