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異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第2章 人の光と人の闇

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第11話 水都ウォーティア②

「ヘルオクトパス?Aランクのか?」


あくる日、冒険者ギルドにて依頼を選ぼうとしたソラ達は職員に声をかけられた。それ自体は特に珍しいことではない。指名依頼は何度か受けたからだ。だが、ウォーティア周辺で出現するとは聞いたことが無い魔獣が相手では疑問も出る。

それに答えたのはエルフの受付嬢だ。


「ええ、近くの川や湖にて確認されています。どこからか入って来たのかもしれません」

「でも、昨日は見て無かったよ?」

「お行きになった方向が違うのでしょう。出現したのは東側です」

「昨日は西側だったわね」


疑問が氷解したソラは会話をしつつ、ヘルオクトパスの情報を思い出し、簡単な対策を考えていく。並立思考と言うほど上等なものでは無いが、こういう場面では便利だった。


「それで、俺達に依頼を受けて欲しいと」

「はい。Aランクの魔獣を倒すならばAランク冒険者に頼むべきですので」

「でも、ここにだってAランクに上がれる冒険者だっているわよね?なんでその人達には言わないのよ?」

「いえ、その方々にも伝えました。ですが、複数ヶ所に出現したのでそれだけでは足りないのです」

「そうなんだ。それで、どこに行けばいいの?」

「はい、ここの……」


示されたのは地図の中に4ヶ所あるバツ印のうち、最も遠い地点だ。仕留めるのは1匹だけにしてほしいのだろう。ソラ達も多く狩るつもりは無かった。

聴き終えた後、軽く準備をして出発した。相手は手強いだろうが数は少ない。すぐに戻ってこれる、そう考えていたのだが……


「あれは無いだろ……」

「なんで集まってるのよ……」

「どうする?」


目的地に着いたソラ達の前方約30mの位置、湖畔となっている場所の周辺には全高が5mもある巨大な蛸が10匹も存在していた。それは確認さていた総数よりも多く、なんらかの問題が発生していることは容易に想像できる。

その蛸、ヘルオクトパスはAランク魔獣の中でもかなり上位の存在だと言われている。同じAランクであるポイズンジュリーも、毒を持つということ以外ではヘルオクトパスに劣ってしまっている。筋肉の塊である足は触手などより力強いし、水上でも長時間でなければ戦闘能力は失われない。

そんな相手が10匹、普通のAランク冒険者パーティーではまず太刀打ちできないし、策を失敗すればソラ達ですら全滅しかねない。


「……まともに戦うなんてできないな。魔法で殲滅するぞ」

「できるの?逃げられたら大変だよ?」

「最初に弱い魔法でおびき出して、しばらくしたら大規模魔法を使えばいいだろうな。接近されたら近接で対処、多過ぎたら逃げるか」

「それで良いわよ。私じゃあの数は無理そうだしね」

「じゃあ、雷でやる?水で濡れてるみたいだし」

「そうだな……それでいいか」

「タイミングは任せるわ。必要なのは私じゃないけど」

「お願いね」

「分かった。じゃあ……やるぞ!」


合図とともに、ソラとフリスは弱い雷魔法を放っていく。ヘルオクトパス達がそれを受け、ソラ達の方へ進み出すと、出力を大幅に上げた。1発では倒すまでに至らなかったとしても、無数の雷が当たれば嫌でも倒れるだろう。そう、当然のように考えていた。……問題が発生するまでは。


「なんで効いてないの⁉︎」

「さっさと死ね!」

「効いてないわけじゃないわ。少しは遅くなってるもの」


ヘルオクトパスは雷を気にしずに進んできた。雷魔法は当たっているのだが、表面に焦げ跡を残す程度で、出力の殆どが無くなってしまっている。こんな情報は本には無く、ソラも混乱しかけた。だが、ミリアは冷静に声をかけることで瓦解を避ける。


「このままじゃ、減らずに来ちゃうわよ」

「風に切り替えるぞ!ぶった切れ!」

「分かった!」


雷では苦労した相手だが、風では意外と簡単であった。先ほどまでとは大きく異なり、十分な威力があれば足を斬りとばすことができる。確かに、ヘルオクトパスは高い耐久性を持つようで魔法は効きづらかった。それでも、ソラとフリスの出力の方が上だ。ヘルオクトパス達は足を切り飛ばされたり、体を真っ二つにされていったりして、次々と群れから脱落していく。


「2匹来ちゃうよ!」

「ミリア!」

「勿論よ!」


だが、完全に倒すには至らなかった。足が2本、及び3本無いヘルオクトパス2匹が接近してきた。時間稼ぎ、及び接近した敵の排除は近接担当の役割だ。ソラとミリアは少しの距離を駆け出していく。


「きゃあ!」

「ミリ、くっ!」

「足が少し減った程度だと、相手をするにはキツいわね……」

「ミリア、俺の後ろにいてくれ。魔法で防いだ方がいい」

「分かったわ。頼むわよ」


足を近くに叩きつけられ、衝撃で体勢を崩しかけてしまった2人。追撃を避けるとミリアはソラと後ろへまわり、ソラは土と風の複合魔法で防ぐ。固い岩を斜めに当てるのと同時に風で足を逸らしていく。岩には棘があるし、風には刃も含まれているので、ヘルオクトパスの足は次第にボロボロとなっていった。また、ミリアも見ているばかりでは無い。逸らされる足へ斬撃を加え、微量ながら傷を増やしていく。

