表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第2章 人の光と人の闇

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/217

第1話 キャンプ

「俺達と決闘して下さい!」


ここは最寄りの町から約1日歩いた場所にある草原、近くには森もある。そしてソラの目の前にいるのは、腰に剣をさげ、左手に小型の盾を持ち、揃いの制服に身を包んだ少年。そして彼の後ろには、同じように決闘を望む少年達がいる。


「どうしてこうなった……」


ソラはことの始まりを思い出していった。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー









学術都市ステイド。ここは3国の国境に近い王国の町であり、約250年前の魔王との戦いで最も長く最前線に位置していた町でもある。そのため、何度も襲撃を受けており、強固な城壁が築かれ、多数の兵器が配備されていた。

そして終戦後、高い防衛力を持つゆえに、この町の領主は巨大な学園を設立し、3国中から優秀な生徒や研究者を集めたのだ。学園は繁栄し、文官武官問わず数多(あまた)の著名人を輩出し、様々な研究成果が発表された。残念ながら王族や上級貴族は殆ど入学しないが、下級貴族や見込みのある平民の多くがここを目指している。その名はアンティクール学園、13歳から入学できる5年制の学校である。そして、この学園が行うイベントの中で特に生徒達に人気なのは、年に1回行われる学生闘技大会とアンティクール学園祭、そして年3回のサバイバルキャンプだ。


このサバイバルキャンプは生徒達がグループだけで野宿をできるようにするためのもので、3泊4日の行程となる。そしてキャンプには、生徒・教師の他に騎士や冒険者も護衛として同行する。ここまで言えば分かるだろうが、ソラ達はキャンプの護衛の依頼を受けているのだ。開始日はステイドに着いた2日後、1日観光や買い物をした翌日に学園の正門前で合流し、約1日かけてここまで歩いて来た。1・2年生は疲れも多いようだが、5年生や騎士、冒険者は当然ながら普通に元気だ。教師の1人は学者肌のようで、1年生並みに疲労しているが。

なおソラ達が担当するグループは、生徒が7班35人、教師2人、回復魔法を使える神官が1人、騎士が2ヶ分隊20人、そして冒険者がソラ達を含めて3パーティー14人だ。このようなグループが合計で20個ほど作られており、ステイドの周辺の様々な所でキャンプを行っている。

その場に留まる2日間、生徒達は基本自分の班だけで生活する。狩りや採取では護衛がつくが、直接的な手助けはしない。アドバイスや質問への回答は許可されているので、余裕があったり暇だったりすれば、生徒達は騎士や冒険者の所に集まっている。冒険者の中ではソラ達のランクが最も上のため、1番人数が多かったのだが……









ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー









「ま、こんなものか」


ソラの前に倒れ伏す人、ヒト、ひと……生徒達はソラの拳による一撃で動けなくなってしまい、簡単に全滅してしまった。なお、攻撃した箇所は肩、胸、脇腹であり、首は狙っていない。後遺症を残す恐れのある場所への攻撃は、敵の場合のみにしているのだ。

生徒達は全滅してしまったが、それはこの学園のレベルが低いということを意味するのでは無く、見込みのある者はソラへ挑んでいないからだ。そういった者は負けるのが分かっているから挑まないのでは無く、挑む理由が無いからである。バトルジャンキーは参加しているが。

こうなった原因は……察してほしい、彼等の名誉のためにも、明言するのは控えさせていただく。少しだけ言うと、周りを気にするミリアを無視してソラとフリスが騒いでいた、となる。


「容赦無いわね、ソラ」

「そうか?この程度ならマシな方だと思うが……」

「決闘だしね」

「そうだけど……じゃあ、ソラにとっての悪いやり方ってなんなのよ?」

「そうだな。関節技、投げ技ならまだマシだし……顔面や鳩尾に叩き込まれるとかか」

「そういう意味ならマシね……もしかして、ソラにはさっき言ったやり方が普通なの?」

「普通ってほどじゃないが、時々やってたな」

「痛かった?」

「そりゃ当然。手加減なんかされないし、できなかったさ」

「……凄いところね」


実戦的なこともやっていたソラの流派では、一定以上の実力者に限り、殺さない・重傷を負わせない・手加減禁止の稽古を時折やっていた。ソラは中学校2年生の頃から参加しており、何度も叩きのめされていた。もっとも、高校3年生になったら、5対1でも圧勝していたが。

