表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第2章 人の光と人の闇

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/217

第15話 魚道①

「本当、水が邪魔ね」

「今更だろ」

「動きづらいことに変わりはないじゃない」

「ミリちゃん、もう言うのやめようよ。分かってるでしょ?」

「ただの愚痴だったわね。ごめん」

「いいさ。それよりも……俺達には魔獣や罠より、こういった地形の方が難敵か」


リンガンの側にある未踏破ダンジョン、魚道。このダンジョンは浸水した洞窟のような状態で、一部の休憩可能な部屋を除けば少なくとも(くるぶし)の上、多い場所ではフリスの背丈以上まで水がある。天井はソラが手を伸ばせば簡単に届いてしまう程度の高さしかないため、沼土で使った簡易飛行魔法は使えない。また狭い上に場所により流れが速かったり、乱流となっている場所もあるため、イカダなどは余程の人でない限り使用不可能だ。洞窟の中は白く光る石によって明るいため、暗闇より戦いやすいのが幸いか。

ここで出てくる魔獣はその見た目に違わず、EランクのストーンクラブやDランクのポイズンフロッグやシースネーク、Cランクのジェルフィッシュやポイズンフィッシュにメガラーパなど、淡水海水双方の水棲魔獣が出てくる。だが、これらはまだ対処しやすい。厄介なのは……


「また来たぞ!」

「ちょっ、ここ深いのに⁉︎」

「仕方ないよ。頑張ろう」

「そうだな。ちぃ、水中から来るな!」


ソラの胸部あたりまで水がある場所、そこでソラ達に襲いかかってきたのは魚顔でエラと鱗を持ち、銛を持った人型の魔獣……


「サハギンどもが!」

「また、いっけぇ!」


一本道の前後から泳いでくるサハギン8体ずつの群れ。これより前も何度も襲われ、何度か危ない場面があった。

サハギンはソラ達より圧倒的に劣る相手だが、その特性が厄介だ。人は水の中では武器を振るうのが遅れる。だがサハギンは水の中こそ本領を発揮できる場所で、水が多いほど素早い。近接武器は水の抵抗で動きが遅くなってしまうため、押し付けて突き刺すくらいしか有効な攻撃手段が無い。

また魔法も、火や風に土は水が多い場所ではほぼ使えない。水魔法はサハギンに効果が薄い上に水の抵抗で威力が落ち、雷魔法は自分達にも被害が発生してしまう。そのため、光や闇を使うか、威力の高い水魔法を使うしかない。ソラが光魔法、フリスが高威力の水魔法を使うことで撃退しているが、移動が難しいのも含めて体力はどんどん削られている。


「はあはあ……」

「下に降りるほど増えるな……」

「当たり前だよね……」

「増えるのは水もよ……」


このダンジョン、ランクの低い魔獣ばかり出る代わりに、水嵩(みずかさ)が平均して増えていく。魔獣や罠で殺しにかかる一般的なダンジョンとは大違いで、これが未踏破である理由でもあった。


「どうするの?」

「このままだとキツいよな……1回退くか?」

「気持ち的には帰りたく無いわ。でも……」

「無理、だよね……ソラ君なんとかならない?」

「また俺か……でもなあ……」

「ソラ君でも無理か……」

「やっぱり1回帰るべきよね……」

「だが……水魔法、いや……闇魔法を使ってみるか?」


移動するのが大変で時間がかかる上に、ゴールがどこかも分かっていない。こんな状態で進み続けるのは難しい。ソラ達でも1度撤退するか、2度と挑戦しないという判断をしなければならなかった。

なお、ソラ達が情報を聞いた冒険者内、最も奥まで進んでいたのは、この辺りでは珍しい人魚や半魚人達のパーティーであり、彼らのように水中で動ける種族ですら踏破はできていないのだ。他の種族の進めた階層は本当に少ない。

そこでソラは新たな方法で進もうとする。だがそれには大きな問題がある。


「使えるの?」

「知識だけはあるけどな……直接攻撃系とは別で使えるのかどうか……陸でも上手くできなかったが……」

「闇魔法って、具体的に何ができるの?ステイドで読んだ本を、よく理解できなかったんだけど……」

「魔法があるから理論物理はそんなに広まってないんだったな……動きを阻害したり、補助したりするのが大半だな。あと、他の属性の魔法を打ち消しやすいってのがあるか。上手くやれば完全相殺も簡単だな」

「相殺できるの⁉︎」

「それはミルリリアと戦った感触からだな。これの実験は後だぞ?」

「はぁい……」

「それで、どうするつもりなのよ?」

「反応速度とかは後回しでも大丈夫だから……摩擦、水の中でも動けるようにするべきか」


ソラはステイドで本を読んだ後、何度も闇魔法の練習をしていた。だが満足できるだけの出力は出せず、実践では使えずにいた。

そして今目指しているのは摩擦を減らすことで水の抵抗を減らし、動きやすくすることだ。サハギンにもかけられれば良いが、まずは3人が動けるようになることを目標にしていた。


