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異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第5章 新たな希望と白の迷宮

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第4話 海都シーア①

季節外れですが



青い空、白い雲、照りつける太陽。

そして白い砂浜と蒼い海。


「海だー!」

「フリス、待ちなさい」

「急に入るな。というか、他にも人がいるのを忘れるな」


他にも観光客がいるがほぼ無視し、フリスは騒ぐ。それを注意するソラとミリアだが、興奮を抑えられていなかった。


「それにしても……これって大丈夫なのか?」

「どういうこと?」

「魔獣が出たら危険だろ?」

「そういうことね。大丈夫よ、魔獣がほとんど出ないからこそ、海水浴場になってるんだもの」

「なるほど、そういう場所もあるのか」


海は水生魔獣の住処だが、全てが占拠されているわけでは無い。環境や縄張りなどの影響で、人が活動しても問題無い場所は結構ある。ここシーアもその1つで、夏の観光地としては1、2を誇る町だ。


「それで、どうよ?」

「似合う?」

「ああ。綺麗だぞ、2人とも」


ベフィアにおける水着は、水棲魔獣の皮を専用の海藻類で着色した物が主らしい。撥水性があり色落ちしない、というかなりの発達を見せていた。そのせいで、軒並み高いが。

そんな中で2人は、抜群のセンスを見せていた。


「どう言ったら良いか、なんて分からないが……本当、似合ってる」

「良いわよ。褒めてもらえるだけで嬉しいもの」

「そうか。それで、どっちのセンスだ?」

「2人ともよ」

「わたしがミリちゃんのを選んだんだよ」


ミリアの水色をしたビキニは、スレンダーな彼女にとても良く似合っている。フリスは黒色のワンピースで、ある程度大人らしい物を選んだおかげか、逆に可愛らしく見えていた。


「普段着もセンスが良いし、その感じか?」

「そうだね。水着の選び方は違うけど、前に来たことあるし」

「そういえばそんなこと言ってたな。好きなのか?」

「うん」

「ええ、海は好きよ。前も結構楽しんだもの」

「それであんなに長くなったのか?」

「うん……まあ、そうだよ」

「結果として、こんなに綺麗な2人を見れたから良いけどな」

「ちょっとソラ君!」

「本当のことを言っただけだぞ?」


この町に着いた時、宿探しを素早く終わらせた2人は、早速水着を選びに行っていた……しかも、ソラ抜きで。ソラは自分のを買った後も、長い間待たされてしまい、結局その日は砂浜を見るだけとなったのだ。驚かせたかったのだろうが、張り切りすぎだろう。なお、買ったのは1着では無いらしい。

