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異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第8章 礎となりて

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第17話 魔都デイルビア③+魔鉱山①



「ソラ、あんな場所にダンジョンがあるなんて、聞いたことある?」

「無いな。旧王国にあるダンジョンは13で、場所は全て覚えているが、その中にあれは無い。未発見か、もしくは……」

「新しくできたか、ね。でも、驚かないのね」

「オリアントスがやることだ。俺達に合わせてダンジョンを造ったとしても不思議じゃない」

「そんな風に考えてたの?」

「ええ。違和感を感じたから、考えないわけにはいかないもの」

「攻略しても問題は無い……というか、攻略した方が良いだろうが、それとこれは別だ」

「そっか。わたし、駄目だね」

「そんな事は無い。俺達が警戒し過ぎなだけだ。危機感を感じる程では無いからな」

「でも、気付けないと駄目なことだもん。わたしもソラ君やミリちゃんと同じのを見てたんだよ?」

「それはそういう性格だから、としか言えないわね。気にしたって仕方のないことよ」

「ああ。それに、今さらだろ?」

「そうね」

「うん」

「……フリスが言うのは何か違うと思うんだが」


デイルビアに入ったソラ達は、すぐさま1軒の建物へ入り、話し合いを始める。2人の言う通り、アレは異常だった。


「でもソラ君、何で攻略しないといけないの?」

「またこれも勘なんだが……あそこの奥にも、また何かありそうだ」

「何か……魔法具では無いわね」

「恐らくは。流石にこれ以上は分からないな」

「そっか。じゃあ、明日行くの?」

「そこまで急ぐ必要は無い。万が一も考えて体調は万全に、そうだな……3日後だ」

「そう。ここなら調べる必要も無いから、ゆっくりできるわね」

「スノリアとは違うからな。気晴らしに軽く動いても良いぞ」

「気晴らし?」

「気晴らしだ。殺し合いじゃ無いからな」

「でも、本気よ?」

「それでも、だ……やるか?」

「ええ」

「うん」


笑顔、というには少し挑発的な顔をしつつ、2人が窓から出て行く。そしてソラはその様子に少し笑いつつも、彼女達を追った。


「流石に派手な魔法や神術は使うなよ。見つかったら手間だ」

「はーい。じゃあ、ある程度離れたら消すね」

「私は……拡散しやすいようにしておくわ」


ベフィアの魔法は発動後の制御が難しいのだが、ソラだけでなくフリスもできるし、ミリアは神術なのでより融通が利く。その分注意を払わないといけないが、この3人なら片手間でもできることだ。


「さて……やるか」


その一言と共に、ミリアがソラの目前まで飛び込んできた。100m以上離れていたはずだが、瞬きどころか刹那よりも早く動いていた。


「っと、速いな」


だが、その程度のスピードならソラ十分対応できる。というか、全力の半分も出ていない。現状での最高速度なのは確かだが、まだ奥の手はある。


「流石ね、フリス!」

『うん!』


ミリアが退いた瞬間、フリスの弾幕が本格的に始まる。その弾速は戦車砲の数倍以上、威力は戦艦の主砲にも匹敵するだろう。

だが、これらは様子見でしかない。


「これならどうだ」


ソラも同じく弾幕で迎撃しつつ、影を広げて2人を捕らえようとする。が、影という特性上、この戦いで使うにはかなり遅かった。


「当たらないわよ」

『神術も飲み込まれちゃうけど……避けるなら問題無いね』

「流石に無理だよな」


ミリアはフリスの弾幕の間を縫い、ヒットアンドアウェイを繰り返す。フリスはソラから1km以上離れた場所を駆けつつ、的確な魔法を放つ。この影で捕らえるには無理があった。


