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異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第3章 懐かしき日の本

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第3話 廃屋①


「ヒィィィィ!」


迫る人型と叫ぶ少女、そしてその後ろには男と女が1人ずつ。その2人は冷静だ、いや冷静になるしか無かった。


「ミリア、落ち着け」

「怖いものは怖いわよ!」

「そう言ってるのに、どんどん倒してるよね」

「怖いもん!」

「おい、口調変わってるぞ」


その人型は、ミリアと双剣によって次々に斬られ、砕かれ、倒されている。古びた屋敷のようなダンジョンの中を縦横無尽に跳びまわり、叫びながら魔獣を倒すミリア、意外と器用だ。

そのままの勢いで、ミリアはダンジョンを突き進んでいく。途中で見つけた罠も、どんどん壊していた。


「フリス、ミリアってこれが苦手なのか?」

「わたしだって知らなかったよ……話を聞いてた時はこんな風じゃなかったのに……」

「まあ、怖いと言えば怖いんだが……」

「ミリちゃんが、ね……」

「あそこまで叫んでたら、冷静にもなるよな……」

「でもさあ、なんでミリちゃんが先頭なのかな?」

「俺達の方が倒しやすいのにな。いくらエンチャントしてるとはいえ、放出系魔法には届かないのに」

「そうだよね」

「それにキツい(にお)いもあるのになぁ……俺はようやく慣れたところだぞ」

「わたしはまだ無理……」


ミリアの獅子奮迅の戦いのおかげで(せいで?)、ソラとフリスには仕事が回ってこない。現れたら片っ端からミリアが倒しているからだ。だが、そろそろ止めた方が良いだろう。流石にボス部屋まで体力を(たも)てはしないのだから。

なおミリアは1体も殺していない、いや殺せるわけがない。何故なら、ミリアが叫ぶはめとなった人型は……


「ゾンビ!スケルトン!ゾンビ!ゾンビ!ゴースト!ゾンビ!イヤァァァ!!!」

「めちゃくちゃだな〜……」

「どうする?わたしじゃ何もできないよ」

「そうだな……ミリア、落ち着け!」

「来ないでぇぇぇ!!」

「声をかけるだけじゃダメみたいだね」

「というか、さっきより酷くなってないか?」

「……なってるね」

「はあ……フリス、アンデットの排除を頼めるか?」

「任せて。火の制御はしっかりするから」

「頼む。さてミリア、大人しくしろ!」

「イヤァ!やめてぇぇぇ!!」


フリスにアンデットを火魔法で排除してもらい、ソラはミリアを羽交い締めにする。だがミリア、捕まった瞬間に全力で暴れだした。見た目は両手両足をジタバタ動かしているだけだが、ミリアは身体強化を全力で使って、とんでもない力を発揮している。上手くツボを押さえているはずのソラですら、振り回されかけていた。


「こら!そんなに暴れるな!」

「放してぇ!ヤメテェェェ!!!」

「ぐっ……仕方ない、悪く思うなよ!」

「ぐう、うぁ、あ、あ、あ……」


抑えがきかないため、ソラなミリアの首に手を回し、締めた。そして気絶した段階で放し、状態を確認する。ミリアは意識は無いが、ちゃんと息をしていた。


「ミリちゃん、どうしたの?」

「気絶させただけだ。後遺症も残らないようにな」

「よくできるね」

「これも慣れだな。前の世界じゃ稽古でよくやってた」

「そうなんだ……ミリちゃんはどうする?」

「そうだな……俺が背負って運んで行くか。近接戦闘はほとんどできなくなるから、近づけないようにしないとな」

「任せて!」


そのまま2人はミリアを運びつつ、ダンジョンを進んで行った。









ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー









「ん……」

「あ、ミリちゃん。気がついた?」

「フリス?あれ、ここは……」

「おおミリア、ようやく起きたか。ねぼすけだな」


ミリアを気絶させてから5階層ほど降りた休憩中、ようやくミリアが目覚めた。

ちなみに他のダンジョンでは侵入させないタイプの結界を使っていたが、ここでは少し性質を変えている。ソラは結界を厚めに作って光魔法を混ぜ、入ろうとしたものを浄化させるようにした。おかげで、近づいたアンデットはどんどん死んでいる。窟魔ほど魔獣が多いわけではないが、結構な数が集まっていた。そのせいか、今はほとんどアンデットが出てこない。


