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異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第10章 光と闇

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第3話 魔王領⑧





「町が、あんな……」

「ずっと放置されていたんだ。仕方無い」

「といっても……それに、戦闘の跡もありますから」

「何でそんなに落ち着いてられるのよ……」

「こんな町を10以上見れば、嫌でも慣れる」

「それに……あそこなんてここの比じゃないくらい酷いもの」

「うん、あっちはね……」

「え、そんな……」

「そこも通る。だが……今は何も無い」

「え?」

「どうして……?」

「行けば分かる」


山の上から、廃墟となったデイルビアの町並みを見て、ジュン達はそう呟く。だが、ソラ達にとっては見慣れてしまった光景の1つでしか無い。

そしてソラが言った町は、現象そのものは3人が取り除いた。だからあの町には、今は何も無い。ある意味では、その方が恐ろしいのかもしれないが。


「それで……っと」

「いたね」

「ソラ、どうするのよ?」

「そうだな、迂回できれば良いんだが……無理だな。次善策として、静かに殲滅するぞ」

「ええ」

「うん」

「えっと、ソラさん?」

「少し行ってくる。お前達は待ってろ」


そう言うと、ジュン達が何か言う前に3人はもう行ってしまっていた。だが、ジュン達はこれに反論することは無い。

正面からの戦闘能力でソラ達が圧倒しているのは周知の事実だが、こういった森の中ではその差がより大きくなる。3人とも高速戦闘を得意としていたり、ソラとフリスが長距離から精密な魔法を放てたり、隠してはいるがミリアも魔力探知の効果を得られたりと、まあ色々とチートじみた物事の結果だ。


