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異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第10章 光と闇

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第5話 魔王城





『……む?』


魔王城へ近づく人影。それに門番らしきクリスタルゴーレムが反応する。


『貴様、何故ここに、グガッ⁉︎』


が、一閃された刃により、一撃で物言わぬ骸と化した。その背後の大扉も、音を立てて崩れていく。


「今だ、行くぞ」

「ええ」

「うん」


そうして開いた穴へ向け、ソラはミリアとフリスと共に飛び込む。


「なっ、はぁ⁉︎」

「てき、ガァ!」

「侵入者だ!」

「出会え!出会えぇ!」

「ひっ⁉︎」

「ギャア!」


そして門の内側にいた魔人や人型の魔獣を蹴散らし、正面ホールを阿鼻叫喚の地獄絵図へと変えていく。後ろからジュン達も続いていたが、そっちへ行く前にソラ達が処理していた。


「ふっ、ここに来たのが運の尽きよ。私、ガル……」

「邪魔だ」


目の前に出てきたSSランクらしき魔人を、話している途中に蹴り飛ばし、


「ガル、っ⁉︎」

「邪魔よ」


気づかれる前に、飛んでいたSSランク魔獣のヘルを十字に切り裂き、


「貫け!」

「穿て!」

「「エア……」」

「どいて!」


魔法を放とうとして2体の双子らしき魔人を、先制攻撃で丸焼きにする。


「フリス、そっちを吹っ飛ばせ」

「ソラ、前は私がやるわ」

「ソラ君、一気にやっちゃうよ!」

「ああ、任せる」


100本ボウリングでピンへ50ポンドのボールを時速60kmでぶち当てたかのように、魔人や魔獣が次々と跳ね飛ばされ、消し飛んでいく。SランクやSSランク、少ないだろうがSSSランクも混ざっているはずなのだが、ソラ達にとってそれらは等しく雑魚だった。


「……凄い」

「負ける未来が全く見えません」

「俺らいらねぇんじゃねぇか?」

「そんなこと言ったら……」

「でもさあ、あんなの見せられれば誰だってそう思うでしょ?」

「まあ、そうかもしれないけど……」

「そうです」

「ジュン、今は役目を果たすわよ」

「そうだね、リーナ」


ジュン達がそんなことを言っているが、ソラ達は全て無視をする。どうせ後で見られるのならば、今見せたって同じこと、そうソラは考えていた。


「確か……この先だな」

「壁だけど、壊せば良いわね。フリス」

「うん」


そして、わざわざ相手のルールに乗る必要は無い、とばかりに漆喰(しっくい)と石の壁を破壊する。かなり分厚い壁だったため、奥にいた魔獣か魔人が潰されていたが、誰も気にしない。

そうして進んでいくと、目の前に大きな扉が現れた。


「豪勢な扉が出てきたな。ゲーム的だが……仕方無い」

「つまり、そういうことですね」

「四天王がいるだろうな」

「私達の出番ね」

「うん、頑張ろ」

「ですけど……それで大丈夫ですか?」

「何がだ?」

「1人で1体と相手するって……」

「ああ、任せろ」


回答を待たず、ソラは扉を蹴り飛ばす。その先には真っ赤なドレスを着た少女がいた。見た目だけなら普通の人間(ヒューマン)のようだが、赤い目と鋭い八重歯がその正体を表している。そして見た目通りなら、あの勢いの大扉を弾くことなんてできない。


