彼女はお姫様?
どもども、頑張って書いたのでぜひ読んでみてください。
「俺は今、ナパタにあるお気に入りの宿にいる。」
「京紫さん、こんな宿を気に入ってくれているのですか!?」
「嬉しそうにお辞儀をしているのはこの宿の主である…ラーフ……ラーフ・ラパリアだっけ?」
「いえ、ラーフ・ラファリアです。あと、なんで独り言のようにナレーションを?」
「ラーフ・パエリアは昔、ギルドに来ていた依頼の時に少しばかり縁があったやつだ。まぁ、俺はラーフの護衛をしていただけなのだが…」
「いえ、それでも心強かったですよ?あと、パエリアではなくラファリアです。」
と、ラーフのツッコミが面白いので弄ることを辞められない。そして、編み出した極芸がナレーション風にボケたところをラーフがツッコミをする。といったものである。
「ラーフ、久しぶりだな。元気だっか?」
「えぇ、京紫さん。私はとても元気ですよ。あと、一人分の料金をお預かりしても宜しいでしょうか?」
そう、京紫はこの事のためにラーフの元に来たのだ。一人分というのは異世界からやってきた女の子の宿賃だ。精霊王の話からして京紫達と同じ”イレギュラー”のようなので京紫が責任をもって面倒を見ることにしたのだ。
「これで足りるよな?」
金の入った小袋を渡す。ジャラッと音が鳴るのを確認したラーフが「結構です。」と、いって奥の部屋に消えて行こうとした時に何かを思い出したかのように京紫に振り向き問いかける。
「そういえば、さっきの変な風…何だったんでしょうか?」
その答えを京紫は知っている。恐らく”召喚”の事だろう。だが、それを言うことは望まれない。なので、こう言う。
「さぁ?もしかしたら魔王でも降臨したんじゃないか?」
「ご冗談を(笑)」
それだけ言うとラーフは店の奥に消えていった。
「さて、部屋に戻るか」
そろそろ、ティナと女の子が心配になってきたのでサッと宿泊する部屋に行く京紫。部屋の中から何やら声が聞こえてきた。なにやら、もめているようだ…
「入るぞー?」
一応確認。中からティナが「いいよ」と返事をしたので扉を開ける。と、そこにはさっきの美女が毛布にくるまっていた。
「よぉ、調子はどうだ?痛みとかあれば治癒するが…って、どうした?俺の顔になんかついてるか?」
「い、いえ、何でもないです。助けていただきありがとうございます。」
京紫の顔を見た瞬間に目を見開いていたが、きっと知り合いに似ていたのだろう。だから、気にしない。
「そか、まぁ気にすんな。あんた地球って言葉知ってるか?」
「?ええ、当たり前じゃない。ここは、地球でしょ?」
なるほど、状況を判断しきれてないのか…。確認は取れたがこれからどうするか全く決めていない。実感してもらう方が早いかもしれない…だが魔物をいきなり見せて失神されても怖いし、などと色々と考え込む。それを訝しげに見ていた女の子は質問を投げかけた。
「そういえば、ここは何処なの?この辺の風景に見覚えがないんだけど…それに、この近くは海っぽいけど潮の香りもしなければ波風の音もしないよね?」
まぁ、彼女の言うことは最もだが…それは、この異世界では通用しない。
「ケイシ…海って何?」
「ッ!?」
驚いたように目を見開く彼女…それも仕方ないことだ、なぜならティナくらいの歳の子は海を知ってて当たり前だから。
「んぁ?海っのはこの湖畔の何10倍もでかい水たまりのことを言うんだ。さらに言うとその水は塩っぱいし、その場の風に当たってると妙に疲れる…。」
「精神作用の魔法が自然発生する場所…危険すぎる。」
一応説明しておく、その方が彼女にも理解が追いつくからだ。だが、
「魔法?馬鹿じゃないの?魔法なんてこの世に”存在しない”じゃない。それに、海を知らないってどういう事?でも、あなたは知ってるのよね?」
疑問符がいくつあっても足りないんじゃないか?と思うほどに彼女は混乱しだした。なので、ここは一つ全てを一気にさらけ出そう。
「俺はこの世界の住人じゃないから知ってて当然。ってか、君と同じく日本人だよ。だから、初めに言っておく。この”異世界”は、魔法もあればバケモノもいる、絶えず戦争だって起きている。君は、この世界に”来てしまったんだ”」
ポカーンッと言った感じで口をあんぐり開けている。大体の人はこれでも理解できないだろ。ってか認めたくないだろう。なので、大体の返答はこうなるに違いない…
「なるほど、ドッキリね?カメラはどこ?」
「…まぁ、そう思うも無理はないか…。」
京紫は早々に諦める。なぜなら、こうなった場合何が何でも認めようとはしなくなるからだ。