「フリス、今度こそ勝つわよ」

『うん。ミリちゃんもお願いね』

「負けるわけにはいかないし……仕方ない、使うか」


ミリアとフリスも成長著しく、ソラも追い込まれることが増えている。技と発想ではまだ負けていないが、接戦になることも多いのだ。

なのでソラは、また新しい神術の使用を決断した。


「……地の楔よ、我に従え、我に集え」


まだ名前は言っておらず、本来なら何も起きることは無い。だがこの詠唱の段階で、既に効果を現し始めている。


『な、なに⁉︎』

「体が、重い……⁉︎」

「我が名の下に、その力を行使せよ。偽りの楔」


いつかの重力の方向を操作した擬似引力では無く、引力そのものを発生させる神術。その強度は桁違いで、Gに直せば数千はくだらない。

2人がいくら神気で強化していたとしても、この状態では一般人と同程度しか動けなかった。


『こ、こんなの……』

「流石にそれは辛いだろ?降参しても……」

「まだよ!」

『これだけ、なら!』


ミリアが両手のルーメリアスを合わせて振るい、巨大な斬撃を飛ばす。フリスが巨大な雷球を作り、数千条の雷を飛ばす。その威力は町1つを消し飛ばしてもなお余りあるほどだ。


「無駄だ」


だが、それらの神術も高重力によって地に落とされ、ソラには届かない。逆にソラの放った光線は変わらぬ速度で2人へ迫り、目前で停止した。


「これで終わりだ。良いな?」

「ええ……何よあれ」

「重力を作り出す神術だ。魔法のやつとは違って重力そのものを作る分、強度は桁違いにできるな」

「だからあんなに重くなっちゃったんだ」

「俺としては、アレだけかけても動けるのには驚いたぞ」

「放つ分以外の神気全部を使ってやっとよ。あんなに辛いなんて思わなかったわ」

「一応まだ強化できるが……」

「……それ、ソラ君も動けないよね?」

「ああ。最高威力だと、身体強化最大でも起き上がれないだろうな」


現状でも、並の冒険者や魔獣では一瞬で液状化するほどなのだが。肉体の強度などもまた、人の時とは比べ物にならないほどになっていた。


「さて、今日の残りは休みで良いか?」

「ええ。もう1度やるのは辛いわね」

「うん。ソラ君強いもん」

「神気の扱いには1日の長があるからな。もっとも、かなり差は詰められているが……」

「そんな気はしないわね。まだまだ壁は高いわ」

「ソラ君の方が上手だし、凄い神術だっていくつも持ってるもん」

「豪快なだけだと思うんだけどな」


なお、この戦いは時間に直すと1秒にも満たなかったことをここに記しておく。













ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー












「中はどうなってるのかな?」

「さあな。ただ精霊王がいないとはいえ、油断はするなよ」

「普通の魔獣なら問題無いわよ。古竜(エンシェントドラゴン)が大量とかは嫌だけど」

「流石にそれは無い……はずだ」


オリアントスが意図して作ったのなら、そういった状況すらあり得るのが恐ろしいところだ。1頭2頭3頭程度なら問題無いが、数百数千と集られるとかなり消耗してしまう。戦い続けるには辛い相手だ。

だが、この懸念は入った瞬間に払拭される。


「オーソドックスな洞窟タイプか」

「結構広いわね」

「それって、大きいからかな?」

「恐らくは。この天井の高さなら……巨人系もあり得るな」


天井までは7mほどあり、幅はそれより少し広い。大型の魔獣等も暴れられる程だ。流石に、ドラゴンでは飛ばないタイプくらいしかいないだろうが、翼を持たない魔獣なら問題無い。


「だが、見えないな」

「うん。何処にいるのかな?」

「そうね……魔獣がいないダンジョンってことはあり得ないわよね?」

「もしそうなら、俺達の誰にも判別できない罠で溢れているってことになるな」

「……考えたく無いわね」


魔力を使用していない仕掛けなら簡単には分からないが、ミリアも魔力探知を共有することにより地形から判別できる。この状態でも分かるとなると、引っかかるまで分からない可能性も十分にあった。