なお、ソラは普通のトランクスだ。決してブーメランでは無い。


「ねえソラ君!泳ごうよ!」

「ああちょっと待て。ミリア、行くよな?」

「ええ。勿論よ」


……爆発しろ。日本なら、そんな怨念を言われても仕方がない光景を広げていた。

泳ぐといっても遠泳はせず、他にも人がいるため大騒ぎはできないが、遊ぶだけなら問題無い。


「久しぶりだけど、本当に気持ち良いわね」

「楽しいよね!」

「俺も泳ぐのは久しぶりだな」


ソラ達は本当に楽しそうに泳いでいた。そしてしばし泳いだ後、3人は砂浜へ戻る。


「楽しかった〜」

「何か食うか?」

「うん、欲しい」

「ええ、お願いね」

「分かった。ちょっと待ってろ」


ソラは海から上がり、海の家に似た店で焼きそばを買ったのだか……


「なあ、俺たちと一緒に行かないか?」

「人を待ってるのよ。当たるなら他にしたら?」

「邪魔だよ」

「まあまあ、そう言わずに」


ミリアとフリスにナンパ師が来ていた。そしてソラは焼きそばを近くにいた人に預け、2人のもとへ歩いていく。

退くのならそのまま放置、退かなければ……殺しはしないが、手加減もしない。


「おい」

「あ?何だお前は」

「人の嫁をナンパして、大丈夫だと思ってるのか?」

「何だこのガあぁぁー!!」


ナンパ師の1人が殴りかかろうとしてきた瞬間、ソラは一本背負いの真似事で投げ飛ばし、空中散歩と飛び込みを同時経験させた。

そして呆然と見送る相方。


「あ、兄貴ー!」

「お前も行くか?」

「お前!兄貴にいぃぃー!!」


これまた豪快に飛び、盛大に水飛沫を上げる。周囲の人は、呆然とするか笑うかの2択だった。……やりたいと騒ぐ子どもを抑えるのに、苦労している親もいるが。


「お、飛んだな」

「飛んだね〜」

「飛んだわね……じゃないわよ!こんなところで何やってるの⁉︎」

「大丈夫だ。風魔法で死なない程度には遅くした。痛いだろうがな」

「そう……まあ、こっちに泳いできてるし、たぶん大丈夫ね」

「じゃあ……釘でも刺しておくか」


さらにソラは砂浜へ泳いでくるナンパ師二人の先へ歩いていく。トドメを刺すために。


「ハァハァ……やっと着いた」

「兄貴……全身痛いです」

「おい」

「「ヒィ⁉︎」」

「何言いたいか分かってるな?」

「はい!すいませんでした!」

「もうしません!」

「なら良し」


と、ソラからは解放されたが……


「「「「「(ジー)」」」」」


周囲にいる全員から白い目でみられ、ナンパ師達は逃げ出す。この2人組はかなりの迷惑をかけていたそうで、予想以上にソラを褒める人が多い。

そのためソラは人に囲まれてしまい、ミリアとフリスに合流できたのは少し後だった。


「すまないな。ちょっと我慢できなかった」

「大丈夫だよ。ねえ、食べ物は?」

「ああ、人に預けた。取ってくる」

「一緒に行くわよ。同じようなのが来ないとも限らないしね」


たいぶ時間が経ってしまったため焼きそばは冷めてしまったが、こういう場で食べるものだから気にしない。むしろ先ほどの騒動が話の種になっていた。


「それにしても……左手の薬指に指輪をつけているのにナンパが来るなんて、思って無かったわ」

「それだけ2人が美人だってことだろ」

「ソラ君ったら〜そんなこと言っても何も出ないよ?」

「事実じゃないか。少なくとも俺はそう思ってるぞ?」

「上手くなったものね」

「ミリアだって、慣れたな」

「ミリア面白かったのにな〜」

「フリスは変わらないわね」

「本当、そのままだよな」


仲のいい3人。そうして水着のまま話しながら砂浜の近くの通りを歩いていると、フリスが急に立ち止まった。


「ねえ、ミリちゃん。あれ」

「あれ?へえ、面白そうね」

「どうした?って……おいおい……」


フリスが見つけたのは、特徴的な水着の店だ。なお、ソラが言い淀んだのは別に扇情的だからというわけではなくーーコスプレなのだ。そういえばビーチにもこんな水着を着ていた人がいたな、とソラは現実逃避的に思い出す。