「ねえ、ソラ君」

「フリス、どうした?」

「砦であんなこと言ってたけど、大丈夫なの?」

「問題無い。あれを聞いたのはあいつらだけだ。それに、その時になれば隠すことなんてできない。恐らくあいつらの目の前になるからな」

「そうね。あれくらいなら何も分からないでしょうし、少し気付かれていたみたいだもの」

「そっか」

「さて、話は終わりだ。あれをやるぞ」

「ええ」

「うん」


森の中だが、平地と変わらない速度で3人は駆けていく。そして音はほとんどたっていない。まあ、全力とは程遠いスピードなのだから当然だが。

そして当然、狩るのも早い。


「あ、お帰りなさい」

「早えぇなぁ」

「森の中は得意だ。足場が多いからな」

「そういう問題では無いですよ……」

「あの、ソラさん。俺達に気を使わなくても……」

「そんなつもりは無い。俺達が処理する方が早いからな」

「でも……」

「それに、お前達は体力も魔力も温存するべきだ。少しでも騒ぎになれば、逃げづらくなる。その時に狙われるなら、逃げ足の早い俺達の方が良い」

「それでも、こっちとしては心苦しいのよ。全部任せっきりなんてのは、ね」

「そうです。だから、俺達にもやらせてください」

「それによ、戦わねぇと勘が狂っちまわねぇか?」

「確かに、勘が鈍るのは困るが……」

「ソラ、大丈夫よ。ジュン達だって弱いわけじゃないのよ?」

「うん。それに、大変になったらわたし達も入れば良いんだよ」

「そうだな。じゃあ、1回ごとの交代で良いか?」

「はい」

「おう」

「分かりました」

「やった」

「任せてください」

「ありがとう。流石に過保護すぎよ」


そう言って認めてもらえたと、喜ぶジュン達。だが、その後に出てくる魔獣は迂回できるものばかりだったため、戦うことなく町まで入り込めた。


「いなかった……」

「何でこうなんだよ……」

「こういう時もある。というか、戦わないのに越したことはない」

「それはそうですけど……」

「まあ、意気込んでいないってなると、がっかりするわよね」

「町の中に入ってくることもあるから、大丈夫だよ」

「いやフリス、流石にそれを大丈夫と言うのは違うんじゃないか?」

「え、そうかな?」

「そうよ。まあ、本来なら、なんだけど」

「そうだな。今は気にしてもあまり意味は無いか」


だが、フラグは回収されなかった。前回と同じように無事な民家に入るが、魔獣らしき影は1つも見えなかった。


「ちっ、いねぇんかよ」

「そう言うな。運次第だ」

「分かってっけどよ……」

「トオイチの気持ちも分かるよ。でも、落ち着いて」

「目的は魔王よ?忘れないで」

「ですが、フラストレーションが溜まるのも事実です」

「その辺りはどうにかしよう。運次第だけどな」

「はい」

「おう」

「で、あたい達はこれからどうすれば良い?」

「そうだな……」


あまり寄り道はできないが、知ることは必要だろう。そう考えて、ソラは次の言葉を発した。


「この町には……いや、この町だけじゃないが、当時の悲劇が分かる場所がある。行くか?」

「良いんですか?」

「そんなに時間はかからないからな」

「そう。なら、準備は後にした方が良いわね」

「2つあるけど……両方行くの?」

「ああ。その方が……こいつらのためにも良いだろう」


そうしてソラ達を先導して、とある場所へ歩いていく。その目的地は、血に塗れた教会の向かい側だ。


「ここだ」

「この……黒い建物が、ですか?」

「良く見てみろ。紋様がある」

「え?」

「もしかして……ここも教会?」

「そうよ。後ろの教会と一緒で、篭って戦ったみたいね」

「じゃあ、こんなに黒いのって……」

「油を撒いて、燃やしたんだろうな」

「魔法だともっと壊れちゃうもんね」

「そんな……」

「こんなことって……」

「ちくしょう……!」

「彼らは逃げる人々のために時間稼ぎをした。それを分かってやれ」


そうしてしばらくその辺りを見回った後、9人は領主の館へ向かった。そこもまた、生々しい痕跡が消えることなく残っていた。


「うっ……」

「これは……」

「酷い……」

「いや、メインはこっちじゃない」

「どういうことですか?」

「ついてこい」

「驚かないでね」

「その時は妥当な判断だったと思うわ」


そう言って、ソラ達は瓦礫の山の近くにある階段から地下へと向かう。そして、そこにある扉を開けた。


「え、ここですか?」

「ああ。扉のこっち側を見てみろ」

「おう?」

「この黒い線は……?」

「……まさか」

「え……いや、そんな⁉︎」

「その通りだ。俺達がここを見つけた時、ここには5人の遺骨があった。うち2人は子どもで、侍女らしき遺骨が3人分……取り残されて、出られなくなったってことだろうな」

「そんな……」

「ここに残っていた遺骨は1人分ずつ全て回収して、ちゃんと弔ってもらった。安心しろとは言わないが、そう悔やむな」

「でも……」

「今やるべきことは、元凶を倒すことだ。これを繰り返したくは無いだろ?」

「……はい」


こんな惨劇を繰り返したいと思う人はまずいない。だが、詳しい状況を知りたいと思う人は、意外と多いものだ。


「それで、この町には他にも色々あるが……見て回るか?」

「はい、お願いします」

「ええ、行かせて」

「分かった。ミリア、フリス」

「ソラ?」

「何?」

「案内してやってくれ。俺は少し行く所がある」

「行く所って……まあ良いわ」

「じゃあ、こっちだよ」


そう8人が行くのを見送って、ソラは領主の館……正確には、この町のちょうど中心に(たたず)んだ。


「まさか、こうなるとはな。前は気づかなかったが……やるべきか」


そして両腕を上げ、神気を励起させる。


「……彷徨(さまよ)う魂魄よ、揺蕩(たゆた)う霊魂よ……我が糧より力を得て、新たなる道へと旅立て。この遊び場は其方らのいるべき場所に在らず。本来あるべき場所へ向かえ、そしてまた新たにこの地へ戻りたまえ」