「可能性としては、範囲内にいないか、それとも……そこだ!」


ソラは左手から光線を放ち、近くにあった岩を貫く。それは砕け散り……中から鉄の塊が出てきた。


「ゴーレムなんだ。魔力が込められていないのなら、分かんないよね」

「でも、ゴーレムでも魔力探知にはかかるんでしょう?」

「俺達が近くを通った後、初めて起動する可能性もある。その前ならただの金属や岩の塊だ」

「でも多分、普通はそんなことできないよね?」

「オリアントスだな、間違いない。そして恐らく、この後の手は……」


だがソラが説明する前に、動きがあった。魔力探知へ次々と反応が出始めたのだ。


「な、なんか凄くいっぱい出てきたよ」

「多いわね……密集させると走りにくいわ」

「……約半数を起動させ、残りは隠したまま奇襲させるつもりなんだろう」

「「半数⁉︎」」


現在3人が知覚しているゴーレムの数は4桁を軽く超えている。魔力探知の範囲も広いとはいえ、ここは狭いダンジョンの中、密度は相当なものだ。

そして、これが倍になると言われたのだ。負けないと分かっていても、驚くのも無理は無い。


「幸い、これだけゴーレムがいるなら他の罠は仕掛けられない。一気に駆け抜けるぞ」

「え、ええ。それにしても、広そうね」

「続きそうな場所が見当たらないもんね」

「大方、広ければそれだけ時間がかかると考えたんだろう。ゴーレムの配置数も増やせるしな」

「実際有用よね。間違えた道を選んだら、どれだけ時間がかかるか分からないわ」

「まあ、手当たり次第になる心配は無い」


この程度なら予測していた。というか、答えの分からない迷路を進むのは、最初の頃と同じだ。問題などあるはずがない。


「今見えている範囲だけを進めば、一回り大きな範囲を知ることができる。そこまでやれば、ある程度の傾向は掴めるはずだ」

「確かに……異存は無いわ」

「私も良いよ」

「なら、決まりだな。蹴散らしつつ、駆け抜けるぞ!」

「ええ!」

「うん!」


号令とともに、3人は一気に駆け出す。その進路上にいるゴーレムが動き始めるが……その全てが遅すぎた。


「はぁぁ!」


鉄だろうと銀だろうと金だろうと、今のミリアには紙以下だ。ゴーレムは次々とバラされ、消えていく。


「行けー!」


フリスもまた、蹴散らしていた。ゴーレムは火魔法で核を溶かされ、水魔法で核を吹き飛ばされ、雷魔法で核周辺を消し飛ばす。また相性が悪いはずの風魔法ですら、ゴーレムを貫いて核を破壊していた。


「吹き飛べ」


そしてソラはさらに凄い。薄刃陽炎で斬り裂き、拳で砕き、足で両断する。さらに光で核を貫き、闇に呑み込み、氷で核ごと凍らせる。表に出ているものも、隠れているものも、全て平等にだ。

そのため、このダンジョン内に無数に存在するゴーレムだが、ソラ達の周囲50m以内には瓦礫となったものしか残っていない。


「見つけた、向こうだぞ」

「数が多いわね……でも、行けるわ」

「うん。ソラ君、早く行っちゃお」

「ああ。駆け抜けろ!」


3人はゴーレムを蹴散らしながら進み、そのまま2階層目へ突入していった。













ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー














「ふう、これで通れるわね」

「大きくて、完全に塞がれてたもんね」

「中ボスって感じだったな。オリアントスの奴め……」

「ちゅうぼす?」

「気にしなくて良い」


次の階への扉を守っていたシルバーゴーレムを破壊し、階段を降りていく3人。シルバーゴーレムは若干大型化(約2倍の全高15m)していたが、ソラ達には無意味で、簡単に叩き潰されていた。


