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駄エルフさんと襲撃者

「駄エルフさん、起きてください」


「んー、あと五分ー」


「そう言う場合じゃないんですよ」


「オードリー」


「ちょっ、まっ」


駄エルフがオードリーを手に入れたため、最近の寝起きの攻防は少年の方が分が悪かった。

低周波音も電マも使う前に潰される有り様。

何か新しい手段を考えないと、とオードリーの下で少年は考える。


それから30分後、おやつにぜんざいを作ると約束して駄エルフは起きた。

何時も通りのダルダルのシャツ姿。

胸元には動物の絵があったはずだが、下乳部分にあるので何の絵か分からない。

最近はブラをしているので体の凹凸のメリハリが凄い。

どうしても重力に負けていた部分がブラで持ち上がっているのだ。

だらしなかった駄エルフの乳がだらしなくなくなったのだ。

いや、だらしないのもあれはあれで良いものですが。

突起物も自己主張してましたし。


「何か音がするね。ちょっと揺れてる」


外から聞こえるのは『どーん』と言う爆発音。


「だから起きてほしかったのですが」


誰かがこの家を攻撃しているのです、と少年。


ここはアントリア大陸中央にある大国フロントガーデン。

その外れの新興住宅地の、そのまた外れの一軒家。


攻撃されているのは玄関側。

居間の窓は反対側の庭向きなので攻撃は見えない。

幸いこの家は町からは外れにあるし、近所迷惑にはならないだろう。

あれは違う意味のモンスターが出てきて厄介なのだ。

普通の魔物(モンスター)なら殴って倒せば解決するし。


「どうしましょうか。そのうち誰かが兵に連絡してくれると思いますが」


外れとは言え、人通りはあるし兵の巡回地域に含まれている。

いずれ憲兵だか民兵がやって来るだろう。


「この家なら大丈夫だよ。ベヒモスが踏んでも壊れないから」


ベヒモスとは全長1キロぐらいある象だ。

大陸南にある大草原に生息する。

時折人里を踏み潰していくことがある。

ベヒモスに悪気はない。

ただ歩いたら人里があったのだ。

人からすれば災害扱いだが。


「本当に規格外ですね、この家は」


「迷宮と同じ作り方しているからね。ちょっと異界化してるんだ」


今の世の中、迷宮を作る術は失われている。

昔は迷宮制作者(ダンジョンメイカー)迷宮創造主(ダンジョンマスター)と呼ばれる者がいたとされている。

だが殆ど資料も残っていないので半ば伝説化している。

迷宮は魔力の高い土地で自然発生したりもするので、その迷宮を支配した者が迷宮創造主(ダンジョンマスター)と名乗ったという説もあるのだ。


「あ、私はできないからね」


多分昔話で出てくる昔の仲間なんだろう。

でもすごい人だらけじゃないか?

古代秘宝(アンティーク)を作れる人もいたみたいだし。

この駄エルフさんも何だかんだで伝説の人だ。


色々と聞いてみたい事が少年にはある。

だが昔の仲間の事は、駄エルフが話してくれるまで待つのがルールだ。

別に誰かが決めたわけでもないが、少年はそう考えている。


「どうしますか? 大丈夫と言っても音と揺れは迷惑ですし、何かさっきから激しくなってませんか」


単発だった音が、今じゃ続けて鳴っている。

ドーン、ドーンがドドドドド、だ。


「一応見てきましょうか。何が襲撃してきたのか知りたいですし」


「いいよ、いいよ。下手に巻き込まれて怪我してもつまらないよ?」


「既に襲撃されている時点で巻き込まれるも何もないかと」


「それにね、魔力を貯めるのに良い機会だから」


現代のインフラとして魔力の通り道が作られる。

かつては気脈、龍脈と呼ばれていたものを人工的に作るのだ。

人々はその魔力を使い生活している。

駄エルフの家は古いので今のインフラとは規格が違う。

だが、他の家同様に使うことが出来る。

外部からの魔力を吸収する機能があるからだ。

だからインフラの魔力を使えるし、龍脈から、大気から、星からも魔力を吸収出来る。

また、今の様に攻撃された魔力も。


異界化して壊れない外壁。

インフラ設備無しで魔力を吸収、使用可能。

後は飲食だが魔法や魔術でどうにかなるものだ。

これって何時までもこの家で籠城できるんじゃ?