「悪いけど、この部屋は俺らの部屋でもあるから…狭いと思っても我慢してくれ…」
「嫌よ!帰る!」
「…お好きにどうぞ?その変の亜人さんに迷惑かけるなよ?ここの人は温厚だけど…ってもういねぇ…」
説明する前にズカズカと部屋を出ていった彼女…心配すぎる。
「…追いかける?」
「…頼めるか?」
りょーかいッ。と敬礼をしてサッと部屋を出ていくティナ…。その直後に悲鳴が聞こえてきたのは気のせいじゃないだろう…数分後にティナに担がれるようにして半泣きの”お姫様”がいた。ってか、泣きじゃくってる…
「ここの人達のドッキリリアリティ追及しすぎ…怖かったよぉ…」
「…」
だから、ドッキリじゃないって言ったら今なら信じるだろうが、きっと失神通り越して天に召される気がする。と、そこに空気の読めないやつがやってきた。
「京紫さん、そろそろ夕飯にしますか?それとも、先にお風呂にしますか?」
「…感心するほどの空気読みだな。」
「?何か言いましたかな?」
「いや…風呂は男女別だよな?」
一番聞いておかねばいけない内容を聞き出す。すると、京紫としては残念な方の答えが飛んできた。
「いえ、この宿は混浴もありますよ?」
「余計な事を…」
「ケイシッ!混浴!混浴ッ!」
「かしこまりました。今の時間は空いていますので今のうちにどうぞ。」
と、言い残し去っていったラーフ。あいつ、実はずっと聞いてるんじゃないか?というタイミングでくるのが怖い。そして、奴はとんでもないものを置いていった…
「ケイシ!行こ!」
「待て待て、この子はどうするんだ?一人にする気か?」
「なんで、一人にするのがダメみたいな言い方するの?」
「さっきのエルフみたいなのが沢山いるんだぞ?それでも君は耐えれるの?まぁ、俺としてはそっちの方が都合がいいけど。」
「絶対イヤ、後、アンタとお風呂入るのも絶対イヤ!」
「だから、お前ら先に風呂入ってこい。俺は残るから…」
「…てっきり、私をお風呂でお〇そうとするのかと思ってた…」
「失礼なやつだな、んで?君の名前は?」
そろそろ、聞いておいた方がいいだろう。お互いの名前は知っておいて損をすることはほとんどない。ので、相手は快く教えてくれる…
「そういうのは、先に名乗るもんじゃない?」
撤回しよう。快く教えてくれる人も少なからずいる。
「俺の名前は柳江京紫。日本人って事は覚えているが、この世界での記憶以外ほとんど覚えてない。」
「…」
「どうした?一応自己紹介はしたぞ?」
「いえ、昔死んだ知り合いに同じ名前で同じ見た目の人が居たから少しびっくりしただけ。ごめんなさい?」
なるほど、それで最初に俺を見て驚いていたのか。
「いや、気にしないでくれ。ってか、俺がその人本人かもだぞ?」
「ほんとに、そうだったら私は…」
「?」
いきなし俯いてブツブツ言い出す。そして、決心がついたようで口を開いた。
「私の名前は、佐々倉姫愛っていうわ。なんか、信用出来ないし未だにドッキリかもとか思ってるけど、取り敢えず…あなたの言葉を信じるわ。」
「いきなり、考えが変わったな?」
「…好きな人と同姓同名だもん、信じたくなる。」
「間違っても、俺に惚れるなよ?」
「ないない!絶対ない!」
心に刺さったわ…。俺ってそんなに魅力ない?とか思いながら泣きそうな顔でティナを見つめる…と
「大丈夫、ケイシはかっこいい!私は大好きッ!」
「ありがとなー、ティナ…」
「なんで、私が悪者みたいになってんの?」
と、納得いかない感じでブツブツ言っている…彼女…もとい姫愛さん。
「まぁ、いいんじゃね?取り敢えず今日はゆっくり休め。明日にはここを出るからな?」
「へ?ずっと、このままじゃないの?ってか、私もついていく感じ?」
んなアホな、みたいな顔をする姫愛さん。だが、彼女が独り立ちするにはまだ早いので…
「お前、自分ひとりでもやっていけるって思ってんの?バカじゃね?」
「バカって何よ!!一人でもやっていけますーッ!」
「あそ、なら、出てってくれてもいいぞ?この湖畔の街の外は水棲魔物の宝庫だからな…運が良ければ3本くらいで済むさ。」
「3本って何!?何が3本よ!骨なの!?骨が3本逝くの!?」
勘が鋭いじゃないかッ。みたいな顔をすると姫愛は泣きそうな顔をしながら京紫に答えた。
「…お願いします。連れてってください。」
「あいよ。んじゃ、さっさと風呂入って飯食って寝るぞ。明日は日の出と共に出発だ。」
ッというわけでお風呂に向かうティナと姫愛…二人とも可愛いし…覗きでもしてみようかな?と思って2人をチラッと見ると姫愛が睨んでいた。こいつは、エスパーかなんかなのか?あと、ティナさん…そのチョキの形になってる指はなんですか?
