面倒だがしょうがない。
イグー視点です。
そして前回から開きすぎましたね、ご免なさい。
実に煩わしい。
今日はシャワと一緒にララウィーの丘に、出掛けてピクニックでもしようかと考えて居たのに……やれやれだ。
シャワを一人で留守番させるのは心配だったが、ワザワザ危険な場所に連れていく訳にもいかないからな。
ちゃんと家から出ないように言ったから大丈夫だろ。
現在俺は家に俺を呼びに来たレビーと共に、郷の入口へと移動していた。
「ご…ごめんねイグニス……。フェンリルの群れが現れるなんて、無かったでしょう?だから心配で」
俺の機嫌が悪いのが恐いのか、レビーはこちらの顔色をチラチラと伺いながら申し訳なさそうに話して来る。
「まぁ、な。だが……フェンリルへの対策に、俺を呼ぶのは良かったのか?ビゼーがブツブツ文句を言うのではないか?」
何故か俺に対抗意識バリバリなレビーの兄のビゼーが、フェンリルの群れが出たからといって、俺に助けを乞うのは考えられんが。
「実は……兄さんはケシャの実を食べ過ぎて……その…」
そこまで聞いただけで分かった。ビゼーは現在腹痛と闘っているということが。
ケシャの実とは果物の一種で中々の美味であり、我々竜族の中には好んで食べる者が多い実なのだが、食べ過ぎると腹を下してしまう果物である。
そしてビゼーはこの実が大好物で、食べ過ぎると腹を下すと分かっているのに、いつも食べ過ぎてしまうのだ。
ビゼーが居ないせいで、俺が呼び出されるはめになるとは。
ビゼーめ……覚えてろよ。
俺は内心でビゼーへの文句を考えつつ、郷の入口へと急いだ。
****
レビーと共に郷の入口に到着すると、もう一人の門番のワジが声をかけてくる。
「あっ!レビー、本当にイグニスを連れて来てくれたのか!良くやった!」
「ワジ…ごめんなさい。一人にして…心細かったんじゃ……」
レビーがすまなそうに謝ると、ワジは強がっているようで、胸をそらしながら話始めたのだが、若干瞳が潤んでいた事は、触れてやらん方がいいんだろうな。
「だ…大丈夫だ。そっ…それよりも、フェンリルの群れ、現在その距離…約50キロ……数は……およそ……100は居るな」
ワジは他の奴よりも知覚能力に秀でている為、門番を任されている。
「ワジの能力でも正確な数字が分からんとは……」
中々の群れの様だ。しかし何故フェンリルの群れがこの郷を目指すのか……理由がわからない。
何者かが謀ったのか?だがどうやって?フェンリルは魔法の耐性もかなり高く、操ろうにも下手なテイマーには操る事は不可能だし、それが群れにもなると……まずあり得ないな。
そうなるとフェンリルが自発的に郷に近付いていると判断するのが妥当だが、普通他の種族のしかも郷などに進んで来るような種でも無いが。
ウム…全くもってわからんな。
俺が少しの間、考え込んでいると混乱するレビーの声が聞こえてくる。
「ど…どうしましょうか。50キロなどフェンリルにかかればものの数十分で到達してしまう程度の距離ですよ?対策を高じるにも時間が……あわわ…」
「……………………………………………」
大いに慌てるレビーに、蒼白な顔で黙り混むワジの両者に向かって俺は、盛大なため息を吐きながら提案した。
「はぁ………。じゃあ俺がちょっと行ってどうにかして来る」
俺がだるそうに言った言葉が理解できないのか、レビーとワジの両者共に唖然とした氷上でこちらを見つめている。
「なっ…何を……いくらイグニスでも、それは無謀なのではないでしょうか?フェンリルが100匹は居るのですよ?」
レビーがフリーズから回復して、直ぐに慌てながら諭してくる。
