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異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第3章 懐かしき日の本

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第1話 迷宮都市タジニア①

遅れました

新章開幕です

「これは……」

「何で?」

「ええと……」


新たな町、タジニアに着いたばかりだが、ソラ達は困惑している。まあ、3人の前にはそうなってもおかしくない物があった。


「無防備と言うのか無関心と言うのか……」

「分からなくは無いけどね……」

「どうしてなのかな?」

「そこまでは分からん……」

「それは当然よ。ギルドでも聞いてたじゃない」

「答えてくれ無かったね」

「あの受付嬢も分かってなかったと思うけどな」


危険性は低いかもしれないが、このまま放置というのはどうなのだろうか?


「まさかダンジョンの入り口が町の中にあるなんてね」

「いくらダンジョンから魔獣が出てきたことが無いと言ってもな……」


ダンジョンの魔獣は魔力生命体と予想されており、文献ではダンジョンの外に出てきたことはなかった。それなら町は安全と言えるが、確実な保障は無い。

だが、町の住人は受け入れているようなので、為政者としてはこのまま放置した方が楽なのだろう。


「どうするの?」

「今日は行かないぞ。いつも通り情報収集からだ」

「ええと、ダンジョンは町の中に4つ、外に3つだったわね」

「行くのは未踏破だから、4つだね」

「順番は……窟魔、廃屋、蟲巣、鉱魔で良いか?聞いた順だが」

「どういう順番でも変わらないんじゃない?」

「そうだね」

「じゃ、情報収集か。その前に観光もな」

「やったー」


なおこの町、前線に近いため冒険者だけでなく兵士も多い。もしかしたら、万が一の対策もできているのかもしれない。










ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー











「ほら、買ってきたぞ。あつ「あふっ⁉︎」……言わんこっちゃない」

「気をつけなさいよ、まったく」

「ごめんなさい。あふっ、あつっ」


ソラが買ってきた串焼きにがっつくフリス。熱くて苦労するのも含めて、よくあることだ。

そんな3人の通る場所は、商売について知っていなければ分からない点があった。


「前線が近いのに、人が多いんだね」

「近いからこそだ。冒険者や兵士が多いんだから、商売もしやすい。買い手も金持ちが多いだろうしな」

「そうね。こんなところに来るのも大変だろうけど」


迷宮都市はその名の通りダンジョンが多いため冒険者も集まりやすい。だがそれだけではなく、前述の通りタジニアは前線に近く、強力な魔獣が出現することも多い。そのため、Aランク以上の冒険者が多く滞在している。

つまり、金払いの良い客が多い。それゆえ、この町は商売も盛んなのだ。


「次はこっ、と、こっちだな」

「ここはダメね」

「……ソラ君、行っちゃ駄目だよ」

「分かってるさ。まあ、俺は2人がいれば十分だからな」


まあ冒険者や兵士が多いということは、そういった対象向けの店もある。3人が入りかけた通りは歓楽街、それも娼館やそういう酒場の多い場所だった。

まあ、ここは大層繁盛していた。青年だけでなく壮年の男性まで入っていくのはどうかと思うが。

当然ながら、そんな所は無視してソラ達は進んでいく。妻が2人もいるので、ソラに興味は無かった。


「ここって、武器とか防具とか置いてある所だね」

「そうだな……寄ってくか?」

「いらないわね。ソラのおかげで磨耗してないから」

「ソラ君は?」

「俺もいらないな。消耗も無いし、今ので十分だ」

「刀をもう1つ欲しいって言ってたわよね?」

「戦い方が安定してるからな……必要なら欲しいけど、今はいらないか」


今は冒険者向け、それも武器や防具の店が多い通りにいる。もっとも、神器化したため壊れもしない武器や、攻撃を受けないため損耗しない防具を買い換える必要は無い。第一、かなりの評価を得ているドワーフが打った武器防具、それを超える逸品が簡単に買えるわけがない。旅暮らしの身ではオーダーメイドは信用が足りず、難しいのだ。

またソラは、二刀流で考えられる利点よりも、今の安定性の方を取っている。もし必要なら、新しく刀を選ぶだろうが、そうでなければ買わないことにしていた。薄刃陽炎を不完全ながら神器としたおかげで、磨耗しないのもあるのだろう。


