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異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第3章 懐かしき日の本

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第13話 古城①

本日は12:00、18:00、19:00の3連続投稿


……1回やってみたかったんです……


「ここか」

「ボロボロだね」

「そう言わないの。仕方ないでしょ?」

「廃城になったのが120年前か……役割的には砦だよな?」

「確かにそうね」


ロスティア近くの古城、そこへソラ達は依頼でやってきた。訓練が終わった後、『探索に向かった冒険者が帰ってきていないので、探してきてもらいたい』という話を受け、指名されたのだ。城と言っても、前の魔王との戦いにて前線基地として使用されていた場所であり、周囲は広い範囲が分厚い城壁で囲まれ、兵舎がいくつも建っている。

その中でソラ達は、中央の古城へ1直線に向かっていった。何か謎があるならここだろうという考えからだが、原因不明の行方不明者が出ているため、慎重に扉を開けて中へ入って行く。


「中は……意外と綺麗ね」

「掃除すれば使えそうだな」

「これってありえるの?」

「いや……普通ならもっとボロボロだろ。外見みたいに」

「そうよね。いくら何でもおかしいわ」

「絶対何かあるな。さて奥に……っ⁉︎」

「どうしたの?」

「何かあった?」

「今の感覚……まさか!」


ソラは急いで扉に駆け寄り、取っ手を引く。だが、扉はビクともしなかった。薄刃陽炎で斬りつけても、圧縮した火球をぶつけても、傷1つつかない。

完全に閉じ込められてしまった。


「閉じ込められたか……結界だ」

「もしかして……また?」

「いや、オリアントスじゃ無いだろうな。あいつなら神気を使うから今の俺には分からないが、これは魔力でできてる。多分、高位の魔獣か魔人の仕業だ」

「それで、どうするのよ?」

「何処かに結界の核があるはずだ。それを壊せば出られる」

「それを……見つけないといけないのよね?この広い城の中から」

「ああ……砦ならもっと楽だっただろうけどな」

「言っていても始まらないし、行こうよ」


ソラ達は脱出口を探すため、古城の奥へと進んで行った。








ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー









「……無いわね」

「……無いね」

「……無いな」


両側に扉が幾つもある通路を進んで行く3人。見つけた扉は1つ1つ開けて中を確認していくが、それらしいものは一切見当たらない。

それに、他にも問題があった。


「ねえソラ君、魔力探知ってできてる?」

「いや、無理だ。変な魔力が漂っててマトモに反応しないな」

「え、それってマズイじゃない」

「マズイんだよな……まあ、ダンジョンじゃ無いから道が分からなくなるなんてことは無いだろうけど」

「それもそうね。もし魔獣がいたとしても、見つければ良いだけだし」


魔獣がいたらと言っているが、ソラ達以外に物音を立てる存在はいない。この城は捨てられただけであるため、金目の物は一切残っていなかった。


「こう……財宝でもあれば楽しいんだけどな」

「本当よね……椅子とか机とか、ベットがあるのは嬉しいけど」

「休憩できるもんね」

「休んでばっかはいられないが、ありがたいよな」


ミリアが言うように、家具がある部屋もあるため、休みやすい。ソラ達もそのような部屋を選んで休憩場所にしていた。


「次は……まだ続くのか」

「どれだけあるんだろうね?」

「ここまだ1階よね……2階3階と地下もあるのに……」

「……長いな」

「そうだね。それにしても……何もいないってのはおかしいよね?」

「ん?どういうことだ?」

「普通だったら、ネズミとか虫とかいるでしょ?わたし、全然見てないもん」

「それもそうね。結界のことも気になるし」

「確かに……」


虫すらいず、謎の結界が張られた城。怪しさ満点だ。


「本当に不気味だな」


そんな雰囲気に臆さず、変わらずに話し続けるソラ。だが、その返事は無かった。


「ん?」


振り返ると、後ろにいたはずの2人がいない。


「ミリア?フリス?」


ソラは1人きりとなってしまった。









ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー








「え?ソラ!フリス!」


1人になったのはソラだけでは無い。ミリアも別の所にいた。


「いつの間にはぐれたのよ……ソラの後ろを歩いてたのに……」


ソラもそうだがミリアも、急にはぐれたという風に感じている。ここまで違う場所に来ているのだが、それが実態だ。


「それに……ここはどこよ?」


ミリアがいるのは、あたり全てが石を組み合わせられてできた通路だ。幅も高さも2mほどと、かなり狭い。もしここで戦うとしたら、ミリアにはかなりつらいだろう。


「鉄格子があるわね……牢屋?」


通路の両側には鉄格子で分けられた4m四方ほどの小部屋がいる。状態から見て、ここは牢屋なのだろう。

なおかなり古いためか、鉄格子は表面が完全に錆びている。ただ何故か、中は鉄のままなようで、簡単に壊れたりはしないようだ。


「中には何も無いのね。鍵は……開いてる?」


牢屋の中は完全に空で、何一つ残っていない。ベフィアの物語にも古城が出てきたりするが、そういう時は大抵の場合牢屋は薄汚れ、ゴミが溜まっていたりもするが、ここは正反対だ。