「それにしても、結構降りてきたよね」

「これで50階層目だったか?確かに、これに匹敵する長さのダンジョンは……ほとんど無いな」

「動いた距離なら確実に最長よ。1つの階が長いもの」

「まあそうだが。それより、休憩は大丈夫か?」

「ええ。というか、この程度で疲れたりなんてしないわ」

「休憩だって、10階前で取ったばっかりだもん。大丈夫だよ」

「なら良い。まあ、60階層目で取るつもりだしな」


休息は定期的に行う方が良い。疲労が感じられなかったとしても、予測外のことが起きる可能性もある。そういうことは、神と成った今でも変わらない。


「さて、あれを蹴散らすぞ」

「待って……罠があるわ」

「え?……あ、何かあるね」

「釣り天井と弩、それと火種に油よ。ここで使うには雑な気もするけど……」

「ミリア、それは正解だ。神気と魔力の回路がある。本命はこっちだろうな」

「私達があれを解除、もしくは避けるタイミングで本命発動させるのね。合理的だわ」

「どうするの?」

「もう少しで本体を見つけられるはずだが……あったな。解析する」

「任せるわ。フリス、ソラを守るわよ」

「うん。ソラ君、お願いね」

「ああ、頼むぞ」


こういった魔力系の仕組みに関しては、電気工学系の基礎知識が使える。やろうと思えば、魔道具だって作れるだろう。回路を断つことくらい簡単だ。

この会話の隙に、前方からはゴーレムが迫って来る。罠はより強化され、ゴーレムのランクも高くなった。とはいえ……結果は同じだ。


「やぁ!」

「やっちゃえ!」


ミリアに切り刻まれ、フリスに消し飛ばされる。その頑丈さで有名なゴーレムだが、紙か小枝かのように蹂躙されていた。

そして……


「よし解けた、進めるぞ」


ソラも加わり、殲滅速度はさらに上がる。すぐに道は開かれた。まだ物理的な罠残っているが、それは避ければ良い。


「案外早かったわね」

「分かりやすい形だったからな。暗号化とか、隠蔽がされていたらもっと時間がかかった」

「ねえソラ君、さっきの罠ってどんなのだったの?」

「解除しただけだから断定はできないが……爆発と雷が同時に起こるものだったと思うぞ」

「わたし達に効くの?」

「攻撃そのものに神気は無かったから効かないとは思うが……無意味な物とは思えない。ワザとかかるのは無しだ」

「ええ。痛い思いなんてしたくないわ」

「うん、わたしも」


こんな風に、割と呑気に3人は進んでいく。問題など一切存在しなかった。


「……また長くなったかな?」

「みたいだな。魔獣でも罠でもなく、構造で疲れさせるだけか」

「なら、もう少し急ぎましょう。それなら……」

「待てミリア、その先にまた魔力回路の罠がある。今度のはマズいぞ」

「効くの?」

「片腕なら簡単に消し飛ぶ」

「……任せるわ」


実際に1度片腕を無くしたミリアだからこそ、無理に行こうとは言わない。まあフリスもそんなことは言わないが、ミリアの方が忌避している。

そしてソラが解除している間にもゴーレムはやってくるが、先ほどと同じく簡単に掃討されていった。


「解けたぞ」

「なら、早くこっちに加勢してちょうだい。私達だけだと道は作れないわ」

「分かってる。すぐに片付けるぞ」

「うん。それでソラ君、ご飯って何が良いかな?」

「そうだな……ハンバーグでも作るか?」

「ちょっと、その話は今いらないわよね?」

「え、でも、今暇だもん」

「気を抜くわけでは無いから、これくらいは良いぞ」

「……なら、良いわよ」

「ん?ミリアは何か無いのか?」

「もう慣れたわ。ただし、ソラにも手伝ってもらうわよ」

「ああ、分かってる」

「わたしは?」

「フリスはいつも通り、警戒してくれれば良いわ」

「そっか」

「料理できないもの」

「う〜、ミリちゃんがイジメる〜」

「事実だ。諦めろ」

「ソラ君まで……」


やり過ぎたと2人が反省するのは、それから少し後のことである。











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