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異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第3章 懐かしき日の本

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第6話 鉱魔②

「さて、ボス部屋だが……」

「どうしたのよ?」

「ソラ君?」


ゴールドゴールドやシルバーゴーレム、魔法使いのゴーレムを倒し、時折出てくるブロンズゴーレムやアイアンゴーレムを薙ぎ払い、ソラ達はボス部屋の前まで到達した。


「得物はどうする?」

「魔法具のままいくか、元の武器に戻すかってこと?」

「ああ、そうだ」

「ならわたしは関係無いんだね」


問題はこれである。現在ソラ達は、普段の刀と双剣を使っていない。その代わりとして、他のダンジョンの最奥で出た魔法具を使い、高い身体強化も利用したゴリ押しを行っている。大型武器をここで使うのに細かい技は必要無かったが、同じ方法がボスにそれが通じるか分からない。かと言って、普段の得物だと通用するか分からないのだ。


「私は……魔法具ね。双剣だと斬れないし」

「そうだな……俺もこのままでいいか。薄刃陽炎だと、失敗して抜けなくなりそうだからな」

「失敗なんてするの?」

「あれだけデカいんだぞ?失敗する可能性は十分あるさ」

「そうね。ゴールドとか、魔法使いが出たなら、もっと厄介なことがあってもおかしくないわ」

「そういうことだな。さて、準備は良いか?」

「ええ」

「勿論」

「じゃ、行くぞ」


今回は開けた瞬間に奇襲されることは無かった。そしてボスらしき影は、ソラ達から20mほど離れた場所に(たたず)んでいる。


「こいつは……」

「銀色ね……」

「でも、シルバーゴーレムより小さいよ」


それはソラが予想していた中で、2番目に最悪な相手。


「Sランクのミスリルゴーレムか……厄介なのが来たな」

「……最初から準備するね。時間稼ぎをお願いできる?」

「任せて」

「当たり前だ。その代わり、最高威力を叩き込め」

「分かった」


フリスは入り口の扉の前に待機し、一撃で倒せるよう魔力を高める。それも、普段は使わない詠唱をしてまでだ。ソラがそれだけの脅威と判断したのだから、フリスはそれを信じた。


「ゴールドと、同じかっ!」

「それ以上よ!頼んだわ」

「任された!」


ミスリルゴーレムもまた素早い。それゆえ自然と、上手く回避のできるソラが前に陣取り、ミリアがヒットアンドアウェイという戦法になった。


「硬っ⁉︎」

「何よこれ⁉︎」

「ひびは入ったけど、なぁ!」


だが、攻撃が通らない。ソラが全力で腕に叩き込んだハンマーも、ミリアが急降下で後頭部に打ちつけた大剣も、ひび割れ程度しか与えられ無かった。何回も同じ地点に攻撃を加えれば両方とも破壊できそうだが、すぐに壊すのは不可能だ。

その後も、ミスリルゴーレムの攻撃は続く。そして、ソラは攻撃を上手くさばいていく。ミスリルゴーレムは基本拳を叩きつけるばかりで、特殊な行動は一切無かった。ソラはそれを怪しんでいたが、時間稼ぎをするという意味なら楽だった。自分の足で避けるだけでなく、ハンマーを軽く振った反動で動き正面からずれる。そして振り返る隙にハンマーを叩き込んだ。安定しているが、素早く倒すこともできない。長期戦覚悟の戦いだ。


「きゃ!」

「ミリア!」

「大丈夫よ。防いだから」

「安全重視でいけ。こっちから隙を見せるなよ」

「分かったわ」


そしてミリアはソラの反対側から横薙ぎに大剣を振る。だが、ミスリルゴーレムは両手でソラを攻撃しているにも関わらず、後ろから来たミリアへ蹴りを食らわせた。後ろ蹴りなので威力は低めだが、ミスリルゴーレムの馬鹿力だとかなりのものだ。ミリアは大剣で防ぎつつ衝撃を抑えたが、それでも壁際まで飛ばされた。