そんな状況のためフリスは2人を信じ、まず脱落したが生き残っているヘルオクトパスにトドメを差していく。


「そろそろだ。やれるな?」

「良いわよ。ソラとフリスに任せっぱなしにはできないし」

「それなら……行くぞ!」

「ええ!」


ヘルオクトパスの攻撃の一瞬の隙をつき、2人は攻勢に出る。すぐさま足が放たれたが、傷により鈍った動きは、観察していた2人にとって避けやすいものだった。


「はっ!」


ソラは横から来た足を風魔法で逸らして地面へぶつけていく。最後の上段から叩き落してくる足は雷と風を付加した薄刃陽炎で斬り飛ばす。

そしてその瞬間、ソラは跳び、片目へ蹴りを入れると、その勢いを生かし回転して薄刃陽炎を一閃、目のあった部分を水平に両断した。体表は弾力があり斬りにくいのだが、ソラには関係無い。極めた技を使うだけだった。


「やぁ!」


ミリアの双剣では両断することはできない。だが、半分斬り裂くことくらいなら可能だ。少しずつ、回避しながら反撃し、足を使い物にならなくしていく。ソラと違ってスマートにはできない。だが、それでいい。


「ミリちゃん、いくよ!」


1人では無いのだから。

他のヘルオクトパスの処理を終えたフリスは巨大な風刃を放つ。ミリアは直前に避け、避けられなかったヘルオクトパスは縦に両断された。


「終わったわね」

「そうだな」

「疲れた〜」

「それにしても、なんであんなに雷魔法が効きづらかったのかしら?」

「そうだな……水に濡れてるってのが問題か?」

「そうなの?」

「あくまで可能性だけどな。ヘルオクトパスの体表が雷を通しづらいなら、雷は水を通って地面に流れていくはずだ。もしそうなのなら、効きは悪いな」


いわゆる、アースである。

淡水より生物の中の方がイオン濃度は高いため、普通なら雷は生物内を通っていく。だが、ヘルオクトパスの皮膚が雷を通しづらく、表面の粘液が雷を通しやすいのであれば話は別だ。その時は大半が粘液の方を流れてしまい、有効な攻撃とはならない。ソラは粘液のことを水と言ったが、形としては同じだ。なお、ソラも後でこの考えに至った。


「全部倒しちゃったけど、よかったのかな?」

「仕方ないわよ。目の前にいたんだし、他の人達だと同時には無理だもの」

「まあ、ギルドで注目されるのは覚悟しないとな」

「注目されなかったことなんてあったっけ?」

「……ないな」

「どこの町でも注目されてたわね」

「それは置いておこうか。それより、こいつをどうやって食うかだな」

「え、食べれるの?」

「蛸だからな、きっと食べられるさ。そういえば、ウォーティアの屋台で見たことは無かったな」

「食べられないからじゃないの?」

「前の世界の蛸と同じなら食べられる。俺のいた国じゃ、普通に食べてたからな」

「……試してみるわ」

「わたしも」

「分かった。少し待っていてくれ」


結果としてヘルオクトパスは食べられる魔獣で、ミリアもフリスもはまった。ソラは簡単に火あぶりだったが、ミリアは即刻創作で炒め物を何種類も作り出したりしたほどだ。

なお、試しに宿で料理してくれと出したときは悪魔の魚だと叫ばれてしまった。だがソラは諦めず、蛸を食べる地域があることを望んだ。タコ焼きを食べたかったために。










ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー










「ん……」


翌日。


「起きたか、フリス。おはよう」

「おはよ、でもちょっと遅いわよ?」

「2人が早いんだよ〜……どうしたの?」

「いや、外がな」

「外?……いつもより賑やかだよね」

「ああ……なにかあるって聞いてたか?」

「ううん、なんにも」


ウォーティアの通行手段はゴンドラやボートだけでは無い。大きな水路の両側や町の中には普通に馬車を使える大通りもあり、その周辺は他の町と同じように賑わっている。

だが今は、その熱狂が普段とは比べ物にならないほど高かった。余所者(よそもの)でも異変を感じるほどに。


「なんでだろうね?」

「簡単なところだと、祭りか?」

「お祭りね、ありそうだわ」

「でもそれだと、なにも聞いて無いのがおかしいよな」

「そうでも無いわよ。お祭りなんてわざわざ宣伝するものじゃないし」

「ああ、そうか。それにそう考えると、昨日の討伐も急いでた感じもあるな」

「でも、確定じゃないよね?」

「その通りね」

「そうだな。聞いてみるか」


会話しつつ、食堂へと降りていく。そして朝食を持ってきたティアへ聞いた。


「ねえ、ティアちゃん」

「どうしたの?」

「今日って何かあるの?」

「どうして?」

「いや、外がいつもと比べて賑やかだからな。疑問に思っただけだ」

「それはね」

「ありゃ、あんた達知らなかったんかい。今日から3日間は……」


ティアへの質問をかっさらった女将。やたらと気合が入っているが……?


「水女神祭りだよ!」

「「「「「イエェェェイ!」」」」」


……周りは少し黙っていて欲しい。







もう一度

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