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ショタエルフの中身はオッサン  作者: ゴロタ
新しい生活の幕開け……か?
31/42

諦めの境地ここにあり!

誤字脱字は諦めの境地にてご覧ください。

「キャー次はこっちの服を着て~」


「駄目よっ!私の選んだ服の方が華やかだわっ」


「華美な服よりナチュラルな服の方がシャワーのピュアな雰囲気を引き立たせるのよ?ハアハア…」


「ふんっ!何がピュアよ?カルネラの選んだ服はナチュラルって言うより、スケスケじゃないっ!丸見えよ?それってかなり下品だわ!」


「スケスケ…最高じゃない?まぁ、私は一糸纏わぬ姿のシャワーが一番魅力的だと思ってるけれど。致し方がなく服を選んでいるまでで…ハアハア…」


「あんた何しに来たのよ?それ以上ハアハア言うならフレイルに連れ帰ってもらうわよ?」


「そんな殺生な!…ハァ…ッ!おっとあぶねっ!」


 女三人揃えばかしましいとは、よく言ったものです。

 はぁ……皆さんこんにちは。僕は陸に上がった魚のごとくピチピチのチビッコエルフのシャワです。

 現在三人の女性に服を選んでもらっています。

 別に僕が進んで選んでと頼んだわけでは決してない。



 何故この様な状況になったのかと言いますと、始まりは5時間ほど前にさかのぼります。イグーと朝食を食べ終わり、デザートのガナッシュを食べようとウキウキしていたのですが、突然玄関のドアがノックされた。



 ダンダンダン……。ダンダンダン……。



「誰だ?こんな朝早くに…。俺が出るから、シャワはガナッシュを食べて待ってろ」


 ええっ?良いのかな?やったぁ~。

僕はガナッシュを口の中に放り込みながら、イグーにお礼を言った。


「イグー、ありがと!モグモグ…おいしぃ……」


 甘く柔らかいガナッシュは、僕の口の中で直ぐに溶けて消えてしまったが、余韻は残っている。ニコニコと笑いながらイグーを見送り、次々とガナッシュを口の中に放り込んでいると、イグーが何やら慌てながら部屋に戻ってきた。


「シャワ……済まないが、一人で留守番は出来るか?」


 僕は口の周りをチョコレートでベトベトにし、首をコトリと傾げながら聞き返した。


「う?どうしたにょ?」


「いや、郷の近くにフェンリルの群れが近付いているらしくてな、他の仲間と様子を確認して来なければならなくなった」


「しょうなにょ?僕は一緒に行かない方が良いって事だにぇ?」


 良くできました、と言わんばかりにイグーは僕の頭を撫でてくれる。


「悪いが危ないから、シャワを連れては行けない。だから大人しく留守番をして居てくれ、な?」


「……………うん」


 複雑だ。身体はチビッコだけど、精神年齢は38歳な訳で……。まあ、戦力外通告されるのは当たり前ですけどね。

 少々頭を悩ませていると、その様子を見ていたイグーが僕を抱き上げて目を会わせながら確認するように聞いてくる。


「いいか、シャワ?知らない人が来ても、家のドアを開けるなよ?」


「う…うん。しょうだね、危ないかりゃね……」


「たとえ美味しいお菓子があると言われても、ドアは開けたりするな。出来るな?」


 しっ…失敬なっ!確かに食い意地は張ってますが、知らない人に言われてドアを開けるほどバカじゃないつもりですよ!


「もうっ!大丈夫なにょっ!!イグーは心配性なにょっ!」


 僕はしつこく確認して来るイグーに辟易して、近くにあったイグーの顔をグイグイと両手で押した。


「シャワ……お前、手がガナッシュでベタベタだぞ?おまけに口の周りもだ」


 と、そう言うと僕の口の周りをペロッと舐めてきました。

 うぎゃっ!止めれ!なにか拭くものを渡すとかで良いんだよ。美女とかに舐められるならまだしも、美形だけど男に舐められる趣味は御座いません。


「あまっ……。これ以上食べ過ぎるなよ?それと、ちゃんと良い子で待ってろよ?」


 イグーはそう言うと、部屋から外に出て行ったのでした。




 ***



 始めの30分はガナッシュを摘まみながら、この世界の絵本らしき物をパラパラめくって絵だけ見ていました(字は読めない)が、ガナッシュが無くなると手持ち無沙汰になってしまい、次は絵を描くことにしました。