「ソラ?私はどうしたの?」

「暴走したんだが、覚えてないか?」

「暴走……?そんなこと……あ」

「覚えてたか」

「う……ごめんなさい」

「どうしてああなったか、分かるか?

「初めて見たアンデットが気持ち悪くて……見ているのも嫌になって……」

「それで暴走か。戦うのは良いが、ちゃんと話とかは聞いてくれよ?」

「でも、できるかどうかは分からないわよ……」

「まずは落ち着け。自分を抑えられるようになってから戦えば良いんだ。ここを練習場だと思え」

「……分かったわ。お願いね」

「全部ソラ君に取られちゃった……わたしも同じだからね、ミリちゃん」

「フリス……ありがと」

「取り敢えず、休むぞ。練習はその後だ」


ミリアへも飲み物を渡し、3人はくつろぐ。ついでにソラは結界を他のダンジョンと同じ状態に戻す。倒しすぎてはミリアの練習にならないからだが、偶然にも休憩が終わるで出てこなかった。


「来たな……フリス、待ってろよ」

「うん、分かってるよ」


そしてようやく、アンデットが再出現する。

3人が見つめる先に現れたのは、Dランクのゾンビが4体とゾンビドッグが2匹、Cランクのスケルトンが2体とグールが1体、ゴーストが2体だ。ミリアが無双していた時はゾンビがほとんどだったが、階層が下になったことで他も混じっていた。


