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異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第2章 人の光と人の闇

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第19話 帝都リンガン④

「アルが誘拐されたぁ⁉︎」


夜のリンガン、ゼーリエル侯爵家邸。そこの客間にソラの大声が響いた。対面しているのはオリクエアだ。


「正確には、お前達の宿に行こうとして屋敷を出て行き、(さら)われたってところだ」

「同じだろ……理由は分かるか?次期侯爵を誘拐するような理由が。身代金程度じゃあ、相手が大きすぎるだろ?」

「それは……」

「すまん、話しにくい内容か?」

「いや、話そう」


アルベルトが誘拐されたが、オリクエアはそこまで暗くはない。なぜなら……


「我がゼーリエル家は、帝国の諜報を担う家だ。今やっているのは犯罪捜査ばかりだがな」

「……そんなことを俺達に言って良いのか?他に知っている人は?」

「関係者以外は皇帝陛下だけだ。お前達は……今は違うが、関係者になれば同じだろ?」

「暴論じゃないか。まあ、それはつまり」

「ああ、アルの救出依頼を出す。勿論、報酬もな」

「救出以外が本来の依頼か」

「そうだ」


ソラ達に依頼するからだ。自分の手駒だけだと厳しくても、一騎当千の兵がいればどうとでもできる。それに、ソラ達が断るとは思っていなかった。


「ゼーリエル家だけじゃできないのか?」

「相手が悪い。誘拐したのはトリスト・ミナリエア侯爵の手の者だが、奴は闇ギルドと繋がっている」

「捜査していたがバレて誘拐された。しかも強い奴まで混ざっている、ってとこか?」

「ああ、冒険者で言えばBランク相当が複数、Aランク級までいる。いくら鍛えてるといっても、諜報専門のウチには厳しい」

「かと言って、騎士団に頼むと秘密がバレるか。大変だな」

「騎士団が動けるだけの時間があるかも怪しいがな。本当に、お前達がいてくれて助かった。受けてくれるか?」

「当たり前だろ」

「勿論よ」

「当然だよ」


勿論、ソラ達も行く気満々だった。親しくなった者が誘拐される、3人が動くには十分な理由だ。


「ありがとう。お膳立てはウチの者がするから、強襲と救出を頼めるか?」

「分かった、期待して待ってろ」

「頼む」


そしてソラ達は夜の町に駆け出して行った。








ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー









「ミリア、フリス、本当に行くんだな?」

「そうだよ?」

「何よ今更」

「相手は盗賊とはわけが違うぞ。それでもか?」

「当然だよ」

「言ってたでしょ、業は一緒に背負うって」

「分かった。いつも通り、あてにさせてもらうから、頑張れよ」

「うん」

「大丈夫よ」


ターゲットの屋敷の近く、屋根の上に登ったソラ達のそばには、ゼーリエル家の私兵がいる。頭まで覆う黒服と魔法具らしき物によって変えられた声により、男か女か判別がつかない。なおその私兵の役割は、ソラ達への仕事の細かな説明だ。


