若い頃は分からんのですっ!
誤字脱字…に注意。
皆にダメ出しをされましたが、何がダメなのか全然分からない僕は、イグーに何故パックさんに髪を上げちゃダメなのか、聞いてみる事にした。
「イグー、あにょね?何でパックしゃんに、僕の髪をあげちゃ、ダメにゃの?」
僕がそう聞くとイグーは、えっ?マジか?って、表情をして来る。知らんがな……。知らんから、聞いたんですけど?
「教えて下しゃい……」
上目遣いにイグーを仰ぎ見ると、何故だかイグーの顔が赤く染まっている。風邪かな?
「ゴホッ…。シャワは知らないのか……。エルフは魔力を髪に蓄えるんだ。まあ、お前位の子供の髪にはそんなに大量の魔力は、蓄えられて無い筈だから、妖精が欲しがるのは…………」
イグーが何かに気付いた様に、僕の銀色の髪の毛を撫でて来る。
頭を撫でられるのは、好きだな~。気持ち良い…。
プチンッ……。
痛てっ!イグーよ、何をした?
「痛ちゃいっ!何しゅるの?」
「おっと、すまん。シャワの髪の毛を1本抜かしてもらっただけだ」
何ですと?許せんっ!僕の大事な髪の毛を……。若い頃は分からんのです、髪の毛の大事さ、偉大さを……。
脱色してみたり、奇抜なヘアースタイルにしてみたり……20年後の想像が出来なかったんです……あんな、落武者ヘアーになるなんて……。しくしく。
どうすんの?以前の僕のヘアースタイル、落武者になったら?エルフの落武者ヘアー………うん、誰得だよっ!
僕が以前の肉体のヘアースタイルに、思いを馳せて切ない思いに胸を一杯にしている頃、その横では、
「長老……シャワのこの髪……子供にしたら、魔力が蓄えられ過ぎじゃないか?」
「フム…そうさのぅ…。確かに多いのじゃが、これがエルフだからかもしれんのぅ…。竜としては多いが、エルフとしてはどうなのかのぅ?何せエルフなぞ、数百年ぶりに見たからのぅ……」
「シャワは、エルフの中でも魔力量が多いよっ☆オイラが言うんだ、間違い無いよっ★」
イグーと長老の会話に、パックさんが割り込んで来る。
「パックの意見は無視出来ない。妖精の魔力を見る目は確かだ……性格はともかく、な」
「キャハハ~ねぇねぇ、そのシャワの髪で良いよ~頂戴~☆」
「1本だけならな」
「良いよぉ~。だって、1本でこの量だよ~?お腹一杯になりそうだよ~★」
パックのこの発言で、その場はザワついた。
ええっ?皆が僕の頭の方を見て来る……何なの?
もしや、落武者の兆候でも現れたのかっ?ひいっ。
まだ小さいのに……森をさ迷ったり、何かしちゃったりして、苦労したから……もしや…。
僕はドキドキしながら、自分の頭を触ってみるが、フサフサしていた。寧ろ、モッサリしている。
僕が自分の頭頂部に安堵していると、パックさんがイグーが摘まんでいる僕の髪の毛に、食い付いて居た。
「ハグ…モグ…うん~★美味しい~☆一言で言うと、ジューシー?」
げっ?パックさん…マジですか?僕…覚えている限り、お風呂に入った記憶が無いんだけど?
その髪、バッチイよ?それが美味しいって事は……これが、変態ってやつですか?
カルネラさんも変態だし、この世界変態多いなぁ……。ファンタジーの世界にも居るんだな。
ファンタジーに、夢を見過ぎんなって事かな?だとすると、世知辛い世の中だな……。
「ジューシーなのか?その表現って事は、相当な魔力量だな……。だが、召喚魔法は全然出来て無かったぞ?」
「ほう、召喚魔法とな?まあ、しょうがあるまいのう、まだ小さいんじゃから……」
「あれ~?オイラ、シャワが召喚した食べ物食べたけど~?」
「なっなんじゃとっ?」
「羨まし……いや、何でも無い」
パックさんの発言でまたもや、場がザワついた。
「シャワ!頼む!俺にも食べ物を召喚してみてくれっ!」
ええっ?無茶ぶり過ぎるっ!嫌だよ~。さっき見たいに、召喚され無いんじゃないの?あんな赤っ恥を、イグーだけじゃ無い、この場でやらなきゃならないの?絶対嫌なんですけど?
成功したら良いけど、失敗した時のあの静まり返る感じが、嫌。
だから、召喚なんてしないっ!僕は断固たる意思で、懇願してくるイグーに向かってこう叫んだのであった。
「だが、断りゅっ!」
若い頃は何でも出来ると、思いがちですが、現実は違う。何にも出来ませんし、風邪も治りませんし、火傷も治りません。
若いって偉大ですよ……大切なものって、失ってみて分かるもんです。ハア……。