「さて、何処に行く?」

「お店!食べ物!」

「図書館に行きましょう。ダンジョンのことが書いてあるかもしれないし」

「そうだな。まずは図書館に行こうか」

「え〜」

「後で店も回るから。文句言うなって」


ソラ達は図書館を目指し、町の中心方向へ進んでいく。すると、とある一団が目に入った。その中心にいるのは、10〜12歳くらいの男の子だ。


「ん?あれは」

「ジャグリングね。凄いわ」

「あんなにできるんだね。魔法だったらもっと凄いことできるけど」

「それじゃあの子が可哀想だ。自分の体でやってるんだからな」


少年はボール同時に5個使い、ジャグリングをしている。この年齢でこのレベルはかなりのものだろう。

関心し、面白く思いながら見る3人。すると……


「すみません。そこのお兄さん、ちょっと手伝ってもらえますか?」

「ん?俺か?」

「はい」

「行きなさいよ。面白そうだしね」

「頑張って〜」

「分かった。何をやればいい?」


ソラは声をかけられた。いつの間にか集団の前の方、それも男の子が置いた道具入れの近くにいたソラ達。ソラはその中で1番前にいたためのようだ。

ちなみに、男の子は話している最中もジャグリングをしている。かなり器用だ。


「そこのボールを全部投げてください」

「……いいのか?20個くらいあるぞ……」

「はい。それです」

「……じゃあいくぞ。1、2、3……」


ソラはどんどん投げていく。男の子はそれを受け取って上に投げる。ソラはタイミングを分かっているわけでは無いが、難しい時に投げても落とすことは無かった。かなりの腕前である。


「19、20、21、ラスト」

「「「「「おお〜」」」」」

「……凄いな」


ソラが全部投げ終わると、大量のボールが楕円を描いて飛ぶ絵が見れた。しかも、ボールどうしの間隔は短い。地球なら即刻サーカス団に入れるだろう。

ジャグリングを3周ほどすると、男の子はボールを片付けていく。全てをもともと入っていたカバンへ正確に投げ込んでいくさまは、ある種美しかった。


「慣れれば簡単ですよ。お兄さんもやってみますか?」

「いや、いい。俺が得意なのは(こいつ)だからな」

「そうですか。なら、お願いできますか?」

「そのリンゴを斬れと?やってやるさ」


男の子とソラの間は2mほど。かなり近いが、ソラは腰を落とし、居合の構えを取った。


「はいっ!」

「ふん」


男の子がリンゴ投げ、ソラが薄刃陽炎を抜き放つ。そして投げられたリンゴは8つに斬られ、全てソラが受け取る。

わずかな距離を飛ぶリンゴ。それの軌道をほとんどずらさず、さらにそのわずかな時間に4回斬って刀を収め、8つ全てを受け取る。ソラもサーカス団に入った方がいいかもしれない。


「「「「「おお〜」」」」」

「……すごいですね」

「慣れれば簡単さ。お互い様だろ?」

「そうですね。ありがとうございました」

「先に楽しませてもらったのは俺だ。こっちこそありがとな」


そう言ってソラは離れていくが、男の子はまだやるようだ。むしろ周りの人は増えている。どんどん人が集まっていた。


「ソラも上手なのね」

「そんなことじゃないさ。身体強化をフルで使った裏ワザだよ」

「でも、すぐに反応できたソラ君は凄いよ」

「そうか?」

「うん!」

「……まあ、そういうことにしておこうか」

「照れたわね」

「いや、照れてないぞ」

「照れたよね〜」

「いやいや!違うからな⁉︎」


今までからかう側だったソラが押されている。珍しいこともあるものだ。









ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー










「……どうだった?」

「……そんなに良くないわ」

「疲れたのにね……」


翌日、冒険者ギルドの一角。他の町と同様に、分かれて情報収集をしていたソラ達だが、その顔は暗い。


「それにしても結構使ったな」

「銀貨何枚分使ったかしらね」

「ええと……わたしは3枚くらい?」

「3人とも同じようなものだろうな。情報の価値が分かるくせに大した話を持ってないってのは……隠されたか」


迷宮都市と言うだけあって、ダンジョンの情報は多い。だが、貴重なようだ。来たばかりの余所者に対し、そんな簡単に教えてはくれなかった。

だが、この町の人が不親切だ、というわけでは無い。自分達が苦労して得た結果を金で買われるのが嫌なのだそうだ。言外に、もしくははっきりと言っていた。


「概形や魔獣について少し聞けただけでもマシね……このまま行きましょ。探索の練習にもなるわ」

「それもそうか。1から探索ってやったこと無かったな」

「面白そうだね!」

「いや一応命かかってるんだが……」

「まあ、フリスだしね」

「そうだな。じゃあ、情報をまとめた後に観光でいいか」

「馬鹿にされたみたいなんだけど……」

「気のせいだ。ほら、行かないのか?」

「行くよー!」

「じゃ、さっさとやるぞ」

「はーい」


少なかろうと情報の精査は重要。命がかかっているのだから、ソラ達はしっかりとやっていった。





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