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異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第1章 異世界放浪記

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第22話 自治都市フリージア②

「おはよう、ソラ」

「おはよ〜」

「おはよう、朝食はもう少し後だってさ」

「ありがとう。あ、出来たみたいね」

「ん?そうみたいだな」


瓦版(かわらばん)のような新聞に似た物を読みつつ、朝食が出てくるのを待っていたソラ。そこへミリアとフリスは、朝食が来る少し前にやって来た。

ミリアとフリスは今日は宿から出ない予定なのか、部屋着と外服の中間のような格好だが、ソラはしっかりといつもの服装をし、薄刃陽炎を提げている。

そこへ疑問を持つ2人。


「ソラ君、出かけるの?」

「ちょっと町を歩くだけだが……一緒に行くか?」

「私は……止めておくわ」

「わたしも〜」

「そうか。ま、疲れてるんだったら、しっかり休めよ」

「分かってるわよ……」


朝食を食べ終わり、町へと出て行くソラ。それを見送るミリアとフリスだが……


「ねえ、本気?」

「当然だよ」

「ええと……でも……」

「じゃあ、わたしだけ「それはダメよ!」……だったら、頑張ろうよ」

「うう……そうだけど……」


これを見ていたのは宿の女将さんだけであった。









ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー








「はぁ、覚悟はしてたんだけどな……」


フリージアを歩き回るソラ。主に巡っているのは武器屋だ。

その理由は……


「本当に刀が少ない。というか無い」


この世界では刀が不人気というのは本当だったと、ソラは痛感している。

たまにあったとしても直刀であり、日本刀の様な()りは無い。薄刃陽炎を手に入れられたのは幸運であったとソラは痛感していた。


「二刀流は慣れてないからやらないけど……やる必要も無いしな」


ソラは現在は、片手で刀を振り、空いた手と足で剣術の補助と空手の技を使っている。地球にいた頃は、二刀流を満足にできるだけの筋力は無く、少しは二刀流に憧れつつも諦め、実用性から現在の形を選んだのだ。

一応二刀流に対応した戦い方も持っているが、現状では必要性が無い。それに、刀の整備も大変になっていまう。


「やっぱり予備は欲しいんだよな……」


だがそれでも、万が一の時の予備は必要なのだ。徒手空拳で戦えるとはいっても、武器が有るのと無いのでは勝手が違う。

相手に与える威圧感もだ。


「小刀位ならあっても良いのに……」


携帯に便利な小刀すら無かったのだ。作成の手間からナイフの方が安く、使い易いのだから仕方がないのだが、ソラは不満だった。


「あれなら空手と組み合わせ易いのにな……」


小刀ならナイフの様に格闘戦でも使える。普通にナイフを使えば良いのだが、ソラは刀に拘っていた。


「ん?この店は……」

「お兄さん、いらっしゃい」

「ここは……何の店なんですか?」


そんなソラが偶然見つけた店は、半分で武器を、もう半分で生活道具らしき物を売っている。ベフィアでは初めて見るタイプの店だ。

店主は20代らしき女性で、ほんわかとした感じだ。1人だけだが、ソラは旦那がいないとは思っていなかった。


「ここは魔法具の店ですよ」

「魔法具?魔水晶から作るアレですか?」

「そうですよ。お兄さん、冒険者なんでしょう?」

「そうですね。昨日もダンジョンで採って来ましたよ」


そんな店主と少し話しながら、武器の側を見て回るソラ。だが、気になったのは武器ではなく指輪だった。


「これは?」

「これは空間収納の指輪よ。値段は100万Gですね」

「100万⁉︎」

「冒険者向けの物は作るのに手間と技術が掛かるんですよ。これは需要があるから、まだ安い方なんですけどね?」


幾つかのサイズがあるが、デザインと呼べる物は殆ど無いにも関わらず、値段が高かった。

当然ながら、この指輪だけでなく、戦闘・採取に役立つ魔法具はかなり高い。比較的安めな短剣ですら80万Gであった。

なお、店の逆側に置いてある、商人向けの魔法具は1万Gからであり、求められる耐久性が異なるとはいえど、雲泥の差である。


「何で冒険者用は手間がかかるんですか?」

「魔水晶は、それを付けた道具を壊れやすくしてしまうんですよ。技術である程度までは抑えれるんですけれど、その辺りが大変なんですよね」

「鍛冶の腕が悪いと魔水晶を付けた時に、使い物にならなくなる。魔水晶を付ける技術が悪いと、折角の一級品が駄目になる、という事ですか?」

「正解。賢いですね」

「頭が悪いと生き残れませんから。空間収納か……欲しいですけど、高いんですよね……」

「それなら、お金を貯めてから来ればとうですか?出来ますでしょう?」

「そうですね、そうします」

「待ってますね」


なお、指輪が高いのはベフィアには殆ど無い空間系の魔法を使っているからでもある。現在、空間系の魔法は魔法具に付与することしか出来ておらず、付加できる人も少ない。それでも需要は高いため、一般の冒険者には殆ど出回らなくなってしまっているのだ。

もう既に夕方に差し掛かっている為、店を出たソラは宿へと向かったのだが……


(空間収納か……アイテムボックスは欲しいしな……アレ(・・)で作れるか?)


何やら暗躍(不正規ルート)する気満々であった。








ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー









「♬〜♪〜」


その夜、ソラは宿の部屋で薄刃陽炎の整備をしていた。

刀身に付いた汚れを拭い、打粉をかけ、新しい油を塗る。普段からやっている作業に、今日は研ぎを加えていた。

いくらソラが上手いといっても限度がある。日本刀の斬れ味を保つためにはミリ以下の単位でズレを無くさなければならないのだ。当然ながら、ソラは本職の研ぎ師では無いが、使っている武器の状態を把握することは可能であった。目の細かい砥石を少しだけ使うのであれば、問題は無いほどだ。

魔法で綺麗な水を出し、濡らした砥石の表面に薄刃陽炎の刃を当て、振り抜く。雑ではあるが、本職では無いソラに出来る研ぎ方はこれだけだった。

なお、ソラは1人になるとよく鼻歌を歌う。決まった曲では無く、リズムを取っているだけなのだが。

そうして進めていき、作業が一通り終わった時、ソラの耳にドアを叩く音が聞こえた。


『ソラ、今大丈夫?』

『ソラ君、入って良い?』

「ああ、良いぞ。鍵は開いてるから、勝手に入ってくれ」


ソラは薄刃陽炎を鞘に戻して机の上に置き、入って来たミリアとフリスへと振り返る。振り返ったのだが……


「ゴメン!」

「えい!」

「おわっ⁉︎2人共どうした⁈てか、その格好は何だ⁉︎」


普段の部屋着では無く、完全なバスローブを着たミリアとフリス。その格好に驚いたソラは動けず、ベットへと押し倒された。


「いや、あの、その……」

「どうしたんだよ、ミリア……」


急に顔が赤くなり、言葉が出なくなったミリアに対し、ニコニコと笑って何も言わないフリス。

ソラも、何となくで予想は出来ていたが、流石に無いだろうと思っていた為……






「あの……ソラ、貴方のことが好きなのよ」

「……へ?」


言葉を続けられ無かった。





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