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異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第3章 懐かしき日の本

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第15話 古城③

本日は12:00、18:00、19:00の3連続投稿


これで最後です

「行き止まり……」


ミリアは立ち止まる。目の前には石壁があり、後ろにはゾンビの大群が迫ってきていた。逃げ場が完全に無くなってしまったのだ。


「ここが実は出口……なんて都合のいいことは無いわよね」


そうなら非常に嬉しいのだが、ミリアはそれを確かめる術を持たない。試してみてもいいが、間違っていた時のリスクが大きすぎた。


「覚悟を決めるしか無いわ……」


ミリアは振り返り、ゾンビと相対する。この数を相手にするのは嫌なのだが、やるしかあるまい。


「ハァァ!」


得意のヒットアンドアウェイを繰り返し、ゾンビ達を斬り飛ばしていく。だが……


「簡単に!倒れて!欲しい!わね!」


浄化系の魔法を使えないため、ゾンビはすぐには倒れない。腕を斬り飛ばしてもそのまま迫ってくるし、頭を落としてもそのままだ。縦だろうが横だろうが真っ二つにしても迫って来ていた。

神器となったためか、胴体から切り離されれば倒せるのが救いだが、迫ってくる方が早かった。


「こんなことだったら……ソラからファウガストを貰っておくべきだったわ……」


ミリアが持つもう1つの神器、アクレンティアの属性は水であり、アンデットに効果は無い。火のファウガストなら効いたのだが、それを持っているのはソラだ。鉱魔でファウガストを主に使っていたのはミリアだが、普段は必要無いだろうということでソラにあずけていた。1人きりになって戦うつもりなど無かったからなのだが、それが裏目に出てしまった。


「……酷い見た目、ねっ!」


逃げていた時とは異なり、今は腕や首を優先して落としている。足が攻撃手段として用いられることはほとんど無いためだ。攻撃してこないのなら、まだ壁として利用できる。


「っ⁉︎くぁ!」


だが、時折出てくる武器を持ったゾンビ。ここまで密集するとこいつらが厄介だ。ゾンビは味方に当たることなど気にせず振り回すため、肉の盾は意味が無く、さすがのミリアもくらってしまう。両腕は何度か剣によって切り傷がつけられていて、右の太腿には槍の穂先が刺さっていた。


「もうっ、さばけない……」


いくらミリアでも逃げ場が無く、無数の敵に押され続ければ、いずれ限界が来てしまう。


「ソラ!早く来てよ!」


迫りくる槍がミリアを貫く直前、無数の光弾が石壁から放たれ、ゾンビ達が倒れていく。武器を持っているものも持っていないものも、等しく消し飛ばされていった。


「え……?」

「ここにいたのか……すまん、遅くなったな」


石壁を……いや、鉄格子を斬り裂いて入って来たのは、ソラ。漸く、見つけることができた。タイミングが良すぎるが。


「ソラ?」

「ああ、顔を忘れたのか?」

「そんなわけ無いでしょ。さて、これはどうする?」

「先に傷を治すか。診せてくれるか?」

「ええ、お願い……早いわね」

「一応、練習してるからな」

「練習って……もしかして?」

「ぐ……それに関しては後で聞く」


ソラはミリアに回復魔法を、ルーメリアスに光の付加をかけた。回復魔法の練習とは……まあ、そういうことである。


「さっさと殲滅するぞ!」

「ええ!」


ソラ達にとって、1+1は2ではない。殲滅スピードは格段に上昇した。








ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー









「もう諦めたら良いのに……」


フリスは周りをアンデットに囲まれている。だが、その歩みが止まることは無かった。


「あ、入ってくると……」


アンデットが何体も、フリス目掛けてやってくる。だが……


「あーあ、やっぱり」


横殴りに飛んできた火球と雷球により半分の骨が消され、もう半分はバラバラに飛び散った。


「ゾンビとかスケルトンとかだと、これは抜けられないよ」


フリスの周囲では火球と雷球が12個の軌道に各3つずつ、高速で旋回している。これが攻性防壁の役割を果たし、フリスにアンデットが寄り付けないでいるのだ。


「早くいなくなって欲しいんだけどな〜……これ、外が見づらいし……」


光る壁の外が見づらいのは当たり前だろう。もっとも、解除したら進めなくなってしまうのだが。


「どうしようかな?」


フリスが2人に合流するのはしばらく後になりそうだった。









ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー









「ねえソラ、何で私のいる場所が分かったのよ?」


集まっていたゾンビを殲滅した後、ミリアはソラに問いかける。なお、地下牢への入り口はソラが何重にも土の壁を作って塞いだ。


「こんな風にしてたんだ」

「光球……これが?」

「前を見てみろ」

「え?……あ、なるほど、そういうことね」


ソラは4つの光球を作り出し、タイミングをずらして明滅させる。すると、いつまでも続くように見えた階段に出口が現れた。


「こういう風にすると、幻術が破れる範囲が増えるんだ。それに、魔力消費も少なくなる」

「幻術……魔法なのね?」

「ああ、闇魔法だろうな」

「だから光……ソラしか対処できないわね」

「確かにそうだな」


光魔法を使えるのはソラだけなため、合流できなければミリアもフリスも1つの空間から出られないだろう。だが、一般の冒険者はもっと悲惨だ。攻撃系の光魔法をソラほどの規模・精度で扱える人は少ない。突破できる者は限られてしまうだろう。

