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第八話 元凶出現!? 能力なしで佇む私と能力なしで物理で大活躍の友人

「明日美ちゃん……空間かじってるね、あれ」


「かじってるねー」


 しばらくせいらを探し歩いていた私と明日美は呆然として、

 目の前で虚空を貪り、空気しか無いはずの場所に

 白い穴(?)を開ける黒い生き物を眺めていた。その硝子のように割れた中の空白の部分は、

 せいらを追って飛び込んだあの穴と同じに思えた。


「なんて言ったっけ、バク?」


「そう、だね。なんか真っ黒だけれど……いや、どう見ても何か違くない?」


 明日美の問いに、私は白黒で鼻の長いバクと、悪夢を食べると言われているいる(ばく)

 両方を想像しながら答える。見た目や大きさ的には、マレーバクとかその辺の生き物に近いけど、

 何か牙が生えていたり全身漆黒だったりするから、おそらく別物。


 また、悪夢(・・)を食べる漠かなとも思ったけど、こいつがかじってるのは

 ただの……空間空間と言ってきたけど、何なんだろう。空気しか無いはずの

 眼前のスペースがひび割れたようになって、かじられた部分が白い空間と化している。

 だめだ、やっぱり空間としか言えない、残ってるのもかじられて空いた穴も。


 とにかく、悪夢を食べてるわけじゃ無いから、漠でもない。

 でもどちらにも似ているし、ここにいるとしたら動物じゃない方の漠。

 待て待て落ち着け、漠とか想像上の生き物だからいないはずだよ?

 いや、もうすでにここが不可思議な光景すぎて、一周回って何か私落ち着いてるけど

 こんな状況だと何かもう漠の存在とか余裕で受け入れられるわ。

 

 ……漠が何らかの影響で凶暴化、モンスターかした?

 いやいやいやさすがにないない、っていうかもしそれで襲われたら

 私都合良く戦闘とかできる訳じゃないし終わる。


 とか何とか軽く錯乱しながら状況分析していると、

 こちらに気づいた「ばく」(バクでも漠でも無いとして、仮にこう呼ぶ)

 が、双眼を赤く光らせて突進してきた。勿論、敵意むき出しで。


 あああああああああああ終わったあああああああああ!!

 

 と叫びだしそうになる程の恐怖で背筋が凍り付いた。

 死亡フラグを立ててしまうとは、こういうことだろうか。っていうか速くね?猪かよ?

 そんなことを考えてる場合じゃ無いくらい、黒い獣が間近に迫ったその時、


 

「うりゃあっ」


 ごすっ、と鈍い音がして、知らぬ間にぎゅっとつぶっていた目を開け、

 顔の前に無意味に貼り付けた手をどける。

 その後もひるんだ「ばく」を数回蹴ったりする音が響き、

 そのうち脳天に明日美のしなやかに素早く蹴りだされた脚が

 クリーンヒットした「ばく」は、ドサリと横向きに倒れた。


「これでよしっと」 

 爽やかに額の汗をぬぐう明日美。

 ……え?こういうの物理攻撃で何とかなるの?ねえ。

 えーっと、この地面に転がって動かなくなったこのモンスターが弱いって事?


 否、体育は小学校からオール五の女子力(物理)の友人がやばいのか。

 とりあえず、凍り付いていた背筋が融解したせいか、へにゃっと肩の力が抜けてしまった。



 その後も花畑を歩き回り、時々出てくる「ばく」は明日美が華麗に蹴り飛ばし、

 私達は歩き続けた。私?運動会前日は毎年雨乞いをしているんだけど何か?

 蹴ろうとしたら、逆に私なんかはね飛ばされるって。


 しばらくすると、隣で無双していた彼女が息を切らし、咳き込み始めた。


「大丈夫?さすがに無理しすぎたんじゃ?」


「ううん、あたし自身は、ゲフッ、後三百匹はっ、余裕だけど……カハッ」


 彼女は苦しげに口元に手をあて、「変なちりみたいなのが舞ってるじゃん?」と

 辺りを見渡した後、私の方へ視線を向ける。


「あれ?何、これ。いつの間に……」


 見ると足下に、灰色と紫を混ぜたようなちりが固まって地面一体に漂っていた。

 それが、風で少しずつ浮かび上がり、それに明日美はむせていたらしい。


 そして、その粉塵に紛れて、数匹の「ばく」が迫っていた事に気が付かずに、


 

 私は一匹の黒い影にぶつかられ、足をすくわれてちりの中に沈み込んだ。

 

 

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