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異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第4章 絶望と希望と新星と

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第17話 岩都ロクシリア①

第1章をかなり改稿しました。

内容はほとんど変わらないので、読まなかったとしても問題はありません。


「え、SSランク⁉︎」

「あー、そう騒ぐことじゃないですよね?というか、厄介ごとは嫌いなんで早く通してください」


驚く門番と少し面倒に感じているソラ。だがSSランク冒険者とは、これだけ驚かれても仕方がないレベルの存在なのだ。エリザベートでの活躍がバレていない分だけまだマシである。


「し、失礼しました!お通りください!」


そう言って頭を90度下げ、ソラ達を通す門番。ソラは門を通った時は笑顔だったが、通り抜けた後ため息を吐いた。


「……これ、この後も毎回やるのか?」

「多分そうよ」

「頑張って」

「やっぱり俺がやるのか……」

「そう、お願いね」


慣れればどうとでもなるのだろうが、最初はつらいだろう。ここまで想像できなかったソラの責任でもあるのだが。


「岩の家……面白いね」

「岩1つをくり抜いたものと、石をパズルみたいに組み合わせたものか……」

「よくこんなの考えたわね」

「大方、土魔法で加工・組み立てしたんだろうな。俺みたいに一時的に作るわけじゃなく、ある物を利用するなら必要魔力は少ない」

「そうなの?」

「と言っても、並の魔法使いだと1家建てるのに3人はいるだろうけどな」

「ちなみに、ソラなら何家建てれるのよ?」

「俺か?そうだな……ゆっくりやつても……同じ構造なら同時に10家、少なくとも500家は連続で建てれるな」

「魔力切れ?」

「いや、多分()きる」


とんでもない理由である。だがエリザベートでは1000本もの石柱を作り出した上で魔弾を連発していたとはいえ、飽きるのは仕方がないだろう。

話しつつ3人は冒険者ギルドに向かったが……


「え、SSランク⁉︎」

「ここもか……早く終わらせてください」

「は、はひ!」


ここでも同じだった。むしろ詳細が伝わっている可能性の高い、こちらの方が酷いかもしれない。


「お、お待たせいたしました!」

「早いな」

「そんなことありません……あ、あのっ!握手してもらえませんか!」

「え?良いけど……」

「ありがとうございます!」


まるでアイドルを目の前にしたかのような反応をする受付嬢。ソラはそれに律儀に答えた。というか、最初はよく分かっていなかった。

そしてそれを見つめるミリア。


「良いわね、人気者で」

「おいミリア、何だその目は」

「何でもないわよ?」

「……からかって遊ぼうって、顔に書いてあるぞ?」

「そ、そんなわけ無いわよ!」

「おいおい、待てよ」

「ミリちゃん⁉︎」


本人はジト目をしていたつもりのようだが、ソラには完全にバレていた。指摘されたミリアは顔を赤くして走っていった。それを追いかけるソラとフリス。すぐにそれは終わったが。


