表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/27

序章 おやすみ、朝です

 目を覚ました。


 曖昧な影のような形が渦巻くモノクロの世界。

 それ以外は、何も見当たらない。

 ぼんやりした意識が、徐々にはっきりしてくる。


 もちろんここは、決して現実世界ではない。

 だって私は、さっき眠りに就いたのだから。


 息を深く吸って、呟きとともに風ひとつ吹かない虚空に吐き出した。


「これは、夢だ。私だけの素敵な世界……!」



 せめてここだけでも――夢の中でだけでも、自由になりたい。現実なんてここには無いはずなんだ。

 どこまでも、甘い夢を見たい……それは、私の我儘なの……?






 何だか初々しい(それと痛々しい)夢を見てしまった……数週間前だっけ、

 初めてこの夢を見始めたのは。時の流れってめっちゃ速い……だけど今のも、夢って言うのかな?


 目を開けた私は、寝室のベッドから起き上がり、

 自身の栗色の髪を二つに結び始めた。

 まさか現実は夢の中まで付きまとってくることはあるまい。

 そんなことを考えてた時期もあったっけ……



 ふと正面の壁に時計を見上げる。

 時計の長針は、登校時間の八時三十分より五分前を示す位置まで迫っていた。


 うわっ、遅刻じゃん!

 私は勢いよく布団をはね飛ばし、ベッドを跳び降りる。


 それから一秒もかからずに、私の白と薄桃色を基調としたネグリジェが、

 中学校の制服に早変わりしていた。


 うん、文字通りで、一瞬服が消えるとかそういうことも無く。

 間違いなく、私の意思で早変わりしたのだ。

 リボンタイとベスト、白シャツにグレーのスカートと、少し重たい制服の

 肌触りを確認し、私は部屋の中で佇んだまま目を閉じる。


 朝ごはん食べてないけど、まあいいか。

 時間を戻してもややこしくなるかもしれないし。



 此所は明晰夢の世界。大体の物事は、自分の意思で自由に操れる世界。

 空間も時間も越えられる。

 現代と変わらぬ街並みの中、魔法や超能力まがいのことも出来るし、すっごい楽しい

 ……筈なんだけど、不可解なことも結構あったりする。そんな、現実世界と似て非なる空間である。



 視界を瞼で遮ると、ゆらゆらと空間が揺れる感覚を覚えた。

 夢の中だろうと、学校はサボれないのである。





「おっはよーココロ!!瞬間移動でギリセだね!」

「夢宮さんおはよー。あれ、ギリシャがどうしたの?幸乃さん」

「ギリセとは……私が推測するに、ギリギリセーフの略である。ギリシャでもローマでもありません。因みに、類語表現としては……」


 ……どうしよう。


「ココロ?立ったまま寝てるの?」


 なんか、目を開けたくない……!

 どうして月曜日から皆そんなに元気なんだよ。



 明晰夢世界の教室のざわめきと共に、今日も夢幻の1日が始まる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