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第4章

「だ…」


(BL、ダメ、絶対!)


っていうのは心の声。現実に口から出た言葉は以下次の通り。


「ダメ…じゃないで…す」


「えっ?なあに?ちゃんと言ってくれないと聞こえなぁい、市川くん」


「だっ、だからもう好きにしろって言ってんだよっ!」


「そうこなくっちゃ!ウフッ」


半ば半泣き状態で敗北宣言のオレと、その姿に歓喜の声を上げる白鳥。


くそッ…完全にストレート負けじゃないか。所詮金も何もない、ただのいち高校生のオレが勝てるはずもない相手だったという訳か…トホホ。




けど、それで話は終わらなかった。


「でね、今日いい事思い付いたんだけど」



背中がゾクッとした。絶対にオレにとっては悪い事に決まってる。



「上野くんと、市川くんを取り合う役で、斎藤くんにも出てもらおうと思って!強豪柔道部主将と、モテ系サッカー部のエースが冴えない草食系文化部男子の主人公を取り合う…さらに面白くなりそうでしょ?」


やっぱりな……てか、おまえの頭の中は一体どんな事になってるんだ、白鳥よ。それで学年一位の成績なんて、本当にこの世はどうかしてる。しかし小説の主人公になっても、オレの立ち位置は現実と変わらないって…あんまりだ。



「さ、最終的にどうなるの?オレは…」


勇気を振り絞って、恐る恐る聞いてみた。


「あら、知りたいの?最後はね、ライバルとの競争に勝った上野くんが、フラフラする市川くんに『誰のものか、忘れらんねぇようにしてやるよ』って、抱きしめて終わり!めでたしめでたし!あ、内緒ね」


「うぇっ…」


再び込み上げてきたゾワゾワとした吐き気に、聞くんじゃなかったとひたすら後悔。


(内緒ねって、口が裂けても言えるわけねーだろ…きめぇ、最後の最後まできめぇの一言に尽きる。てか、関係ないけどその上野のセリフ、どっかで聞いたような…)



「いいじゃない、どうせ作り話なんだから。みんな私のウソ。けど、私が市川くんを好きなのは本当よ?」


「は、はぁ?」


「少し前、斎藤くんに頼まれて、告白の代返しに行って女の子に引っ叩かれたでしょ?私、見たの」


白鳥に言われて、確かにそんなこともあったなと思いだす。2ヶ月くらい前、一樹にしつこく迫っていた女子がいた。その勢いにすっかりビビった一樹に、代わりに断りに行ってくれと頼まれた挙句、オレは逆ギレした女に叩かれた。


それを白鳥が見ていたとは……カッコ悪くなって俯いた。今更だけど。


が、そんなオレの手をグイッと引き、


「市川くんって本当に私のタイプだわ」


と、白鳥は細い腕を絡ませてきた。


「えっ?…ええっ?」


急な状況の展開に追いつかなくて、目を白黒させる。


好きって…、タイプって…一体今度はどういう意味だ⁈


「行きましょ」


白鳥に引っ張られ、訳も分からぬままオレは東屋を出た。いつの間にか雨は止み、青空が顔を出している。雨上がりの爽やかな空気に包まれた街を、可愛らしく微笑む白鳥と歩く。頭は混乱していたが、コレはコレでアリかもなんて、ふと思う。






…だいぶ後で分かった事だが。


あの日、理不尽な理由で引っ叩かれながらも反論もしないでやられっぱなしだったオレの姿に萌えたんだと白鳥は言った。それを知ったのは数年後、彼女に促されるまま婚姻届に判を押し、自分の名前が「白鳥爽太」に変わった直後のことである。










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