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異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第3章 懐かしき日の本

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第18話 火都バードン②


「2人とも凄かったよ」

「注目されすぎてたみたいだけどな」

「あれだけ動けばね……」

「どうした?」

「負けたのが悔しいというかなんと言うか……」

「遊びじゃないか。楽しめればそれで良いだろ」

「勝った相手に言われても嬉しく無いわよ。楽しかったのは事実だけど」


旅館の廊下、3人は自分達の部屋を目指して歩いていく。

なお、卓球はソラが勝利した。本当に風呂の後の運動でしかなかったらしく、ありえないレベルの動きだったのに2人とも汗1つかいていない。とんだ化け物どもである。


「生活文化が違うのには慣れたけど、これは良いわね」

「足が温かくて良いよね〜」

「床暖房だな。こんなのがあるなんて思ってもいなかったぞ」

「前は無かったの?」

「一応前の世界にも無くはないんだが、ここまでの物はな……」

「どうしたのよ?」

「便利だ……」

「「?」」


季節は冬だが、バードンは火山の影響で暖かい。それでも板間は寒いのだが、ここは床暖房があるため大丈夫だった。この廊下の床下には高温の源泉が網目のようなパイプによって流されており、常に温められている。なおこの仕組みは魔法具によって運用されており、流量の調節も自由にできるらしい。

なお、ソラが遠い目をしているのは流派の道場が原因だ。道場は板間であり、床暖房なんて便利なものは無い。そして稽古は基本裸足で行う。つまり、冬は地獄なのだ。寒中水泳などに比べればマシ、動いて体が温まれば気にしなくなるとはいえ、辛いことに変わりは無かった。

