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異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第10章 光と闇

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第4話 魔王領⑨





「ソラさん、この町は綺麗なんですね」

「昔のままみたい」

「全然壊れてねぇもんな」

「そう気持ちの良いことじゃない」

「え?」


元王都ルーマ。その中央にある王城へ向けて、9人は足を進めていた。その足取りのうち、6人は明るいが、残り3人さそれほど陽気では無い。


「この町は俺達が着いた時、アンデットの巣窟だった」

「え……?」

「嘘……」

「そんな跡は……」

「1体残らず消し去ったから、残ってるはずがない。だが事実だ」

「あの時はこの通りもアンデットで溢れていたわ。酷い惨状だったわよ」

「強いのも多かったよね。Sランクがたくさんいたもん」


実際は上限があったようだとはいえ、ほぼ無限の増殖をしていた。だが、流石にそんなことは言えるはずが無い。ソラの推測通りであれば、勇者が関わっていいことでは無いのだから。


「ど、どうやって倒したんですか……?」

「まあ、大通りに誘き寄せてから光魔法で一掃したり、路地裏で1体ずつ相手にしたな。逃げ回りながら、少しずつ減らした」

「うわ、時間が……」

「数日かかったわね。寝る暇なんてほとんど無かったわ」

「うん。仮眠だけだっけ?」

「全てが終わった後は、最低限の警戒だけして寝てたな。半日以上」


この辺りも事実を全て話してしまわないよう、適当に話を合わせている。理由はまあ、何度もあった通りだ。


「それで、何で城に向かっているんですか?何かあるとは……」

「まあ、必要なものは前に来た時に全て持ち出した。だが、現場を見ておいて欲しかったからな」

「現場?」

「行けば分かるわ」

「今はもう何も無いけどね」

「少しは残ってるぞ」

「おう……」


そう話しながら城に入ると、ソラ達はそのまま直進した。その行動に迷いが無く、ジュン達は一瞬戸惑う。


「こっちだ」

「いや、え、そこって……」

「真正面は……だよなぁ?」

「だよね?」

「うん、玉座だよ」

「最後に戦った場所でもあるわ」

「え?」

「まず入るぞ」


そうして入った玉座の間には、壁に残る破壊痕と、玉座があるはずの場所の周囲にある炎の痕があり、その中心には謎の石柱が建っていた。ジュン達が(いぶか)しんだとしても、仕方の無いことだ。


