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異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第3章 懐かしき日の本

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第19話 火都バードン③


「いや〜、見つかって良かった」

「しかも討伐ってな」

「来たばかりなのにド派手だな」

「それでも良いじゃないか」

「そうだな」

「乾杯!」


冒険者ギルドでは宴会が行われていた。討伐に行った者もほとんど見つけられなかったキングオーク、そして異常な数に膨れ上がっていたオークの集団、それらが倒されたのだ。膨大な量のオーク肉も含め、宴会をするには十分だった。

そんな中でソラは……


「あー!俺は主賓だろ!なんでこんなことやってる!」

「提供したんだから、責任持ちなさい」

「美味しいよ〜」

「ちくしょうが!」


厨房に篭ってとある料理を作り続けていた。いや、作らされ続けていた。それもこれも作ったものが盛況すぎたためだ。


「あんがとさーん」

「この程度てめえらも作れ!」

「無理でっさー」

「あんたしか作れねえよ」

「そんなわけねえだろ!」


そのせいでソラは相当荒れている。まあ、宴会する気も無かったのに巻き込まれ、延々と料理を作らされ続けるのだから仕方がないか。


「はいよ!……って無くなるの早い⁉︎」

「美味いからな!」

「酒が進むぜ!」

「美味しいよ〜」

「はいはい……ってフリスもか⁉︎」

「うん」

「ソラ、諦めた方が良いわ」

「そう言ってるミリアだって結構食べてるじゃないか……」

「まあ、ね……」

「はぁ……」


ソラが作り続けているもの、それはポテトチップスである。ベフィアにもフライドポテトはあったが、ポテトチップスは無かった。試しに作って提供したところ大盛況となり、このザマだ。

と言っても、この勢いか長持ちすることは無かった。


「って……やっと終わったか」

「あれ?寝ちゃったの?」

「酔い潰れたみたいね」

「2人と同じように呑んでるから……あれ、なんだこの既視感(デジャビュ)

「よくあることだよ?」

「まあそうだな。休憩できるから良いことにするか」

「そうした方が良いわ。ずっと作ってたものね」

「そう思ってるなら助けてくれよ……」


3人以外の宴会参加者は酔い潰れて寝てしまったため、漸く余裕ができた。完全にミリアとフリスにペースを崩されたようなものだが、誰も気にしない。そしてソラは最後のポテトチップスを作り、2人と同じ席に着く。


「まったく、ここまで騒がなくても良いだろ」

「不機嫌ね」

「ずっと作らされてたからな……愚痴も言いたくなる」

「でも、頼まれると断れないんだね」

「まあ、それは……性分だな」


日本人は頼まれると断れないと言われるが、それはソラも同じだ。お人好しと言われるかもしれないが、なんだかんだ言ってソラも楽しんでいたのだから問題無いだろう。口は悪くなっていたが。

ストレスでもあったのか、ソラはグラスを取って一気に(あお)る。


「……酒が旨い」

「ソラも大分呑むようになったわね」

「前は酔い潰れて何が楽しいとか思ってたんだけどな。今でも潰れるのは勘弁だが」

「そう言えば……最初はそうだったわね」

「洗礼みたいなものって考えてるさ。限度が分からないってのも考えものだが」

「それは仕方ないんじゃない?」

「3人とも同じだもの……これって本当に珍しい体質なのよね?」

「そのはずなんだが……偶然なのかどうなのか」

「偶然で良いんじゃない?」

「……ま、そうするか」


実際、オリアントスにだってこれは操れることでは無いだろう。









ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー










「ここも楽しかったね」

「そうね。また来たいわ」

「ロスティアにも何度も行くつもりだしな。ここも来れるだろ」


依頼を受けたりしつつ、温泉を楽しんだりしてバードンを堪能したソラ達。だが世界を見て回りたいというのもあるので、今日旅立つことにしたのだ。


「次の町は……共和国の町だったよね?」

「ああ。湖都レマン、少し寒いそうだから覚悟しておけよ」

「覚悟って言われても、私達は分からないわよ。冬は全部イーリアで過ごしてきたもの」

「それもそうか。俺が注意するしかないな」

「お願いね。それで、フリス?」

「うん、そうだね。ソラ君?」

「ああ……」


会話をしつつも警戒は怠らない。そしてソラは振り返り……


「さて、そこにいる奴ら、さっさと出てこいよ」


殺気を飛ばす。相手も隠すつもりも無いのか、すぐに人……いや魔人が出てきた。


「バレていたのか……」

「ああ、当たり前だ。大方、バードンに攻めこもうって連中だろ」

「「「「「その通り!」」」」」

「は?」

「えっ?」

「……なに?」


出てきたのは5人の魔人。彼らはそれぞれが赤青緑黄黒の肌をして、各所に甲羅のようなものをつけた人間(ヒューマン)のような姿をしている。得物は赤が大剣、青が槍、緑が双剣、黄色が弓矢、黒が杖だ。

だが何よりも、テンションがおかしい。


「我ら!」

「魔王様!」

「配下の!」

「5兄弟!」

「命に!」

「従い!」

「戦う!」

「それが!」

「我が兄弟!」

「その名は!」

「「「「「黒き機甲の騎士達ブラックアーマード・ナイツ!!」」」」」

「この地に!」

「「「「「見参!」」」」」

「……何やってるのよ……」

「ええと……」

「馬鹿だ。そう思っておけ」


5人揃って言う台詞では、それぞれが得意技らしきものを披露している。それからすると、赤が火付加、青が水付加、緑が風付加、黄色が雷付加、黒が闇魔法を使うようだ。事前に相手に情報を与えるようでは、馬鹿としか言えない。

