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私の太陽・・・・

雲の形が何に見えるかなんて聞かないで。

みんなの前で。

本当の気持ちを言わないように、気をつけて言った言葉が本当だから。

ただ、入道雲を見ると悲しいのが治る。

何を悲しんでいるかは、言わないけどね。



盛夏の日曜日、シャッターを半分閉めた、たまり場のラーメン店。

早苗が仲間と飲んでいたら、突然彼がシャッターをくぐり抜けてきた。

どうやら、一緒に飲んでいる仲間の一人が誘ったようだ。

先程まで悟も居たのだが、門限があるので、と先に帰っていっていた。

三十七歳で母親の言いつけを守らざるを得ない悟。

早苗は情けなく思ったが、もっと情けないのは悟であろうよ、と酒を飲みながら少し鬱陶しい気分になっていたので、彼の登場が真心から嬉しくて、自然に笑顔になった。


彼は、いつも早苗を笑顔にして、笑わせる。


間に一つ席を空けて座った彼と早苗は話が弾んだ。


渋谷にあるクラッシック音楽専門の喫茶店の話を早苗がふると

「今度、行ってみますわ。」彼は興味を持った。


ちょっと変わった喫茶店なので、早苗はその店について説明した。

「私語厳禁なんだよ、だから、誰かと行くときにはメモを・・・・」

と言いかけると

「誰とも行きませんから、誰とも行きませんから。」

早苗が目を上げると、彼は早苗に視線を注いで居た。



昨日、パン屋さんで何気なく買ったパンの値段が777円だった。

綺麗にレシートを折りたたんで、大吉のおみくじと一緒にした。

その足で、呼び鈴を鳴らしに行った。

7秒だけ待って部屋の前から逃げ帰ってきた。

今日、同じパンを選んで買ったら683円だった。

何かに見放された月曜日。



彼に「好きです」というメールをついに送ってしまった。

十日経っても返信は来なかった。

十日目に「辛い気持ちで毎日を送っています、是非、お返事下さい」とまたメールをした。

返信はなかった。

これ以上連絡したら、ストーカーだ。


だがしかし、だがしかし。

悟が試合観戦に行った後、ついに電話をしてしまった早苗に逃げ道はもうないのだ。

遠まわしに断っていると思うのが、通常の判断だろう。


じゃあ、どうして笑わせるの?

どうして優しくするの?


苦しい。悟の事も彼のことも。

独りで生きていくことも出来ない。

苦しい。



冷房を切って窓を開けると、虫が死んでいた。

明かりに近づきたくて、昨日窓にぶつかっていた虫か。

何も焦って窓にぶつかり死ななくても、今太陽があなたに当たっているよ。

あなたが部屋に入る迷惑な気持ちが、あなたを死に追い込んだ。

死んだあとに太陽が当たっているよ。

なんて言うのは残酷か。


彼は、残酷な人だ。

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