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異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第10章 光と闇

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第8話 本当の目的





「もう1度言う。さっさとお前の役割を果たせ」


ジュン達が唖然とする中、ソラはもう1度言った。ミリアとフリスも戦う準備こそ整えているものの、ソラを止めようとすることは一切無い。


「ソ、ソラさん?何を」

「わざわざ聖剣をコーティングして死なないようにしてやったんだ。早く起きろ」


魔王は胸から血を流し、仰向けに倒れている。ピクリとも動かないので、死んでいると思うのも当然だろう。

だが、その目が動いた。


「ふふっ……」

「い、生きてる⁉︎」

「動けぬがな……だが貴様、正気か?余の敵であろう?」

「だからこそ、だ。お前は所詮道具に過ぎないんだろ?」

「そこまで知っておるとは……まあよい。死者は足りぬが……我らが神に恐れおののくがいいわ!」


最後の気力を振り絞り、魔王は大声を上げる。そしてそれがきっかけなのか、玉座にある2つの宝玉が怪しい光を発し始めた。


「ソラ、これは……」

「何だか、怖い感じ……」

「え、何?」

「あの光は……?」

「この術は……周囲の魔獣と魔人の肉体と魂を集めてるな。死者も生者も問わずか」

「……酷い術ね」

「予想はできてたけど……」

「むしろ、そういう相手だからこうなってるんだろうな。っと、これは使わせないぞ」


そして、ジュン達は理解できない光景が広がる。

神気が神術とならずに、また異なった術式を展開し、周囲から条件に合うものを集める。それはソラが言ったように魔獣や魔人の肉体と魂で、生贄のようなものなのだろう。

それをソラ達は何もせずに待っている。目的がこの後なのだから当然……だがソラは1つだけ、手早く神術で確保した。


「ソラ君?」

「流石に、こいつだけは我慢できないからな。1つくらいなら問題無い」

「甘いわね、ソラも」

「昔からだ」

「あの、ソラさん、何が……」

「ああ……もう伝えても良い頃か。ただし、他言は無用だぞ」

「は、はい!」


今のソラ達なら、神術を使って口止めをすることも可能だ。だが、それはしない。しなくても大丈夫だということを分かっているからだ。


「さっき魔王がやったのは、魔神復活の儀式みたいなものだ。どうやら、封印の核はあの2つの宝玉らしい」

「ま、魔神?」

「魔神といっても昔は創造神と主神に従う普通の神で、ある日急に堕ちて戦争を仕掛けた。それは神話の通りだろう」

「その通りね」

「問題なのは、こいつが殺されなかったことだ。どういう理由かは分からないが、こいつは封印され、僅かに残された世界への干渉手段を用いて魔王というシステムを作り出した。自分の封印を解かせるために」

