さよならは、出会いへのはじまり。
会える訳なんかないのに・・・。
気が付いたら、僕はそこにいた。
神奈川県小田原市。
僕はこの街の駅前に一人佇んでいた。
なぜこの街に来たのか。
二ヵ月ほど前に、この場所でひとつの恋が終ったのだが、僕はまだそれを受け入れないでいたからだ。
久し振りにきたこの街は、どこか懐かしいようなそんな風が吹いていた。
一人の方が全然気が楽!
ちょっとお互いがすれ違うと、そんな事を彼女に言ってしまう事もあったが、あんなのは嘘っパチだ。
そんな強がりが言えていたのは、彼女がいつも側に居てくれたからなんだと、今頃になって気が付く。
どうしてだろう?
大切なものは、いつも失ってから気が付く。
だからって、決して大切にしていなかったわけじゃないんだ。
誰に言い訳するでもなく、心の中で自分で自分に問いかけていた。
夕暮れの国道には長く続く渋滞の列。
歩道橋から見渡した街は赤く染まっていた。
255号線から駅に続く道には、帰り道を歩く人達と、約束の誰かに会う為に急ぐ人達。
約束がないのはきっと僕だけなんじゃないだろうか?
そんな錯覚に陥るほど、駅は人で溢れていた。
そんな人ごみの中に、彼女に似た後ろ姿を見かけると、僕は自分でも気が付かないうちに、似てる誰かを目で追ってしまっていた。
彼女のすべてを今だ思い出にできない自分がいる。
ため息一つこぼしながら、歩道橋を後にする。
何となく春の匂いがするような道は、小田原城址公園に続いていた。
多分きっとここが春になると桜が綺麗だからなんだと思う。
僕は城址公園を通り過ぎ、74号線から135号線方面へ歩き、新早川橋を南に下ると、早川IC近くの海岸にたどり着いた。
ここは遮るものがなにもないため、とても心地のよい風が吹く。
誰もいない夜の海。
僕は二人で過ごした時を思い返していた。
楽しかった事・嬉しかった事・喧嘩した事・喜びや悲しみ。
それらを全て見えないビニール袋に詰めると海に投げ捨てた。
誰もいない場所だから。
ボロボロに泣いた。
いつまでもくよくよしてちゃいけない。
少しだけ前を向けるようになった気がする。
傷つく分だけ強くなれたのかな?
そんな事を思いながら、海伝いを歩き根府川駅から電車に乗った。
人も疎らな電車内から見えた海岸。僕はさっきまであそこにいて、全てを捨ててきた。
終わった恋にしがみつくんではなくて、いつか思い出した時、素敵な恋だったと思えるようにしたい。
さよならは出会いへの始まり。
だから僕は新しい恋を探そうと思う。




