第∞話 エピローグ
「懐かしいな」
「どうしたの?」
「楽しそうね」
「ミリア、フリス……ああ、あの律儀な弟子達のことを思い出してた」
「あの時?慌ただしかったけど、楽しかったよね」
「今と比べると、随分と忙しかったわね」
過ぎ去った過去を懐かしむのは、人も神も関係無い。
「それで2人共、どうしたんだ?」
「手紙よ。お呼び出しね」
「いつものだよ」
「ああ、なるほど。ってまた俺か」
「仕方ないでしょ?1番盛り上がるんだから」
「ソラ君だって楽しんでるじゃん」
「偶には自由にやりたいんだが……まったく」
そう言って、ソラは腰を上げた。
ちなみにソラは、ここの管理者となった時に落ち着いた外装・内装へ変えたが、質に関しては遠慮していない。日本の最高級品程度の品質は確実にある。
「行くのね?」
「ああ」
「じゃあ、わたし達もだね」
「分かった。それで、他の奴らはどうした?」
「あの子達は出かけてるわ。いるのはオリアントスと……」
「ああ、ソラさん!」
廊下を歩いていた途中、開いている扉から見えたのは、真面目に机に向かうオリアントス。あのサボり神とは思えない。性格もかなり変わっている。
「……相変わらずの仕事好きだな」
「ええ!仕事の楽しさを教えてくださって感謝します!」
「……ああ、頑張れ」
ニートから社畜へ変身してしまった部下だが、もう何も言わない。というか、流石にもう慣れた。
「最初嫌がってたのにね」
「変わりすぎよね」
「あれは流石に予想外すぎる……そういえば、時間はどうなんだ?」
「いつも通りだよ」
「今から出れば良い時間に着くわ。向こうも、それを考えて出してるもの」
「そうだな」
「よぉソラ、またアレか?」
次に部屋から出てきたのはバルク、その後ろにはマリーもいる。2人はソラの影響が出たらしく、眷属の半人半神から眷属神となり、天界へ移り住んだ。
なお、司っているのは勿論料理である。
「ああ、その通りだ。まったく、俺は自由にやりたいんだがな」
「仕方ないだろ。出身地からのお誘いなんだからな」
「お前も来るか?料理担当で結構喜ばれてたろ」
「お断りだ。格が違いすぎるじゃないか」
「誰も気にしないだろ」
「自由にやりたいんだよ、俺はよ」
「分かった」
そういうわけで、3人はそのまま廊下を進んでいく。
そして、階段の近くに来た頃……
「さてと、後はあいつらだな」
「さっきも言ったけど、出かけてるわよ?何処かは分からないけど……」
「いや、もうそろそろ戻って来ると思うぞ」
「え、そう?」
「ああ」
「お、親父ー!」
「父様」
「お父さん」
「父上!」
「あ、本当だ」
「ほらな?」
階段を駆け上がってくる男1人、女3人が目に入った。全員、ソラの子ども達である。
「さて、一緒に行くか?」
「連れて行くの?」
「ああ。良い経験になるだろ」
「そうだね。上がれてるのはラー君だけだし」
「義袋……その呼び方はやめてくれって言ってるだろ」
「呼びやすいじゃん」
「それに、可愛いな」
「やめてくれ親父」
その中でも年長者の青年がからかわれているが、フリスの子ども弄りはいつものことだ。ただの家族の団欒である。
「で、どうだ。行くか?」
「勿論だぜ、親父。すっげぇ楽しいからな」
「行きたく思います。兄様に負けてはいられません」
「えっと、行っても良いかな?お父さん」
「私の力を試せるので、行きたいです」
「よし。なら、全員来い」
「いよっしゃ!」
「ありがとうございます」
「ありがとう」
「はい!」
尤も、全員がソラの弟子でもある恐ろしい神一家だが。まだ下級神程度である娘3人も、相性次第では中級神と互角以上に戦える程だ。大黒柱など、考えるまでも無い。
と、騒ぎすぎたらしい。ここに住む最後の1人も顔を出してきた。
「どうされましたか、我が主人よ」
「ゴアクか。まあ、いつものやつだ」
「なるほど、お疲れ様です」
彼の名前はゴアク。元魔王四天王であり、本来なら魔神復活の生贄にされるはずであった。
だがソラによって魂が保護され、新たな肉体を与えられてここに住んでいる。魔神のくびきから世界を解き放った軍神には、この程度容易い。
「そうだ、お前も来るか?1回だけだっただろ?」
「そうですね。では参加させていただきます」
「お、兄貴も来てくれんのか。心強いぜ」
「私は兄ではありませんが」
「まあ、眷属神になったのはラーガスが生まれるより前だ。ある意味では合ってるぞ」
「ああ、そういえばそうね」
「そんなものかな?」
「人次第じゃないか?」
「人じゃなくて神だって」
「同じようなものだ。それに、俺達は元々人だからな」
「あ、そうだったね」
「忘れないでよ」
「ごめんなさい……」
「アイリア、それはフリスの冗談よ」
「え、あ、お母さん!」
「フリス、終わらなくなるからそれくらいにしておけ」
「はーい」
「ねえってば!」
実際、彼らは人とほとんど変わらない。違うのは力と寿命だけ。下界で自由気ままに遊びまわるほど、人に近い存在だ。
「さてと。それじゃあ、行くとするか」
「ええ」
「うん」
「おう」
「分かりました」
「はーい」
「はい」
「承知」
だからこそ、神々は踊る。人の営みを見ながら、見守りながら。
完
これで本物語は終了となります。
グダグタだったり、更新が遅かったり、文章構成がグチャグチャだったり、内容も薄かったりと半分メチャクチャな作品ではありましたが、2年11ヶ月の付き合いでした(気付いたら100万字超えてるし……)。
なので、結構愛着のある作品です(完結できてよかった……)。
皆様、ご愛読ありがとうございました
またの機会がありましたら、次回作もよろしくお願いします