なお、少し離れた所にいる冒険者達の所では……


「おいおい……」

「やりすぎだろ、あいつ」

「でも、凄いわよね。全員を一撃でよ?」

「それだけの実力があるってことだよな。Aランクは伊達じゃないか」

「そういえば……あいつらってフリージアでの戦いの後にこっちに来たんだったよな?」

「本人達もそう言ってたな」

「それって……大群相手に生き延びたってことよね?」

「戦っただけなら多いだろうが……Aランクだし、最前線の可能性もあるぞ……」

「最前線は全員なんじゃないか?もしくは、遊撃とか……」

「配置がどうだったかに関係無く、あいつらは強い。それで良いんじゃないか?」

「そうだな」


一部真実を当てていたが、良くも悪くも常識人ばかりだった。前線どころではない場所で戦っていたソラ達なのだが、他の町には詳しい話が伝わっていない。早めにフリージアを出てきたのは当たりだと言えるだろう。

もっとも、今の決闘で異常さはバレただろうが。


「あの……ソラさん?」

「あ、なんでしょうか、バルティール先生?」


ソラへ声をかけてきたのは赤髪赤目で長身、見た目20代の女性。名前はアリア・バルティールと言い、学園の2年生に担当のクラスを持つ教師だ。生徒からは慕われているらしく、よく話をしているのをソラは見ていた。

もう1人の教師は50代くらいの男性で、研究ばかりしているそうだ。体力が無くて辛いらしい。


「あまり酷いことはしないでくださいね」

「当然ですよ。未来を奪うようなことは絶対にしません」

「そうですか、では本題です。騎士や冒険者の皆さんと夜警の順番を決めてもらえますか?」

「パーティーごとではないんですか?」

「できるだけバランスよくしたいんです。生徒達も夜は見張りをやらせますので、それぞれで決まった形ではなく、平均的な形の方がいいかと」

「分かりました。では、相談してきますね」

「お願いします。それと、明日からの実習でも苦労をかけると思いますが……」

「仕事ですし、教えるのは好きなので大丈夫ですよ。上手くいくかどうかは心配ですけど」


仕事の伝達だけをして離れていく。彼女も武闘派では無く、研究者に近い人間のため、ソラ達と合う話のタネは無い。騎士達との方が話し慣れているだろうに、ソラへ話しかけてきたのは生徒達と年齢が近いからだろうか。

その後ソラは騎士や冒険者と打ち合わせをし、見張りの順番を決めた。1グループを4〜5人とし、交代ですることとなる。

だが、ソラは厳密に守るつもりは無かった。


「ミリア、フリス」

「なに?」

「どうしたのよ?」

「俺はいつも通り警戒しておくから、そのつもりでな」

「分かった〜」

「分かったけど、大丈夫?本当にいつもなんだけど……」

「大丈夫だ。あの魔法(・・・・)はセットしておくだけだからな」


お気楽なフリスと心配するミリア、その2人に言い聞かせるソラ。そんな3人とは関係なく生徒達ははしゃいだりし、そのまま夜となっていった。









ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー








『ビービー』

「ん?……ああ、敵か」


夜、ベフィアの2つの月がほぼ天頂にきた頃、ソラの警戒網に引っかかった存在があった。周りにいる騎士や冒険者、見張りをしている生徒達は全く気付いていない。使えない生徒達のためだ、ということで結界の類いは張られていないので、ソラはケアフルによる警戒範囲をかなり広げていたのだ。

テントから出て意識を覚醒させ、魔力探知を行うと、こちらへ向かってくる魔獣の群れを見つけた。


「ミリア、フリス、起きろ。魔獣が来たぞ」

「ふにゃ〜」

「……ん?ソラ?……分かった、少し待っててね。フリスも早くしなさい」

「は〜い……」

「早くしろよ?俺は他の人に言ってくるから」


ソラは最初に別のテントの中で寝ている2人に伝える。つい先ほどまで、見張りに立っていたミリアはすぐに起きたが、まだ時間的余裕のあるフリスは熟睡していた。そんなに遅れることは無いだろうが、しばし時間はかかるだろう。その様子を見たソラはフリスのことをミリアに任せ、騎士や冒険者へと魔獣のことを伝えに行った。

