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異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第4章 絶望と希望と新星と

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第10話 共和国首都エリザベート①



「見えたよ!」


馬車の1番上に立ったフリスがそう報告する。


「お、見えたか」

「うん!凄いよ!」

「へえ、そんなに凄いのね」

「王都、帝都と見てきたが、首都はそれに勝るとも劣らないらしいからな」


3国目の首都、略称も首都であるここは、その名に外れず素晴らしいらしい。とは言っても……


「お、見えたぞ」

「え?ああ、本当ね。まだ分かりづらいけど」

「フリスがオーバーアクションなのはいつも通りだろ?」

「それもそうね」

「ちょっと!」


まだ城壁しか見えていない状態であれほど叫ぶのは少し大げさだが。だが、その真っ白な城壁が素晴らしいのも確かである。


「エクロシア共和国の首都エリザベート、どんな所か楽しみだな」

「うん!」

「ええ」


ソラ達の護衛する馬車は、何事もなくエリザベートへ進んでいった。










ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー











「凄い活気だね」

「亜人も多いな」

「差別があるわけじゃ無いけど、国の仕組みの差よね」

「共和制だからってことか?」

「ええ。貴族は人間(ヒューマン)だけじゃないから、ここはトップに亜人もなれるのよ。国王と皇帝の血筋にも亜人はいるらしいけど、相当薄いそうだしね」

「今の大統領は人間(ヒューマン)らしいけどね」

「ま、そのあたりは仕方ないだろ」


白い町並みの中にはエルフやドワーフだけでなく、様々な獣人や竜人(ドラコイド)、珍しいハイエルフやダークエルフが軽く見るだけで何人もいる。ハウルやリンガンも少なかったわけではないが、エリザベートは圧倒的だ。

そんな場所なので、3人ともお上りさんのような雰囲気を隠せないでいた。


「それで、どこ行くの?」

「まだ昼飯は食べてないわよね」

「そうだな。どうするか……」

「ねえ貴方達!」


行く場所の相談をしていた時、いきなり声をかけられる。相手は紅髪紫眼の人間(ヒューマン)の少女、12〜14歳くらいだろうか。簡素だが質の良さそうなワンピースを着ていた。


「どうしたの?」

「私を案内しなさい!」

「俺達、ここに来たばかりだぞ?」

「じゃあ一緒に行きましょう!」

「強引すぎよね?」

「良いでしょ!」


強引と言うよりはお転婆と言った方がいいだろうか。最も厄介な年頃であり、ソラも断るのは苦労すると考えた。


「まあ、良いか」

「ねえ、名前は何て言うの?」

「私?リーリアよ」

「リーリアちゃんだね。わたしはフリス、よろしく」

「ええ、よろしく」


ソラが認めると、フリスはリーリアに一気に話しかけた。そしてそんな間に、ミリアはソラに話しかける。


「ねえ、ソラ。本当に良いの?」

「良いわけないだろ。案内の間に親類か誰かを探すぞ」

「誘拐と間違われない?」

「それは説明して納得してもらうしかないだろ。リーリアにもやらせる」

「それしか無いわね」


ソラとしても、誘拐犯と言われるのはゴメンである。依頼を受けた冒険者とすることで、問題無くしたいようだ。


「じゃあ、ま……露店とか、飲食関係のところに行くか。昼飯がまだだしな」

「どこが良いかな?」

「近くの大通りで良いと思うわよ?リーリアが知ってるのなら別だけど」

「残念ながら知らないわ」

「それじゃあ、近くで良いか」


今いる通りから少し歩いた先に、露店や出店が多数ある大通りがあった。

そこでサンドイッチやフランクフルトを買う。


「美味しいわね」

「うん」

「どの町にも特色があって良いな」

「こういうのは初めて食べたけど……良いものね」


ベフィアは地球料理の縮図なのか、町によって様々な味付けがある。ここはヨーロッパ系で、簡単に摘める物が多かった。


(この反応……やっぱり良いところのお嬢様か……また厄介ごとだな。商人か貴族か……)