「ミリア?」

「大丈夫よ……この程度で嫉妬なんて、らしくないわよね」

「何言ってんだ。まったく」

「ちょっとソラ⁉︎」


ソラはミリアを止め、抱きすくめる。ミリアは真っ赤になっているが、ソラはやめなかった。フリスも笑っているだけで、助けようとは一切しない。


「お前がこういう性格だって知ってる。それに、この程度軽いじゃないか」

「……ありがと」

「俺自身、結構困ってるしな。これから慣れれば良い。フリスもすまんな」

「ううん、ミリちゃんが元気な方が良いもん」

「……ごめんなさい」

「何で謝ってるの?」


ギルドを飛び出したので噂になるかもしれないが、3人にとっては今さらである。初めから噂になっているのだが。


「ねえ、この町でどうするの?」

「そうだな……ダンジョンも無いし、楽しんだら次の町に行くか」

「そうね……他にやることも無いし、良いと思うわよ」

「何か楽しいことがあった方が面白いけどな」

「また襲撃とか?」

「それは面倒だからパス。というか、またなんか嫌だぞ」

「確かにそうね。あんなのしばらくやりたく無いわ」

「良い経験ではあると思うけど……大変だよね」

「それはまだマシだが……他の理由で、もうやりたくないな」

「そうなの?」

「強くなれるのは歓迎だけど、有名人になりたいわけじゃ無いからな。何も寄せ付けない権力をもらえるならまだしも、今ってかなり中途半端だろ?」

「そうね……」


ソラ達3人とも、エリザベートで寄り付いてきた貴族を厄介に感じていた。あれか続くのは御免なようだ。

尤も、権力を得たとして、寄ってこなくなる保証は無いのだが。


「なら、何なら良いのよ?」

「そうだな……勇者とか?」

「本気でなるつもり?」

「まさか、ものの例えだよ。でも、それくらいやらないと抑えられないかもな」

「じゃあ、何をするの?」

「魔王狩り、だ」

「え……」


その一言に驚くミリアとフリス。そしてソラは笑い出した。


「はは、まさか本気だとでも思ったのか?」

「真顔で言ったら本気にするわよ!」

「本気だと思ったんだからね?」

「最後の最後以外はやらないさ」

「……やるの?」

「やるかもな」

「……ふふ、ついて行くだけよ。私達は」


このやり取りの間、ソラ達は周囲から奇異の目を向けられていたことに気付いていなかった。会話を聞かれていないだけマシである。


「さて、この後はどうしようか……」

「そうね……めぼしい物が本当に無いわね、この町」

「他の町にもある場所ばっかだよね」

「産業としては石材と鉱石が主だしな……旅人としてはおいしくないか」

「それで、どうするの?」

「外に行くか?」

「そうね……その方が良いかもしれないわ。綺麗な景色とか見れるかもしれないしね」

「そうしよ」


思考が完全にベフィアに染まっているソラであった。









ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー









「弱いね」

「だいぶ南に来たからな。エリザベートと比べれば弱くなるさ」


ダークウルフの額を風弾で撃ち抜いたフリスの声に、同じくダークウルフを斬り捨てたソラが答えた。実際、魔獣のランクは下がっている。

ここはロクシリアから少し離れた岩の多い斜面だ。町を出たのが昼過ぎだったため、町が見えるほど近かった。


「岩ばっかりっていうのも、結構新鮮ね」

「今までが基本森の中だったからな。見慣れたら別なんだろうが」

「そう?」

「……まあ、例外はあるだろうな。見つけだぞ、向こうだ」

「本当だね。鹿が5匹だよ」

「ねえ、私達に任せてくれる?」

「ああいいぞ。周囲の警戒はやっておく」

「ありがと。フリス」

「うん」


示された方向へ向かい、岩場を乗り越えていくミリアとフリス。ソラは周囲に注意を払いつつ、2人を追っていく。


「見つけたわ。あれね」

「うん、そうだよ。どうするの?」

「いつも通り行くわよ?」

「分かった」


鹿の魔獣は草を()んでいる所へ、ミリアは大きめの岩の影に隠れて接近し、フリスは遠い場所から魔法の準備をする。

仕掛けるタイミングは同時だ。


「行って!」

「はぁ!」


フリスが雷撃で3匹を倒し、混乱した瞬間にミリアが残る2匹を斬り裂く。素早い連携は断末魔の叫びすらさせず、周囲には何も出なかった。


「打ち合わせ無しでこの連携、流石だな」

「当然でしょ?」

「ミリちゃんと2人でやってた時の方が、ソラ君と会ってからより長いもん」

「2人だけは久しぶりだと思うんだが……体が覚えてるか」

「ええ、そうね」