「だけど……地面と違って接触している所も多いし……」

「どうするのかな?」

「水を私達の周りから無くすってのはできないの?2人とも水魔法を使えるじゃない」

「一瞬なら簡単だよ。でも、ずっとやるのは大変だね。流れとかあるし、水って重いから。こんな風に入ってると分からないけど」

「ん、水?……そうか、魔力をゲージ場に見立てて撒けば」

「どうしたの?」

「でも……いや……この状況で上手くやるには……消費も減らしたいし……」

「ソラ?」


新しい方法を思いついたソラ。こんな状態なので、すぐに試す。


「どんな影響が出るか分からないが……とりあえずやるか」

「え、なにこれ凄い!」

「普通に動ける……?」

「いや、まだ変な感じはあるか。服が水を吸って重くなってるしな……泳げなくなるってのは許容範囲内、むしろこっちの方が良い……他のを今使うのは逆効果になりそうだな……水と風で呼吸もできるようにもするか」


まるで地上のように動けている3人。正確にはまだ遅いのだが、今までと比べれば段違いに速い。

ソラは3人とその持ち物の周辺に存在する空間の魔力を支配下に置き、その範囲内の液体が与える摩擦を減らす、という認識で魔法を放った。他の闇魔法使い(ミルリリアなど)がどうしているかは分からないが、ソラは今まで物体に直接魔法をかけようとしていた。だが今のやり方なら認識しなければならない体積を増やす代わりに使用することができる。また、この魔法は周囲に存在する魔力を利用する形を取っているため、規模に比べて魔力消費はかなり少ない。

この魔法、ソラとしてはまだ無駄が多く、効果も薄いと思っているのだが、今の段階でも十分すぎるほど役に立っている。

またソラは水と風の複合させて、顔の周り(目と耳にも)に空気を集め、魚のエラのように酸素と二酸化炭素を交換する魔法も作り出した。ついでに風と光を操作して、空気中にいるのと同じように風景を見れ、音が聞こえ、声を出せるようにもする。これのおかげで完全に水没していても、陸と同じ感覚で歩けるようになった。これには特に、3人の中で1番背の低いフリスが喜んだ。ここまで来る途中にもフリスでは呼吸できなくなるような場所があり、そこではソラに抱えられたり、肩車をしてもらってたりしていたからだ。それをフリスは申し訳なく思っていたため、ソラに大きな負担(魔力消費量は少ない)をかけることが無くなって良かったのだ。


「またサハギンだよ」

「今ならやれるわね」

「油断はするなよ」


今度は前から13匹のサハギンがやってくるが、今のこいつらはただのカモだ。


「魔法には効果がないんだね」

「そこまでサポートできるか」


水の中にある周りとは別の流れは、サハギンの腕に当たるとそのまま引きちぎる。これは流石にソラの魔法の範囲外で、それをフリスも分かっているが、要望として言ってみた。ソラならできそうだとも思っているのだが。

そのままフリスは離れているサハギンの四肢を片っ端から破壊していった。


「ふふ、遅いわよ!」


接近してきたサハギンは刃の嵐によって筋肉を断たれ、動けなくなっていく。大群に囲まれた時ですらやらないアクロバティック戦闘を決め、ミリアはご満悦だ。


「ほらほら、俺はここだぞ」


残ったサハギンにより突き出される銛は、その全てが勝手に外れていく。これが蓮月の主な使い方、自分の視線や気配を使って敵を誘導する。完全なチート技だ。ソラは回避を全て蓮月で行い、銛を突き出した隙をついて薄刃陽炎を振るう。その一閃が残る度にサハギンの血が舞った。

……今までいいようにやられてきた鬱憤(うっぷん)を晴らすかのごとく、サハギン達をボコボコにしている3人。しかもワザワザ即死しない場所ばかり攻撃していた。


「さて、トドメを刺すか」

「もう相手をするのも面倒だしね」


ソラ達の周りに浮かんでいるのは、ボロ雑巾よりボロボロとなったサハギン達。辛うじて息はしているが、よくもまあここまでボロボロにできたものだ。


「試したいことがあるから、良いか?」

「良いけど、何やるの?」

「雷魔法を使う」

「……自滅?」

「誰がするか。闇魔法を上手く使うんだよ」


ソラが右手から放った雷は空中、水中をとわずジグザグに進み、正確にサハギンへ吸い込まれた。


「よし、導電率改変成功」

「よく分からないけど、上手にやれるんだね」

「流石のフリスも分からないの?」

「うん。闇魔法使えないしね」

「こういった形の闇魔法は分かりづらいだろうな。魔力の動きだって雑だろ?」

「そうだよ。なんかこう……ブワーって広がったことしか分からなかった」

「空間の魔力を支配する時に広げたやつか……先に展開するか、対峙してから展開すれば問題無いな」

「でも、これと似た魔法は私達にはかけづらいわよね」

「そうだな。状況に応じて出力を変える必要がある。俺も慣れないといけないか」

「頑張ってね」

「ああ」


そのまま3人は水をものともせず、進んでいった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