「あれは……?」

「俺が作ったものだ。心配するな」

「あの傷と火の痕もソラがやったわね」

「派手なのは全部ソラ君だよ」

「おい。その辺りの床の傷の一部はミリアのだし、左右の壁の傷はほとんどフリスが付けたんだろ」

「そうだっけ?」

「ああ、そうだ」

「確かに、私達も派手にやったものね」

「いやどんなですか……」

「普通に戦っただけだぞ?」

「いえ、普通でもこれはどうなんですか?」

「SSSランクが2人だったけど、まあ普通ではあるわね」

「2人?」

「後でな。それより……まあ、取り敢えずこっちに来い」


そう言われ、ジュン達も石柱へと近づく。当然ながら、そこに文字が書いてあることに気付いた。


「勇敢なる者達の魂 ここに眠る……ですか?」

「適当に書いたものだ。そう大した意味は無い……ただまあ、ちゃんとその通りでもあるな」

「どういうことだ?」

「これはね、ソラが耐え続けていた国王と王妃について書いたものよ」

「耐え続けて?」

「アンデットキングとノーライフクイーンにされちゃってたけど、ずっと意識を保ってたんだよ。それで、少しだけだけど話を聞けたんだ」

「え、ずっとって……」

「詳しいことは聞けなかったが……この王都が落とされてからの約70年間、壊れずにいるのは辛かっただろうな」

「それは……」


それを聞いて、ジュン達は全員口を(つぐ)んだ。誰1人として、耐えられるとは思わなかったからだ。

そしてソラ達は、彼らの願いも継がせる。


「それで、私達は最後の願いも託されたわ」

「……聞かせてください」

「この悲劇を繰り返さないでくれ……それが、彼らの願いだ」

「それだけ、その時は大変だったんだって」

「ここに連れてきたのは、これを伝えたかっただけだ。どう取るからお前達次第だが……まあ、そうなんだろ?」

「はい、勿論です」

「当然だぜ」

「当前です」

「勿論!」

「その通りです」

「ソラの思ってる通りね。それは、私もだから」

「分かった。ミリア、フリス、予定通りで良いな?」

「ええ、最初から変わらないわ」

「ソラ君と一緒だよ」


若干話がズレているのだが、ジュン達は気づいていない。そのため明日に備え、もう休息を取ることとなった。












ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー












「あれが、魔王城……」


魔王城まで普通に歩いても半日程の山の上に登り、魔王城の方を見る9人。前にソラ達が陣取った山とは別だが、観察程度ならあまり変わらない。


「ああ、あの中に魔王がいるのは間違いない。魔力の質としても、周囲にいる魔獣を見ても、だ」

「魔獣?」

「前に来た時と変わってないのよ。大まかな配置だけだけどね」

「他の場所だが、相当数を倒したからな。種類に関してはかなり変わってる」

「具体的にはどうなっていますか?」

「そうだな……SSSランクの数は変わってない。入れ替わりだけだ。Sランクが少し減って、SSランクが増えたか?」

「うん、そんな感じだよ」

「Sランクが0.8倍、SSランクが1.1倍くらいね」

「減ってるんですよね?」

「ああ、総数は減っている。だが、戦力はむしろ上がってるぞ?」

「それは分かっています。ですが、やるだけです」

「おうそうだ、やっちまおうぜ」

「まったく、攻撃は明日だぞ?」

「分かってるって」

「大丈夫です」

「元気だね」

「元気すぎるのよ考えものよ」


そんな風に言いつつも、ミリアの顔だって笑っている。3人ともこういう雰囲気の方が好きなのだから、まあ当然だ。


「さて、ここで最後の打ち合わせをするつもりだったが……やるか?」

「はい」

「勿論ね」

「分かったわ。と言ってもソラ?どうせ決まってるんでしょう?」

「まあな」

「どうするんですか?」

「まず、強襲と突入は俺達がメインでやる。お前達は後ろからついてこい」

「……え?」

「いや、それは……」

「その上で、魔王の前には四天王が待ち構えているだろうが、そのうち3体は俺達が相手をする。4体集まっているのなら全部だな」

「そんな無茶なことを……」

「そう無茶じゃないわよ」

「多分倒せちゃうもん」

「えぇー……」

「お前達を、ジュンを魔王の所まで行かせて、勝たせる。そうすれば良いんだから、これが1番効率的だ」

「効率っつーか、なんつーかよ。それで良いんかよ?」

「これで良い。花道は俺達が作る。お前達は最後の美味しいところだけ持っていけ」


もっとも、ソラ達は全てを語ったことが無い。それ故、その目的の正確なところは3人以外の誰にも分からなかった。


「それとジュン、お前達は休んでおけ。見張りは俺達がやる」

「え、良いんですか?」

「ああ」

「でもよ……」

「甘えておけ。まあ、俺達も休まないわけじゃないからな」

「それは当然ですけど、大丈夫ですか?」

「ええ、問題無いわ」

「大丈夫だよ」

「……分かりました。甘えさせてもらいます」

「ああ。緊張して寝れないなんてやめろよ?」

「大丈夫よ!」

「……何でリーナが反応するのよ」


ジュン達は気にしつつも、ソラ達に任せて寝袋やテントの中へと入っていった。そして、6人が完全に寝ついた後。


「ミリア、フリス」

「ソラ君?」

「どうしたのよ?」

「2人は……自分が何を源とするのか、分かるか?」

「それはまあ、何となく分かるわね。これが司るってのと同じなのかは分からないけど」

「ソラ君も分かるの?」

「俺のは漠然としすぎてる。どんな言葉が当てはまるのか、探すのに苦労したな」

「そうなのね。聞かせてくれる?」

「ああ、俺が司っているのは……」


そうして、決戦前最後の夜は更けていく。










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