ちょっと目を離した隙に…これぞガキ!
イグー視点です…予想以上に長くなり過ぎたので、読み飛ばして頂いても構いません。新キャラ?の長老が出てます…けどね。
やっと郷に着いたと思ったら、ビゼーのアホに絡まれた。あいつは毎回人の話を最後まで聞かない上に、自分に都合の良いように解釈する面倒な性格をしている。
シャワを巻き込まない様に俺から下ろし、後ろに下がって居るように合図を送る。
シャワと郷を見て回るつもりだったのに、予定が狂わされた。この怒りはビゼーを倒して解消するしか無い。シャワには悪いが直ぐに終わらせるから、待って居ろ。
ビゼーとお互いを殴り合いつつ、色々頭の中で考えてしまう。
シャワは不思議なガキだ。記憶も無く、隣の大陸メルネアがエルフの暮らす故郷がある大陸だというのに、何故かこのイオス大陸に居る。
メルネアからイオスへ渡る手段は、限り無く少ない。
俺達の様に空を飛べる種族に乗せてもらうか、魔法使いの上級魔法テレポート位しか安全に渡る術は無い。海路…船もあるが、潮流の関係で波が高く潮の流れも複雑である為、渡れないことは無いが安全には渡れない。
エルフは世界樹のある森から出ることはほぼ無く、変わり者がたまに他の大陸で冒険者になったりする位だ。
本当にシャワはどうやってこのイオス大陸に来たんだ?考えれば考える程に分からなくなる。
まあ…シャワの事は一旦置いておいて、まずはビゼーを黙らす事に集中するか……さっきよりも更に奴の攻撃が、激しくなって来たからな。
長老はレビーが連れて来るから、その時にでも相談すればいいか。
本気でビゼーと殴りあっていると、郷の方からレビーと長老がやって来るのが見えた。ビゼーを黙らす程の時間は無いな……残念だ。
「お~い兄さん…長老様を連れて来たよ~」
レビーがニコニコ笑いながらビゼーに手を振っている。
「おおっ!良くやったなレビー……おいっ!ジジイ!一大事だっ!イグニスがエルフのガキをどっかから拐って来やがったんだ!!」
長老は驚いて俺の方を勢い良く振り返って来る………が、そんなに勢い良く振り向くと………。
グキッ………。
案の定、長老の首から嫌な音がした。やっぱりな……。最近の郷では、首を捻るのでも流行っているのだろうか?
数分間長老の回復に時間がかかり、すっかり先程の勢いが無くなった話し合いが始まる。
「……して、イグニスよ…お主はビゼーのいう通り、エルフの子供を拐ってきたのかのう?」
首を痛そうに擦りながら、長老が質問して来たのでこれまでの事を話して聴かせる。するとビゼーの奴が、
「おいイグニスッ!何で俺様が聞いた時に説明しねぇーんだよ?」
なんて言って来る。説明して無いんじゃない……説明しようとしたら、いきなりビゼーが勝手に勘違いして、暴走したのだ……。
俺のげんなりした顔を見て、ビゼー以外の全員が瞬時に理解した……またビゼーの暴走であり、勘違いが招いた騒動だ…と。
「い…いつもいつも…ご免なさい…イグニス…長老様…」
レビーが申し訳無さそうに謝って来る。こいつはビゼーと本当に血が繋がっているのか、疑わしくなる程に良い奴だ。兄の不始末や暴走をいつも謝っている……。俺だったらこんな面倒な奴と血が繋がっていたら、縁を切りたいが……。レビーが決める事だから、本人には言わないがな。
「それにのぅ…エルフの子供なぞ、何処にも居らぬ様じゃし……いったいどういうことなんじゃ?」
はっ?長老よ……遂にボケたのだろうか?心配になりつつも、シャワを下ろした辺りを振り返ってみると………ん?確かに……ここに居ろと合図しておいたのだが?流石に拐われたら、俺やビゼーが気づく筈だから…シャワの意思で動いたのか?分からない。心配だ。俺は動揺した……。
「探して来る!郷の中はレビーと長老で…俺はこの周辺を探して………」
その時、郷の中からシャワの泣き声が聞こえてきた。頭が瞬時に冷えた。シャワが泣いている……どうか間に合ってくれっ!