「…どうした?早く行ってこい。俺は、用事があるから…」
「えぇ、このゴミクズを処理してからゆ~っくり入ることにするわ。」
どうやら俺はゴミクズらしい。だが、俺にもやるべき事がある。だから、この2人に構っていると時間が無くなる…楽しい会話を切り上げようと真剣な顔をする。
「少し、急ぎの用事だ。だから、お前らはゆっくり風呂に入ってこい。俺が帰ってくるまではこの街に居るだろう俺の友を付けておくから」
「そんなこと言って逃げ…ッ!?」
「わかった。ケイシ…気をつけてね?」
ティナはすぐに何かを察したようだ。まぁ、ものわかりが凄くいいし…可愛いし、完璧過ぎるけど少し天然はいるのが可愛いッ!所なのだ。だから、全てを京紫に任せて背中を押すのがどこか新妻みたいだなっと思ってしまう京紫はもう重症患者だろう…ティナにメロメロだ。
「ありがとうティナ。姫愛さんのこと頼んだぞ。」
「…ぶぃッ!」
風呂へ送り出してからにしようと思ってたが、少し状況が変わったので急ぐことにしよう。この2人の甘い空気に充てられた姫愛はと言うと…
「あんたたちだるいわ…」
嘆いていた。いろいろと思うところがあるのだろう。そして、それぞれのMISSIONをこなしに動き出す。
〜1時間後〜
「ここのお風呂凄すぎ!!お肌ツヤツヤになったし、髪の毛もトリートメントとかなしでこの艶よ!?そのせいで”少し”長風呂しちゃった。」
「この子…体力すごすぎ…」
ツヤツヤになっている姫愛と…のぼせた挙句風呂場で倒れたティナが部屋に帰ってきた。が京紫はまだ帰ってきてない。その代わりに一人の影がいた。
「おかえりなさいませ。京紫さまのご友人様ですね。ずっと監視させていただいております。影の一座、名をサマスと申します。」
「え、えーと…ご丁寧にどうも?」
「ケイシは今どこに?」
そこに居たのは紛れもなく影…モヤがかかったように認識を阻害されている。こんな奴と知り合いの京紫は”能無し”なのに…人望だけで生きてきたようなやつである。
「京紫さまならもうすぐ帰ってきますよ?と言うより、もう帰ってきましたね。これにて、失礼させていただきますね。では、またお会い出来る日を…」
言うより早し、サマスはスッと溶け込むように消えていった。
「ゆ、ゆゆ幽霊…」
「変わった人だった。」
「あれ人なの!?」
姫愛が悲鳴じみた声を出しているとドアが開いた…
「ッ!?」
「たらいまー、疲れた。」
「おかえり。」
京紫が帰ってきた。手には紙袋を持っている。どうやら、買い物に行っていたようだ。
「なによ、それ?」
「んぁ?あぁ、姫愛さんの服と下着。サイズわからなかったから適当に見繕ってきた。あと、センスは…期待しないでくれ。」
「…あ、あり…がと……」
「いえいえ、さて俺は風呂に入ってくるよ」
と京紫はスタスタと風呂に向かって行った…
「あいつ、案外いい人?」
「いや、すごくいい人。」
「ふーん?ま、いい人?」
部屋の中からいい人コールされると恥ずいんだが…などと思いつつ風呂に向かう。明日は早めに出ることにしよう。と決めて風呂に入る。
「明日は荒れるな…」
〜〜〜〜〜
「……(すやぁ)」
彼は眠っているようだ…
感想などありましたら是非是非です。(忙しくなるので活動報告は手抜きになります。すみません)