そういった話をしている間に3人は部屋に着き、引き戸を開ける。すると……


「うわぁ〜」

「凄いわね……」

「流石、ロスティアとはまた違った意味で本格的だな」


本格的な会席料理が並べられていた。茶碗とお椀、そして煮物や浅漬けなどが小皿に乗せられている。

そしてメインは真ん中に置かれている(マス)らしき魚のお造り、そして鍋だ。御飯は飯櫃(めしびつ)に収められており、自由に取る形式のようである。


「ねえ、あの鍋の中身って何かな?」

「開けてみるか?」

「うん!」

「そんなにはしゃがないの。これって……ロスティアで食べたものよね?」

「すき焼きっていう名前だっけ?」

「……似てるけど違うな。味付けはバルクのやつとは違うみたいだ」

「そうなの?」

「流石に食べてないから分からないが、味噌が入ってるようだぞ」

「味噌ね。あれも美味しかったわ」


話もそこそこに席に着き、3人は舌鼓を打つ。ロスティアとはまた違う味付け、一部違う調理法であり、また新鮮だった。


「美味しいね」

「ああ、美味いな」

「値段を聞いた時は驚いたけど、これなら満足ね」

「どうせ貯まっていく一方じゃないか。使った方が良いだろ」

「貯蓄は多い方が良いじゃない」

「少なくとも金貨30枚、魔水晶を全部売れば水晶貨分はあるじゃないか。大丈夫だろ」

「まあそうだけど、それでもよ。フリスはどう思う?」

「お金のことは2人に任せてるでしょ?」

「……まあ、管理できないものね」


なおこの宿、1人1泊鉄貨25枚(温泉貸切代込み)だ。一般的な宿と比べるとかなり高いとは言え、ソラ達に払えない金額では無い。











ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー











「木が少ないわね」

「町のそばにはたくさん生えてたのに……」

「場所を選んだんだろうな。火山性の土壌は普通の農業に不向きだし、最初は果実が無いと大変だったんだろう」

「かざんせい……泥鰌(ドジョウ)?」

「待て、フリス。今のは何かが決定的に違う」

「土壌って、土のことよね?火山の近くだと何が駄目なのよ?」

「あ〜酸性だとか水はけが良すぎるとか色々あるらしいが、詳しくは知らないな」

「うーんと、わたし達が気にする必要は無いよね?」

「それもそうね」


数日後、ソラ達はバードンから少し離れた山肌にいた。

バードンの周りは比較的緑が多いが、少し離れた場所はかなり荒れている。火山灰や溶岩によってできた土地にはありえることだが、開拓した当初は生活しづらかっただろう。

まあ、今さら冒険者が気にすることでは無い。


「ねえ、本当にこっちで良いの?」

「ああ、こっちの方が楽だ」

「最初にソラが囲むのよね?」

「そのつもりだ。その後は良いな?」

「勿論!」

「ええ……話通りなら、この下よね?」

「ああ……」


歩いて行った先、ソラ達の目の前にある谷。そこの下にあるのは……


「あるぞ。オークの巣だ」

「じゃあ、やりましょう」

「よし、行くぞ!」


100を超えるオークがいるそこは、出入り口となる3ヶ所の谷を除けば崖に囲まれており、守りには適しているのだろう。中に入り込まれなければ、の話だが。

宣言通り、ソラは谷を土魔法で塞ぐ。そしてソラとミリアは飛び降り、フリスはそのまま魔弾を撃ち始めた。


「ソラ、魔法は?」

「直前に減速だ。急がないとフリスに全部取られるぞ」

「それもそうね!」


ソラは魔法で重力を逆向きにかけて減速し、着地する。そして2人は同時に駆けた。


「はぁぁぁ!」


ソラは薄刃陽炎に風魔法を使い、刃を延長する。まるで大剣を振るっているかのように、オークを次々と両断していった。


「ヤァ!」


フリスはいつものように高速で駆け抜け、次々と斬り裂いていく。以前までと違うのは、頸動脈だけでなく骨ごと叩き斬っていることだ。ルーメリアスを上手く扱っている証拠とも言える。


「ソラ君もミリちゃんも、大暴れだね」


そしてフリスは1人崖の上で、雨霰(あめあられ)と魔法を放っている。2人に遠慮をしているのか大規模魔法は使って無いが、大量のオークを的確に仕留めていった。


「これで大体終わりね」

「ああ、そうだな」

「たわいないって言ったらお終いかしら?」

「そんなこと無いだろ。こいつらが俺達より弱かったのは事実だ。それに……」


周りにあるのはオークの死体のみ。生きているオークは見当たらなかった。だがソラは振り向き、薄刃陽炎を振り抜く。


「バレバレだぞ?」


その一閃は岩を後ろに隠れていたオークごと真っ二つにした。比較的頭の良い個体だったようだが、ソラにこの程度の不意打ちなど効かない。


「お見事ね」

「そんなこと無いさ。ミリアだって気づいてただろ。それよりも、上位やキングを見なかったか?」

「……そういえば見てないわね。普通ならいるはずなのに……」

「丁度狩りの時間だったのか?」

「どうしたの〜?」

「フリスも呼びましょう。相談するべきよ」

「ああ、そうだな」


この規模の巣なら必ずいる上位オーク、少数の目撃談の上がっているキングオークがいない。逃げたとは考えづらいため、狩りに出ているとソラは判断したのだ。

そして2人に呼ばれたフリスは飛び降り、風魔法を上手く使って軟着陸する。足元の空気を順に高圧にすることで減速していったのだ。この方法も、ソラが教えた。


「それで、どうしたの?」

「オークの主力が狩りに出てるかもしれない。俺はここで待ち伏せしようと思うんだが、どうだ?」

「あ、そういえば全部弱かったね」

「フリスは上から撃ってただけじゃないか。でも、反撃が無いのはおかしいよな?」

「うん」

「それなら来るまで待つ、もし日が山に隠れ始めるまで来なかったら帰るってことで良いわね?」

「それで良いよ」

「じゃあ、少し片付けるか」

「それもそうね」


行動を決定したソラ達がオークの死体を半数ほど指輪にしまい、待つこと(しばら)く。


「……来たか」

「何処からよ?」

「こっちからだね」

「よし、隠れるぞ」

「奇襲だね、分かった」


3人はバラバラになって岩の後ろに隠れ、オークの主力集団の帰りを待った。入り口を塞いでいた岩はただの土に変わっており、オークの膂力なら簡単に吹き飛ばせる。

そして、その時がやって来た。


「ブフゥ?」

「ブフィブフィ」

「ブゥゥ!」


吹き飛ぶ土壁、そしてそこからオーク達が雪崩れ込んで来た。数は普通のオークが42体、オーク将軍(ジェネラル)が10体、オーク魔法使い(マジシャン)が7体、オーク射手(アーチャー)が8体、そしてキングオークが1体だ。

全てが住処での惨劇に怒り狂っており、人がいることにも気づかず、荷物を持ったまま暴れている。だが、その荷物というのが……


「あいつら……」


オークが持っているのは多くが死んだゴブリンだが、一部は人だ。それも5人の女性。彼女達は簀巻きの状態で猿轡(さるぐつわ)をされ、担がれていた。担いでいるオークが暴れて目を回しているようだが、まだ正気なようだ。


