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異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第2章 人の光と人の闇

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第9話 戦都コロッセオ②

今話から12時投稿に変更します

前話は中途半端な時間に投稿してしまい、すみませんでした

「やっぱり遅くなるよね」

「仕方ないわよ。私はいつも通りだけど」

「普段が便利すぎるってのも考えものか」

「でも、こんな感じでやるのも久しぶりだね」

「ソラが感知できるようになってからはやって無かったわね。奇襲の心配をしなくて良くなってたし」

「ま、時々探知魔法無しでやるってのも良いな。勿論、格上は無しだぞ?」

「当たり前でしょ」

「格上が相手なら奇襲できた方が良いもんね」


コロッセオの近くの森の中、ギルドで依頼を受けて探索しているソラ達。頼り過ぎていては使えなくなった時に困る、ということで現在ソラもフリスも探知系魔法を使っていない。そのため、今はイーリアにいた時と同じように目視、音、そして気配で周囲を探っていた。当然ながら、普段と比べれば進みは遅い。


「ん?……アレは……」

「スライムね。久しぶりに見たわ」

「まあ、生息域は大陸の南と中央以外らしいからな。今まででいた所じゃ、まず出ないだろ」

「前に見たのはシーアの時だしね」


そんなソラ達の前方30mほどの位置にゼリー状の魔獣、スライムが現れた。体積は大人2人分くらいはあるのだろう。腰ほどの高さしか無いが、かなりの広さを覆っている。そしてその中心付近には核らしき球体があった。

様々な色の体を持つベフィアのスライムは、地球のモンスター退治ゲームで出てくるスライムと違って手強い。最下級ですらCランクで、物理攻撃が効きづらい。しかも……


「緑色は……風っ!」

「見つかったわね。フリス、ナイスよ」


体の色に合わせた魔法を使ってくる。ただのスライムでは威力の低い魔法くらいしか使えないが、様々な種類が群れでいると厄介なことこの上ない存在だ。


「どうする?」

「任せろ」


もっとも、持つ属性に反するものには弱いのだが。

グリーンスライムは一気に盛り上がってきた土に覆われ、潰される。ソラ達が近づくとその土は元に戻り、跡地には握り拳大の核が残るだけだった。


「綺麗にやれたわね」

「……意外と上手くいったな」

「そうなの?」

「もう少し圧をかけると思ってたんだけどな……まあ、予想は高い方がマシか」

「そうね。予想以上に強い敵となんて戦いたく無いもの」


核を回収し、そのまま歩いていく3人。気を付けていたおかげか、再び先に発見することができた。


「……見つけたぞ」

「数は?」

「32ってとこか。このまま行くか?」

「そうしよ」

「それじゃあ……今日は焼肉だな」


ソラが約50m先に見つけたのはオークの群れだ。これが今回の目的である。受けた依頼はオークが増えて狩りができないというものだった。なお、依頼主はレストランの店主で、オークの肉があれば追加報酬も払うと依頼書にはある。

なぜなら、オークの肉がかなり上質なものだからだ。流石に上位貴族が食べる、厳選飼育されたような豚には劣るが、庶民の間ではちょっとした贅沢となっている。オークを安全に狩れて解体もできる冒険者にとっては、かなり良い追加収入だ。ここにいる全てを持って帰れば、相当量の稼ぎを期待できるだろう。……なお、依頼のノルマが5体だということは気にしてはいけない。いつものことだ。


「さっさと片付けるか?」

「そうね、やっちゃいましょう」

「早いうちに戻ろうよ」

「分かった。行くか」


特に打ち合わせをすることなく、行動を開始するソラ達。苦戦する理由も無く、オークはすぐに葬られた。


「結構早く終わったな」

「今更オークに手こずったりしないわよ。もっと多かったら別だけど」

「ダンジョンの中の方が大変だしね」

「それもそうか。あっと、早くしまわないと」


ソラ達は倒したオークをそのまま指輪に収納する。この指輪は中身の存在を固定することができるため、肉が腐ったり他の物が汚れたりすることは無い。早い話がゲームのアイテムボックス、アイテムポーチだ。


「それにしても、この指輪便利ね。普通の空間収納の指輪だと、肉が腐ることもあるらしいけど」

「そうなのか?」

「話を聞いたことがあるんだよ。高い物はそんなことないらしいし、安い物でも外に出しておくよりは遅いみたいだけどね」

「へえ、まあ、それなら問題になることは無いか」

「そうね。それよりも……」

「どうした?」

「これだけ狩ったけど、どう処分するのよ?」

「ああ、1パーティーには流石に多いよな。取っておくにも多いし……」

「食べないの?」

「それを除いてもってことよ。オーク32体分なんて多すぎだから」

「不要な分は売るしか無いよな……」

「少しは取っておいてよ」

「分かってるから、そう怒るな」


その後、冒険者ギルドは依頼に成功した複数のパーティーの影響で、宴会の会場となった。3人とも、こういう雰囲気は嫌いでは無いので、売る予定だった肉の一部を宴会用にまわした。その際、他のパーティーから大層感謝されたそうな。









ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー











「え〜と、これとこれと……」

「あ、それ取って!」

「これか?」

「そうそう。後、その左のも」

「私はこれだけかな。フリス、終わった?」

「うん、終わったよ〜」

「……やっとか」


翌日、次の町水都ウォーティアへ向かうための準備をするソラ達。準備と言っても食料関連はダンジョン探索で多めに買っていたため、今回は不要だ。そのため新しい夏秋兼用の服、及び追加の上着を買っていたのだが……


「荷物持ちをやらされるとはな……」

「男手だもの、使わないとね」

「わたしのは手が届かない所にもあったもんね」

「両手が埋まってても要求してきたよな?……まあ、指輪があるだけマシか」

「そうね。あれみたいにならないもの」

「ん?あーあ、ご愁傷様」


店の中で会計を終えるまでとは言え、大量の服を持たされていた。流石にこの程度の重量でソラが限界になるわけが無いが、体積的には限界が近かった。ほとんど両手が動かせない状態で取って欲しいと要求されたときは相当困っていたが。

だが、ソラ達は空間収納の指輪を持つので、店を出れば問題は無くなる。そのため、近くを荷物持ちにされた男に対してソラは、つい憐れみの目を向けてしまった。


「次はどこ行く?」

「そうね……今の所は町中用だったし、次は外用の所にしない?」

「まだ行くのか……」

「ほらほら、行くわよ」

「ソラ君も買えば良いのにね」

「女物を買えるか。男物が無い店ばっかだろ」

「プレゼントとかは?」

「金は共有だし、渡す相手がすぐそばにいるじゃないか」

「フリス、無理は言わないの。でもソラ、荷物持ちは頼むわね」

「はあ、分かったよ」


女性の買い物は長いことが多い。ミリアとフリスも似たようなもので、何軒もまわって様々な服を買っていた。……その途中、男は入りづらいような店にまでソラは引き込まれてしまったが。

正午になる頃に漸くミリアとフリスは治まり、いつも通りの観光になる。その場合、基本メインの大通りへとやって来るのだが、思わぬ再開があった。


「お、ソラ達じゃないか」

「ん?ああ、オリクエアか。それじゃあな」

「待て待て待て!どうしてそのまま去ろうとする!」

「だってね……」

「ソラをほぼ無理矢理コロシアムに参加させたじゃない」

「あ、あれはだな……」

「お前自身の都合だろ?」

「その通りだ……」


ソラ達も子供では無いので目上、年上に対しては敬意を払ったり、敬語を使ったりする。だが、オリクエアへはそんなに良い感情は持っていないため、扱いが大分なおざりになっていた。

オリクエア自身はそこまで気にしていないため、特に問題無く会話は進む。なんだかんだ言っても、仲は良い方だ。


「……この後の旅に予定はあるのか?」

「この後?次はウォーティアに向かうってことくらいだな。それだけだ」

「なら、ウォーティアの後に帝都へ来い」

「帝都?リンガン?なんで?」

「あそこは普段俺がいる町だからな。案内とかならしてやれるぞ?」

「……それだけじゃないだろ?吐け」

「妻と息子に会わせたいってのが本音だ」

「……分かった。ダンジョンにも行くし、ウォーティアの後に他の町へ行くかもしれないが、リンガンには行くことにする。向こうで会えるかどうかは分からないがな」

「それくらいは大丈夫だ。冒険者ギルドや顔見知りも多いし、俺も顔を出したりもするからな」

「それなら大丈夫よね。観光案内楽しみにしてるわよ」

「ああ、任せておけ」

「それじゃあ、またな」


話も済み、反対方向へ別れて歩いて行く。だが……


(ん?……ストーカー?いや、何だ?)


ソラは一瞬、誰かにつけられているように感じた。だが、すぐにその感覚は無くなってしまい、そういうことが得意ではないソラには、どこからなの判別することができなかった。


「リンガンか……」

「どんなところかな?」

「フリス、ウォーティアが先じゃないの。そっちの旅路を考えた方が良いわよ」

「そういうのはソラ君とミリちゃんの仕事!」

「はぁ、まったくフリスったら……」

「いつも通りだな」


ソラの感覚に反し、3人は普段通りの会話を進めていく。どうやら、ミリアとフリスは気づかなかったようだが、ソラはあの感覚が気のせいだとは思っていない。だが、いつまでもそれを考えていては仕方がないので、頭のすみに置いておくだけにした。


「あ!ソラ君、あれ買って!」

「はいはい、買うからそんなにはしゃぐな」

「フリス、子どもじゃないんだから止めなさい。ソラ、私にもお願い」

「了解。結構日も傾いてきてるし、これ買ったら宿に行くってことで良いか?」

「そうね。夕食が出るんだからほどほどにしないと」

「え〜」

「帰り道でも買ってやるから、文句言うな」

「ふふ、いつもの事だけど、親子みたいよ」

「なんでよ〜!」


このやり取りもまた、平和な日常を表している。地球では得られなかったものを、ベフィアに来て得られたのだから、ソラはある意味感謝していた。




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