だがそれは、彼らにとって癪に触るようだ。


「馬鹿だと?」

「バカにするな!」

「良いな?」

「勿論」

「おう」

「「「「「やっちまえ!」」」」」

「いちいち疲れる奴らだ。ミリア、フリス、やるぞ!」

「ええ!」

「うん!」


ソラが赤と青、ミリアが緑、フリスが黄色と黒を相手にする。まあこれは主にであって、互いの援護や相手の交換は普通にするつもりだ。ソラ達も、魔人達も。


「はっ!」

「ふっ!」

「遅いな」


赤と青が連携して攻撃するが、ソラには当たらない。この2人は魔人のスペックで武器を振るっているだけなため、身体強化の出力がもっと低かったとしても、ソラなら簡単に避けられるだけだろう。


「こっちよ!」

「貴様ぁ!」


ミリアは完全にスピードで緑を圧倒していた。緑もよく反応しているが、ミリアには少し及ばない。だが双剣に付加された風のせいで、ミリアが攻めあぐねているのも事実だった。


「ん〜、嫌なコンビ」

「なんだよこの弾幕は……」

「厚すぎる……」


フリスは弾幕で完全に押さえ込んでいた。だが、雷付加の矢と闇魔法はフリスも相手しずらく、見た目ほど楽できているわけでは無い。雷が付加された矢は速く、迎撃時間は短い。闇魔法は消し去るために多くの魔力が必要だ。それゆえ、ここもまた膠着に陥っていた。

こういった組同士の戦いは安定しているが、他の組と合流した時はかなり荒れた。ミリアやフリスが何回か被弾しかけたほどだ。そういった場合に備え、ソラは攻め過ぎないよう注意していた。


「くそ!何で!当たらん!」

「そりゃあ、技量の差があるからな」

「何だよ!それ!」

「気にしなくても良いが……ま、こんなものか」

「な⁉︎がっ!」


ソラが青を蹴り飛ばす。青はすぐに体勢を整えて反撃しようとするが……


「は……」


緑の相手をしていたミリアに首を刎ねられる。ミリアがいきなり背中を向けたことに呆気にとられた緑は、ソラが飛ばした斬撃によって両断された。


「ブルイアン!グリビル!」

「よそ見はダメだよ!」

「行け!」

「フッ!」

「がはっ」

「なっ、おご……」


フリスが地面を爆破させて作り出した煙幕、そしてそれを隠れ蓑にする2人。ミリアはソラの掌底に足を乗せ、ソラが突き出すと同時に跳ぶ。ミリアは高速で煙幕を突き抜け、黄色の心臓を貫いた。さらにフリスは赤へ5つの水刃を放ち、四肢と首を胴体から切り離した。


「なっ、こんな!」

「運が悪かったな」


最後に残った黒の首が飛ぶ。確かに、こんな所でソラ達に会ってしまったのは不運としか言いようが無い。

勿論、3人がそれを気にすることはないが。


「結構強かったね」

「魔力とかは低くても、ただの魔獣とは違うわね。連携が上手だったわ。本気じゃなかったけど、長くかかったわね」

「制限しろって言われた時はびっくりしたよ〜」

「全力でやったら一瞬だからな。周りも大丈夫だし、少しは苦戦みたいなことをしてもーー誰だ!」

「おやおや、気付かれてしまいましたか」


ソラが振り向いた先、そこにいたのは法衣のような物を着た男、見た目は観音像が持つ姿に近い。見た目は人間(ヒューマン)だが、何処か変だ。


「誰……?」

「失礼、私はゴアクと申します。貴方達の戦い、拝見させてもらいましたよ」

「それで、俺達をどうする気だ?魔王側なんだろう?」

「どうもいたしません」

「何?」

「私はただ彼らを見ていただけ、彼らが何をしようと関係はしませんよ」

「なら何故俺達に声をかけた」

「面白い方だと思ったからです。魔法もそうですが、何より技が素晴らしい。彼らが相手にならないのは当たり前ですね」

「そりゃどうも。できれば早く帰ってくれるか?面倒ごとはゴメンだぞ」

「そうですね。それでは私はこれで。いつか私と戦えるようになってくださいね?」


そう言ってその男は去っていく。ソラ達はその場から動こうとしない。ゴアクは敵だが、それが最も良い策だった。何故なら……


「はぁ、はぁ……」

「ソ、ソラ君……」

「なんなのよ、あいつ……」

「恐らくは……SSの中でも上位、下手すりゃSSS級だ。魔王の配下の中でも相当な実力者だろうな」


圧倒的な力量の差があるからだ。技に関しては分からないが、魔力と身体能力に隔絶した差があるのは3人とも分かった。ソラは話しただけでここまで疲れるほど、神経を張っていた。


「よくソラ君は気づけたね……」

「殺気……というか闘気か。強烈な視線を感じたんだ。魔力は隠しても、そこは隠す気が無かったんだろうな」

「戦いにならなくて良かったわね」

「ああ。あいつがどんなやつなのかは分からないが、今の俺達じゃ簡単に殺されるだろうな。差がありすぎる」

「そうだよね……でも、今は(・・)、なんだ」

「ああ、ただの魔獣に負けてるようじゃ、オリアントスには勝てないからな」

「そう言い切れるソラが凄いわよ……」

「そんなことないさ。強がってるだけだよ。それよりも、町に帰るぞ。報告もいるし、このまま旅するのはつらいからな」

「そうね……もう1回宿を取らないと……」

「なんだか疲れた……」

「じゃ、俺が運ぶよ。休んでていいぞ」

「えっ……ありがと……」


そう言って、フリスをお姫様抱っこする。ミリアは羨ましそうにしていたが、体力の少ないフリスのためだと思って我慢していた。

そのまま3人は振り返らず、この場を去った。


「戦う時は……絶対に負けないからな」


強者に対する決意を残して。










第3章END

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