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異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第2章 人の光と人の闇

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第13話 水都ウォーティア④

8/24改稿

「力自慢の皆さん!この大岩を物理的(・・・)に一撃で破壊できたら金貨1枚です!こぞって参加しよう!」


水女神祭り最終日、前日ソラをパシリとしていたミリアとフリスだが、罰ゲームが終わればそれを引きずることは無い。

仲良く通りを歩いていると、催し物の声が聞こえた。


「力自慢?」

「力自慢というか、破壊自慢というか……」

「まあお祭りだから、そこは気にしない方が良いわよ」

「そうだな。よし、金を取り戻すか」

「ティアちゃんのこととか無いの?」

「どうせ来年か再来年には優勝するだろうからな。怨みを晴らそうとしたって意味がない」

「そんなこと考えずに晴らればいいのに……ソラらしいわね」


ルールは大岩を放出系、付加系の魔法を使わず破壊することらしい。身体強化を制限したら普通は破壊できない、というのもありそうだが。

大岩は人を大きく超える高さを持ち、それに見合っただけの体積を持っている。これの破壊に挑んでいるのは冒険者らしき人達、それも重量武器を使う者達だ。だが大剣や大斧が何度叩きつけられても、大岩の表面が削れるだけだった。どうやら破壊可能なレベルの高ランク冒険者は参加していないらしい。高ランク冒険者は有名なため、確実に破壊すると分かってしまい、面白くないのだが……あまり人に知られていないソラなら問題ない。


「参加する」

「はい、参加費鉄貨1枚です」

「分かった。じゃあやるか」


参加費を払ったソラは大岩に近づき、岩に(てのひら)を添え、構える。


「ふっ!」


そのまま腰、肩、腕を連動させ、掌を回転させながら押し出す。かなり強めの身体強化も行っていたため、大岩は呆気なく中央から(ひび)が広がり、勢いを持ちつつ崩壊した。細かな破片の中にはかなりの勢いで吹き飛んだ物もある。だがその先は石壁の家であったため、当たった人はいなかった。


「「「「………(ぽかーん)………」」」」

「見ての通り、壊したぞ?」

「……あ、はい!」


呆然とした主催者を戻し、賞金を得る。観客は無視して通りを歩いていった。

まあ、両隣の2人は無視できないのだが。


「やりすぎだよ」

「アッサリしすぎよ」

「すまんな、あの中で簡単に壊すってのが面白そうだったから」

「まあ、あの反応も面白いけどね」

「でも、身体強化の出力上げすぎじゃ無かった?」

「ん?……間違えてダンジョンの中で使うくらい強化したな……」

「やりすぎよ。ここ、町の中なんだからね?」

「手加減を意識して無かったな。人が岩の破片に当たらなくてよかった……」

「次からは気をつけなさいよ?」

「分かった」


そのまま3人は、何もなかったかのように歩いていった。










ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー










「凄い音〜」

「でも綺麗よ」

「仕方ないさ。そういうものなんだから」


その日の夜、橋の上、そこからソラ達は絶景を見ていた。


「橋の上から見る花火ってのも、やっぱり良いな」


そう、花火である。そしてソラは、花火をやることと打ち上げ場所を聞いた瞬間、初日のボートレースに使われた巨大水路の橋の1つ、その最前列に陣取った。花火というものを知らないミリアとフリスは振り回されるだけだったが、綺麗な風景に満足している。どうやらオルセクト王国に花火は無かったらしい。

なお、この世界の花火は江戸時代のような華のない単色では無く、現代日本のようにカラフルな物だ。出る煙も少なく種類も多いため、ソラも普通に楽しめていた。


「まさかベフィアでも花火を見れるなんてな……」

「どういうこと?」

「この花火ってのは、俺のいた国にあったものなんだ。ベフィアとは文化が違うから諦めてたんだよな……」

「ねえ、ソラ君って帰りたかったりしないの?無理矢理連れてこられたんでしょ?」

「……絶対に帰りたくない、って言ったら嘘になるな。でも、俺はここにいたい。ミリアとフリス、2人と一緒にいたいんだ」

「ソラ……」

「ソラ君……」

「はは、こんな話はガラじゃないのにな」


花火が声を隠してくれる。郷愁の思いを出してくれる。ソラは自分の思いを素直に出すことができた。


「ソラ、貴方にいてほしいのは私達だって同じよ」

「ソラ君と会えて、世界で1番良かったのはわたし達なんだから」

「ミリア、フリス……ありがとな」


水女神祭りの最終日、夜はまだまだ長い。









ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー










「どこだ?」

「この湖にいるのは間違ってないんだよね?」

「ええ、何人もの人が見ているらしいわ。ギルドも確認済みよ」


ウォーティアの近くの湖、その上でソラ達はボートに乗り、とある魔獣を探している。


「今日中に見つけられればいいんだがな…….」

「見つけても逃げられたらお(しま)いよ。水面に顔を出している時間は少ないらしいんだから」

「そのことは一応考えてあるだろ……誘いに乗ってこなかったのが痛いな」

「そのせいで地道に探さなきゃいけなくなっちゃったね」

「おまけに生き物が多いから魔力探知も不調と」


すでに、前にやったような魚によるおびき出しはやっており、失敗していた。大きさを変えて何度もやっていたが、かかったのは鮫系だけだ。もしかしたらターゲットは生きている獲物しか食べないのかもしれない。

