肉を独り占めにする悪い奴
健康診断に行って来ました。驚異の三時間三十分待ちでした。ヘトヘトですよ……はあ。
ケバブ(?)店に向かった僕とイグーですが、残念な事にケバブ(?)は、まだお昼前だというのに売り切れてました。
どれだけ繁盛しているのか?まあ、確かにメチャクチャ美味しいですけど……。
「えっ?もう終わりなにょ?あうう~お肉ぅ~」
食べられないと分かると、尚更食べたくなるもので、僕は情けない声を出してしまった。
「残念だったな、シャワ。明日にでもまた食べに来れば良いさ」
イグーが優しくそう言ってくれたけれど、話はここで終わらない。
「いや…申し訳ないけれど、明日も多分売り切れだよ?」
ケバブ(?)屋のおばちゃんが、本当に申し訳なさそうに、謝って来るが、一体どういう事なのでしょうか?
「明日も売り切れるにょ?にゃんで分かるにょ?」
僕が疑問をぶつけると、おばちゃんは少し悩んだ後に理由を教えてくれた。
「いやね、ギムレーって奴が居るんだけどねぇ……そいつが女の子に振られる度に、開店と同時にやけ食いしに来るんだよ…。もう今回で12回目ぐらいだったかねぇ?」
なんとっ!?はた迷惑な奴ですな!確かに振られるのはキツイ。以前の僕だって、振られた数は数知れないからね。好きな女の子の後をつけたりしていたら、警察官に接近禁止令とか出されたりしたね…。
今となっちゃあ望郷の思いでですよ。
だが、現在の僕にはなんら関係無いから、ビシッと「周りに迷惑を掛けるなっ!!」って、言ってやるのだ!ケバブ(?)の為にもね?
「おば……ゴホンッ…お姉しゃは、しょのギムレーって人が何処に居りゅか知ってりゅの?」
僕がお姉さんと言ったお陰か、おばちゃんはペラペラギムレーの家を教えてくれる。個人情報保護法など無い世界なので、致し方ないとはいえ、若干後ろ暗い気持ちになってしまったのは、僕が小心者だからでしょうか?
「ええっと…確かここから見える、あの青い屋根の家に住んでたと思ったけどねぇ……。お姉さんの記憶が間違ってたらごめんよ?」
なっ…何?謙遜とか無いのか?堂々とお姉さんを自称してきたぞ、このおばちゃん……。凄いな。
「おっ…教えてくりぇてお姉しゃん、ありがと~」
内心の驚きが若干出たが、なんとかおばちゃんに手を振ってお礼を言ったのち、イグーに先ほど聞いた青い屋根の家に行く事を告げた。
「別に…シャワが行くと言うならば、行くが……。心配だな」
「何にょ…心配~?一言迷惑を掛けちゃ、だめっ!!て、言うだけだにょ?特に危にゃい事も無いでしゅっ!」
イグーは心配性なのかな?考えすぎると、以前の僕のような落武者ヘアーになっちゃうよ?まあ、そんなヘアースタイルになっちゃっても、イケメンはイケメンなんだけどさ。あ~あ、爆発しないかな?
「……まあ、何があっても俺が守ってやるからな」
「はあ…どうもにゃの………」
有りがたいけれど、いまいち腑に落ちない。僕も男だからね。守られるより、守りたいものだね。守りたい人を見つけるのも良いかも…。イグーは脚下ですよ?だって僕より全然強いし……。
「じゃあ、出発なにょ~~~~~~~!!!」
と、言った瞬間に、僕のお腹がグウギュルル~~~~~と、鳴り響いたのであった。恥ずかしっ!!
「どうやらシャワの腹ごしらえが先の様だな?」
「………………………………あい」
きっと今、僕の顔はリンゴの様に真っ赤であろう。恥ずかしさで一杯になって居る僕に、おばちゃんが大きな声で笑うと、周りに居た人達も一緒になって笑っていた。
確かに凄く大きなお腹の音だったけれど、そんなに笑うことないじゃんっ!!うわ~~~ん!恥ずかしいよう。
僕はまたもやイグーの胸に、顔を押し付けて隠しながら耐え抜いたのであった。その間聞こえてくる、「凄い大きな腹の音だな?」とか、「やだ、イグニスさんに甘えてる~」とか、「ハアハア…シャワーかわゆい…ハアハア…」等が聞こえて来る。最後の声は、聞いたことがあるような……?とある人物が脳裏を掠めたがまあ、確認はしなくていっか。だって恥ずかしいから、顔を上げたくないし。確認したら終わりみたいな気もするし。
「ふっ……。じゃあ、この近くで済ますとするか」
あっ!そうだった!これだけは主張しないとっ!!
「イグー……ご飯にょお金は、出世払いでお願いしましゅ!!」
僕は無一文だからね?さっきまでは、ウッカリ忘れてたけど、イグーが払ってくれるのが当たり前になっちゃってたよ……。危ない危ない。
「そんな事、気にする必要は無いぞ?面倒を見ると決めたのは俺だしな?返さなくても、別に問題はないぞ?」
「う~ん。イグーは僕をしゅぐに甘やかしゅから、だめなにょっ!僕をだめ人間にしゅる気なにょ?」
「いや、そんなつもりは……ん?シャワは、人間では無いぞ?エルフだ」
「わっ…分かってるにょ~!ちょっといい間違えただけなにょっ!!イグーこしょ、分かったにょ?」
僕は以前の記憶が残っているせいで、自分の事を人間と認識しているんだよね?改めなくちゃね。でも、その場合だめエルフという事になるのかなぁ?なんか嫌だな。
「分かった分かった…。」
この言い方、イグーは絶対分かって無いぞ?ちびっこ相手だからって、適当な返事しやがって……許せん。天誅っ!!
「チェストゥッ………」
「ん?どうした?腹が空いて、怒っているのか?」
僕の会心の一撃は、イグーには効かなかった上に、お腹の心配までしてくる…。これがイケメンのさりげない優しさってやつか…?爆発しろ。
「あっちに肉団子スープが美味い店があるから、そこにするか?」
クッ…返事したくない…。僕は黙秘したが、僕のお腹が返事をしてしまった。
グッ…グ~~~~~!!
「ははっ…。腹の方がよほど素直だな?じゃあ行くか?」
僕を抱っこしたまま、イグーは店に歩き出してしまったのであった。
イエーイ♪体重増えてた~(泣)




