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再開した日

 やあやあ、皆さんこんにちは。飯田公平です、

 本日は休日の土曜日。仕事も休みだし、昨日遥花が壊したキッチンの修理不可能な物とか他にも必要そうな物を買うためにショッピングモールにやって来ています。

というのは建前で、本当は別の用が有るんだがな。それはひとまず置いといて。


 まあ、あれだ、デートという奴ですよ。

 いやー非リア充の人達にはごめんね~。

 俺、今最高に充実してるわ。


「こーくん、こっちこっち。すッごく可愛いのがあったよ」


 おっと、嫁さんがお呼びだ、悪いね。


 無邪気さ全快の笑顔で嫁さんが指してたのは、可愛いとはかけ離れた物だった。

 それは、昨今大ヒットを記録した映画のポスターで、早い話が。


 ゾンビだった。



―――――




「こうくんって、おばけとか苦手?」


 そう言いながら首を傾げながら目を点にし、頬に人差し指を当てている遥花は頭にハテナが浮かんでそうな雰囲気だ。

 かわいい。


「べ、別に苦手じゃねーし! あんなの作りもんだしぃ! そんな、子供じゃあるまいし~。そもそも幽霊とかゾンビとか非・科学的だし~」


 俺は努めて平静を装った。

 あんなのなんかこれぽっちも怖くないし~。そんなのがいないなんてのは、遥花を探し回ったときに嫌でも知ったし~。

 あ~、怖かった。


「あ、そっか。こっちじゃそうだったもんね」


 遥花は胸の前で手をぽんと叩いた。

 と、言いますと。


「向こうじゃふつーに出てくるんだよ。野営してたらあいつらに囲まれた時とかびっくりしたよ~。何でも私に寄せられて集まったんだって、どうしてかな?」


 まじか、俺の嫁さんは幽霊まで魅了してたんや。

 まあ、わかる。

 俺が幽霊になったとしたら、絶対に集められる自信があるからな。


「ただ単に幽霊もゾンビも癒されて成仏したかったんじゃないか。遥花は可愛いし」


「ちょっ、人前で言わないでよ、恥ずかしいじゃない」


 遥花は顔を耳まで赤くさせて、ぷんすかと頬を膨らまして怒っている。


 あぁ、成仏するんじゃ~。


 

―――――



日も真上に登ったところでお昼にすることにした。


「うわー人がいっぱい」


 嫁さんはあまりの人ごみに驚いているようだった。

 失敗したな。こんなに人がいては、遥花の可愛さが知れ渡ってしまう。


「とりあえず、席を取ってくるよ。遥花は何か食べたい物があったら行ってきな」


 そういって席を取りに行こうとした俺だが、服の裾を掴まれた事で後ろを向いた。

 遥花は目を俯かせ、言いずらそうに言った。


「私、こうくんと一緒のが食べたい」

「よしわかった。二人で一緒に選びに行こうか」



―――――



「ごめんね、席取れなくて」

「かまわないよ。こうして一緒に食べているのが重要だからな」


 結局、席は取れなかった。

 仕方が無いので飲食が可能な広場で簡単に摘める物を食べている。

 まあ、結果的にはこれで良かったかもしれないな。遥花は人ごみが苦手そうだったし。


「えへへ、なんか懐かしいねこういうの」


 遥花は懐かしそうに顔をほころばせる。

 そうだな、あの頃はよくこうして一緒に飯を食べてな。


 子供の頃俺達はよく一緒に遊んでいた。家がお隣さんだったてこともあったし、遥花と俺は同い年と言うこともあった。

 なにより、俺は当時から彼女に一目惚れをしていた。

 少しでも一緒に居たくて、毎日のように遊びに誘った。

 それは遥花が行方不明、異世界に転位した時まで続いていた。


「こうちゃん、ごめんね」


 遥花は申し訳なさそうなに下を向きながら言った。


「何のことかな? 俺はぜんぜん知らないよ。おっとそうだ。のどが渇いたから飲み物買ってくるよ。遥花は何がいい?」


 俺は話をあえて中断させた。


「……フフ、こうくんと一緒ので」


 遥花はすべてを悟ったように微笑んでいた。


「わかった、ちょっと待ってて」


 飲み物を買うために自販機に向かいながら、俺はふと、遥花と再会した時の事を思い出した。



―――――


 

