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異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第10章 光と闇

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第7話 魔王





「はぁぁぁ!」

「ふん!」


ジュンの振るう聖剣と、魔王の振るう赤黒い大剣が衝突する。衝撃波とともに魔力が吹き荒れるが、どちらも気にしず、鍔迫り合いを続ける。


「はっ!」

「ぬぅ」


だがここにはリーナもいる。横合いから突きかかられては、魔王も避けるしかない。牽制で雷魔法を何発か放つものの、それらは全て弾かれた。


「ジュン、大丈夫?」

「怪我は無いし、魔力もまだまだあるよ。大丈夫」

「そう。それで、どうするの?」

「ソラさんが来てくれれば、隙なんてすぐに作ってくれるだろうけど……」

「ふん、時間稼ぎなど無駄なだけであろう」

「しばらくは、私達だけでやるしかないみたいね」

「そうだね」


ソラやトオイチ達が追いつくまでに、まだかなりの時間があるとジュンは予想していた。だからこそ2人で凌ぐ、むしろ2人で倒してしまうくらいの意気込みだ。


「時に勇者よ」

「何かな?」

「お主は何故人のために戦う?余がいるにも関わらず内輪揉めの絶えぬ者達だぞ?」

「前よりは酷くないよ」

「逆に言えば、先代の頃は魔王という絶対強者がいるにも関わらず、国同士で争っていたのだ。なんと愚かではないか?」

「ジュン、聞いちゃ駄目よ」

「時間を稼げるなら良いでしょ?」

「そうだけど……」

「そのような者達のために、何故戦う?仮に魔王という存在がいなくなったとしても、人は争い続けるぞ?」

「……その通りだね」

「ジュン⁉︎」


急に魔王の言葉へ同調したジュンに、驚くリーナ。だが、これはただ事実を語るだけのこと。彼の立場は最初から変わっていない。


「地球だと人……人間(ヒューマン)しかいなかったから、争いも戦争も絶えなかったんだ。100年間で1億人以上、戦争で死んでた時もあったかもしれない」

「ほう、面白い世界だな」

「でも、戦ったことなんて無いって……」

「俺のいた時は平和で、俺のいた国は戦争なんてしてなかったから、全然知らないんだ。怖いものだってことしか知らなかった」

「ああ、そうなのね」

「だけど、そうやって他人事で見れたから、戦争が絶対悪じゃないって知ってる。人は争うけど、争うことで少しずつ進歩して、未来へと繋いでいく……それが分かったんだ」

「ならば何故だ?」

「だから、争いそのものは否定しない。でも、こんなただ殺して殺すだけの、主張の無い無意味な争いは止める。絶対に」

「無意味、であるか」

「魔獣は殺すだけ、人も殺すだけ、それに意味がある?」

「さて、それが本当に無意味だと思うのか?」

「……どういうこと?」

「それこそが目的だとしたら、どうする?」

「皆殺しが?」

「言うわけなかろう。例え正解だとしても、な」


だからこその不毛な話し合い、時間稼ぎの駒でしかない。それ故か、言い終えた魔王はジュンへ一気に接近してきて、大剣を振り下ろす。


「ふん!」

「不意打ちなんて、魔王らしく無いんじゃない?」

「そんなもの、ゴブリンにでも食わせておけ。余の辞書に慢心という文字は存在しない」

「なら、書き加えなさい!」


ジュンと鍔迫り合いをしていた魔王へ、リーナが突き掛かった。切っ先には水と雷の付加もかけており、全力だ。

だが、それは魔王が展開した闇の塊により阻まれ、左手で掴み取られる。


「効かぬよ。その程度ではな」

「っ!」

「リーナ!」


反撃の蹴りが来るが、リーナは槍を手放してそれを避け、十数メートルほど後ろへ下がる。

またすぐ側にはジュンが来て、心配していた。


「大丈夫?」

「大丈夫よ。ジュンも知ってる通り、武器はまだあるから」


そう言ってリーナが取り出したのは、2m程の槍だ。長さに特に変わったところは無いが、刃は50cmくらいある。そして、その謎の異質さに魔王は目を見張った。


「……何だ、それは」

「光の天槍、ブリューナク。使うのは久しぶりだけど、上手くやるわ」

「分かった。サポートはお願い」


2人はそう言ったが、次の行動は違った。ジュンではなくリーナが先に駆け、突きを放つ。魔王は余裕を持って避ける……が、ブリューナクから光の槍が飛び出て、魔王に襲いかかる。


