第十四話 夢人の天然が深刻なようです
遅くなりすみません。これを含め2話くらいは説明回です。
「夢宮さん、大丈夫?何だか落ち込んでいたみたいだけれど……」
「あーうん大丈夫。ちょっとファンタジーって何だっけってなっただけだから」
元の花畑に戻ってきた私とレイ。
訳が分からない状況をようやく脱することが出来た……わけでもなかった。
早くせいらや明日美を探さないと……
「夢宮さん。今君が持っているのって?」
「え?……ああ、コレのこと?すっかり忘れてたな」
私は欠片――先程異空間の幻で想太を見た時のものだ――
を持っていた手を、おもむろに目の前へ持ってきた。
一見それは、ただのガラスの様な手のひらサイズの尖った破片である。
でも、これは確かにガラスでも無い、世界の一部が欠けたものだった。
「私、ちょっと人を探してて。その事もぼちぼち話をしたいけど、歩きながらで大丈夫?」
さっきは狭霧のような粉塵が舞っていた花園だけど、
今はくっきりと遠くの景色が見える。
「そうだったのか……あのさ、探してる人って」
「迷いこんだ私の妹と、一緒にそいつを探してくれてた私の友達だよ」
「……分かった。僕も一緒に探すよ。話もしながらで大丈夫?」
レイは一人、何かを納得したように一拍おいて頷き、
ほわほわっとした笑みを浮かべた。
「ありがと、でも……あんたは逆に、迷子になりそうで心配だなー」
「え〜?一応ここは、僕ん家の庭みたいな感じの所なんだけど……」
困ったように首をかしげる彼の細い下がり眉が、さらにハの字を描いてしまった。
事実、さっきの空間から出て彼はしっかり地に足をつけた状態でいるのに、
纏う雰囲気はふんわりしてどこか儚いままである。
だけど意外にも身長はあった。まあ、女子の中でもやや高身長な明日美より
僅かに高いくらいだけど。中性的な容姿だから
遠くから見るともっと低身長に思えたんだけど。
せいらたちを探しつつ、この明晰夢についてのことを色々とレイから聞いた。
それを明晰夢を見ていない人々には話さないように、という条件で。
何しろさっきから非現実的なことばかり起こってはいるけど、
私が住む世界はあくまでファンタジーも魔法も無い現代である。
その上、明晰夢世界を悪用したりする人もたまにいるらしいし。
「……えーと、その説明からすると、言ってしまえば私が明晰夢だと
今まで思っていたのは、夢じゃなくて
異次元とか異世界とか、そういう類いの所に意識だけ
トリップしていたってことでいいの?」
「うん、そういうこと。今僕たちがいるのが、その世界と現実の間の世界なんだ」
ちなみに、スムーズに話が出来てるように見えるが、
レイの話があっちこっちして「あっそうか!レム睡眠時の脳波について説明してたよね」 と最後訳分からん方向に落ち着いたりしたので、
ここまでまとまるまで大分かかりましたとさ。
マジで大丈夫かこの夢人。結構な頻度で天然なんですけど。
「それでさ、空間が変な生き物に食われたり勝手に欠けたりしてるよね。
あれって……大丈夫なの?」
白い世界で手に入れた欠片に目をやりつつ、私は気になっていたことを尋ねる。
「あ〜……僕も、結構困ってるんだよね、その事。」
ふう、と短く息を付き、彼は言った。
「最近、崩壊し始めているんだ。明晰夢やこのあたりの空間が」




