何か出ました……。
軽い気持ちで読んで下さったら、幸いです。
苦しい……とても苦しいんだ……。お腹を万力か何かで締め付けられている感じがする。
締め付けたり、緩めたり……。生殺しかっ!
盛大な突っ込みをしながら目を開けると、見たことがある顔が目の前に飛び込んで来る。
僕の目の前に居たのは、皆さんお察しの通りイグーです、はい。
それにしても何故一緒に寝る必要が?しかも苦しいんだよっ!まだ僕のお腹をギュウギュウと締めて来るんですけどぉ?
僕はイグーを起こすことにした。イグーの頬っぺたを自由な両手でペチペチ叩くが、反応は全く無い。
声を掛けながら先程より、強く頬っぺたを叩く。
「イグー、朝でしゅよ~!起きて下しゃ~い」
バシバシっ……バシバシバシ………。
「起・き・て・起・き・て」
ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!
何だか乗ってきた所で、残念ですがイグーが目蓋をうっすら上げてくれました。
叩いていた僕の手を、空いているもう片方の手で握り締めると、また目蓋を下ろしました。どうやら二度寝に入る模様です……って、待て待てぇーいっ!
痛いよ?限界だよ?泣いちゃうよ?だ…誰かぁ……ヘルプッ!ヘルーップ!!
僕の祈りが通じたのか、部屋のドアをノックする音が聞こえて来る。
トントン…トントン…トントン…トントン…トントン…トントン…トントン…トントン…トントン…トントン…。
しつこい上に長い。しかも声を掛けてくる気配すら無い。
ま…まさか…お化けとか…妖怪の類いかな?朝だけど。
僕の祈りは聞き届けられなかったのか?小心者と罵られようが、心霊関係とか本当に駄目なんだよ…。
ドアは規則正しい間隔で、叩かれている。
トントン…トントン…トントン…トントン…トントン…トントン…トントン…トントン…。
諦めかけたその時、ドアの音がピタリと止んだ。それが逆に怖い。
ドアの外に居る生物への恐怖で、僕が青ざめて居ると、ドアが勢い良く開け放たれた。
ギィ……バッターンッ!!
そして………誰も入って来ない。ドアを凝視しながら、恐怖の極地に陥った僕は、無意識に体内にある何かを、悲鳴と共に放出させてしまった。
「ギャ~~~~~~~~~~~~~~~!!」
僕が放出した物はキラキラと光輝き、形を形成して行く。
光が収まり、僕から出た物は…………何と御札と北海道の銘菓ホワイトラバー(分かるかな?)であった。
薄いクッキーの間にホワイトチョコを挟んだ、定番のお菓子である。
一体今のは何なのか?僕の中から光が出たと思ったら、妙な物が出てきた。
百歩譲って御札は分かるよ?だって、現時点で多分一番欲しかった物だからね。これで幽霊は、大丈夫だよね?
でも、ホワイトラバーは……うーん……いや、美味しいよ?美味しいけどね?何故、今出てきたし?
こんなに騒いで居るのにイグーは起きないし、仕方が無いので御札とホワイトラバーを見つめていると、いきなりホワイトラバーが空中に浮かぶ…………………。
ででで出たぁ~~~~!!御札効いてない~~~異世界だからなのか~~~~。お助け~~~!
苦しいのも忘れて自分からイグーに、しがみつきガタガタと震えていると、僕の頭上からバカにした笑い声が聞こえて来る。
「キャハハ……。君、オイラの事が怖いの~?エルフの癖に、情けない奴だな~?」
恐る恐る顔を上げると、そこに居たのは所謂妖精という者だった。僕の片腕ほどの身長に、透けているトンボの様な羽、髪は薄いグリーン、顔はビスクドール人形の様に整っている。妖精さんの顔は、僕が持ってる球体人形に勝るとも劣らずといった可愛らしい容姿であった。
良かった……幽霊じゃなかった~。僕がホッとしていると、返事をしない僕に痺れを切らしたのか、妖精さんが僕の頭に飛び乗るとその場で何度もジャンプをし出した。
いや、ジャンプは痛く無いし、可愛いし………ここは桃源郷ですか?イグーの締め付けを我慢している僕へのご褒美ですね?分かりますっ!
