第二十五話 good night!
遅くなりました。一章最終話です。
柔らかいピンクや紫のパステルカラーに視界が変わった。
あたりを見回すと、皆がいて、白い扉のようなものが一つあった。
「この扉をくぐれば、現実世界でございます。この度は突然の事故で、
皆様を混乱させてしまい、一夢現の管理人として
お詫び申し上げます」
丁寧に一礼するヴィオレーーもう一人の夢人らしい
ーー。
「いやいや、そんな……ありがとうございます」
「ごめんね皆……ありがとねヴィオレ」
「いえいえ、レイ様が無事で良かったです」
ああ、レイは道に迷わないように気をつけな……
ヴィオレは優しく微笑んで、レイの頭を撫でる。
いや〜、なんかやっとまともな人に会った気がするよ。
……いつまでも頭撫でてる。とろけそうな笑顔で。
レイの笑顔に若干迷惑そうな色が滲んでるような。
ま……まともですよねえぇっ!?
あ、今度は「レイ様迎えに来るの遅くてすみませ ん、どうかお仕置きを〜」
「やめて。僕の人格が疑われる」
とかいうやりとりが聞こえる。ダメだやっぱり。
「 さて、と。今度こそ、帰りますか。」
「夢宮さん達が夢の世界に来てくれて、僕は楽しかったよ。
現実世界の人とこんな風に話すのも、少し珍しい事だったし。
じゃあ……また、いつか、どこかの夢で」
「うん?……また今夜な」
「……え?」
「え?今日も明晰夢パラダイスやるよね明日美ちゃん」
「もちろん!体重を気にせずにスイーツ食べれて
最高だよ!!」
「いーないーな、せいらのまくらも買ってよ!」
二、三秒固まるレイ。目をぱちくりして、ようやく口を開く。
「え……いや、僕はてっきり、こんなアクシデントがあったから
皆この世界には懲りてるかと……」
「……ふーん。意外と現実的な頭の中してるな、あんた。そりゃ焦ったよ。
一瞬死ぬかと……だけどさ。
私はもう少し、夢を見たい」
「夢宮さん……!」
「ココロ地味にひどい」
明日美ちゃんよ、余計なことに気づくな。
それに、謎の現象や、夢世界の危機。あれをほっといては安眠できない。
「後はまあ、乗りかかった舟って言うし、何かまた起きたら、
私も解決に手を貸すよ」
「本当に?……ありがとう。あくまで危険のない範囲で、頼むかもしれない」
「あ、危険はあたしがぶっとばすから大丈夫」
明日美ちゃんやべえ。
「うん、じゃあ……また、今夜の夢で」
花が咲くように笑って、手を振るレイ。
「ああ、おやすみ。また今晩、レイ、ヴィオレさん!」
少し満足したように微笑んで、私も手を振る。
それから、鮮やかな夜が、儚い夢が、もうしばらく私達のもとに訪れる。
非現実的な日常を重ねた先に、世界の歯車が少しずつずれて、
出来上がる未来を、私達はまだ知らない。
これは、現を抜かした少女が、少女をやめる物語。
そして、夢に囚われた少年が、現に焦がれる物語。
第1章 完
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました!
二章は更新できるか分からないので、しばらくは
後日談などを時々投稿させていただきます。