そのような話をしつつ、ソラとミリアは階段を上っていく。そして、階段を上りきると……


「あ、いた〜」

「え?あ、フリス!」

「よかった、無事だったんだな」


広間の真ん中にフリスがいた。なお、フリスの周りに大量のアンデットの残骸があることは、誰も気にしなかった。

3人は近くに集まると、これまでのことを話し合いながら休息する。


「ミリちゃん、大変だったんだね……」

「本当よ……ソラが来なかったらどうなっていたどうなっていたことか……フリスは良いわね」

「良いってわけじゃ無いけど、ミリちゃんと比べたらね〜」


が、ソラを抜いた2人ばかりで話している。ちなみにこの会話の中で、ソラが心配されることは無かった。最も緊急事態への対処能力が高いのはソラ、というのが2人の共通認識である。

なお周囲のアンデットは殲滅されたのか、作成された土壁が攻撃されることは無かった。……フリスへ近づいていって勝手に殲滅されたのだろうが。


「そういえばソラ、あの光で出口は見つけられないの?」

「無理だったな。幻術には3段階くらいあって、俺が解除できるのは1番下だけだ」

「そっか……これからどうするの?」

「やっぱり、この幻術の核を見つけるべきだろうな」

「核って、はぐれる前にソラが言ってたアレ?」

「ああ」


核を破壊、もしくは無力化しないと脱出はできないだろう。日本のそういった系統の話的には、要石(かなめいし)のようなものだ。現実の要石でそんな話があるのはとある1ヶ所にある物だけだが。


「何処にいると思う?」

「恐らくは……この城の大会議室、普通の城だと玉座の間だとかが置いてある場所だろうな」

「そうだね……1番ありそうなのはここだけか〜」

「それに、わざわざ守りにくい場所に置く意味も無いわね」

「アンデットだからな。ここへ行くまでの道は数を生かしやすいな」

「じゃあ、行く?」

「そうだな。違ったらまた探せば良い」


すぐに行動を始めるソラ達。予想通り道中アンデットは多かったが、問題無く蹴散らしていく。

そして、扉の前に到着する。お約束と言うのか、3人ともこの中に高位の魔獣か魔人がいることを感じ取っていた。


「ここだね……」

「行きましょ、ここを進むしか無いのよ?」

「ああ、行くぞ!」


突入した3人が見たのは、鋭い爪のある長い腕と紫色の肌、さらに(ねじ)れた角とコウモリのような翼を持つ大柄の人型。ある意味で最も有名な魔獣の中の1種。


「グレーターデーモン……こいつが核だ」

「幻術を使ってるってこと?」

「いや……魔力循環の(かなめ)ってとこだ。術が体に埋め込まれてる……?」

「そんな感じだね……不気味」


見た目は普通のグレーターデーモンだが、魔力的にはかなり変わった存在だった。体中を魔力の回路が巡り、周囲へ影響を与えていた。確実に、こいつが幻術の核、要だ。


「グガ……ココ、マモル……」

「……しゃべれるのか」

「Sランクだし、悪魔だもの。でも……変ね」

「オレ、バンニン……アノカタ、イッテタ」

「微妙に認識が違うな……囚われてる?」

「そうかもね。悪魔なのに動物っぽいし」

「ガァ……オマエタチ、コロス!」

「来るぞ!」


グレーターデーモンはソラへ向けて急加速し、右腕を振るってくる。その爪を、ソラは薄刃陽炎の峰で受け止めた。


「くっ!」

「ソラ!抑えておいてよ!」

「言われなく、ても!やっちまえ!」

「勿論!」


その状態から、ソラは腹部を蹴ってグレーターデーモンを宙へ打ち上げ、そこを狙ってミリアとフリスが攻撃した。当然ながらグレーターデーモンは瞬殺だ。流れるようか連携は流石である。


「解けた!」

「っ⁉︎アンデットどもが来るぞ!」

「え⁉︎急ぎましょう!」


グレーターデーモンか倒れると同時、古城を覆っていた幻術が解け、アンデット達がこの大会議室へ殺到し始めた。ソラ達はグレーターデーモンの死体を回収すると、急いで城の外を目指し、アンデットを倒しながら走っていく。


「外にもいるわね!」

「だが全部が来ているわけじゃ無い!撃退は楽だぞ!」

「前以外はわたしがやる!」

「頼むぞ!」


城の外にいたアンデットはソラ達に見向きもせず徘徊しており、ソラ達を追うのは城の中から出てくるもののみである。そのため3人は近くにいるもののみ鎧袖一触で倒し、他は気にせず駆けていく。だが、この数を無視することなどできない。


「燃えちまえ!」


城壁の中は木造の兵舎だけでなく、背の高い雑草や枯れ木なども大量にある。ソラの放った炎弾はそれらを燃やし、広がり、アンデットを飲み込んでいった。


「門は⁉︎」

「他3つは岩で覆った。後はあそこだけだ」

「じゃあ、急ごうよ!」

「ああ!」


そう危ないこともなく、アンデットを蹴散らしながら3人は脱出、門も岩で塞いだ。残ったのは引火し、燃える古城だけだ。


「ふう、大変だったな」

「本当、そうよね……」

「ソラ君といると退屈しないね……」

「……まあ、そうだな。さて、戻るか?」

「うん、美味しいご飯が食べたいもん」

「確かに、私も食べたいわね」

「はは。じゃ、バルクに働いてもらうか」


燃える城を後にし、3人はロスティアへ戻っていった。









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