露店で食べたことがないなど庶民とは言えないだろう。ソラとしても、厄介ごとが自分から飛び込んで来た感じがして嫌だった。だが、今さら放り出すわけにもいかない。


「さて、この後はどこに行く?」

「そうね……どうしましょうか?」

「リーリアちゃんはどこか良い場所知らないの?」

「知らないわね……そんなに出ないもの」

「……まあ良いか。適当に歩いて探せば良い」

「そうね。あ、そうだフリス……」

「え?……うん、面白そうだね」

「……ねえ、ソラ?なんだか嫌な感じがするんだけど?」

「諦めろ。第一、迷惑をかけているのはお前だろ」

「レディにお前は酷くない?」

「背伸びしたいざかりの子どもにはちょうど良いだろ?」

「良くない!」


2人は楽しそうだが、1人は楽しそうではない。そしてもう1人は傍観する。そんな4人組になっていた。


「じゃあリーリアちゃん、行こっか」

「え?ちょっと、どこに?」

「服屋よ。しばらくオモチャになってもらうからね?」

「ソラ!助けて!」

「俺は最初からミリアとフリスの仲間だぞ?楽しませてもらおうか」

「そんなぁ……」


ミリアとフリスの悪い顔に、リーリアは気後れするが、ソラは手助けしない……それどころか逃がさない。

そしてリーリアはそのまま服屋の中へ連れ去られた。これだけ見ると完全に誘拐犯である。


「じゃあ、次はこれね」

「これも綺麗……着てくるわ!」

「ねえソラ君、さっきのはどうだった?」

「似合ってたぞ。やっぱり、選ぶのが上手いな」

「やった」


嫌がっていたリーリアだが、意外とノリノリだ。だが、この後の地獄を知らなかった。


「これだよ」

「ええ」


普通に頼まれた物を着ている。着終わった後も、ミリアとフリスに指定されたポーズを取るような余裕もあった。


「次はこれよ」

「分かったわ」


頼まれても嫌な顔1つしない。だが……


「はい、着てね」

「また?」


数が多すぎて嫌になり、


「じゃあ次よ」

「はあ……」


着ること事態は諦めた。


「はい、次」

「えっと……」


だが困惑は収まらず、


「次はこれね」

「はい……」


ついに反応が鈍くなり、


「これだね」

「はい……」


目の光が無くなり、


「じゃあこれよ」

「はい……」


完全な着せ替え人形と化した。ポーズも言われるままに取るだけで、人間としての反応が無い。


「次はこれだよ!」

「はい……」

「……反応が無くなったわね」

「ずっとやってるからな。嫌になってるんじゃないか?」

「悪いことしちゃったかしら?」

「いい薬だろ。いきなり案内させたんだからな」

「それもそうね。じゃあ、次の服を探してくるわ」

「ああ」


ソラも放置する。ソラもこの着せ替えを楽しんでいるので、リーリアのことは完全に無視する。

数十着着せてようやく2人は満足したのか、リーリアは解放された。


「……酷い目にあったわ……」

「リーリアだって楽しんでたじゃないか」

「最初だけよ!」


リーリアには相当(こた)えたようだ。楽しんでいたとはいえ、限度もある。


「楽しかったね」

「ええ。面白い反応をしてくれるもの」

「そりゃ良かった」

「良くないわよ!」


が、3人ともそんはことは気にしていない。リーリアに迷惑をかけられたのが先だからお互い様だと考えていた。


「リーリアがこんな風だから、次は落ち着いたところにするか」

「こんな風って何よ!」

「そうねえ……確か植物園って場所があったわよね?」

「うん。地図の……ここだね」

「結構近いな。じゃあ、行くか」


地図で見つけた場所へ歩いていくと、2人は息を飲んだ。


「へえ」

「うわぁ……」

「凄いわね……」

「どう?ここはいつも凄いのよ?」


植物園は温室となっていた。全体がガラスで覆われ、日光が中に燦々(さんさん)と降り注いでいる。中は緑が生い茂っていた。


「春なのに夏の花まで咲いてるのか」

「綺麗だね」

「ここは1年間ずっと暖かいからね。色々な花が年中咲いてるのよ」

「へえ、詳しいんだな」

「ま、まあね」


温室なので、季節や地域はほぼ関係ない。寒冷地のみに生える草木以外はほぼ揃っていた。勿論花だけでなく、樹木も多数ある。こちらも様々な地域から運び込まれているようだ。

なお、入場料もある。管理費に当てられるのだろうか。


「王国の南でしか見たことのない木と帝国で見た木が一緒にあるのね……」

「暖かいし、植物園はそういう場所みたいだからな」

「どういう仕組みなのかな?」

「温めて循環させる魔法具でもあるんじゃないか?ガラス窓だけだと不十分だろうし」

「……なんでそこまで分かるのよ……」


3人は普通に楽しんでいるだけであるが、ソラは気付いたことがあった。


(……薬になるものばかりだな。薬草・薬樹園か?毒草系もあるな……)


ここは普通に楽しむ場所では無いと感じたソラ。だがそんなことは隠して植物園を堪能し、4人は通りに戻る。リーリアもすっかり元通りとなった。


「面白かったね」

「植物だけを集めた場所がどういう風なのか気になってたけど、森とはまた違って良いわね」

「見える木が1本1本違ったりするからな。新鮮に見えるんだろ」

「外の森はどんな風なの?」

「出たことが無いのか?まあ、同じような風景がずっと続いているな。1人でいるよ変になりそうだ」


4人は話をしつつ、再び食べ歩きを楽しむよ。だが、それは長く続かなかった。


「ねえ、後ろから何か聞こえない?」

「ああ……足音か?」

「人、たくさんいるよね?」

「……もしかして」


後ろから聞こえる足音、3人が振り返ると……


「「「「「「「「お嬢様ー!」」」」」」」」

「は?」

「あれ?」

「え?」

「あ……来ちゃったわね」


通りを駆け抜けてーー訂正、ソラ達を目指して走ってくる兵士・騎士・執事・メイド……しかも、その目は血走っていた。


「彼奴ら誰だ!」

「冒険者か?」

「誘拐犯だろ!」

「そうか!」

「捕まえろ!」

「お助けしろ!」

「お待ちくださいお嬢様!」


説明どころか話しかけたらリンチに合いそうだ。

流石にこれには3人とも困惑する。


「どうなってるのよ!」

「ソラ!取り敢えず逃げて!」

「は?どう考えてもリーリアを探しに来た連中だろ。説得してくれよ」

「良いから!」


恐らくリーリアの関係者なのだろうが、説得を拒否されてはどうしようも無い。このままだと冤罪(えんざい)まっしぐらだ。


「ミリア、フリス、取り敢えず逃げるぞ!」

「え?良いの?」

「良いわけ無いが仕方ないだろ。説得してくれないと犯罪者扱いになりそうだしな。リーリアも後で説明してもらうぞ!」

「そうね……私のせいだもの」


ソラがリーリアを抱きかかえ、3人は走り出す。勿論あの集団とは反対方向であり、魔力探知も使って本気で逃げた。


「「「「「「「「待てー!」」」」」」」」

「あーもう!何でこうなったのよ!」

「そんなこと言ってないで走るぞ。フリス、大丈夫か?」

「うん。それより、足止めする?」

「やめておけ。それだと完全に誘拐犯になる」


これがソラ達にとって、ある意味地獄の鬼ごっこの始まりだった。


「こういうのも良いわね」


1人だけ楽しそうだが。






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