駄エルフさんと女子会7
「そろそろ出ようか。のぼせて倒れてもつまらないし」
この風呂はスイッチ一つで色々とモードが変わる。
だが、駄エルフが一人で入るときにはほぼ使わない。
駄エルフはちょっと高めのお湯にのんびり入るのが好きなのだ。
今日は入浴初体験の二人がいたので久しぶりにその機能を使った。
泡風呂モードでは泡にくすぐられ悶えた。
電機風呂モードではピリピリ来る刺激に悶えた。
薬効風呂モードでは染み込んでくる薬効成分に悶えた。
他にもジェット水流風呂や炭酸風呂等に悶えた。
どうも初体験にはどれも刺激が強かった模様。
驚きや体験したことのない刺激に癒されるどころか疲れていた。
ただ、慣れてきてからは気持ちよくなってきたようだ。
鼠耳アシは泡風呂を。
Sなアシは炭酸風呂が気に入っていた。
何だかんだで一時間以上湯船に浸かっている。
温度を若干下げたがこのままだと長湯でのぼせてしまうだろう。
汗をかいて脱水状態にもなっているだろうし。
ざばぁ、と湯船から出る。
続く様に二人も出る。
駄エルフは当然のように何も隠さない。
二人も隠さない。
お互いに見慣れて恥ずかしさも殆ど感じないようになっていた。
隅々まで見られて、もういいやって状態でもあったが。
脱衣室で身体に付いた湯をタオルで拭き取る。
今日はバスローブを羽織ることにした。
アシ二人にも出す。
「バスローブって着るの初めて。物語だけのものって思ってた」
「……この着心地、気持ちいいです」
身体の火照りが収まるまでは下着も着けず、これ一枚ですごすのだ。
普段だと着ないが今日は女だけ。
既に裸を見合った仲だ。
多少色んなところが見えてしまったところで今更だ。
頼りない姿で居間に戻る。
「……ちょとアブノーマル」
鼠耳アシは部屋で下着を身に付けていない事に違和感を感じていた。
風呂以外でパンツすら履いていないのはなかなかない。
「前を閉じなかったらかなり変態だね」
Sなアシが露出ごっこ。
裸コートの真似だ。
「汗をこの服自体に吸わせるからね。中は裸じゃないと。これは少年がいたら着れないよ」
着心地もいいし、楽なので好きなのだ。
だからと言って、さすがに少年の前で着る気にはなれない。
「あれ、涼しくなったよね、この部屋」
部屋の気温が若干下がる。
それと微弱な風。
「体温が上がってるから部屋が反応したんだよ」
この家は過ごしやすいように気温を管理してている。
それは気温を一定にするだけでない。
過ごす人に合わせるのだ。
今回の場合、風呂を利用し、体温が上がったことを把握。
その体調に合った室温と湿度に変えたのだ。
駄エルフの説明を聞き、もう驚くのは止めた。
気にするのも無駄だ。
この家は色々とデタラメなのだ。
理解したくないけれど。
居間に置いてあるドリンク専用の冷蔵庫からジュースを出す。
三人分のグラスを用意して氷を入れ注ぐ。
それをオードリーがやった。
オードリーは気遣いのできるクッションなのだ。
駄エルフは動かない。
「どうぞ。お風呂で汗をかいただろうから水分補給だよ」
レモンの香りがするちょっとだけ甘いジュース。
さっぱりしていて風呂上がりによく飲む。
気づきにくいが風呂はかなりの汗を出す。
ジュースは身体全体に染み渡った感じがした。
「あー潤うー。何か色々と贅沢な気分です」
実際、どれだけ金を払ったところでこの空間ほどくつろげないだろう。
快適さだけをとことん追求したのは伊達じゃない。
「……あのお風呂も色々あって気持ちよかった」
「気に入ってくれて何より。でも、温泉モードとか酒湯モードとかまだ使ってないのもあるから、それは次の機会だね」
「……次の機会……」
「次の機会かあ」
「あれ、お風呂そんなに気に入ってなかった?」
「ううん、そう言う訳じゃなくって……ねえ」
「……うん、逆だよ。次の機会が楽しみだなあって」
二人はかなり気に入った模様。
お風呂も、お風呂でのコミュニケーションが好きな駄エルフの布教活動は成功だ。
呪いがあって人前にあまり出たくない駄エルフ。
だが、それは人と会うのが嫌いと言う訳じゃない。
むしろ人との会話や、やり取りは好きな方だ。
風呂で気が緩んだ状態だと特に。
「何時でも入りに来ていいからね。このお風呂は何時でも入れるようになってるから」
「……必ずまた入りに来ます」
「ご飯食べたときはお風呂入ってから帰ろー」
「……ずるいなあ。でも家のことがあるから僕は頻繁には無理だよ」
女だけの夜。
まだ寝るには早かった。
体調が悪いので昨日と今日短いです。
明日は未定。