俺は急いで泣き声のする方へ走り出した。
そこで見たのは泣き叫ぶシャワと、その泣くシャワを囲む二人組だった。
俺は直ぐにシャワを助ける為に、二人組に向かって蹴りをお見舞いしてやった。勢い良くぶっ飛んで行ったのを見ながら、
「お前ら……シャワを泣かせやがって。楽に死ねると思うなよ?」
と、凄んでしまっていた。
シャワッ!大丈夫なのか?怪我は無いか?何故泣いていたんだ?
いるいろな事を考えて居ると、シャワが俺の足にしがみついて来た。そんなに怖かったのか……と、思っていると、
「イグー!駄目なにょ!いきなり何するにょ!」
と言われた……。何って?シャワを泣かせた奴らに蹴りを入れただけだが?
「泣かされてたんだろ?何で止める?」
助けたのに何故だ?何に対して怒って居るんだ?さっぱり分からない。
「泣かされてにゃい!僕が勝手に泣いただけにゃの!」
そうだったのか……俺の勘違いか?ビゼーの事を暴走勘違いと呼べなくなりそうだな…。あの二人組
は大丈夫か?と、思っていると吹っ飛ばした方角からカルネラが、凄いスピードで走ってくる。
ああ、カルネラだったのか。じゃあもう一人は双子の弟のフレイルだな。
「ちょっと、痛いわねっ!誰なのよっ!ボコボコにしてやるんだから!」
怪我も無さそうで、良いことだ。元気に拳を振っているが、俺を見た瞬間逃げようとした。
逃がすかよっ?
カルネラの頭を鷲掴みにしたままにして居ると、ビゼーがシャシャリ出てきた。こいつ…何時から居やがった?
「まぁた、お前ら双子か……何か騒ぎがあるといつもお前らだな?」
などと言っている。双子もビゼーには一番言われたく無いよな……。
「ちょっとビゼー…笑ってないで、イグニスをどうにかしてよ~」
と、情けない顔でビゼーに頼んでいる。
「ん~無理じゃねえの?イグニスはそのガキの事になるといつもの無関心さが、無くなるしな~ギャハハハハ……」
ビゼーの奴…余計な事を言うんじゃない。やはり黙らせるか?永久に……。俺から不穏な気配が上がるのを確認したからなのか、シャワが
「イグー…カルネラしゃんを、離して下しゃい」
シャワが頼むのでカルネラの頭を離してやる。カルネラとビゼーが騒ぎ出すが、無視する。
フレイルがカルネラの後方の樹の陰に隠れて、俺をうかがっている。
カルネラは、俺に突っ掛かって来ては自爆していたが、フレイルは俺が怖い様で話しかけても来ない。
何処の兄弟も上の傍若無人さに、下が振り回される運命なんだな……などと考えて、フレイルの顔が強張っている。原因はさっきの蹴りだと判断した俺は、
「フレイル…そう固くなるな…もう怒って無い」
と言ってみる。すると先程よりは表情を緩めて、フレイルは話しかけ来た。
「ほ…本当に?良かった…」
その時シャワが近づいて来て、ニコニコ笑っていたのだが、フト…思い出した。シャワは何故郷の中に居るのだろうか?気になったので、本人に聞いてみる事にする。
「で、シャワ…何故郷の中に居る?近くに居なかったから、心配した」
シャワに伝えて答えを待っていると、うんうんと悩みながら考えるシャワの声が聞こえる…。しばらくすると、考えが纏まったのかシャワがどうだっ!という感じに俺に指を突きつけながら、
「心配かけちゃのは、ごめんにゃさい…でもイグーも直ぐ喧嘩しゅるの良くないかりゃねっ!」
何…ん?まあシャワのいう通り、確かに俺は喧嘩っぱやいな…。そして、シャワよ…何故そんなにふんぞり返る?ポッコリ出た腹が強調されて、面白いな……。
「クククッ…ハハハ…シャワには、本当に笑わせられるな?確かに直ぐに喧嘩するな」
腹が気になり、つい突っついてしまう…癖になりそうだな……。
「キャハハハハッ…や~め~りぇ~」
シャワがケタケタと楽しそうに笑って居るのを見ていると、とても面白い。俺も楽しくなる。俺が声を出して笑って居るのが珍しいのか、ビゼー達が声を揃えて驚いている声が聞こえる。
「「「あのイグニスが声を出して笑ってる…初めて見た」」」
そんなに驚くことなのか?人を何だと思ってんだ…こいつら。
余りに長いので私のモチベーションが、駄々下がりでした。誤字脱字や、おかしな場所はスルーして下さいませ…。(基本文法など、いつもおかしいですが)
Orz