それに加え、2人が同い年の幼馴染というのも大きいだろう。家が家なため、他の兄妹より過ごしてきた時間が長い。ほぼ双子のようなものだった。


「次はどうするの?」

「次か……あの林の方に行くか?」

「林って言う割には、木が少ないけどね」

「そう言うな。向こうに行った方が何かありそうだろ」

「見える範囲には何もいないものね」

「ゴーレムを探すっていうのは?」

「そんな面倒なことできるか」

「やらない」

「じゃ、行くぞ」


そう言って林の方へ向かっていくソラ達。だが、林の入り口にたどり着いた3人は奇妙なものを見つけてしまった。


「……何だあれ?」

「キノコ……よね?」

「でも、大きいよ?」


100m以上先、そこに全高2.5mほどの巨大なキノコが立っている。見つけることのできた他のキノコは普通のサイズなため、違和感満載だ。


「もしかして、魔獣か?」

「もしかしなくても魔獣よ。あんなキノコ、聞いたこと無いもの」

「ちゃんと魔力探知にもあるよね?」

「まああるな。お、こっち向い、た⁉︎」

「……アレは気持ち悪いわね」

「変な見た目」


キノコの()の部分、そこの真ん中あたりに巨大な目玉があった。……かなり気持ち悪い

1つ目キノコはソラ達を敵と認識したようで、ジャンプしながら迫ってくる。


「見逃してはくれないか」

「本当ね……それで、どうするのよ?」

「魔法でやっちゃう?」

「いや、できるだけ抑え目の方が良いだろうな。他の魔獣が寄ってくるかもしれないし、近接メインだ」

「分かったわ」

「援護はするからね」


ソラとミリアは二手に分かれ、1つ目キノコへ駆け出す。

だが後3歩という所で、1つ目キノコは胞子を噴出した。それに対してソラは嫌な予感がして立ち止まったが、ミリアは突っ込んだままだ。


「こんなもので……」

「それを吸うな!」

「なん、で、え……?」

「ミリア!」


胞子の中へ突っ込んで行ったミリアが力無く倒れる。そこからのソラの行動は早かった。

風魔法で胞子を吹き飛ばすと同時に、1つ目キノコを粉々に斬り裂く。そしてすぐにミリアに駆け寄った。フリスもミリアの所へ走ってきている。


「おい!大丈夫か!」

「あ、からだ、しび……」

「やっぱりあの胞子……毒か?それなら体外に……そうだ!」

「どう、ソ……」

「苦しいかもしれんが、我慢してくれよ」

「にゃにがアアアァァァ!!」

「くっ」

「ミリちゃん⁉︎」


ソラが行使した魔法は、ミリアの体内の空気ごと胞子を排出するという荒技だ。新しく吸収されることが無くなるため、確かに有効である。だが、無理矢理空気を抜いているため、肺を引き抜かれるかのような感覚がミリアを襲っていた。ソラは肺を傷つけないよう慎重に行っているが、ミリアの絶叫を聞いて心を痛めていた。


「あ、あ、ぁ……」

「後は……肝臓の機能向上……代謝の促進か?……確かこれで良かったはず。それに傷の治癒と、痛み止めもかけておくか」


ソラは痛み止めと言っているが、それは麻酔のように便利なものでは無く、痛みを緩和する程度の効果しかない。だが痛みが少なくなったからなのか、ミリアは目を閉じた。呼吸は安定している。


「ミリちゃん、大丈夫なの?」

「荒療治だったが、たぶん大丈夫だ。それとさっきの相手、今思い出した」

「教えて」

「名前はホッピングマッシュルーム、討伐証明部位は確か目だ」

「じゃあもう無理だね。それで?」

「あいつの胞子はマヒ毒だ。余程大量に吸わない限り、命に関わったりはしない」

「……なら……安心ね」

「ミリちゃん!」

「ミリア、体は大丈夫か?」

「まだ……痺れてる……わね。……動けそうに……無いわ」

「なら、しばらく休むか。魔獣の対処は俺達に任せてくれ。それと、町に戻ったら診療所か薬屋に行かないとな」

「そうね……お願い」


あの胞子がマヒ毒で、命に別状は無いことは分かっているが、他に知っている性質は無い。この辺りによく出るのなら対処法もしっかりしているだろうし、1回医者に診せに行くべきだろう。もしくは、解毒薬を飲むか。


「それで、何で胞子の中に突撃したんだ?どう考えても怪しいだろ」

「それは……」

「前に、煙を出して逃げる魔獣がいたからだよ。その時は逃げられて、また探すのに時間がかかったから……」

「今回も同じだと思ったってことか」

「ごめんなさい……」

「無事だったから良いさ。まあ、今度からは気をつけてほしいがな。魔力探知の使い手が2人もいるんだし、逃げられる心配はほぼ無いんだから」

「分かったわ……」


ミリアを抱えながら歩くのは危険が大きい。抱えるのは当然ながらソラになるため、近接担当がいなくなってしまうのだ。完全に近接ができない訳では無いが、無駄な橋を渡る必要は無い。

