イグーの番はやって来なかった
バンバンババーン。
即時投下!!
そして誤字脱字の雨あられじゃ~!!!
「シャワーちゃ~ん!」
カルネラさんが恐ろしいほどの満面の笑みで僕に近付いてくる。
何て邪悪な笑みなんだ。口元は笑みを刻んでいるのに、目が全く笑っていない。コワッ……。
「シャワーちゃんは、本当はイグニスなんかと一緒に暮らすのは嫌でしょう?私の方がシャワーちゃんを愛しているし、何でも言うことを聞いてあげるわよ~」
いえ、別にイグニスと暮らしていてそこまで特筆した嫌な所は無いので、問題ないです。
カルネラさんに何かをしてもらうのも、ちょっと………。
きっと高い代償が発生しそうですし。
「うっ……うう~ん?そにょ、僕はイグーとこにょまま一緒で……べつに………」
「そんな訳無いっ!!」
うおっ!?断ろうとした僕の言葉に、カルネラさんは突然大声で遮ってきた。
「そんな訳無いのよっ!今日だって無骨なイグニスはシャワーちゃんの替えの服の事だって、全然考えてなかったみたいだし、女の私と暮らした方がシャワーちゃんの将来にとってはプラスだし……だから貴方は私と一緒に面白おかしく暮らすのっ!!」
いやぁ……うん、これって僕に対しての一緒に住むメリット説明だった筈だよね?
カルネラさんのプレゼン(?)は、聞いて居ると僕の心に響かないばかりか、逆にカルネラさんが受け取るメリットの話になってないかな?特に最後の【面白おかしく暮らす】ってのは間違いなくカルネラさんが楽しいからだよね?
僕が考えなが無言で首を捻っていると、イグーと目が合った。
いつもと変わらない余裕な表情で、片方の口角をクッと上げると僕に対しての向かってパチリとウインクをしてくる。
いつもと変わらないイグーのその態度に、僕はホッとすると、カルネラさんにキッパリとこう言った。
「カルネラしゃんの気持ちは嬉しいけど、僕はイグーと一緒で……いや、一緒が良いにょっ!!」
僕がキッパリ告げると、カルネラさんはショックを受けたように表情を甘ったるい顔からガラリと変貌させて、幽鬼の様にフラフラと揺れながら床に手をつき、しくしく泣き出した。
「何で……ううっ…何でなのよぉ……。私よりイグニスが優っているとでも言うの?あっ……あり得ない~!シャワーちゃんは騙されているのよぉ…あの性悪男にぃ~うううっ……」
何とも勝手な事を言っているカルネラさんであるが、まぁそれが彼女なのだと思う。
「私の愛には……試練が一杯だわ~しくしく……私の家の方が大きくて広くて……ううっ…おまけにフレイルももれなく付いて来るのにぃ……」
えっ?フレイルさんか……。フレイルさんは常識人だし、優しいし……一緒に暮らしたら落ち着けるかも……。
あっ!でも、結局はカルネラさんが付いて来るので、ちょっと……無理だな。
えへっ……。若干そのおまけに、心が揺さぶられたのだけれど。
「フレイルしゃんは魅力的だけど、カルネラしゃんでマイナスなにょで、やっぱりイグーと一緒でいいでしゅ!」
僕が今度こそはっきりカルネラさんに向かって、自分の意思を告げると、カルネラさんは泣きながら僕に向かって突進して来る。
「シャワーちゃん、酷いっ!私がこんなに愛しているのぉにぃ~~~~~」
しょえ~~~!コワッ。
カルネラさん、目が逝っちゃってるよぉっ!!
ぶつかるっ!!と思ったその瞬間、突進して来ていたカルネラさんがピタリと停止する。
「お前みたいな奴が、か弱いエルフのシャワにぶつかったら、シャワが怪我するだろうがっ!!」
イグーがカルネラさんの突進を、片腕で止めてくれていた。
「ぐぬぬぬぬ~。これで私に勝ったと思うなよ、イグニス!!」
「いや……。勝っただろ?シャワはやっぱり俺の方が良いんだとよ。ふっ……。俺がメリットを言うまでも無かったな……」
勝ち誇った笑みを浮かべてカルネラさんを見詰めるイグーと、実に悔しそうにイグーを見詰めるカルネラさん。
今までのやり取りを知らなければ、何だかお互いを熱く見詰め合ってる様にも見えなくも無い。
そう考えると、何故か面白く無い。
僕はイグーの足下にトテトテ走りよると、ズボンをクイクイ引っ張った。
「イグー……えっと……僕、お腹がしゅいたにょ」
視線を僕に向けたイグーを見上げながら、懇願すると、イグーはさっきまでカルネラさんを睨んで居た相好を、だらしなく笑み崩すと、空いている片腕で僕を抱き上げてこう言った。
「そうだなっ!俺も腹が空いているし……。んじゃあビルドの肉団子スープでも飲んで帰るか?」
おっ…おう!あの…肉団子スープですか……。
美味しかったのですが、今度は食べ過ぎない様にしなきゃね。前回の二の舞は、ちょっと控えたいですしね。
「うん。肉団子スープ楽しみなにょ~」
ビルドさんの店に行くのは、ちょっと気まずいけど、イグーがカルネラさんから視線を外したので、良しとして置こう。うん。
イグーはそう言うと、片腕でカルネラさんをフレイルさんの方に投げ飛ばすと、何もなかったかの様に僕を抱き上げたままスタスタと服屋さんを後にしたのであった。
僕は一応イグーに抱かれながらも、去り際にフレイルさんに両手を合わせてゴメンね?と、頭を下げた。
すると僕のジェスチャーが通じたのか、フレイルさんが、深く頷いてくれたので、僕は安心してこの場を後にできたのであった。
その後の服屋さんでこんな話があった。
「はふぅ……。イグニスすごかったねぇ!」
「うんうん!何か…本当にシャワーちゃんを大事にしてるって感じで……ウフフ」
「それにシャワーちゃんもイグニスの事を満更でも無い感じで……それに………」
「何て言っても、シャワーちゃんの着ている服がまた良かったのよねぇ……。フェアリー銀糸は値がはるけれど、キラキラ輝いて本当に素敵よね?」
「そうね!また新たな服のイメージがシャワーちゃんのお陰で湧いて来たし……楽しみ!」
ミアとリアの二人は楽しそうに盛り上がっている。
その横では失意のどん底のカルネラと、諦めた瞳のフレイルが居た。
「ちくしょう~!ちくしょう~!フレイルが……フレイルが援護しないからこんな事になったのよぉ……しくしく……」
「いやぁ……まあ、分かっていた事でしょ?」
「勝てると思ってたのにぃ…ちくしょう~」
「無理でしょ?」
「何て事を言うんだ、この弟はっ!弟の癖にっ!こんちきしょうっ!!」
カルネラはポカポカと、フレイルを泣きながら叩いていると、背後よりミアとリアが近寄って来て、カルネラに1枚の紙を渡してきた。
その紙には【請求書】と書かれた文字があり、但し書きには、フェアリー銀糸のワンピースと書いてあり、お品代金に白金貨10枚と記入されていた。
それを見たカルネラは泡を吹いて大地に倒れ付したのであった。
白金貨10枚=日本円にして百万円ってとこでしょうか。




