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異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第2章 人の光と人の闇

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第6話 戦窟②

「よし、ボス部屋だな」

「攻略にも大分慣れて来たわね」

「もう4つ目だし、今更じゃないかな?」

「人によるだろ。慣れ始めの方が危険だがな」

「そうね。気をつけないと」

「わたしもだね」

「そうだな。じゃ、行くぞ」


ボス部屋の扉を開けた先、そこにいたのはゴブリンとコボルトだ。だがコボルトの方の背は1.5mほどと普通ののゴブリンより高く、その手には身長より少し短い程度の長さの大剣を持っている。コボルトの方は身長1.8mと言ったところで、自分より高い槍を持っている。明らかに他とは違う、こいつらの名は……


「キングゴブリンとコボルトリーダーか……」

「ここで会うなんて、意外ね」

「でも、連携とか、人型とかって条件なら当てはまるよ」

「そうだな、っと、そろそろ来るぞ」

「そうね」

「それじゃあ、開始!」


フリスの放った雷を合図とし、ソラとミリアは駆け出す。それと同時にキングゴブリンとコボルトリーダーも動き出すが、フリスの雷によって牽制され、体勢を崩す。そんな状況の2体へ、ソラがキングゴブリン、ミリアがコボルトリーダーへと接近した。


「グガァ!」

「遅い!」


ソラは上段から振るわれた大剣の腹へ右回し蹴りを当てることで逸らし、返す刀で薄刃陽炎を振るう。その一撃はキングゴブリンの首へ吸い込まれ、両断した。


「ガル!」

「はぁぁぁ!」


フリスはコボルトリーダーの槍先を叩き斬ると更に接近し、一挙五連撃を叩き込む。首の左右、両わきを斬り裂かれ、心臓を貫かれたコボルトリーダーは、なす術もなく骸と化した。