ソラが伝えたため、他の冒険者や騎士達も臨戦態勢を取る。教師は見張りの生徒へと伝え、伝えられた生徒達は寝ている者を起こし始めた。

その頃には、ミリアとフリスはしっかり戦闘準備を終え、外で待っていたソラの元へとやって来る。


「種類と数は?」

「サイズと形からして、ゴブリンかコボルト。だいたい……40匹くらいの群れか。まとまってるから分かりにくいな……もしかしたら、フリージアの時の残党かもな」

「それだけだったら、わたし達がいなくても大丈夫じゃないかな?」

「大丈夫だとしても時間がかかる。あと、夕方の決闘での消化不良分を無くしたい」

「なによ、それ。戦いたいだけじゃないの」

「その通りじゃないかな?」

「……やっと生徒達が起きてきたか。まったく、遅いんだよ」


ミリアとフリスに反論できず、話題を変える。ソラの言う通り、戦いの直前になって、寝ていた生徒達がようやく起き出した。その顔は大半が緊張に染まっており、上級生以外はまともに戦えないだろう。戦わせないのが一番良いと言えるが……


「そろそろか……準備は良いな?」

「ええ」

「勿論だよ」

「なら……行くぞ!」

「おい、お前等!勝手に行くな!危な、い……ぞ?」


3人はゴブリンの群れがある程度の距離に来た時、他の冒険者や騎士達の言を無視して駆け出す。それに対し、1人の冒険者が大声を上げて危険を訴えるが、次の光景に言葉を失った。

ソラが薄刃陽炎を一振りするごとに、ゴブリンが2、3体まとめて死ぬ。ミリアは自分の長所を生かし、ゴブリンが反応できないような速度で駆け、斬り裂く。フリスの正確無比な魔法は、ゴブリンを次々と切り裂き、貫き、葬っていく。3人の連携もかなり高度で、ソラが蹴り飛ばしたゴブリンにミリアがトドメを刺したり、フリスが上に吹き飛ばしたゴブリンへソラが魔法を放ったりしている。

数しかいないゴブリンではソラ達を相手にすることはできず、凄まじいスピードで数を減らし、残り1体となった。勿論、逃げられるはずもなく……


「ラスト!」

「あっ!」

「取られちゃった〜」

「ん?競争なんかしてたか?」

「私達も狙ってたからよ。競争ってほどじゃないけどね」

「ああ、獲物を取られれば悔しいか。… ん?どうした、フリス?」

「なんでもないもーん……(試せなかった……)」


最後のゴブリンにトドメを刺したソラだが、同じように狙っていたミリアとフリスに苦情を言われる。特にフリスの方は不満そうであった。

勿論、この程度で仲が悪くなるわけが無く、3人揃って呆然とする騎士や冒険者へ声を掛けた。


「終わったぞ」

「「「「「「………………」」」」」」

「聞いてる?」

「「「……はっ!」」」

「いやいやいや!なんで3人だけでやれるんだよ!」

「この程度物の数じゃないんだが……」


そして、当前だが驚かれる。ここにいる人は全員フリージアでの戦闘を聞いただけであり、あれだけの規模は2ケタ以上の人数でしか相手にしたことがない。いくらソラ達がAランクだと聞いていたとはいえ、いきなりの事で対応しきれなかったのだ。

なお、この光景は数多くある焚火(たきび)や松明によって明るく照らされており、それを見た生徒達は……


「ミリアさん凄いなー。お料理上手だし、あんなに強いなんて」

「フリスさんの魔法だって凄いよ。的確に攻撃してるもん」

「その2人もだけも、ソラさんはもっとヤバイだろ。全然動きが分からなかったぞ……」

「なんで俺決闘なんて挑んだんだろう……」

「俺らとほとんど同じ歳なのにこの差って……」

「……アレって非常識なんだよな?」

「そうだろ……アレが常識でたまるか」

「凄いな〜」


案の定、混乱しかけている。最も多い13歳入学の生徒の場合、ソラは1つ上の卒業生、ミリアとフリスは5年生と同い年なのだから、この反応も当然と言えるかもしれない。

ソラ達は一切気にしていないのだが。


「なんだよ、あの反応は。まあいい、寝るぞ」

「いつもゴメンね。ソラ君だけに警戒させちゃって」

「いいさ。まあ、警戒て言っても魔法を使ってるだけだからな」

「ソラのオリジナルだったわね。何でそんなに作れるのよ」

「発想の問題としか言えないんだがな……」


そのまま、いつも通りのシフトをするソラ達。そしてそれを唖然として見送る騎士や冒険者。理解不能といった感じの生徒達。様々な表情を見せているが、夜はそれに構わず()けていった。

なお、生徒達の半数は寝不足となったそうな。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