「え、いや、何で……?」

「ってまさか⁉︎」

「そのまさかだ。俺達は魔神を倒すため、魔王の封印を解かせた。まあ、気付いたのは前にこの辺りを偵察した時だけどな」


ソラ達の知覚は感覚的なものであり、当人以外へ細かい説明をすることは難しい。だからこそこの程度の話で済ませたのだが、当然疑問も出てくる。


「そんなことが……」

「でもよ、何でそんなことに気付けんだよ?」

「確かに。1人が気付いたのなら、他の誰かが気付いてもおかしくないですね」

「普通なら気付かない。俺達は、まあ……同類だからな」

「え?」

「一般的に神と呼ばれる存在、それに成ったことは間違い無い。というか、俺は成るために喚ばれた存在だ」

「え?」

「は?」

「神様?」

「え、あ、嘘……とんだご無礼を」

「リーナ、そんな敬う必要は無いぞ。俺達の人生経験は年齢通りで、神話なんて持ってないからな」


それに、ソラは偉くなりたいわけでは無い。ただ、気に入ったこの世界を守りたいだけだ。


「俺達が成った過程はおいておくとして、今は魔神への対処が先だ。ミリア、フリス、準備は?」

「問題無いわ」

「大丈夫だよ」

「あ、あの……」

「足手まといを守ってるような余裕は無い」

「私達の動きについてこれたりはしないわよ」

「魔法だって、神術と比べたら子どものお遊びだもん」

「だからお前達はさっさと逃げろ。眷属ですらないやつは邪魔なだけだ」


勇者だとしてもただの人、半神半人(デミゴッド)ですら無い者なんて足手まといでしかない。だが、知らないということは危機すら分からないということだ。


「……戦います」

「は?」

「戦います。世界を守るなら、俺達も」

「何でそうなる。邪魔だって言っただろ」

「人手は多い方が良いじゃねえか」

「それに、聖剣もあります。これなら!」

「この際だから言っておく。その聖剣に魔王に対する効果なんて無いぞ。ましてや魔神に効くわけがない。そっちの国宝とかの中にも、1つとして神器は入って無い」

「なら、頼らずに戦うだけです」

「お前達だと魔神を傷つけるどころか、囮にすらならない。さっさと逃げろ」

「そんなの……やってみないと分かんないじゃないですか!」

「結果が100%分かってるから言ってるんだ!無意味に死ぬ気か!」

「それでも!……守りたいんです」


その想いそのものは、ソラも否定しない。だが、今は駄目だ。


「勇気と無謀は違う。お前達は邪魔なだけだ。すぐに消えろ」

「だけど、ソラさん!」

「お前らは……ちっ、時間が無いな。そこで大人しくしてろよ」


反論を聞かずにソラは神術の結界で6人を囲み、ありとあらゆるものから遮断した。少し神気を使ったが、必要な措置だ。


「ソラ君、良いの?」

「勝ち目の無いやつを囮に使うほど、俺は落ちぶれて無い。それにしても、知らせるのが遅すぎたか。魔神を魔王の延長とばかり思ってるな」

「全然違うのにね」

「余波だけで消し飛ぶぞ」

「そうね。本当は逃がせれば良いんでしょうけど、今はもう仕方無いわ」

「ああ」


ジュン達への説明を途中でやめたのも、これが理由だ。ソラは玉座の方を見て、言葉を放つ。


「さて……わざわざ待っててくれたのか?魔神レヴァーティア」

『気付イテイタノカ』


そこから立ち上った高さ5mほどの黒いモヤ。見た目だけでは分からないが、ソラ達の知覚は理解している。それが魔神だ。


『モウ少シ、時間ヲカケレバ良カッタモノヲ』

「そうして時間稼ぎしても意味は無いぞ?流石に、完全復活されると勝てるか分からないからな」

『察シガ良イノモ考エモノダ。マア、今ノママデモ死ヌダロウガナ』

「寝すぎて感覚が狂ってるか?相手の実力の判断もできないみたいだな」

『カッカッカ、若造ハ威勢シカ良クナイナ』

「ボケたジジイが何を言う」


こんな風に言い合っているが、余裕そうな魔神と警戒し続けているソラ達。それが両者の実力差を表していた。


『ソレハソウト、準備ガアルダロウ?』

「やらせて良いのか?」

『カッカッカ、心配ナドイラヌ。抗イタイノナラ、サセテヤルモノヨ』

「なら、遠慮なくやらせてもらおう。ミリア、フリス」

「ええ」

「うん」


傲慢な魔神だが、それは強さに裏打ちされたものだ。いくらソラ達でも、このままでは勝てない。そのため、これらが必要だった。


「行くわよ、ルーメリアス、アルマーク」


双剣(ルーメリアス)が金色の輝きを放ち、軽装鎧(アルマーク)は金の光を纏う。


「やっちゃうよ、オルボッサム、ハウリルエル」


長杖(オルボッサム)の先端に白い光球が生まれ、ローブ(ハウリルエル)の周囲には小さな白い球体が多数浮かび始める。


「叫べ、薄刃陽炎(うすばかげろう)


ずっと共に戦い続けていた愛刀の名を呼び、刀もそれに応える。その白金(しろかね)色の輝きは強烈で、まるで刀身が神気でできているようだ。


「鼓動せよ、時雨守(しぐれのかみ)煉玉(れんぎょく)。そして……」


左腕についている盾と首からさげている勾玉も光を強め、薄刃陽炎に劣らぬ存在感を見せている。


「目覚めろ、帳要(とばりのかなめ)


そしてその一言を受け、手甲足甲が強烈な光を発し……それが晴れた時、ソラは頭部以外に白金色に輝く当世具足を纏っていた。


『ナルホド、ソレラガ』

「ああ。俺達の神器、俺達の力だ」

『ダガ小童ノモノ、脅威トハナリエヌ』

「そんな風に油断できるのも今のうちだ。驕り高ぶったお前には……」


封印されていたとはいえ古き頃からの神と、人から成ったばかりの新しき神。こういった構図になるのも、仕方の無いことなのだろう。

だからこそ、3人は宣言をする。力を、自身と世界へいきわたらせるために。


「剣の女神、ミリア」


金色(こんじき)の光がミリアを包み、


「術の女神、フリス」


白色の輝きをフリスは纏う。


「そして……軍神、ソラ」


そしてソラは白金の神気を吹き上げる。


「俺達が相手をしてやる」

『オモシロイ』


そうして、白金と漆黒は戦端を開いた。








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