「ミナリエア侯爵家、帝国一の武の貴族か」

「それに、コロッセオの領主でもあるわね」

「大変そう……」

「捕縛の対象は当主トリストとその次男ミルデローガ、その他侯爵家の上位者です。長男のイオニアス様、三男のヘルグレス様はこちら側なので協力するようにしてください」

「事を片付けたのはその2人ってことにするのか?」

「はい、優秀な方々ですので、問題は無いかと。今は軟禁状態ですので、何もできておりませんが……」

「解放は?」

「我々が行います。それと、今屋敷の中で自由にしている者は全て敵と思ってもらって構いません。イオニアス様側の人は軟禁か監禁のどちらかの状態にあります」

「酷い状況だな……分かった。俺達の役割はアルの救出と闇ギルドメンバーの討伐だな?」

「はい、そうなります」


貴族、しかも帝国でも生粋の武家だ。しかも闇ギルドまでいる。全戦力と当たるわけでは無いが、当たり方によってはソラ達でも苦戦するかもしれない。

だが、ミリアとフリスに不安は無い。ソラと一緒で負けるわけがない、と信じているのだ。そんな3人へ、説明者とはまた別の黒服が近づいて来た。


「ソラ様、ミリア様、フリス様、こちらを上からお召しになってください」

「黒いフード付きマントに目出し帽……人相を隠すためか?」

「そうです」

「必要なの?」

「はい、貴方方が我々と繋がっていると知られては、互いに厄介ごとに巻き込まれる可能性がありますので」


ソラ達が渡されたのは、フードがあり全身を覆えるほど大きさの黒いマントと目だけを出すタイプの目出し帽、というよりは忍び装束(しょうぞく)の頭巾だ。

黒服の言う通り、強かろうとただの冒険者であるソラ達では貴族の相手はしづらい。ちゃんと3人とも分かっているので、この申し出はありがたかった。


「それなら俺は薄刃陽炎を使わないようにするか」

「いえ、そこまでする必要は……」

「大丈夫だよ。ソラ君は素手でも強いから」

「魔獣相手に素手で勝ったこともあるわよ」

「……そうですか。ならばお願いします」

「互いの名前も言わない方が良いな」

「分かったわ。仮名(かめい)で呼ぶ?」

「いらないだろ。名前を呼ばない程度で連携できないような仲じゃないしな」

「そうだね。わたし達なら大丈夫だよ」


会話をしても、目は屋敷から離さない。今回の作戦、ソラ達はアルの救出が目的だが、ゼーリエル家の私兵が進入するための陽動も行う。最も危険な役割だ。


「ミリア、フリス、準備はいいな?」

「大丈夫だよ」

「いつでも良いわ」

「じゃあ行くぞ。正面突破だ!」


だがそれは、ソラ達の意思を折りはしない。

3人は屋根から飛び降り、門まで駆ける。


「オイ貴様ら!なんだその、ガァ!」

「なっリー、グギャ!」


疾走する3人の黒服。どう見ても怪しいが、ミナリエア家の2人の門番は声をかけきることはできなかった。

1人目はミリアによって首を斬り飛ばされ、2人目はソラの貫手(ぬきて)により首を貫かれた。そして門はフリスが火球により吹き飛ばす。


「よし、このまま暴れるぞ」

「集まってきてるよ。20人くらい」

「殲滅しながら玄関へ突入だ。行くぞ」

「分かったわ」

「貴様らー!」

「捕らえろ!いや殺せ!」

「やらせないよ」


また、他の場所に配置されていて、門が破壊された音を聞いて接近した者は全員フリスにより無力化された。数多の小さな風弾により全身を貫かれ、絶命する者も多い。そしてその間に屋敷の玄関先まで到達した。


「容赦無いな」

「する必要ある?」

「無いな」

「もう突入よ。注意してね」

「ああ、待ち伏せは……無いな。行くぞ」


大きな観音開きの扉、それの片方を開いてソラ達は突入した。探知の通り待ち伏せは無かったが、少人数ずつソラ達の方に来ている。完全に作戦通りだ。


「貴様ら、ここで止ま「邪魔だ」ゲフゥ!」

「アル君、何処にいるのかな?」

「部屋の1つじゃないの?」

「……もしくは地下だな」

「え?」

「隠れて闇ギルドと会うなら地下が1番だ。そこにいるとしたら?」

「探すね」

「頼む。見つかったなら、多分そこにいる」

「人が多いんだったら、可能性も高まるわね」

「地下への道を見つけたよ!」

「よし、案内してくれ」


邪魔者を排除しつつ進んだ先、そこは1階にある図書室の一角だ。目の前にあるのは本棚の1つだが、その奥に通路らしき反応があった。なお、図書室内にいた見張りは血を流して倒れている。


「ここだよ」

「どうやって開ける?」

「吹き飛ばせば良い」

「ちょっと待っ」

「ふん!」


本棚はソラの正拳突きによって破壊され、通路が露わになった。そこはすぐに螺旋階段となっていて、下10mほどに床がある。そして、螺旋階段を上がってくる敵がいた。


「私兵じゃない……ここから下は闇ギルドの領域か」

「みたいだね」

「室内なのに弓装備までいるんだな」

「飛んできた矢を掴み取って投げ返さないでよ」

「当たったから良いだろ。それに、できるようになったのはベフィアに来てからだ」

「そういう問題じゃないわよ」

「ミリちゃんも、奪った武器を投げてるじゃん」

「そう言うフリスが1番倒してるんだからな?」

「……やっぱり似た者同士ね、私達」

「本当だな」

「そうだね」


ソラ達はまだ3分の1も進んでないが、倒された闇ギルドメンバーの数は20を超える。彼らからすれば災厄にも近い存在である。


「なんだよあいつら!」

「知らねえよ!」

「どこの組の連中だ!」

「同業者じゃないかもしれんぞ。連kガァ……」

「おい、大丈夫か!」

「連携は上手いよな……どっかの貴族の私兵か?」

「そんな連中がこの屋敷に来るか!」

「現に来てるだろ!」


雑魚の会話は見当違いな方向へ向かっていった。だが結果がどうであれ、皆殺しにすれば秘密は守られる。そしてそれを実践していく3人。


「喰らえ、ファイアランス!」

「効くかよ」

「なっ⁉︎魔法が消え、ゴファ!」


放たれた魔法は途中で消え、放った魔法使いは風弾で土手っ腹に穴を開けて階段から落ちた。

ソラは敵の魔法に向かって、魔法の消去に特化した闇属性の球を放ったのだ。フリスとの練習で上手くいっていたこれは、実戦でも役に立つ。


「やっぱり凄いね」

「意外と簡単だ。ん?そろそろ行き止まりか?」

「そうみたいだね。この向こうはお出迎えでいっぱいだよ」

「じゃあ、贈り物選ばないとな!」


階段の下にもあった扉を蹴破り、というか蹴り飛ばし、中へ突入する。入った部屋は体育館のように広い大部屋だが、起こった戦いの様子はまさしく蹂躙劇だ。どうやらここが集合地点らしく、大量の雑魚がいた。その名の通り、吹き飛ばされるだけの雑魚だ。