「牢屋は確か地下だったわよね……地下牢……詳しい構造なんて覚えてないけど」


事前に冒険者ギルドにて地図を見ていたため、大体の構造は知っている。ただ、その地図そのものはソラが持っているため、現在地は分からないのだが。


「私1人だと苦手な魔獣も多いし……早く合流しないと」


遠距離攻撃を持たないミリアでは、倒しづらい魔獣もいる。そういう相手は大抵の場合逃げ切れるのだが、万が一もある。


「取り敢えず、1階に向かうのが先ね。急ぎましょう」


ミリアは合流を目指して動き出した。









ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー










「ソラ君!ミリちゃん!どこー?」


当然ながらフリスも1人である。魔力探知を使用できないため、周囲に複数の火球を待機させ、いつでも攻撃できるようにしている。

魔力探知よりも消費は多いが、フリスの持つ魔力総量からすれば誤差の範囲内だ。そして遠距離攻撃メインのフリスには、対処できない魔獣の方が少ない。そういう点では、ミリアよりも楽であった。


「ここ、なんか広い」


フリスがいる場所は幅約20m高さ約5mという広い通路で、中央には直径1.5mほどの柱が10mおきに立っている。

そして両側には大きな窓ガラスがついており、庭が見えるはずなのだが……


「曇ってる……霧?」


濃い霧で覆われ、先が見通せない。3人が外にいた時は存在していなかったため、結界と同時に出てきたのだろう。これもまた厄介だった。


「嫌な感じがするよ……」


この古城を漂う不気味な魔力、フリスは不気味で嫌いだった。


「黒くて……死、みたいな感じだし……」


魔力の色が見えるわけでは無いが、感じ取ることはできる。その結果がこれだ。魔王城なんて場所があったとしても、さすがにここまで酷くは無いだろう。


「そういえば、ソラ君とミリちゃんって一緒にいるのかな?」


戦力的、主に相性的な意味での問題だ。ミリア本人も思っているが、ミリア1人では危ない場面も多い。


「……早く行こ」


フリスも急いで合流を目指す。









ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー








「不気味な通路だな。あんな武器を持った鎧が両側とか」


ソラのいる場所も少し変わっていた。両側に存在するのは扉では無く鎧となり、幅も少し短くなっている。ここをソラははぐれてからずっと歩いていた。

そして、鎧の持っている武器が変だった。剣や槍など一般的な物は少なく、フレイルやモーニングスターに鎖鎌(くさりがま)など、一癖も二癖もある武器が大半を占めている。城を覆っている魔力に関係なく、不気味だった。


「魔力探知が無いから、2人の位置も分からないし……」


3人揃っていた時はそれほど気にすることでも無かったが、はぐれてしまった今は別だ。周りがどんな構造なのか、どんな罠が仕掛けられているか分からない今、周囲を知ることのできる魔力探知は喉から手が出るほど欲しかった。

万が一に備えて使わない状態の練習もしてなかったら、ここまで冷静でいられなかったかもしれない。


「まさか……これのせいで冒険者は帰ってこれなかったのか?」


実際ありえない話では無いだろう。現実問題ソラ達3人ははぐれ、合流の手がかりすら見つかっていない。これが数日続けば、普通の冒険者だと食料が尽きてしまうはずだ。


「仲間と分断されて、こんな迷路みたいな城の中で……ん?迷路?」


迷路のような城、こんな城が存在しうるのだろうか。


「いくらこの城が広くても、全く同じ構造の通路がずっと続くなんてありえない。2人といきなり離れ離れになることも……」


普通に考えれば、こんな構造を持つ城があるわけがない。防衛拠点のみの城壁の中ならともかく、普通に人が住む城をこんな構造にしてしまっては、不便で仕方がない。

ソラにはその理由に心当たりがあった。


「幻術、か……」


幻術、そう呼ばれる魔法も実際にある。新しく像を映したり、実在するものを隠したりする魔法だ。大抵は光属性だが、火・水・土・風・氷でも原理上同じことはできる。だが、今回のものはそれとは大きく違った。


「でも、光じゃ無いな……精神に干渉されたような……」


精神に干渉するという行為ができる属性。ソラには1つしか思い浮かばなかった。


「闇ならありえるのか……?」


実際、闇魔法に精神干渉の基礎的な物はある。ミルリリアが使用した魔法の中に、体感速度操作と思われるものがあった。これが本当なら精神への干渉もできそうだし、できるならばこのような幻術も使えるだろう。

一応闇魔法無し、精神干渉無しでも実現は可能そうだが、操作は途轍もなくシビアとなる。使える存在がいる方が驚きだ。


「闇魔法、しかもこのレベルなら……魔獣。いや、魔人か?」


本などで調べても、光魔法の熟練者は人類側に多く、闇魔法の熟練者は魔側に多い。逆側にもいないことは無いのだが、基本的にはこんな比となっていた。


「しかも相当な実力者……まともに戦ったら勝ち目は無いだろうな」


ここまで完全に翻弄されているのだ。気づかぬ間に死んでいた、なんてこともありえるだろう。


「けど……ここにはいないか」


もしいるのだったら、もっと直接的な行動を取るだろう。少なくとも、一方的な攻撃はあるはずだ。

それが無いということは、この古城に残されたプログラムのようなもので、術者は他の場所だろうとソラは結論づける。


「闇魔法の対策も必要だが……」


闇魔法には光魔法で対抗する。逆もまた然りだが、完全な対の2つが相手の相殺に使えるのは常識だった。恐らく精神干渉への防御も光魔法で可能なのだろう。

だが、それは今必要では無い。


「まずは合流だな」


ソラもまた、2人を探しすために進み出した。




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