この家だけで世界が完結していた。

少年は聞かなければ良かったことが、また増えた。

駄エルフ関連は色々とオーバースペック過ぎる。


「とりあえず、ぜんざい食べよう」


「おやつじゃなかったのですか?」


「ぜんざいって、小豆で作ったお粥みたいだからもうそれでご飯はいいかなって」


確かに砂糖のかわりに塩とブイヨンを入れれば小豆のスープだ。

一部の地域じゃ立派な主食だったはず。

まあいいか、とキッチンへ。

襲撃も気になるが、駄エルフの方が重要だ。


少年の料理は『時間がかかるものは時間があるときにまとめて作る』だ。

だからソースなども色んな種類をストックしてある。

本来は塩漬け、砂糖漬け、酢漬けの様に長期保存向けなのを作る。

だが、この家の食料保管庫はそれ以外も可能とした。

時間の流れが遅いのだ。

一部の無限袋でそう言ったものはわずかだがある。

中にはほぼ時間の経過がないものも。

さすがにこの保管庫はそこまでではない。

だが、それでも異常なほどの長期保存を可能とした。

そのうち一つが小豆を煮たもの……アンコだ。

『ワガシ』というお菓子を作るのに、このアンコが必要になることが多い。

駄エルフも羊羮や饅頭と言ったアンコを使った物が好きなのだ。

だから結構な量を暇なときに煮てストックしている。

そうでもなきゃ作ってと言われても困る。

ぜんざいは小豆を煮るところから始めると一時間以上かかるのだ。


ささっとぜんざいは完成する。

焼いた餅もキチンと入っている。


「いただきます」


何時もの儀式の後、ぜんざいを一口。

豆の味だ。

豆の味が感じられた後に甘味。

でも甘過ぎない。

少しの塩で際立たせている。


「少年、分かってる」


「駄エルフさんの好みは把握済みですよ」


甘いものが大好きな駄エルフ。

だが、ぜんざいなど豆を使ったものは豆の味がはっきりした方が好きなのだ。

エルフの国では豆が主食だった。

今でこそ肉でもなんでも食べるが、菜食主義だった事もある。

旅先では野菜しか食べないとか言ってられなかったのだ。

だからと言って、豆が嫌いになったわけでもなく。

むしろ今でも好きだし、甘いものも好き。

だから『ワガシ』に巡りあった時には愕然とした。

好きなもの×好きなものなんて最強じゃないかと。


豆の味を堪能した後は餅。

焼かれた餅は表面がバリッとしていて歯ごたえがいい。

そして少し焦がしてあるのが香ばしい。

それが甘さと相性が抜群だ。

餅を噛みきる。

だが完全に噛みきれず伸びる。

これが餅の楽しみ。

何とか噛みきって伸びたぶんはまた器に。

表面積が大きくなり、小豆が絡む。

伸びた部分は焼けた部分とは食感も味も違って、これまた美味しい。


つまりは何処を取っても美味しいのだ。

駄エルフは無言になって食べ続ける。


「ごちそうさまでした」


食べ終わった後の儀式。

駄エルフはおかわりもした。

餅も三個食べていた。


「あれ、今気付いたけど、音が……」


「そう言えば振動も」


気が付けば音も振動も止まっていた。


「見てきます」


「私も行く。オードリー」


二人と一匹で玄関へ。


「注意しなきゃダメだよ。諦めたのなら良いけど、こっちの出方を待っているのかも知れないからね」


「はい、油断しないで……覗きますよ」


玄関の扉を少し開ける。


辺りは襲撃の結果なのだろう。

地面がボコボコだ。

生えてた草などもない。

戦場でもここまでならないのでは。

そう思えるほど荒れ果てていた。


「それでもこの家は大丈夫なんですね」


ぜんざいを食べてて襲撃を忘れるほど、影響がなかったのだ。


「少年、あそこに誰かいる」


駄エルフが覗いている少年の上に乗っかる。

ふにゅんという感触が頭上に。


「ど、何処ですか?」


左右に首を降り、駄エルフが言う者を探す。

むろん、すぐに見つけていた。

だが、駄エルフの胸を楽しむため見付からないフリをする。

目の前の襲撃者よりも、頭上のおっぱいなのだ。

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