僕が喜んで居ると、飽きたのか妖精さんがジャンプをするのを止めてしまった。
ああ、僕のご褒美が………。ううっ苦しいっ……。
………僕は自分の現状を思いだし、妖精さんに助けを求める事にした。
「妖精しゃん、妖精しゃん、たしゅけて下しゃい!僕はここから出たいのでしゅ!」
妖精さんは首を傾げると、
「うん?出たいって、イグニスの腕の中からか?…………うーん……イグニスは怒らせると恐いしな~。無料じゃ、嫌だねぇ~」
イグーの知り合いですか?…………あっそうか!ウッカリ忘れてたけど、イグーは竜だもんね?妖精さんの知り合いとか居るよね?
竜と妖精さんの友情とかって、スッゴイファンタジーだよね。
それにしても、妖精さんって結構ギブ&テイクなんだな。助けるのも無料じゃ無いって事みたいだしね?
「ううーん……何が欲しいにょ?欲しいにょ上げたら、助けてくれぇる?」
妖精さんはどす黒い微笑みを浮かべて、こう言った。
「オイラが今まで食べた事が無い美味しい食べ物が食べたいな~!」
ふんぞり返りながら、言ってくる。まるで、無理だろ?ザマァ~。みたいな笑みである。
だが、残念だったな…僕に秘策有りだ。妖精さんに微笑み返すと、僕は顎をしゃくった。
僕が顎をしゃくった先には、先ほど僕から出てきた(?)御札とホワイトラバーが、落ちている。
「そこに落ちてりゅ箱の中身を、食べてみちぇ」
「これか~?文字みたいなのが、書いてあるけど読めないな?どこの国の文字だ?」
「日本でしゅけど?」
日本語は読めないんだ…。あれっ?そう言えば僕もこの世界の文字が、読めなかったな……。お約束って事かな?
「日本~?聞いたことが無いな…。ま、いっか~?確かにコレは食べた事が無いよ!」
そう言うと、箱から個包装されているホワイトラバーを取りだし、袋を破いてかぶりついた。
モショモショと妖精さんが、お菓子を食べている咀嚼音が聞こえて来る。
しばらく、モショモショという音と、ホワイトラバーの袋を破く音しか聞こえなくなる。
凄い勢いでホワイトラバーを完食した妖精さんは、目を輝かせながら、僕に近づいて来る。
「約束通り、オイラの食べた事が無い美味しい食べ物を食べさせてくれて、有り難う!じゃあ、今度はオイラの番だね~?」
そう言うと妖精さんは、何やら呟いたその直後僕は一瞬にして、イグーの腕から解放されていた。
「ええっ?今の何なにょ?しゅごいしゅごい~!」
感動で興奮する僕に、妖精さんがドヤ顔で教えてくれる。
「オイラ達風の妖精は、少しの距離なら転移魔法を使えるんだよ~。凄いでしょ?風の精霊王様に至っては長距離転移も可能なんだよ~。僕は……これ位が限界だけどね~」
「しゅごい!しゅごいよ!!有り難うにゃにょ~助かったにょ~。妖精しゃんは僕の命の恩人なにょ!」
僕が何度もお礼を言うと、流石に照れたのか、顔を赤くして目線をキョロキョロさせている。
すると何かに気が付いた様子で、僕に向かって手招きをする。
どうしたのかと思い、近づくと僕の頬っぺたに軽くキスをしてきた。驚いていると、妖精さんが
「お前の事が気に入ったよ~?オイラは風の妖精で名前はパック!オイラの加護を与えたから、暇なときになら、助けてやるよ~!じゃあなっ!!」
ヤリ逃げかいっ!それにしても素早く逃げたな……。一体何なんだ?と思いましたが、理由が直ぐに分かりました。
僕の背後から、不機嫌な声が掛けられたからだ。
僕が腕の中から消えた事で、イグーが慌てて起きたら目の前で妖精さんにキスをされている僕を見て不機嫌になった……みたいです。そんなに妖精さんにキスをされたかったんでしょうか?
僕が謝ると、何故かイグーも僕の頬っぺたにキスをしてきます。消毒と、挨拶だと言ってましたが何の事ですかね?
男にキスをされたのに、特に嫌じゃ無かったのに対して僕は、美形って得だよな~何しても許される感があるよねぇ………などど、惚けた事を考えていたのであった。
寝不足で内容が纏まらず……現在に至る訳てすが、正気に返ったら修正すると思います。
妖精とホワイトラバーを出したかった……ただ、それだけだったのに……。
残念な話になりました。Orz