ミリアをその場に寝かし、周囲を警戒しつつ様子を見た。だが空気を読んだのか、近寄ってくる存在は無い。


「こんな時だけ静かなのか」

「そう、ね……私は……迷惑を……かけずに……済んでる……から、良いけど……」

「それはそうかもしれないけど……守ってもらうのも良いかもよ?」

「うっ……それは……」

「どうした?」

「うる……さいわよ……」

「ソラ君、分かってるでしょ?」

「ああ。確かにこれは楽しいな」

「ソラ……?」


遊びすぎたためか、そろそろミリアの目が怖い。本人も守ってもらうのも良いと考えてしまっていたせいか、少し顔が赤いが。

このまま遊んでいても良いだろうが、後で面倒になるだけなため、ソラはやめた。


「まあ、守りながらの戦いが面倒なのも事実だがな。そういう意味では嬉しいか」

「そうだね」

「このまま……何も無く帰れれば……良いんだけど……」

「それは無いよね……」

「まあ、そうだろうな。さてミリア、今はどうだ?」

「まだちょっと……痺れが残ってるわ。歩いたりするのは……問題無いでしょうけど……戦うのは厳しいわね」

「なら、そろそろ戻るか。大丈夫だよな?」

「ええ……行けるわよ」


まだ呂律(ろれつ)が上手く回らないミリアを立たせ、支えながら歩いていく。近寄ってきた魔獣は2人が魔法で素早く倒し、寄せ付けない。

そうやって3人は町へ向けて進んでいったが、その途中で見つけた。


「ん?あれは……」

「ドラコイドね……結構、若いわよ」

「戦ってるみたいだね」


赤い鱗と金色の眼を持つドラコイド、ソラには分からないが恐らく少年だ。長身のドラコイドにしても背はかなり高く、背中にはソラの背丈(せたけ)並の刃渡りのある、ゲームで出てくるような大剣を手に、振るっている。

彼はたった1人でブラウンウルフの群れと戦っていた。今は特に傷も負っていないが、それも時間の問題だろう。近くの茂みには隠れているブラウンウルフがおり、それと同数のブラウンウルフが彼へ向けて進んでいた。正面にいるブラウンウルフも陽動ばかりで、大きくは踏み込んでいない。足止め要員なのだろう。


「マズイな……伏兵と増援だ」

「行くの……よね?」

「ああ。後で何か言われるかもしれんが、助けるぞ」

「うん」

「見張りくらいは……やるわ」


フリスはその場で魔法の準備をし、ソラは駆け出す。進路上にいた伏兵の数匹を斬り飛ばしたところで、少年の近くまで来た。


「助太刀するぞ」

人間(ヒューマン)の方ですか……1人でも大丈夫です」

「伏兵と増援を相手にしてもか?」

「いるんですか……お願いします」

「了解だ。増援はお前の正面から来る。伏兵は任せろ」

「はい」


少年は手に持った大剣を振るい、ブラウンウルフを薙ぎ払う。ドラコイドの高い膂力を生かして振るわれる大剣は、(やいば)の結界を作り出していた。


「へえ、なかなかやるな」


ブラウンウルフの動きを先読みし、牽制と攻撃を同時に行う。かなりの練習をしたことが(うかが)われた。

だがそれも、完璧では無い。


「でも、まだまだだ!」


少年の側面から襲いかかろうとしたブラウンウルフを蹴り飛ばし、近くにいた2匹を斬り裂いた。この少年の剣技、1対1ならかなりの強さを誇るのだろうが、1対多ではまだ隙が多い。

ソラはフリスに合図して伏兵の全てと増援の半数を減らさせると、少年に指示を出しつつ殲滅した。


「おい、大丈夫か?」

「はい、何とか……」

「丁度……通りかかって……良かったわね……」

「ミリア、大丈夫か?」

「大丈夫……よ。心配性ね……」

「それがソラ君だもん。それで、君の名前は?」

「ええと、ハウエルです」

「それで、何で1人でこんなところに来てるんだ?」

「経験を積むために冒険者になってこいと村で言われたので。町に向かう途中だったんです。それで、何ですが……」


ハウエルは何か覚悟を決めたような目でソラを見つめる。変な感情は感じていなかったが……


「自分を弟子にしてください!」


体が直角になるまで頭を下げ、ハウエルは頼み込んだ。ソラ自身、弟子を取るのは問題無いが……からかって遊ぶことにした。


「え、断る」

「ありが、って何でですか!」

「何で弟子なんか取らなきゃいけないんだよ」

「そんな!お願いします!」

「さて、戻るぞ」

「待ってください!」


このやり取りの間、ソラ達3人は終始笑いっぱなしだった。










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