「侵入者というのは其方らのことかのう?」

「あれって……まさか、ヴァンパイアロード……?」

「だろうな」

「その通りじゃ。妾は四天王が1人、ヴァンパイアロードのハーマニ。血を吸われたい者から来るが良かろう?」


そう言いつつ、腰からレイピアを抜く。その姿を見て6人は警戒を強めたが、3人は自然体のままだ。


「強ぇな、こりゃ……」

「流石に全員で……」

「ミリア、任せた」

「ええ」

「ほう、妾へ1人で挑むとはのう。勇気と蛮勇を間違えたようじゃの」

「その言葉、そっくりそのまま返してあげるわ」


その瞬間、ミリアとハーマニの姿がかき消え、衝撃が周囲を襲う。だが、この程度ならジュン達でも大丈夫だ。


「いや、え、ソラさん?」

「今のうちに行くぞ」

「ですけど」

「大丈夫だ。ミリアを信じろ」


というか、本気のミリアはソラより速い。それを出すことは無いだろうが、それでもジュン達では足手まといだ。


「また扉が……」

「さっきとは意匠が違いますね」

「やっぱり、いるのが違うから?」

「ああ、そうだろな。さて、と!」

「また壊すのね……」


また大扉が吹き飛ぶが、今度は魔法で破壊された。その煙が晴れた先では、骨と皮だけの肉体が豪華なローブや杖を所持していた。


『ハーマニに勝った、わけではなさそうですね。生贄を残しましたか』

「アンデットロードか。つまり……」

「ソラ君、わたしがやるから」

「1番決意が高かったからな。任せる」

『私はアンデットロードのメイルーガですが……ふむ、どこかでお会いしましたか?』


会ったことはない。だが、因縁じみたものはある。


「ルーマをあんな風にしたでしょ?」

『ああ、あの失敗作を壊したのは貴女達なのですね』

「失敗作、だと?」

『何かおかしなことでも言いましたか?実験結果が望んだ通りにならなければ、それは失敗作でしょう?』

「そんなこと言うんだ……ソラ君」

「内容は分かるが、どうした?」

「本気でやっちゃって良い?」

「決めた通りならな」

「じゃあ……」

『そうですか。では……』


そして、極太の稲妻と巨大な黒雲が衝突した。


「行って!」

「行くぞ!」

『行かせません!』

「は、はい!」

「うお⁉︎」


フリスが相手をしている間に、7人は進む。そのジュン達へメイルーガは魔法を放つが、自身の戦いをしつつもフリスか迎撃していく。そして残ったものもソラが撃ち落とし、部屋を出た。