 遥花が発見、と言うか異世界から帰って来たのは、今年の三月だった。

 引越しの用意を終えた俺は、何を思ったのかいつも遊んでいた公園に向かっていた。

 そういえばあの時、久しぶりにあの公園に行ったんじゃないだろうか。

 小学生のときに聞いた遥花の「待ってて」という言葉を信じ、俺は今日までひたすらに脇目も振らずに己を磨いていた。

 だからその公園にはあの時以来、訪れてすらいなかったのだ。


 公園はあの時とあまり変わっていなかった。滑り台、砂場、ブランコ、ペンダントを渡したベンチ。

 そのどれもがあの頃のままだ。


 誰もいない公園。俺はベンチに腰をかけ、あの頃を思い出すように目を閉じる。

 遥花達と遊んだ事。ペンダントを渡し告白された事。その手を掴めなかった事。そしてあの時、遥花の声を聞いた事を。


『・・・・ん』

『・・ちゃん』


 なんだろう、囁く様に俺を呼ぶ声がする。懐かしい声だ。

 静かに目を開け辺りを見渡すと誰もいない。太陽も落ちかけていて、真っ赤に燃えている。

 まるであの時のようだった。


『・・いま』


 また聞こえた。さっきよりも鮮明に。

 この声は---。


「ただいま! こうちゃん!」


 瞬間、まばゆい光が公園を包み込んだ。

 あまりのまばゆさに、俺は目を閉じ、手を翳す。

 次第に光が晴れて行き、人影が現れ始めた。

 俺は何とかして開けた目をこれでもかというくらい見開く。


 まさか……、お前なのか。


 人の形となった光は弾けるように粒子へと変わり、人影があらわとなる。


 首元辺りまで伸ばした夕日のように朱い髪の毛、陶磁器のように白い肌、スッとした鼻立ちに青色の瞳。

 服装はどこか中世ヨーロッパ風の物だし、腰には剣を差していて何処か現実味が無い。

 だがその顔立ちは、俺がよく知っている人物だった。俺が一目惚れし、誰よりも探し続けた少女。あの頃より大人びているが、間違い無い。


「ただいま、こうちゃッッ!?」


 彼女は青色の瞳に涙を浮かべると、白い歯をニカっとさせていた。

 そんな彼女に向かって、俺は言葉よりも先に勢いよく抱きつく。


「へっ!?  なになに??」


 彼女は何が何だか判らずに慌てふためいている。

 俺もだよ。でも今はそんなことどうでもいい。


「おかえり、遥花」


 俺は声にならないくらい泣きながら言った。

 遥花は最初、呆然としていたが、優しい笑顔で俺の体に腕をまわして。


「ただいま、こうちゃん」


 と、言って涙の雫を零した。


「ごめんね、遅くなって」

「いいよ」

「ごめんね、急に居なくなったりして」

「いいよ」

「ごめんね、ペンダントこわしちゃった」

「いいよ、今ここに君がいるんだから」


 それから遥花は何も言わなかった。俺も何も言わなかった。

 帰ろう、俺たちの家に。

 やっと見つけた。やっと手を伸ばせた。もう二度とこの手を離すものか。

 これからは、お前が俺の家で、俺がお前の家だから。



―――



 って、そいや俺、まだ正式にプロポーズしてなかったわ。

 俺は飲み物を買ってそう思った。

 っと、なにやら携帯に着信が来たぞ。


「もしもし」

「もしもし、飯田様の携帯でしょうか? ワタクシ、ジュエリーKANEDAの大鳥です。頼まれていた物が出来上がりましたのでご連絡させていただきました」

「あ、わかりました。すぐに伺います」

「かしこまりました。準備をしてお待ちしております」


 さて、頼んでいた物が出来たし、ちょっと受け取って来るか。

 そしてバシッと決めよう。


 何をだって?


 プロポーズだよ。



Q:遥花さんの今日の服装は何ですか?

A:上は白色のタンクトップに、ちょっと厚手の青いトップカーディガン、下はゆったりレギンスにウェッジサンダルです。

あり得なくねと思ったらごめんなさい。

作者の服のセンスは皆無です。


Q:なぜ公平が説明しなかったんですか?

A:全部かわいいで終わらせるからです。


 一話目の余談ですが、Gの所を執筆中、作者が実際に遭遇しました。

 まじで焦った。

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