「お疲れ様〜」

「そんなに疲れてないわよ」

「そうだな、フリスの牽制が的確だったお陰で楽だったし」

「そう?」

「ああ」

「へへ〜、ありがとう」

「もちろん、ミリアも良かったぞ。あの一瞬で五連撃は凄かったな」

「ソラほどじゃないわよ。まあ、教えてもらってるんだから、上達しないとね」

「そうだな。じゃあ、奥に行くか」

「行きましょうか」

「何かあるかな?」


ボスの魔水晶を回収し、奥にある扉から最奥の部屋へと入る。そこにはソラ達の予想通り大きな箱があった。


「お、あったあった」

「宝箱ね。開けられたようには見えないけど……」

「開いたこと無いんじゃ無いの?」

「そうかもしれないわね。一応罠があるか調べてみるわ」

「頼む」


最奥の宝箱、流石に罠は無いと考えているが、万が一もあるため調べる。宝箱に対してもかなりの技量を持つミリアだが、ここで引っかかるのは嫌なのか普段と比べて慎重だ。


「やっぱり無いわね」

「まあ、ボスを倒した後に罠なんてことをオリアントスはしないよな」

「じゃあ、開けて良い?」

「良いぞ」

「良いわよ」


罠が無いことが確認された宝箱をフリスが開ける。少量ながら金や銀などの貴金属に大量の魔水晶、幾つか普通の武器や宝石もあるが、3人の目はたった1つに釘付けだった。


「これは……」

「レイピアか。しかも魔法具だな」

「また出たね」

「へぇ、今度は水なのね」

「そいつはミリアが持ってるか?軽いし、万が一の時双剣の代わりにはなるだろ」

「そうね、そうするわ」


出てきたのは刃渡り70cmほどで青い装飾が所々にされたレイピアだ。これは持つと刃全体から水が滴り、振るのに合わせて量も増大する。

ミリアは一応一通りの近接武器を扱えるため、ミリアが持つこととなった。双剣ほど上手いわけでは無いが、少なくとも時間稼ぎはできる。そのレベルはあった。


「さて、これで終わりよね」

「ここで泊まる?」

「いや、まだ余裕はあるし、戻らないか?」

「そうね……できるなら早く戻りたいわね」

「わたしもそれで良いよ」

「じゃ、行くか」


この後ソラ達は、後ろから来たため敵対者と認識していなかったボス2体をさっくり倒し、魔水晶を回収して戻っていった。









ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー








「簡単だね」

「そりゃあ、下から上がってきてるんだからな」

「普通なら簡単になるわよ」

「そっか」

「それにしても、他の冒険者も出てきたな」

「今までいなかったもんね」

「後10階くらいかしら?早く戻りたいわね」


大した苦労もしず、リザードマン5体のパーティーを殲滅したソラ達。下の階層と比べると1体1体の強さに変化は無いが数は大きく減っており、かなり楽になっている。

その様子を漸く見かけるようになった他の冒険者に見られることもあり、驚かれたり、質問攻めにされたり、例のAランクパーティーかと聞かれたりもしていた。……最後のだけは本当に困っていたが。


「それにしても、ダンジョンの中だと時間感覚が無くなるな」

「そうね。そのせいでペース配分も難しいし」

「え、そう?」

「おい……」

「フリス、外だったら太陽の動きで定期的に休憩してるでしょ?ダンジョンじゃそれができないじゃない」

「あ、それはそうだね」

「なあミリア、フリスは察しが良いのか悪いのかどっちなんだ?分からなくなってきてるんだが」

「フリスは……人間関係とか戦いでは察しは良いわよ。だけど、生活関係は……」

「……なるほど」

「何?」


人間関係の察しの良さも利用してソラと繋がれたフリスだが、女子力はかなり残念なレベルである。最低限度のことはできるが、効率としては他の人に任せた方が良い。それは時間配分にも当てはまってしまっていた。

こんな話題も出るがたわいもない話をして進んでいく3人。しっかりと警戒は行っているが緊張し過ぎることは無く、状態としては理想的だ。それ故に接近する相手にはすぐ気付いていた。


「おいおいおい、女の子2人と男1人って危険じゃないか」

「そうだな。俺たちといた方が良いよな」

「は?」

「誰よ」

「何?」


3人の前に現れたのは4人の男。彼らは冒険者らしい装備をしているのだが、大量の指輪や腕輪だったりと不要な物も身につけている。これが魔法具であれば別なのだが、ソラの感覚では魔力を感じられ無かった。実力も歩き方からして低そうである。当然ながら、こんな声のかけ方ををする人が真面目な情報交換をするわけが無く……


「は?俺らを知らない?」

「そういえば、見覚えの無い()達だな」

「他から来た娘じゃね?」

「そうかもな」

「だったら案内しないとな」

「入り口までご案内ってか」

「むしろボス部屋じゃね?」

「見知らぬ世界だろうが」

「それか」

「それだ!」

「そうだよな」

「しっかり教えてさしあげないと」

「というわけだ」

「行こうぜ、子猫ちゃん」

「子猫というよりは花だろ?」

「君達は何の花が好きだい?」

「わざわざ聞くか?雰囲気からこっちが当てるものだろ」

「そうだよな。こっちの金髪の娘はキクかな」

「キクぅ?ヒマワリだろ」

「馬鹿を言うな、椿だ」

「銀髪の娘はコスモスじゃ……」

「いや、チューリップだな」

「そこは桜と言え」


完全にソラを無視し、ミリアとフリスにばかり話しかけて……と言うか、自分達だけで話している4人。もちろんミリアもフリスも迷惑だし、顔にも出しているが、気にした様子は無い。

そんな様子に流石のソラも……


(……ダンジョンの中でいきなり人の女をナンパし始めるな!それと雰囲気ならミリアはバラでフリスがヒマワリだ!)