長期戦はつらい、そう考えたソラが取るのは1つだけ。


「フリス!」

「良いよ!避けて!」

「ミリア!」

「分かったわ!」


ソラとミリアが一挙に退避し、棒立ちとなるミスリルゴーレム。そしてそれを狙うフリス。


「行って!ライトニングサン!」


再び放たれた白雷。溜めに溜めたその一撃は、直前で気づき防御体勢を取ったミスリルゴーレムを飲み込み、


「やった?」

「おいそれフラ「いるわよ!」……やっぱり」

「あれを受けて倒れてないなんて……」

「無傷では無いけど、まだ戦えるのか……使うしかないな」


四肢と頭部、特に胴体を守った両腕は溶け落ちる直前のようにボロボロだが、まだ動いている。守られた胴体は少し溶けた程度だ。

だがボロボロとはいえ、簡単に倒せるようになったわけではない。むしろ溶けた分が固まってしまえば、再度1からやり直すはめになる。ソラはそれを嫌がり、勝負を急ぐことにした。


「ミリア、駆けろ!フリスは弾幕と大技併用で足止め!できるだけ火を使え!」

「ソラ君は⁉︎」

「アレ使ってぶっ倒す」


できるだけ固まるのが遅くなるよう火を使わせ、時間稼ぎを2人にさせる。その間にソラは魔法具の槍を取り出し、いつかのように雷を纏わせる。


「いっちまえ!」


そして電光を纏い、飛んでいく槍。それはミスリルゴーレムの右腕を貫通し、心臓部を貫いた。


「終わった……の?」

「終わったみたいだな……」

「ソラ……痛いわよ……」

「ミリア、すまん。怪我は無いか?」

「なんとかね」

「一応調べさせてくれ。体の中に問題があったら困るからな」


ミリアは槍の衝撃波で吹き飛ばされ、すぐそばにあった壁に叩きつけられてしまった。衝撃波そのものがそこまで強く無かったため怪我は無いが、精神的には少しつらいものがある。

なのでソラはすぐさま診察を始める。医者志望というわけでは無いが、マンガや小説などで見たり、インターネットで調べた知識、そしてそれに魔法を組み合わせれば、簡単な検査なら完璧にできた。


「内出血無し……骨に異常無し……」

「ソラ、ちょっと恥ずかしいんだけど……」

「こんなところにまず人は来ないぞ?筋も……問題は無さそうだな。ミリア、痛みは無いよな?」

「ええ、無いわ。そうじゃなくて……こんな格好でいるのがちょっと……」

「ん?今さら隠す必要なんて無いだろ。魔力循環(気の巡り)に異常は……無い。よしミリア、体内も問題無しだ」

「こんな中途半端な格好が恥ずかしいのよ!……ありがと」


今のミリアの格好は、普段の軽装鎧を部分部分ではだけさせており、手足だけでなくお腹や鎖骨なども肌まで見えている状態である。確かに女性でこの格好は、そういう趣味を持っている人でなければ恥ずかしいだろう。


「どういたしまして。……じゃあ今度はこんな感じにしてヤれば「ソラ!」すまんすまん。ああフリス、ミリアの魔力の流れにおかしな所は無いか?」

「減ったくらいで問題無いと思うよ。でも何でわたしにも?ソラ君の方が精度は良いじゃん」

「ま、一応ってことだ。大丈夫なら、奥に行こうか」


壁に刺さった槍を回収して奥の扉を開ける。これはいつも通りのことだし、ちゃんと閉じた宝箱が置いてあるのもいつも通りだ。だが……


「……デカくないか?」

「大きいわね」

「何が入ってるのかな〜?」


その宝箱がやたらと大きかった。約2m×1.5m×1mというところだろう。大きすぎてソラとミリアは心配になっていた。


「ミリア、罠は?」

「今のところは無いと思うけど……もっとしっかり見させて」

「ああ、頼む」


いつも以上に念入りに調べていくミリア。何度も何度も確認していくが、反応は無い。


「……無いわね」

「そうか……」

「何でそんなに心配してるの?」

「この状況なら、オリアントスが何かしてきそうだからな……」

「私もそんな感じね。変な予感がするのよ」

「ふーん。それで、開けないの?」

「あ、ああ、開けるぞ」


ソラが戦々恐々としつつ開けた宝箱、その中には大量の魔水晶や貴金属のインゴット、普通の武器や大きな宝石も大量に入っていたりするのだが、最も多いのは貴金属とは異なる感じのインゴットだった。