しかしそれしか方法も無いしな。
郷にまで来られると、もしもの時の被害が尋常じゃ無いだろ。
それに……今この郷にはシャワが居る。非力なエルフのしかもガキだ。危険なめにはあわせられないだろ。
「チッ……。ここまで来られるよりはマシだろ?」
「でっ…ですが………」
ウダウダ引き止めるレビーの言葉を置き去りにして、俺は勢い良く地を蹴り走り出した。
ただし……片腕にワジの襟首を掴んで。
「ぐぇぇぇ……首がっ…絞まるっ…ぐぇ…ぐぇ…」
情けない悲鳴を上げるワジ。
おっと。掴む場所を変えてやるか。
今度は腕にしてみた。すると今度は足を引き摺ってしまい、最終的には背中に背負うことになってしまった。
「ぜぇはぁ…ぜぇはぁ…。なっ何なんだ?いきなり…俺をどうしようってんだ?」
面倒だが走りながらワジに簡単に説明してやる。
「お前をどうこうする気はねぇよ。ただフェンリルが居る方に案内してくれれば良いだけだ」
「なっ…何でだよ。自慢じゃないが俺なんかフェンリル1匹にでも、下手したら負ける程度には弱いんだぞ?100匹の群の前になんか出たら速攻気絶しかねんが?」
「はあ…。確かにそりゃ自慢にはならないが、俺は別にお前に戦えなんて言ってないだろ?ただの案内役だって………」
「じゃあっ……じゃあ俺を連れてくる必要なんか無かったじゃないかっ!フェンリルの群れは郷に向かって直進して来てたんだから、方角だけ教えれば直ぐに対峙出来ただろうがぁ~」
文句ばかりのワジだが、言ってることはまともだ。
確かに…方角だけ教えてもらえれば、コイツ…要らなかったな。
途端に背中に背負ってやっているのが面倒になってくる。
「それに…」
あん?まだ文句でもあるのか?
「何でフェンリルが向かって来てる方角に行かないんだ?今走っている方角の真逆だぞ?フェンリルが押し寄せてるのは………」
俺はそのワジの言葉に走っていた方向を180度転換すると、また走り出した。
「そういうことは早く言えよな………」
俺がそうボソリと言うと、ワジは「言う暇が無かったし、それにイグニスは聞いてくれたのかよ?」と言って来た。
まあ、聞かなかっただろうな。自分の事だから良くわかる。
「……悪かったな」
俺が小さく詫びると、ワジは「イッ…イグニスが謝った…だと?」と、失礼な位に驚きやがった。
俺だって悪いと思ったら謝るさ。まぁこれまで悪いと思った事など、ほとんど無いがな。
「んじゃ、ほら。ここら辺で下ろすぞ?流石のお前も郷に帰れるだろ……」
俺が背中から下ろすとワジはドスンッ…と、尻餅をついた。
コイツ…鈍すぎないか?声を掛けた上で、どうやったら尻餅をつけるのか?残念すぎる。
俺が憐れみの視線を向けていたのに気付いたのか、ワジは顔を真っ赤にして怒鳴ってきた。
「違うからなっ!俺の身体能力はこんなもんじゃないからなっ!まだ俺は本気を出しちゃいないんだからなっ!」
「チッ…時間が惜しい……お前の相手なぞしてられん」
実際に時間が無いのだ。
バカはほっとくべきだとそう判断した俺は、ワジをその場に残しフェンリルの群の方に今度こそ向かって走り出したのであった。
「俺の言い訳くらい聞いてけよ!ちっくしょぉぉぉぉぉぉぉ~」
ワジは悔しそうに叫ぶと、足で地面を蹴りつけたのであった。
分かっていると思いますが、次もイグー視点です。
1話では終わらず……。
レビーが再登場です。覚えてますでしょうか?(作者は既にレビーとビゼーを間違えました)
ビゼーは下痢ピーという、情けない登場でした。あいつはそういう役処です。
そしてシャワの心配をしていたが、正に予感的中ですかね?家から外に出てます。