「あれって……何ですか?」

「魔法だ。知ってるだろ?」

「牽制であんな大規模魔法を使ったことなんてありません」

「ん?フリスは最初から仕留めるつもりだったぞ?」

「もっと怖いです」


次へ続く廊下を走り、次の扉を開ける(蹴り飛ばす)。すると、そこにはソラが見慣れた人物が立っていた。


「ようこそ。やはり来たようですね」

「ゴアクか……やっぱり、そういう立場なんだな」

「ええ。ですから、舞台は整いましたよ」

「そうだな。それで、あの時の約束だ。1対1で良いか?」

「私にも立場というものがあるのですが……良いでしょう。お行きなさい」

「だ、そうだ。早く行け」


3回目だから慣れたのか諦めたのか、ジュン達は何も言わずに部屋を出ようとする。そこへ放たれた苦無は、ソラの魔法によって撃ち落とされた。


「おい、手は出さないんじゃ無かったのか?」

「貴方相手ではあの程度、牽制にもなりませんでしょう?私も、彼らには早く行って欲しいのですよ」

「よくもまあぬけぬけと」

「事実ですから」


その発言の直後、ゴアクの背後に無数の腕が現れた。それは数百どころか、千にも届きそうな数だ。そしてそれぞれの腕は、多種多様な得物を持っている。


「四天王が1人、センジュのゴアク。ようやく整えられた舞台へ参りましたよ」

「SSSランク冒険者であり勇者の師、ソラ。他にも色々と呼ばれ方はあるが……高まり続けた因縁を断ちに来たぞ」

「それでは、いざ尋常に……」

「勝負!」


ソラが飛び出し、ゴアクはそれを待ち構える。そうして、個対個の3つの決戦は始まった。










ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー











「大丈夫よね?」

「リーナ?」

「ソラ達に危険なことを……それだけじゃなくて、他にも色々任せちゃって大丈夫なのよね?」

「大丈夫だっての。信じろって言われたじゃねぇか」

「あたい達なんかよりずっと強いんだし、大丈夫だって」

「足手まといとか言われそうだし」

「勇者より強いのはどうかと思うけど」

「……それって俺にも言ってる?」

「勿論」

「確かにそうだけどさ……」


不安を持ちつつも、6人は進んでいく。そして次の大扉へ着いたのだが……この扉、前の3つより大きい。


「最後の四天王が……」

「ここで魔王が出てきたら怒るわよ」

「何でそうなっちゃうかな……?」

「おい。迷わねぇで、さっさと行っちまうぞ」

「何で私達が先に進んだのか分からなくなるよ」

「そうだね、行こう!」


その扉の先にいたのは、真っ黒で巨大なドラゴンだ。だがその体は、ソラ達が遭遇した魔天龍よりも大きく、小さめの古竜(エンシェントドラゴン)にすら迫る。そして、頭部には角にも見える棘状の鱗が3本、上を向いていた。


『ほう、騒々しいと思ったら、我輩の眠りを邪魔する者まで出てきたか』

「ドラゴンロード、間違いないわ」

「ここは全員で……」

「ジュン。お前とリーナは先に行っちまえよ」

「え、いや、でも」

「それが最も勝率が高い、それは分かってますね?」

「1番強いんだから、頑張んなさい」

「私達はソラさん達が来るまで耐えるだけです。心配しないで」


ジュンとリーナ以外は、もうソラ達の心配などしていなかった。3人の勝利と、自分達の勝ちを信じている。それが分かった2人も、覚悟を決めた。

それと、ドラゴンロードには完全に聞こえているはずなのだが、何も言わなかった。それどころか、次の言葉はジュン達の想定にないものだった。


『ふむ、ならば通るが良い』

「良いのかよ?」

「予想外だね」

『勇者がおろうと、たった2人で魔王様に勝てるはずもない。精々骸を晒せばよかろう』

「はっ、そっくりそのまま返してやんよ」

「竜殺しなんて、よくある話だし」

「負けるわけ無いって」

「勝ってみせます」

『四天王が1体、ドラゴンロードのバルガン。どこからでも来い、小童ども』


対峙する4人と1頭を見つつ、ジュンとリーナは部屋を出る。そして扉を閉じた瞬間、爆音が空気を揺らした。


「みんな……」

「ジュン、彼らを信じて、やれることをやるわよ」

「頭では分かってるんだけど……どうしても、かな」

「それでも……ねえ、ジュン」

「リーナ?」

「ベフィアを代表して、お願い。彼らを信じて戦って」

「分かってるよ。だけど……」

「だけど?」

「リーナからお願いされた方が、やる気が出るかな」

「こ、こんな所で言わないでよ!」

「ごめん。じゃあ、覚悟が決まったところで……」

「ええ」

「行こうか」


扉を開けて進んだ先、そこにいるのが、目的の相手だ。赤と青の2つの宝玉がはまった玉座に座る者、その種族はデーモンキング。だが体に宿す力は、それを大きく超えていた。


「早いな、勇者よ」

「お前が、魔王……」

「いかにも。余が魔王、名をゴルドラと言う。それにしても、たった2人で余に挑むとは、無謀な者もいるものだ。ここに来るまでに別れた者達と、同じ運命を辿らせてやろう」

「そんなことは無いわ!」

「弱い者ほどよく吠えるとは、よく言ったものだ。人は群れなければ、我々に敵うことなどできない。殺されに来たものなど、ただの無能者であろう?」

「……確かに、俺達は弱いかもしれない」

「ジュン?」


突然のジュンの言動に驚くリーナ。だが彼の目は、強い光を発している。


「でも、弱くて何が悪いんだ?絶対的な強さが無いのと同じで、絶対に弱いのも無い。強いか弱いかなんて、それが全てじゃない」

「ほう?されば勇者よ、どうするのだ?」

「戦って、勝つ。1人ひとりが弱くても、力を合わせれば強くなれる。ここにいるのは……たくさんの人達の願いの結果だから!」

「ならば勇者よ、人の願いとやらを見せてもらおう。そしてその上で、叩き潰してやろう」

「リーナ!」

「ジュン!」

「さあ来い!」


そして、運命を決める決戦が始まった。





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