「あれ?」

「どうしたんだ?」

「嫌悪感は確かにあるんだけど……暴走するほど倒したいってわけじゃないわね」

「ちなみに今は?」

「倒しに行きたいけど、ソラと話すために待ってる感じよ」

「それなら……意識の持ちようだったのか?1回暴走して、話し合って、何かが変わったんだろう」

「そうなのね……じゃあ、遠慮なく行って良い?」

「エンチャントしてからな」

「分かってるわよ」

「じゃ、行ってこい」


火を纏った双剣を持ち、駆け出すミリア。その後ろ姿に、先ほどまでのような恐怖感も緊張も、気負いも存在しない。あるのはただ、戦うという意思だけだ。


「やぁ!」


壁、床、天井を蹴り、三次元的に移動して攻撃するミリア。殲滅速度は下がったが、安定している。もとの戦い方に戻ることができていた。


「やっぱりこっちの方がミリアらしいな」

「暴走してた時は、イノシシみたいだったしね」

「誰が豚よ!」

「豚とは言ってないし、絶対違うから安心しろ」

「そ、そう……それより、もう良いわよね?私自身のことは分かったわよ」

「ああ、もう良いな。フリス、やるぞ」

「はーい」


残っていたアンデットは、ソラとフリスが共同で放った火と雷の魔法で殲滅された。勿論、ミリアが離脱した瞬間を狙っている。

なお、アンデットによく効く魔法は火、雷、光だ。この3つには浄化の力が込められており、死者(アンデット)を消し去ることができる。

なお、火魔法を使う時は酸素を無くさないよう、またここでは床や壁に火をつけないよう注意する必要がある。2人には大した問題では無かったが。


「よし、もう問題は無さそうだな」

「ええ、心配かけたわね」

「気にしなくて良いよ。戻ってくるのは分かってたし」

「ああ、それだけ信用されてるってこと、ミリアだって分かってるだろ?」

「ふふ、ありがとね」


このまま3人は仲良く攻略を再開した。ミリアも暴走することなく、安定した歩みだ。


「それにしても、結構臭いがキツいわよね。2人は大丈夫なの?」

「「……今さら⁉︎」」


……ちゃんとミリアも慣れることはできた。まあ、かなり時間はかかってしまったが。











ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー









「こいつは、骨だけの竜……いや、飛竜か」

「アンデットワイバーンね。たしかBランクの」

「でもここじゃ、飛べないよね」


廃屋のボス部屋にいたのは、全長6mほど、全身の肉が無くなって骨だけとなったワイバーンだ。ブレスは吐けない、毒も無いと、弱くなっているが、皮膜の無い翼でも空を飛べる厄介な魔獣だ。

だがここは屋敷のようなダンジョンの中、天井は低いためどうやっても飛べないだろう。本来の相性差が存在しなくなっていた。


「さて、さっさと片付けるぞ」

「そうね。この部屋にいるだけで相当弱体化してるんだし」

「早く終わるだろうね」

「ああ、最初は俺が、っち、先に動かれたか。散開!」


知能があるのか無いのかは分からないが、アンデットワイバーンは3人の打ち合わせを無視し、ソラへ向かって太い骨の尾を振り抜く。ミリアとフリスは避けるが、ソラは動かず……


「脆いな」


簡単に尾を両断し、斬り裂かれた先端部分は壁まで飛んでいった。さらにソラは連続で薄刃陽炎を振り続け、どんどん削り取っていく。


「確かにそうね」


ミリアは肋骨周辺を跳びまわり、光のエンチャントをされた双剣で叩き斬っていく。もうすでに胴体部はボロボロで、普通の生物なら死んでいる。


「これで、終わり!」


前衛2人に気を取られていたアンデットワイバーンは、ミリアが作り出した巨大な雷に飲み込まれて消えていった。当然ながらソラとミリアに怪我は無い。


「さて、最奥はこっちか」

「どう考えてもあの扉よね。早く行きましょ」

「風魔法であの扉を開けれるかな?」

「おいおい、無茶はす「開いた!」……マジかよ」


ソラが手をかける前にフリスの風魔法で扉は開いてしまう。しかも風をぶつけたのではなく、圧力をかける形で実行していた。確かにこれは便利なのだが、ソラからしたらお約束を無視されたようで少し嫌だったりする。


「罠は?」

「いつも通りね。一切無いわ」

「じゃあ、開けるね」

「ああ、っと、こいつはハンマー……土の付加か。それも強力なやつだな」


入っていたのはかなり大きめ、ソラの背丈並みに高いハンマーだ。ハンマーという武器自体が強度を上げる土の付加と相性が良く、魔法具になってより強固となっていた。ハンマーを使う人からすれば絶対に欲しい一品であろう。


「大きいわね。ソラが持ってる?」

「そうするか。大剣と槍とハンマーとハルバード……全部投げれば良いな」

「勿体無いわよ⁉︎」

「勿論回収するし、できるだけ壊さないように使うさ」


だがこれらは、ソラからすれば高威力の投擲武器でしか無い。


「そういう問題じゃないよ……全部投げる武器じゃないんだからね?」

「ああ、知ってる」

「それでも投げるの?」

「俺にはこれを普通に扱うことはできないし、ミリアはスタイル的に使いにくいだろ?」


ミリアが一通りの武器を使えるといっても本職は双剣、スピードが長所の武器である。そのためミリアが重量系の武器を使うのは色々と問題があるだろう。


「まあそうね……」

「だったら投げるのが1番なんだよ。変な理論だけどな」

「仕方ないわね。ちゃんと使ってよ?」

「任せろ。これとかならゴーレムとかの相手で普通に使う……その時って、ミリアも使うのか?」

「……使うわね」

「それなら、投げ渡すとか色々できるわけだ」

「そういう使い方の方がマトモに感じるわね……その時は頼むわよ」

「ああ」


まあ、普通に使わないというわけでは無いのだが。

この後3人はここに泊まり、起きてから戻っていった。



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