表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/27

第十二話 迷子が一人、迷子が二人、迷子が三……あんたはダメだろ!

序盤は明日美の一人称で、途中でまたココロ視点に切り替わります。

読みにくかったらごめんなさい。


 どこもかしこも、ぜーんぶラベンダーに似た紫の花ばかり。


 そんなこの場所で栗色の髪をした小さな子を探していたのに、

 大きい方まで探さないといけないなんて、何てこったい! だけど……


「ま、ココロならきっと大丈夫っしょ!お〜いココローーー、妹ちゃーーーん」


 だからあたしは、走り出すだけ!

 別に、いなくなったココロ達が心配じゃないわけじゃあ無いけど、信じてるし!


「でも、ココロにそれ言うときっと、何を根拠に……って感じの

 呆れ顔されるからなー。って、あれは?」


 数十メートル先に、小さい方の栗色髪の尋ね人。

 彼女の姉より気持ち高めの、二つに束ねられた髪が揺れている。

「居たっ!」


 追いかけようと足を速めるが、妹ちゃんもまた走っている。

 それでも、運動神経には自信があるあたしなら、

 子供の足に追い付くのは容易いはずだ。

 

 ところが、彼女は一面紫の世界の中では異質な、緑の草むらへ分け入っていく。

 その先にはあっても半径百メートルくらいの、

 小規模な森と呼ぶのがぴったりな木々が群生した場所があった。


 ()には、こんな場所無かったはずだけどなあ。

 ともあれ、妹ちゃんを見失ってしまったみたいだ。

 やむなく立ち止まったあたしは目の前の木々を見据え、

 深い息をして呼吸を整え、そして……


「よっしゃあ、かくれんぼだって負っけないぞっ!」


 再び、全力ダッシュを始めた。








「……ねえ」


「どうしたの、夢宮さん」


「出口って、まだ見つかんない感じ?」


「……えっと、多分もうすぐ」


「もしかして、迷ったの?」


 私の前方をふわふわ飛んでいたレイが、

 小さな肩をぴくっと震わせて急に止まった。


 かれこれ三十分、私達は白い世界を飛行し、出口を探していた。

 私が何で飛べてるのかは、追及しないことにしよう。

 レイは幾らか魔法的なやつが使えるらしいが。

 

 へんだなー、私普通に現代日本で暮らしてたのに、

 何でファンタジーな出来事に遭遇してんの? わけわかめ。

 そしてそれを半ば受け入れている自分も怖い。

 それはまあ置いといて、問いかけられたレイはぎこちなく振り返り、


「そそそ、そんなわけないじゃないかー」


 と、色白な顔から更に血の気が引いた蒼白い頬に、

 冷たい汗を一筋伝わせて言った。


「そうか、迷ったんだね」

「えっあの……うぅ」


 予想的中、彼はしょんぼりとうつむいてしまった。

 ホント大丈夫かなこの子、よく今まで明晰夢の管理とかやってこれたな……


「う、うん、とりま私も探したいけれど、どこが脱出路なのか見当がつかなくて」


「ほ、本当?ごめんね、君にも迷惑かけて……

 それで、ここから出るにはね、空間が少し綻びでいる箇所を探さないといけないんだ。」


「なんだか、破れてたり綻びてたり、空間が布みたいだな」


「破けてたの!? どうりで……いや、こっちの話さ。」


 何となく思って言った事に、どうしてか慌てているレイ。

 ともかく、空間の綻びって? いやいや、やっぱ意味分からん。

 大体凡人な私の目に見えるかって話だし、分かっても都合よく見つかるわけが……


「あれそうじゃない?」


 陽炎が中空で渦巻いてるような歪んだ箇所を発見。

 それは上も下も地面も無い感じの白い空間の、足元よりやや下方に存在していた。






「あ……ダメだ、夢幻(むげん)式魔法しか効かないよ、これ」

「いや、いきなり知らない単語を言われても」 


 レイがふるふると困ったように首を横に振った。

 綻びのそばまで降りてきたはいいが、どうやらこれでは脱出出来ないらしい。


「んーとね、僕とかが使ってたりするのは魔現(まげん)式魔法って言って、

 魔力消費と呪文や魔法陣なんかで使える魔法で〜」

 おお、まさにファンタジー、オーソドックス!

 ……広まったら間違いなく科学が大変なことになりそう。


「夢宮さん、何かわくわくしてる?」


「えっ……うん、まーね」


 そりゃ、私の趣味はアンティーク雑貨とかの収集に限らず、

 西洋魔術的な雰囲気も好きだし、何より魔法は現代人のロマンだからね。

 おっと、今はそれどこじゃないんだったわ。


「ふふ、そっか。それでね、さっき言った夢幻式魔法というのは、えっと

 ……何て言うか、明晰夢世界で君がやってたのとおんなじかな」


 彼は私の返事を聞いて、少し楽しそうにほわっと微笑んだ後、

 説明が難しいといった様子で、考え考え話を続けた。


「明晰夢で考えたことが実現するみたいに、想像力で魔法を使うんだ。

 でも、明晰夢の中とか限られた空間でしか使えなくて、

 思念の制御がちょっと厄介なのが欠点なんだけど……あっ」


 ふと、彼は話しながら何か思いついたという様に小さく叫ぶ。


 何だ何だ、期待と不安が半々に感じられるな、こういう時って。


 それから彼は、心無しか目を輝かせ、私に向き直る。


「夢宮さんだったら、もしかしたら夢幻式魔法、ここで使えるかもしれない」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