「まずは人質を救出する。ミリアが担いでる奴を倒し、俺が風魔法で飛ばす。フリスは風で受け止めろ。行けるか?」

『勿論よ』

『大丈夫だよ。それにしてもこの魔法、便利だね』

「それは後だ。一気に行くぞ」


ソラが使ったのは口元の空気の振動を読み、耳元で再現する魔法だ。はっきり言って、無線機のようなものである。当然ながら、こういった時の有用性はとても高い。

その宣言通りに3人は動き、オーク達に反応させることなく人質を奪還する。そしてそこからは、大暴れするだけだ。


「フリスは彼女達の護衛と迎撃!ミリアは遊撃だ!1体も逃すな!」

「ソラは?」

「正面から食い破る」

「ふふ、分かったわ」

「お願い」


キングオークがいるといってもたかがAランク、ソラ達の敵では無い。


「逃がさないわよ!」


ミリアは集団の後方の相手、主に普通のオークに対して高速のヒットアンドアウェイを繰り返し、逃げられなくしていく。それは速すぎて、鈍重なオーク達は反応できないほどだ。


「遅いっと」


フリスは飛んでくる魔弾や矢を次々と撃ち落とし、魔弾を放って沈めていく。狭い範囲にソラやミリアもいるため大規模魔法は使わないが、的確な射撃でオークを制圧していった。


「ぬるい」


将軍すら全て一刀の元に斬り裂き、血の雨の中を進んでいく。キングオークも振るわれた大剣ごと斬り、両断した。

こんな3人を抑えるのに、これだけの数では足りない。すぐにオーク達は殲滅された。


「これで終わり、か」

「反応も無いよ〜」

「ねえ、早く助けましょう」

「ああ、そうだな」


人質となっていたのは人間(ヒューマン)3人、エルフ1人、猫獣人1人。冒険者のようだが、装備は全て壊されたか剥がされたらしく、普通の服しか着ていない。お金などの貴重品もほぼ無いようだ。

ソラ達は彼女達を縛っている縄を切り、猿轡を外していく。捕まってからそう時間は経っていなかったようだが、痛みや痺れで動きづらそうだ。そのためソラ達は少しここで回復を待つことにした。


「あの……ありがとうございました」

「ただの偶然だけどな。まあ、助けられて良かった」

「はい、ありがとうございます」

「それでなんだが……この規模のオークの巣は、ここらでは一般的なのか?」

「ソラ、それじゃあ脅してるみたいよ」

「ああ、すまんな。それで、どうなんだ?」

「えっと……どれくらいいたんですか?」

「ああ、大体……150体か」

「「「「「150⁉︎」」」」」


ソラ達の基準では良くあることだが、普通に考えればおかしなことだ。オーク150体は帝国の兵士600人分の戦力だと言われている。そしてここは上位やキングも入るため、さらに増えるだろう。

だが、3人はそれを失念していた。


「ここに100、追加が50だったろ?」

「そうね。多分もう少し多いけど」

「200は超えてないと思うけどね」

「「「「「…………」」」」」

「どうした?」

「……そういえば、150体って異常よね」

「わたし達だと普通だよね?」

「あの〜」

「どうした?」

「どう考えても異常なんですけど……」

「ああ、やっぱり。近いうちに襲撃でもやるのかなんなのか……」

「いえ、貴方方の……」

「そんな固くなるな。この結果は戦い方のおかげ、経験の差だ」


ソラ達ほどの経験をしたら、一般人はほぼ確実に死ぬのだが。それに戦い方だって、他の人からしたら突撃したようにしか見えない。同士討ち、もしくは他のオークを壁にする等はやっていたのだが、分かる人は多くないだろう。


「そういえば、貴方達に見覚えが無いんですけど……」

「来たばかりだもの。3日前ね」

「もしかしてあの商隊に?」

「うん、ロスティアから護衛してきたよ」

「駿馬を持った盗賊が出たって聞いたんですけど……」

「そいつらなら俺達が倒した」

「ええ〜……」


ソラ達と普通のCランク冒険者を比べてはいけない。差がありすぎるのだから。それを彼女達も理解したようで、その後は何か分からないけど凄い人達、という認識に変えていた。

そして少しの時間が経ち、5人も十分動けるようになった。


「さて、バードンまで戻るか。護衛するから行くぞ」

「良いんですか?」

「放置するのも嫌だしな。ここで会ったのも何かの縁だ」

「あ……ありがとうございます」

「じゃあ、少しの間だけどよろしくね」

「あの、後で魔法の使い方を……」

「うん、良いよ」


ソラ達は彼女達を連れてバードンへ戻っていく。その途中で5人が捕まった場所へ行き、貴重品を回収した。

なお、エルフの女性はフリスの魔法が気になるようで、その場所にて少し教えてもらっていた。と言っても、フリスのイメージ(科学的考え方)を理解するのは難しいのだが。





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