「入ってみる?」

「ええ、行きましょ」

「じゃあ俺は外で「待って」……」

「ソラは試着した後の私達を評価しなさい」

「どんな風に言ってくれるか、楽しみにしてるからね」


このテンションと昨日の例を考えれば、おのずと結果は予想できるからだ。


「あ、こんなのもあるんだ」

「こういうのはちょっと無理ね」

「……色々あるんだな」


水着だけでなく、更に上から着るコスプレ衣装もあった。それも水着と同じ素材でできており、かなりの値段がする。ミリアとフリスなら余裕で払える金額だが。


「ソラ君はどれが良いと思う?」

「こういうのを選ぶのは苦手なんだが……とりあえず、あの辺りはやめてくれよ。似合わないだろうしな」

「ええ、私もあれは着たくないわ」

「わたしも、嫌いかな」


コスプレ衣装には、亜人がモチーフの物や騎士や冒険者系の物など、様々な種類があった。ソラは知らないが、もしかしたら有名な劇の登場人物の物もあるかもしれない。

その中には……露出が極端に多い物もあるが、2人とも着ないと言ってソラは安心していた。


「ミリちゃん、これとかどう?」

「それだけと言うよりも、この辺り全体的に良いと思うわよ」

「ソラ君は?」

「まあ……これくらいなら、良いんじゃないか?」

「そう?じゃあ試着しましょう」

「うん!行こ行こ」

「……さっさと決めさせるか」


ウキウキの2人に、ソラの願いは届かなかったが。


「肌が見えすぎかしら?本物とは随分違うみたいだけど……こういうのも良いわね」


カウガール風のミリアだったり。ビキニに短パンといった感じの服装で、さらにカウボーイハットを被ってヒールのついたブーツを履いている。

ソラは水着姿より(1日で割と慣れた)むしろ、2人がカウボーイやカウガールを知っていることに驚いた。どうやら遊牧民の中には、そういう人達もいるらしい。流石に銃は無く、|走って牛を追い立てる《牛飼いとどう違うのか?》そうだが。


「ちょっと……変、かな?」


修道女風のフリスだったり。水着なので露出が多く、修道服としては意味がないが、物凄く可愛らしい。ソラがしばらく静止してしまうほどだ。


「普通なら、こんな格好の海賊はいないわよね」


海賊風のミリアだったり。これは基本が普通のビキニだが、他が凄い。頭の海賊帽や右胸の所には髑髏(しゃれこうべ)が描かれており、腰には海賊らしい小物を下げている。踵の低いブーツを履き、さらに片目を眼帯で隠すというこだわりっぷりだ。そして何故か、短めのマントを羽織っていた。

だがミリアは気に入ったようで、着替えつつも常に1番近くに置いている。


「これ、凄く可愛いよ」


何故かある魔法少女系のフリスだったり。今フリスは白を基調としたドレス風の物を着ているが、持ってきた物の中には黒いセーラー服風の物や紫が中心の和服風のものまである。それ以外にも無数にあるという状況で、とてもバリエーションも豊富だ。

恐らく、過去の転生者が広めたのだろう。というか、その手のオタクなのかもしれない。そしてフリスは気に入ったのか、何度も着替えてソラに見せる。


「こんなところかな?」

「そうね……他に良い物は無さそうよ」

「じゃあ、この中から選ぼっか」

「私は、そうね……この3つを買うわ」

「じゃあわたしは、これとこれと……これだね」

「……ご自由にどうぞ」


そんな物を買ってどうするんだ、とソラは言えなかった。









ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー









「楽しかったわね」

「朝からずっとっていうのは、流石に予想外だったけどな。楽しめたようでなによりだ」

「でも、わたしは遊び足りないかな?」

「なら、明日も来ましょうか」

「またか?」

「違う水着の私達、見たく無いの?」

「今日買った水着でも良いよ?」

「……分かった。好きにしろ」


夕方、1日遊び倒したソラ達は普段着に着替えて通りを歩いている。だが2人はまだまだ遊びたいようで、ソラもそんな2人に折れたーー決して色仕掛けに負けたわけではない、と自分を説得するーーため、付き合うことにした。


「ん?……なるほど、またか」

「どうしたの?」

「あれだ」

「あの人達……宿を探してるのね」

「さっき宿から出てきていたな。肩を落として、だが」

「安宿を探そうとするのは、少し無謀だよね」

「ええ、すぐに埋まっちゃうもの」

「奮発して、少し高いところを選べばあるんだがな」

「その分を節約して、遊びたいんでしょうね。きっと」

「わたし達は気にしなかったけどね」

「まあ、金があるし、収入もあるからな」

「それでも、結構高いところじゃないの。1泊銀貨1枚よ?」

「このままだと、金が貯まる一方だからな。十分な貯蓄はあるし、こういった時に一気に使うべきだろ」

「楽しめるから、わたしは良いよ〜」

「フリスも……まあ、良いけどね」


そして3人はいくつか店を回りつつ、宿で夕食を食べるために戻っていく。


「そうそうフリス、夜にもう1回買った水着を着るわよ」

「そうだね。夜も暑いだろうし、ちょうど良いかな」

「おい待て2人とも」

「せっかく買ったのよ。何度も着てみたいじゃない」

「嫌い、なんて言わないよね?」

「……反則だぞ、それ」


この後、ソラは完全に手玉に取られていたとだけ記す。女海賊と魔法少女のノリについていけなかっただけだが。







書いてて思った、爆破したい

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