 夢中になって以前の僕が好きだったアニメのキャラを一心不乱に描きまくって居ると、玄関のドアが再び叩かれた。


 ドドンドンドン……ドドンドンドン……。


「イグニス~?シャワ~?留守なのかしら?」


「カルネラ…。ノック位普通に出来ないのか?」


「ふんっ!この叩きかたこそ、私の個性よ!フレイルは男の癖に一々細かいのよ!」


「はぁ……個性、ね…………」


 確かに独特なドアのノックの音だな。と、思いつつ声の主たちに聞き覚えがあったので、玄関に僕は向かった。


「は~い。居ましゅよ~?」


 返事を返して玄関のドアを開けようと思ったのだが、このチビッコボディでは、ドアの鍵はおろかノブを回すことも不可能だという事に遅ればせながら気付いてしまった。


「あら?シャワーだけかしら?シメシメ……と、私よ?カルネラよ~?遊びに誘いに来たから開・け・て~」


 そうです、やって来たのはカルネラさんと、フレイルさんでした。知らない人じゃないから大丈夫だよね?前回の件があるので、カルネラさんは若干心配な人物ですが、ストッパー役のフレイルさんも一緒に居るので、カルネラさんが暴走したら抑えてもらいましょう。


「しょれが……。僕にょ身長ではドアは開けられないみたいでしゅっ!」


「ええっ?そうなの?それじゃあ…………」


 この時は流石にカルネラさんも諦めるのかな?って、思いました。そんな訳無いのに。


「ドアから離れて……そうね、2階へ向かう階段にでも、身を隠しておいてね?」


「ふぇ?にゃんで?」


「怪我………したく無いでしょ?」


 僕はそれを聞いて、一目散に階段の済みに身を隠した。怪我はしたくないし、カルネラさんがブッ飛んでるのは、周知の事実ですし。


 しばらくして、カルネラさんがちゃんと隠れたのか聞いて来たので、隠れた事を告げると物凄い轟音が玄関の方から鳴り轟いた。



 ゴガッシャーンッ……メキメキベキドシャ……。



「シャワ~ちゃ~ん☆カルネラですよ~。遊びに行きましょ?」


「おい!カルネラ!!やり過ぎだろ?これ、イグニスにバレたらヤバイんじゃないか?」


「フレイルは本当に心配性ね?大丈夫!バレなきゃ良いのよ」


「いや…………直ぐにバレるだろ?こんなことする奴、カルネラかビゼー位だからね?」


「ちょっと!ビゼーのアホと一緒になんてしないでよね?」


「どちらかというと、カルネラの方がビゼーより有力なアホ候補だけど………」



 ドアを破壊しておいてバレないと豪語するカルネラさんのお姿は、流石としか言いようが無い。

 僕は二人の言い合いをポカーンと、眺めていたのですが、カルネラさんと目が合うと勢いよく彼女が僕に突進してきた。


「あら~?そんな所に居たのシャワーちゃんっ!!久し振り~!!相変わらずふひっ…可愛いですねぇ~ハアハア」


 ぐえっ。苦しい…。

 圧死しちゃう。

 カルネラさんは力一杯抱き締めてきます。女性なんですが流石は竜……万力のような力で締め付けて来るのです。


「カルネラ!放してやれ!それ以上お前の馬鹿力で抱き締めると、シャワが死んでしまうぞ?」


 みかねたフレイルさんが、カルネラさんの腕から助け出してくれます。有り難い。

 僕も必死でフレイルさんの後ろに逃げ込んだのでした。


「チッ…。いつも良いところで邪魔をするわね、フレイルは?」


「カルネラが、僕に邪魔されない行動を心がければ良いんじゃないか?」


 カルネラさんとフレイルさんがお互いに睨みあって居ます。

 それにしてもこの二人…一体何しに来たのでしょうか?遊びに誘いに来たと言って居ましたので、どこかに連れていってくれるのでしょうか?僕は息が整って来たので、理由を聞いてみようと思います。



「えっと…しょれで、結局二人は何しに来たにょかな?」


 カルネラさんとフレイルさんが同時にこちらを向きました。そして満面の笑みでカルネラさんが言い放ちました。


「そうねっ!今日はシャワの服を一緒に買いに行こうと思っていたのよ!いつもいつもイグニスの服を着ていたんじゃ可哀想だし、ムカつくし……ボソッ…私の好みの服も着て欲しいし……いや、むしろ着てないほうが……ハアハア」



 最後の方が上手く聞き取れなかったけど、要するに洋服を買いに行こうということですね?まぁそうだね。イグーの服ばかり着ていたので、そろそろ自分専用の服が欲しかったのも事実です。良い機会なのなのかもしれません。

