第十九話 願わくは、大団円を
バサッという音を立て、私は色とりどりの……思ったより脆く柔らな冠を
予期せぬ形で栗色の髪の上に頂くことになってしまう。
そして――
「えっせいらっうわああああああっ!?」
近くの木の上にいたのであろう、私と同じ髪色の幼い少女に容赦なく飛びかかられ、
地面の上で大の字に倒れてしまった。
「あははー、おねーちゃんだ~」
「げほっ、せ、いら?あんた、何で木の上から、いやそこじゃないな何でこんな森に、
そもそもこれは……何で花輪なんて持ってたんだよ?」
「えっと、えっとー。何かふしぎなお花ばたけに来て、ちょっとより道
しちゃってー。きれいな森の中で花かんむり作ったの。
――ちょっとなつかしいなーって思って」
矢継ぎ早の質問には、このアホ妹は一つしか答えてくれなかったようだ。
……あー、でもまあ、どうでもいっか。こうして戻ってきてくれただけで。
とりま、詳しい話は帰ってからだな……やれやれ。
「わあああ夢宮さん大丈夫っ?あれ……この子、もしかして妹さん?」
「ホントだ~、隠れんぼ上手いんだから、次はあたしが勝つ!」
「せいらまけないよー!」
「勝負するなっ」
レイに助け起こされ、謎のタイミングで予感させられる戦いの始まりを阻止し、
わちゃわちゃしながら歩いて行くと、もう森の外だ。
空は森に入る前と同じように、暮れず明けずな色をしていた。
あー……疲れた。家に帰って早く寝たい。ともかく、これでやっと帰れるかなー。
「いやー良かった良かった、一安心だよ。一件落着だね、
後は何事もなく皆を送り届ければ、僕はこの仕事を完遂出来るよ」
「そういう言い方するの止めろよ不安になる」
「どうして?」
「いや、何だか……」
フラグっぽいと言っても分からないだろうな、と思ったところで私は戦慄した。
ガラスのような煌めきを纏った、灰色の煙のようなナニカが背後に迫ってきていた。
まさか……ああ、せいらを受け止めたとき、うっかり落としておいてよかった。
もしアレをあのまま手に持っていたら、気づく間もなく私は――
「せいら!明日美ちゃん!レイ!今すぐ……逃げて!!」