「ぬぅ⁉︎」

「甘かったわね」


付加を使ったのか、闇を纏った腕で受け止めたため、負傷はしなかった。リーナを警戒しつつ、魔王は少し下がる


「……なるほど。独自の魔力を持っていると感じたのだが、そういうことか」

「過去の遺物よ。数は少ないし使いこなせる人も少ないから、魔王でも知らなかったみたいね」

「他にもいくつか見たけど、リーナしか使えないよね。数も少ないけど」

「過去に1人しか作れてないわ。扱うにも、相性とか必要だからね」

「ならば余にはいらぬな。頼りきりの力など不要だ」

「そう言うわよね、ジュン」

「勿論」


ジュンはリーナの前に出て、聖剣を構える。ジュンがメインでリーナが補佐というのは変わらず、魔王と相対する。


「はぁ!」

「ふん!」


そして再度ぶつかった。だが今度は鍔迫り合いをせず、双方が互いに一撃離脱を繰り返しながら刃をぶつけ、魔法を放つ。


「ライトブラスト!」

「ダークノヴァ!」

「くっ!」

「ふん。勇者とはいえ、たった1人に……」


基本スペックで言えば、魔王の方が上だ。だが、それを補うのが仲間というもの。


「やぁ!」

「ぐ、また……」

「はぁぁ!」

「ちぃ!」


リーナに突きかかられ、さらにジュンにも切りかかられ、魔王はたまらず大きく避ける。種は割れたが有用な攻撃手段であることは確か、魔王といえど警戒は怠れない。


「厄介な手を」

「2対1なんだから当然でしょ」

「倒すためなら、何だってやるさ」

「ふむ……強者との戦いは望むところであるが、これ以上時間稼ぎに付き合うのも問題であるな。仕方無かろう」

「魔力が……マズい、防いで!」

「シールド!」

「星をも喰らう暗き極光よ、余に従え。エンドオブスター」


膨大な魔力が込められた闇魔法。それはリーナの張った水と雷の複合盾を紙のように破り、ジュンの光の壁でギリギリ消え去った。


「なんて威力……」

「まだ来るよ!」

「早く終わらせなければならないという理由だけでは無い。余は王である。例え勇者相手といえども、破れることは許されぬ」


それは、魔王の自身の現れだったのだろうか。だが宣言したのは、この場では逆効果だった。魔法が完成する前に、それは起こる。


「だったら、こんなのはどうだ?」


その場にいなかった人物の声が響き、吹き飛んだ大扉が魔王へ襲いかかった。


「ならその言葉……」

「試しちゃうよ!」

「何⁉︎」


それに続いたのはミリアの剣戟とフリスの魔法。2つの相乗効果により、魔王は左腕を失う。

そしてそこへ、4人が攻撃し始めた。


「オラァ!」

「閃光貫け、インパクトライトニング!」

「はっ!」

「乱れ切り裂け、ランストルネード!」

「ぐぬぅ……」


トオイチの大剣が魔王の大剣を打ち、ハルカの短剣が鎧に傷をつける。カズマとアキの対単体魔法が闇魔法で相殺されつつも魔王を吹き飛ばす。


「みんな!」

「おいジュン!さっさとやっちまえっての!」

「流石に、長くは保ちません」

「早くやっちゃってよ!」

「足止めなら任せて」

「ジュン……お願い」


ミリアとフリスは魔王からの警戒が強く、足止めは4人が中心となっている。今は上手くいっているが、ずっとそうなる保証は無い。

そう考え、ジュンは覚悟を決めた。その彼が持つ聖剣へ、他者からのエンチャントがかかる。


「行け、ジュン」

「ソラさん?」

「決めてこい」

「はい!」


1人だけの時より強い光に覆われた聖剣を携え、ジュンは駆け出した。


「来るか勇者よ。例え数が増えようと……」

「隙あり!」

「きさっ⁉︎」

「トドメェェェ!!」

「ぐ、このおぉぉぉぉ!」


そしてリーナが作った隙に飛び込み、胸部を横一文字に切り裂く。魔王はしばらく立ち直ろうとしていたが、耐えられず仰向けに倒れた。


「やった……?」

「……ええ」

「やった……やったんだ……」

「やったじゃねぇか!ジュン!」

「ちゃんと倒しましたよ」

「やっと終わった……」

「終わったね」

「……ありがとう、ジュン」

「リーナもありがとう。リーナのおかげで耐えれたよ」

「そんな、そんなの……ジュンがいなかったら、勝てなかったから……」

「勝ったから良いんだよ。ソラさん!やりまし……ソラさん?」


ようやく目的を達したことで、大はしゃぎの6人。ソラ達3人の纏う雰囲気の違いに、一行の言葉が止まる。


「ミリア、フリス、良いな?」

「ええ」

「うん」

「えっと……ソラ?」


その中でリーナが1番早く再起動できたが、何をしようとしているのかは理解していないようだ。

だからこそ、ソラは言葉を放つ。


「おい魔王、さっさと役目を果たせ」


ジュン達からすれば予想外の、ソラ達からすれば予定通りの、そんな言葉を。











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