 ただし一つ問題が。

 僕はこの世界のお金を持ってません。カルネラさん……いや、フレイルさんに借りましょう。

 そうですね……出世払いにでもしてもらおう。絶対に出世せねば。ニートや親の脛かじりは、この世界では出来そうにありませんし。


「フレイルしゃん、服を買いに行くにょは良いけど、僕……お金がにゃいの……貸してくえゆ?」


 身長が高いフレイルさんを上目使いで見上げながら、目をウルウル潤ませてお願いしてみる。


「別に良いけど?」


「シャワ~ちゃんっ!可愛いっ※♀〒δ@¢∋Ψ♯*▼∞∂ω∂……………ハアハア…ハアハア……」


 おっしゃっ~!!言質取りましたよ?これでお金の事はひと安心だ。

 そして同時に何故かカルネラさんが、意味不明な叫び声をあげながら、血を吹き出して地面に倒れてしまった。

 危険な病気かと心配しましたが、フレイルさんが「大丈夫だ、問題ない」と、言っていたので大丈夫ですよね?きっと。




 ***



 しばらくして地面より復活したカルネラさんに、腕を引かれて郷の中心にある広場まで歩いて来ると、その中にあるお店の一つにカルネラさんが遠慮も無く入って行くと、大きな声でこう叫んだ。


「リア~!ミア~!!貴女たちに自慢した私のシャワーよ?自慢とついでに服も買いに来たわよ?」


 そうカルネラさんが叫ぶと、ドドドドドドドドッ…という大きな音を立てながら、誰かが走ってくる音が地鳴りのように響き渡る。



「うわっ!本当にエルフだわっ!可愛い~」


「ミアの作ったあの服が似合いそうね?」


「そうね…。でもリアのドレスも似合うわよ、きっと!」



 現れた女性二人組が僕を見ながら、頷き合い盛り上がっている。どちらの女性も可愛らしい容姿の美女です。ちょっとドキドキします。


「ウフフ…早く着せてみましょうよ?」


「確かに着せて見ないと分からない事もあるわね」


「私は見えそうで見える感じの服を所望するわ」


 聞き間違いだろうか?ドレスって?まさかね?僕……チビッコだが、男だよ?そしてカルネラさん……見えそうで見える服って何?結局は丸見えって事かな?

 カルネラさんも加わり、三人の女性のパワフルな着せ替えごっこに振り回される事になったのです。




 そして………現在に至る訳です。



 僕と……そしてフレイルさんは、かれこれ3時間は以上も彼女達に拘束されています。

 最初はまだリアクションを取っていました。

 派手なレースがついたビラビラの服を着せられ、「派手すぎなので却下っ!」とか、ギラギラした飾りがついた女の子様のドレスを着せられたときは、「女の子じゃ無いから無理っ!」などの言ってましたが流石にこの3時間も、あれを着ろこれを着ろと着せ変えられたら疲れますし、飽きてもきます。

女性の買い物は長いですね。どこの世界でも同じ法則の様です。



 もう何を着せられても、無反応です。そんな僕を救出しようと奮戦したフレイルさんですが、流石にカルネラさん以外の女性に無理強いは出来なかったらしく、死んだ魚のような濁った瞳で虚空を見つめて居ます。




「ふうっ…。やっと決まったね~?」


「そうだね。フェアリー銀糸を使用した極上の触り心地のレースのワンピース……。可愛い~」


「ふひっ……食べたい…いえ、舐めたい…オホンッ…ウヘンッ……ゴホゴボ……」


 どうやら今現在着ている服に決定したそうです。って、まだ一着目だよ?これ。3時間以上も店に居てたったこれだけですか?そして何故に男の僕にこの格好?もう帰りたい。

 僕はダメ元で帰りたいと口にしてみる。


「………しょろしょろ、帰りたいんでしゅけど?いいでしゅか?」


「あら、普段着も買わなきゃ!これなんてどうかしら?動きやすそうじゃない?」


 リアさんが短パンらしきものを、僕にあてがってくる。


「え~?それ?確かに動きやすそうだけどズボンじゃない。私は嫌だわ!スカートが良いの!」


 ミアさんが不満気な声音で、ダメだしをする。男の僕にスカート一択って、ミアさん…貴女は鬼か?


「わっ…私は……このピチピチスパッツが良いと思う……」



 カルネラさんの意見は先程から無視されている。



 終わりの見えそうにない女性陣の会話に、僕とフレイルさんは肩を落としていたのだが、そんな僕たちに救いの救世主(と、呼んで良いのか?)がやって来た。



 地を這うような重低音ボイスで、背後より声を掛けてきた人物が居たのだ。



「………………………………何をやっている?」


 その場にいた全員が震え上がるほどの怒気がこもっている台詞でした。








次回はイグー視点ですかねぇ?久々に。


決まってませんが。

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