「これって……何?」

「インゴット、よね?鉄、いえ銀みたいな色……え、まさか……」

「ああ、恐らくミスリルだ」

「ソラ君、分かるの?」

「なんとなくでだな。知識じゃなくて感覚でだ」

「へえ、便利なのね」

「便利か?知識としてすら入ってないことが分かるから、少し気持ち悪いんだが……」

「それもそうね」

「ちょっと……可哀想」

「ま、こうなったのは受け入れたからな。心配しなくて良いさ」

「そうじゃなかったら、私達が惚れるわけ無いわよ」

「襲ったお前らが言うな。さて、こいつをどうするか……神器を強化する。いや、だけど……」


ベフィアにおいて、ミスリルという魔法金属は貴重品である。一応鉱脈はあるが不純物が多く、鉱石と比べれば純度が高いミスリルゴーレムはほぼ出ないため、元の純度が低い。また加工が難しいため、精製してもそこまで純度は高くならない。硬く、粘り強く、魔法の伝導率も普通の金属とは比べ物にならないほど良いので、武器としての価値は高いが、それを増して高価だ。それゆえ、効果があるほどの純度(20%以上)を持つ武器は少ない。持っているのは近衛騎士団の実力者、もしくはSランク以上の冒険者の中で稼いでいる者くらいである。

また、現在の最高は純度50%ほどだ。だが、ここにあるのはミスリル純度100%のインゴット、それも大量にだ。そしてソラは、今ならそれを自由に加工することが可能だ。戦いに使うことで少しずつ神気が増え、ミスリル程度までなら加工できるようになった。

それゆえなのか、ちょっとぶっ飛んだことを思いついた。


「まずは……これも使って魔法具を神器化してやるか」

「え⁉︎」

「本気?」

「ああ、もう少し便利になるだろうしな。これだけあればできるだろうし、練習にもなる」

「練習?」


魔法具を神器化するというのもおかしいが、それだけ使っても本命分が十分にありそうなインゴットの量もおかしい。オリアントスはバランスを間違えたのではないか。


「武器と指輪のためのだ。こっちは本気で作った方が良いからな。……前よりもう少し神気を増やせるか。ミリア、フリス、今のうちに武器と指輪を貸してくれ」

「分かったわ。ちょっと待ってて」

「外しちゃうのか〜」

「改良するだけじゃないか」

「フリス、そんなこと言わないの」

「というか、わざとだろ」

「えへへ……ごめんなさい」

「まあ良いさ。早く貸してくれ」

「はーい」


ミリアとフリスから受け取り、準備を終えると、ソラは前のように、白と金の炎に薄金色の金槌を出す。それで打っていくのだが、今回は途中でミスリルのインゴットも加えていった。加えると同時にミスリルは溶けだし、神器として一体化していく。魔法具には各2つ、指輪には各1つ、薄刃陽炎と双剣と杖には各5つずつ使ったのだが、インゴットはまだ10個以上残っていた。

そして完成した神器達。まだまだ本物には程遠いが、すでに人が作れるレベルを大きく超えている、破格の武器となった。

そしてそれは、新たに必要なものができたことを意味する。


「なあ、双剣と杖に名前をつけないか?」

「え、名前?」

「銘ってやつ?」

「ああそうだ。神器にするなら、あった方が良いだろうな」

「へえ、どうしよっかな〜」

「ああ、神関連の名前はできるだけやめておけよ。一応、別の神の作品ってことになるからな」

「分かったわ。そうね……ルーメリアスよ」

「わたしは……オルボッサムにしよっと」

「ちなみに由来とかはあるのか?」

「物語に出てきたお姫様の名前よ。実在はしてないし、良いでしょ?」

「子どもの頃に持ってた人形の名前だよ」

「それで良いだろうな。ああそうだ、こいつらにも名前をつけないと。まあ、適当でもいいか」


名・銘はそれぞれの個の存在を示すものだと言われている。神器と呼ばれる格になると、それは途轍も無い重要性を示すのだ。薄刃陽炎は深く考えずにつけたものだし、前回の神器化で付けなかったのは必要なほどの格に至って無かった。だが今回は格が上がり、あった方が都合が良い状態となった。まだ無くても問題は無いが、ソラは付けるべきと判断し、2人に頼んだのだ。最も、本物の神器に比べればオモチャ以下の性能しか無いのだが。なお、指輪にはソラがスパティアルリングと名付けた。特に意味は無いが。

また魔法具もソラにより、雷の槍はライルバード、水のレイピアはアクレンティア、火の大剣はファウガスト、氷のハルバードはアイリーガル、風のナイフはウィンドル、土のハンマーはアースブレイカー、そして魔法の弓はインビジブル、という名がつけられた。同じく特に意味は無い。