我慢の限界だった。……会話の話題に乗っておいてなんであるが。


「おい、お前ら」

「な……」

「おい……」

「この……」

「は……」


ソラは1人目の懐に飛び込むと鳩尾に2発、胸に1発の掌底を食らわせる。殴られた男は壁まで吹き飛んで行くが、それには目もくれず、ソラは2人目の胴に回し蹴り、3人目の太ももに後ろ回し蹴りを当て、双方の鳩尾へ肘鉄を連続して打ち込む。(ほう)けたままの4人目はまともな反応をすることもできず、鳩尾への膝蹴りと肝臓を狙った裏拳を食らって沈んだ。

4人共死んではいないし重症でも無いが、暫くはまともに動けないだろう。


「人の女をナンパする時は気をつけるんだな」


……ボコボコにしておいて言うセリフでは無いと思うが。










ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー










「姉ちゃん、こっちにも1杯!」

「ひい、ふう、みい……」

「今は呑めよバカ野郎」

「……私の負担も考えてください、リーダー」

「騒がしいわね」

「何かあったのかな?」

「あそこの8人パーティーがAランクになったらしいぞ。相手はリザードだそうだ。それと、白ワインにツマミだ。」

「あ、ありがと」

「へぇ、そうなんだ」


ベフィアの冒険者ギルドでは、1つのパーティーの最大人数は9人だ。もちろん依頼よってはそれ以上が関わることになるが、それは合同パーティーやレイドパーティーという判断となる。

そして、人気のある、もしくは有名なパーティーのランクが上がれば、冒険者達が全員でお祭り騒ぎとなることもしばしばある。その傾向は旅をするパーティーよりも密着型のパーティーの方が強い。今回ランクアップしたのは後者の方だった。

そういう訳でギルド内は半数が宴会をしているが、ソラ達は気にしない。自分達だけで打ち上げは行っている。


「さて、今回ので分かったとは思うが、これからは基本未踏破のダンジョンだけを狙うぞ」

「実際、その方が実入りも良いものね」

「ここの近くにも踏破済みダンジョンがあるけど、無視してたもんね〜」

「ちなみに、踏破しても言わないのよね?」

「ああ、面倒ごとはゴメンだろ?まあ、それは良いんだが……」

「どうしたの?」


未踏破のダンジョンは情報が少ない分危険だが、最奥の宝箱などで良い物が手に入りやすい。ソラ達のレベルであれば多くのダンジョンで踏破が可能だ。実力の低いパーティーでは踏破など不可能である。高位パーティーでは食料や警戒の手間などの問題があり、多くの場合、地上で戦った方が利益が大きい。空間収納の指輪に倒した魔獣を入れれば素材を買い取ってくれるからだ。

だがソラ達はそれらの問題の大半をクリアしている。そしてダンジョン内では外と比べ物にならないほど戦闘回数が多いため、ソラは成長のために行こうとしているのだ。

だが、ダンジョンに潜る弊害もある。


「急に暑くなったな。暑いのは割と苦手なんだが」

「まあ、結構潜ってたしね」

「14日だっけ?」

「宿で聞いたのはそうだな」

「この日数で45階層踏破よね……」

「実質は89階分」

「普通の倍以上のペースらしいな」


季節の変化に置いていかれるのが最も典型的な問題だ。いくらソラ達の攻略スピードが速いと言っても、季節の変わり目についていくことはできない。ダンジョン内は気温等がほぼ一定であり、洞窟型では光すら少ないからだ。

なおソラ達は、戦窟の踏破も話したりはしていない。沼土の時と同様に、聞かれるのが嫌だったからだ。報告の義務も無いため、戦窟の認識は未踏破ダンジョンのままである。


「それで、もう1ヶ所……数暴の方はいつにするの?」

「そうだな……明後日、いやその次で良いか」

「まあ、気付いていなくても疲れてるでしょうし、それくらいが妥当よね」

「明日は休み、明後日は情報収集だな」

「じゃあ明日はデートだね!」

「休みって言っただろ。そんなにはしゃぐな」

「そうね。少し町の中を回る程度にしましょ」

「え〜」

「楽しまないとは言ってないだろ。疲れないようにってだけだ」


その楽しみをできる限り取るためか、フリスのせいで翌日の出費は馬鹿みたいに高くなっていた。大半が露店でというのがフリスらしいか。




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