第二話 ようこそ、明晰夢ワールドへ
家に帰ってからは、普通に宿題をやって、寝る前に妹のせいらに
「おねーちゃん、枕なんか買って、ふみんしょー?」
だなんて茶化され、別にそんなんじゃないよーなんて
澄ました顔で言いつつ脳内では(黙ってろやこのガキ)
と愚痴り、まあそんな感じでいつも通りの1日を過ごし、眠りに就いた。
例の枕を白いシーツにぽすっと置き、その上に頭を乗せると、
たちまち私の意識は甘い花の香りに溶けるように薄らぐ。
そのまま私は、寝付きがいつもよりとても早いことに驚きながら(不眠症じゃないよ、ホントに)
一分程で夢の世界へと誘ていった。
「これは、夢だ。私だけの素敵な世界……!…………
誰も、居ない、よね?」
もし今現在、近くに人がいるものなら、
豆腐の角に頭ぶつけてでも死にたい。
いや、豆腐メンタルなんて言葉があるほど豆腐って脆いし、無理か。
私はしばらく灰色の影を眺めていた。
無音、無臭、なーんにもない!
だ、大丈夫だよね。変な異次元とかに迷いこんでないよね、私。
心配になってきたところで、なんだか景色が変わり始めた。
上も下も無い世界に地面が出来て、目の前にぼんやりとだけど、
見覚えがある街のシルエットが見えてくる。
その光景は、どう見てもいつもの現実世界にそっくりなのに、
心なしか鮮やかに輝いていた。