魔力探知も、一程度以上の大きさ(魔力)を持つ生命体を感知するもののため、魚が多く広いこの湖ではあまり役に立っていなかった。(なお、体長10cmほどの魚が持つ全魔力は、一般的なバレット1発分と同じである。下限を上げれるわけがない)


「あれ?あそこ……いたわ!」

「よし、よくやった!」


そしてようやく見つけたのは……全体の3分の1を超えようかという長い首、胴体に4つついた大きな(ひれ)、牙が大量に生えた口、分かりやすくいえば首長竜である。こいつはBランク魔獣、アクシオサウルスだ。Bランク魔獣としてはかなり大きく、平均サイズは8mらしい。

その首長竜は、ソラ達より少し離れた湖面から頭と首を出している。誘いに乗らなかったこいつを仕留めるなら今しかない。ソラは取り敢えず、弱い水弾を顔に当てた。


「こっちに来るわね」

「よし、賭けには勝ったか」

「じゃあ、予定通りでいいんだよね?」

「ああ、変わった時はいつも通り臨機応変にな」


ダメージはほぼ無いとはいえイラついたのか、アクシオサウルスは勢いよく泳ぎ、時折潜りながら近づいてくる。

そして、この反応はソラ達の予想通りだ。


「3、2、1……今だよ!」

「凍りつけ!」


フリスの合図に合わせ、ソラは氷魔法を放つ……アクシオサウルスの周辺エリアが浅瀬となるように、水を凍らせたのだ。氷は厚くて簡単に破壊できる物ではなく、アクシオサウルスは潜るという手段を失った。


「ミリア!行くっ⁉︎」

「ソラ!」

「気をつけてよ!」

「すまん、やっぱりこういうやつは手強いな」


もっとも、アクシオサウルス自身逃げるつもりは無いため、大きな意味は無い。そしてこいつは水魔法を使える。つまり、機動力を奪われても戦闘不能とはなりはしないのだ。

ソラが支配している氷の部分は別だが、アクシオサウルスは周りの水を支配して攻撃してくる。魔獣ゆえの出力任せなごり押しだが、厄介なことに変わりは無い。


「この程度なら、わたしだけで十分だよ」


一部の例外を除けば。

放たれる水弾は風で逸らされ、押し寄せる波は炎で蒸発させられた。全てフリスだけでやっている。大技より連射の方がフリスは得意であり、そこまで大きな負担では無い。


「ナイスだフリス。じゃあ俺は、新技を使ってみようか」

「また魔法?」

「ミリアの思ってる魔法とは違うな。近接用だ」

「へえ、早く見せてよ」

「わたしも見たい!」

「分かった。少し準備するからな」


呑気とも言えるが、周辺への警戒は怠っていない。アクシオサウルスは何度も攻撃をしてくるが、全て完璧にフリスが防いでいる。

その間に、ソラは薄刃陽炎を鞘に収め、居合の構えを取った。


「斬り裂け、空刃(くうば)


そして抜き放つ。鞘の中で圧縮され、薄刃陽炎にまとわりつき、刃に沿って縦に放たれた高圧の風刃は、大波も氷もアクシオサウルスも、ついでにボートの一部(・・・・・・)も、纏めて真っ二つに斬り裂いた。


「……技名を言うのは面倒だな」

「じゃあ、無くて良いじゃん。ソラ君って、魔法もいらない時は無詠唱でしょ?」

「まあ、それでいいか。詠唱無しでもできるやつだし」

「それもいいけど、これをどうにかしない?」

「え?……あ」


斬り裂かれた部分から水が入って来ている。深くは斬られていないので一気に沈むことは無いが、浸水スピードはかなりのもので、気長に戻るような余裕はない。

無論、これは借り物である。だが、そんなことを考えている暇は無かった。


「……」

「……」

「……」

「急ぐぞ!」

「はい!」


冷静に考えていれば、ソラが浸水部を凍らせただろう。だが魔獣の蔓延る湖への恐怖(無いわけが無い)からか、柄になく焦っていた。

ソラとフリスは水魔法を使ってボートを岸まで全力で走らせ、ミリアは少しでも足しになればと亀裂を手で押さえる。水流を操っていたので走っていた間の浸水は少なかったが、岸についた時の浸水量は本当にギリギリだ。


「横に振り抜けば良かった……」

「今更じゃないの……」

「疲れた〜……」


精神的に(肉体的なわけが無い)疲労した3人は、寄り道もせず一直線にウォーティアへと戻っていった。

その後、貸し出したギルドの担当者に怒られたのはソラだけだった。






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