そう言い終わると同時に、澄んだ音のような波動が広がった。だがこれに気づけたのは、ソラの他にミリアとフリスだけだ。


「鎮魂……やっぱり、柄じゃないな」


ゆっくりと歩きながら、ソラはミリアとフリスの後を追っていった。












ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー













「これ美味ぇな」

「美味しいわ、アキ」

「ハルカ、ありがとう。ミリアさんのおかげだけど」

「アキが上手だからよ。私だけだと、こうはならないわね」

「そうか?ミリアだけで作っても美味いぞ?」

「ありがと。でも、1人だと時間がかかるのよ。2人だと楽で良いわね」

「ソラ君もいるよ?」

「ソラは手伝いだけだから別よ」

「おいおい、酷いな」


デイルビアから北に進んで数日、そろそろ次の町にたどり着こうというところ。そんな夜に9人は洞窟の中で焚き火を囲んでいた。


「それにしても、こんなに良いお肉をこんなに使っちゃって大丈夫なんですか?」

「大丈夫だ」


確かに、ソラ達からしたら大した問題じゃない。もともと指輪の中には食料が大量に入っているし、これは手に入れやすい。


「オークの肉だからな。簡単に手に入る」


だがそう言った瞬間、ジュン達は吹き出した。リバースになっていないのは、なんとか押し留められたからだろうか。


「ん?常識だろ?」

「いや、え、へ?」

「あー……そういえば、そういったことには関わってこなかったわね……」

「どういうこと?」

「強くなることを目的にしてたのよ……お金は稼ごうとしなくて良かったってのもあるから……」

「ああ、なるほど」

「その……これっていつのですか?オークなんて最近見てなかったような……」

「少し前に、俺達3人で大量に狩った時のものだ。この指輪のおかげで保存が効くから、問題無い」

「なるほど……」

「その、魔獣って……何でも食べる、んですか?」

「いや、食べられる魔獣はかなり限られるぞ。肉食系魔獣の肉は臭みが強いし、ランクが上になるほど、肉質が固くなったりする」

「ドラゴンはどうなんだ?」

「アレは……見ただけで分かったわ。あんなの、絶対に食べられないわよ」

「げ、マジかよ」

「筋肉質とか、そういうレベルじゃなかったな。何重にも重ねた厚皮より頑丈そうだったぞ」

「筋も多いから、絶対に食べられないわね」

「うわぁ……」


まあ、小説と違ったって仕方無いだろう。現実とはそういったものだ。特に、異世界のことなのだから。


「さて、今後だが……基本的には町に寄るってことで良いな?」

「はい、それで大丈夫です。ソラさんも、その方が楽なんですよね?」

「ああ。魔王城まで直接行くとなると、高い山や深い森で余計な体力を使う。魔獣を遭遇する可能性が高くなっても、街道近くを進んだ方が良いだろう。それに、どうやら町の中の方が魔獣は少ないらしい」

「でも、町の間で襲われたら同じなんじゃないかな?」

「迂回しながらとしても、結構多いわよ?」

「まあ、その辺りは許容範囲内に収められるようにするしかないな。完全な回避は不可能だ」


確かに、デイルビアではほぼ見なかった魔獣だが、この数日間では2ケタほどの戦闘に発展している。森が浅い場所だから大型の魔獣も動きやすい、そういった側面が含まれている可能性もゼロではなかった。

とはいえ魔王城へ一直線となると、中央の山岳地帯を抜けなければならない。迂回したとしても、地形がどうなっているか分からないため、たどり着けるかどうかすら分からなくなってしまう。


「そういうわけだから、当初の予定通りでいくぞ。まあ、それ以外の方法なんて無いようなものなんだが」

「はい」

「にしても、ソラも大変よね」

「これも仕事のうちだ。勇者みたいな非営利営業じゃない」

「非営利って、まあ、間違ってないですけど……」

「ああいや、ジュンの報酬はリーナだったな。失礼」

「ちょっと⁉︎」

「ソラ!あなたねぇ!」

「じゃあソラ君、わたし達が報酬になったのはいつ?」

「あ、それは気になるわね」

「2人が報酬?そうだな……俺がこの世界に馴染む時、か」

「ソラさん、あの、リーナが……」

「話を聞きなさいよ!ソラ!」


結界のおかげで音は漏れないが、リーナは少し気にした方が良いかもしれない。ただまあ、そのおかげでソラの発言に疑問は持たれなかった。











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