ソラ達がしばらく暴れると、雑魚は後ろへ下がっていく。そして、明らかに雰囲気の違う4人の男と女が1人出てきた。

その彼らに対しても、ソラ達は臆さない。


「退かせるのか?」

「それしかねえだろ。こいつらがお前をどうにかできるとは思えん」

「ボス!お願いしやす!」

「だからボスのお出ましってか?取り巻きも連れて」

「取り巻きじゃなくてウチの幹部だ。下っ端とは違うぞ?」

「はっ、誰が来ようと結果は変わらねえよ」

「言うじゃねえか。てめえら!あの男は俺がやる。残りは任せたぞ!」

「「「「応!」」」」


雑魚は見守り、幹部は散開する。ボスはそのまま進んできた。


「俺が相手をする。周りは任せた」

「分かったわ」

「任せて!」


こちらはミリアとフリスが左右にバラけ、ソラは直進する。

そして2人は対峙した。


「おいお前、名前は?」

「言うと思ってるのか?」

「いいや。ただ名乗ったら名乗り返してやろうって思っただけだ」

「そんなこと、しなくていいだろ」

「良いだろうが。俺の趣味、だ!」


互いに素手だが、それゆえ戦いは激しいものとなった。

ボスが目潰しをかけようとすると、ソラは体を低くして避け、右足で足払いをかける。ボスは足払いを左足で蹴ることで迎撃しようとするが、ソラは当たる前に地面に下ろし、左手で掌底を放つ。ボスは左足を下げて体を回転させ、掌底を肘でさばくと裏拳を放った。ソラは左足を前に出すと同時に左肘を上げて裏拳を防ぎ、右手で正拳突きを放つ。ボスは右足を下げて左手で突きをそらすと、右の上段回し蹴りを放った。それに対しソラも上段回し蹴りを放ち、互いの(すね)が当たったため一旦下がる。


「なかなかやるじゃねえか」

「そっちこそ。俺についてこれるなんてな」

「お前、こっちに来る気は無いか?」

「なんだと?」

「お前ほどの強さがあればなんでもできるぜ?金も、酒も、女も。ウチは強い者が全てを手に入れるからな」

「へえ、面白そうだな」

「だろ?だったら……」

「だけどな……」

「入っ、なんだ?」


ボスの問いに、ソラは悪い笑みを浮かべながら答えた。


「俺の信念に反するんだよ。お前等みたいな奴等はな」

「なっ⁉︎」


先ほどまで、ソラは身体強化を5割に(とど)めていた。だがこの瞬間、全力を出したソラに闇ギルドのボスはついて来れなかった。ソラは一瞬で間を詰め、鳩尾へ左の掌底、半回転して脇腹への右の肘鉄、脇への左正拳突き、後頭部へ右上段回し蹴りをかけ、そのまま地面へ叩きつけ首を折る。今までのが何だったのかと言える、一方的な結果だ。

ちなみに、嬲られていた幹部達もほぼ同時に殺され、闇ギルドの抵抗は無意味に終わった。


「ボ、ボスがやられたぞー!」

「に、逃げろー!」

「逃すかよ」

「動かないで」


ボスがやられたことで雑魚は狂乱し、逃げようとした。だがそんなことを許すわけが無く、ソラとフリスの連携による雷の乱舞で、この部屋の中にいた人は、4人を除けば全員倒れている。3人はソラ達、そしてもう1人は……


「大丈夫か、アル」

「ソラお兄さん?何でここに?」

「お前を助けるために決まってるだろ。さっさと抜け出すから、暴れるなよ?」


最も奥の椅子に縛られていたアルベルトだ。ソラは縛っている紐を斬ってアルベルトを抱え、身体強化による高速移動で屋敷を抜け出した。

そして翌日、ミナリエア侯爵家の不祥事は長男と三男が騎士団とともに解決したと発表され、ゼーリエル家やソラ達が関わった証拠は一切残っていなかった。


帝国の騎士団は王国のと比べてかなり強いです。まだ入っていない共和国の騎士団も同様

これは王国が魔王領域と接しておらず、帝国と共和国は接しているためです

帝国・共和国の騎士団トップクラスの戦闘能力は、数値で表すとすれば現在のソラと同等か上です。身体強化に関しては、今のソラを上回っている者も多くいます。ただ、ソラの戦い方は騎士の使う正当剣術・槍術等相手にはめっぽう強いので、戦えば十中八九ソラが勝ちます


また、これまでかなり早いペースで投稿していましたが、この後は遅くなります

ご了承ください

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