「お疲れ様」

「はい、お水」

「ああ、ありがとな。流石にこの数は疲れた」

「休憩すれば良かったのに」

「それでも良かったんだけどな。一気にやった方が感覚が続くと思ったんだよ」

「確かにその方が良いよね。わたしも魔法の練習の時は続けてるもん」

「私もそうね。中断すると変な感じになるし」

「さて、この後は……ここに泊まるってことで良いか?進むにはちょっとな……」

「良いわよ。ミスリルゴーレムと戦って、私も疲れてるし」

「わたしも魔力を使いすぎて疲れたから」

「じゃあ、それで良いか。付き合わせてすまんな」

「気にしないわよ。夫婦だもの」

「大丈夫だよ」


新たな(神器)を手に入れても、3人は変わらない。









ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー










「……凄い威力……」

「まさか弓でゴーレムを貫けるとは……」

「あれは貫くってレベルじゃないと思うよ?」


完成した神器、それのあまりの効果に3人は唖然としていた。ファウガスト(火の大剣)はシルバーゴーレムを縦に真っ二つ(かなり溶かした)にし、インビジブル(魔法の弓)に射抜かれたゴールドゴーレムは胸部に直径1mほどの穴を開け、壁まで吹っ飛んだ。化け物じみて威力が上がっている。


「ふっ!」

「やぁ!」


他ももの凄い。ライルバード(雷の槍)でシルバーゴーレムを突けば胴体が砕け、アースブレイカー(土のハンマー)で殴ればゴールドゴーレムがひしゃげ、アクレンティア(水のレイピア)で突けば何の抵抗も無くシルバーゴーレムの核まで貫いた。ウィンドル(風のナイフ)を振れば離れていてもシルバーゴーレムの腕が切断され、アイリーガル(氷のハルバード)を振ればゴールドゴーレムが凍り、砕ける。


「へえ、凄いな」

「斬れるってのは良いわね」

「簡単かんたん〜」


だが本来の得物は、より格が違った。ルーメリアス(ミリアの双剣)はシルバーゴーレムを細切れにできるようになり、オルボッサム(フリスの杖)を使えば魔法使いのゴーレムに対し、ただの弾幕でも倒せるようになった。そして薄刃陽炎は、ゴールドゴーレムを何の苦もなく一刀両断する。

まあ、これらの武器は全てソラ達3人の技量と魔力量を前提としたものであり、他の人間ではまず扱えない。魔法具の方は元から効果は魔力を通さないと発動しなかったし、他の3つも同じようになっている。元の効果を増幅した上で植え付けたものだが、上手く使うには出力を上下させるなどのコツが必要だ。それに、上記ほどの効果を出すにはかなり多量の魔力をつぎ込まないといけない。これは簡単に習得できるものではなく、ソラ達だって何回も失敗していた。

またソラは全てに使用者制限を施しており、3人の間では自由に使うことができるが、他の人が使うと、これらはただ切れ味の良い武器でしかない。(これにも刃の最適化はついている)


「さて、今回化け物じみた武器を手に入れたわけだが」

「作ったのはソラ君だよね」

「……こいつの欠点も分かってるよな?」

「逸らすのね。欠点は使いすぎれば魔力消費が激しくなるってことよ。合ってるでしょ?」

「ああそうだ。行きと同じ出力なら消費は少なくなってるが、一撃で倒すなら、上手く使わない限り増えるな」

「もっと上げるならもっと多く、だね。使う瞬間だけ上げるなら結構少ないみたいだけど」

「その通りだが、上限はあるから気をつけろよ。それと、こいつらは身体強化の補助なんてできないからな」

「分かってるよ」

「そんなものの付けられたら、慣れるのにかなりかかるわ」

「それもそうか。まあ、習熟するのは後にして、今はさっさとこのダンジョンから出るぞ」

「ええ」

「分かった」


そのまま3人は行き以上の無双を繰り返し、地上へ駆けていった。










もし、ソラ達がミスリルゴーレムから得た魔水晶をギルドで見せればSランクになれますが、3人はそんなことをしませんでした。

鉱魔で確認された最高ランクの魔獣はシルバーゴーレムで、Sランクの魔獣はいないためです。周りに踏破した、もしくはかなりの深層まで潜ったと思われ、面倒ごとに巻き込まれる、とソラ達は考えました。

なのでミスリルゴーレムの存在は知られず、ソラ達はAランクのままです。踏破しても報告の義務が無いので問題はありません。


なお、オルセクト王国近衛騎士団のライハートとアノイマス、そしてリーナが持っている武器はミスリル製です。ベフィアの中では、そこまで強いというわけではありませんが。


報告していないことを書き忘れていたので、「沼土③」と「戦窟②」に追記しました。

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