表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界成り上がり神話〜神への冒険〜  作者: ニコライ
第8章 礎となりて

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

183/217

第13話 廃都ルーマ①



「取り敢えず結界を壊すわよ。閉じ込められたら……」

「駄目だ。このアンデットが南へ向かうぞ」

「どうしてよ」

「この結界はアンデットを閉じ込める檻の意味も持つらしい。それが壊れたらどうなる?」

「この大群……そうなると、大変なことになるわね」


背後は壁、逃げながら数を減らすことはできない。それ故、対処方法はもう一方に変わるのだが、それも難しいかった。


「じゃあ、一気に燃やしちゃって……」

「それもやめろ」

「何で?」

「何となくだが、この結界は町の状態を媒体としたものの可能性が高い。町が壊れれば、その分結界も弱くなるぞ」

「じゃあどうすれば良いの!」

「1体ずつ丁寧に殺していけ」


これが無茶なことはソラにも分かっている。向かってくるアンデットはAランク以上ばかりで、SSランクも相当数混ざっている。だがそれでも、やるしかないのだ。


「……そうね。これを南に向かわせることに比べれば、私達の苦労なんて大したことじゃないわ」

「うん。それに、全部倒しちゃえば良いだけだもんね」

「恐らく、ここで死んでいった者達だろう。解放してやるぞ」

「ええ」

「勿論」


幸い、3人の戦闘能力なら不可能では無い。SSランクだろうと、100や200で負けることなどありえない。

それに、アンデットは連携ができない。これはソラ達にとって、大きな利点だ。


「建物が壊れなければ、大規模魔法を使っても大丈夫だ。丁寧にやれよ」

「うん、任せて」

「ミリアは路地裏の対処を頼む。表通りは俺とフリスが抑えるから、派手にやって良いぞ」

「分かったわ。ここはお願いね」


フリスが吹き飛ばし、ソラが圧倒し、ミリアが蹴散らす。よく行う連携……と言えるか分からない力技だが、それを今回は市街地戦に応用していた。


「行くよ……エレキウェーブ!」


フリスは巨大な波を作り出し、目の前の通りを水でさらう。これには浄化の力を持つ雷も混ぜられており、中央付近のアンデットはたまらず消滅していった。

大通りの全てを覆うほどの魔法は破壊を恐れて使えなかったが、それで十分である。


「消し飛べ!」


そこの開いた隙間へ、ソラが飛び込んだのだから。薄刃陽炎と手甲足甲に光を付与し、当たるを幸いにアンデットを薙ぎ払っていく。込められた魔力と神気が膨大かつ狙いが正確ため、SSランクですら一撃で消しとばしていた。


「消えなさい!」


またミリアは、建物の影から奇襲しよう(偶然だろうが)としていたアンデットを屋根の上から強襲し、切りとばす。こちらは神術の光付加を使っており、ソラよりも威力は高い。効率も良くなっており、継戦能力も問題は無さそうだ。


『ソラ、20体くらいをそっちに送るわ。できる?』

「その位置ならフリスの方が良いな。できるか?」

『うん。カウントお願い』

『ええ。3、2、1……今よ』

「ナイスだ。今度はこっちの集団を路地裏へ向かわせたい」

『良いわよ。でも、サポートはしてくれるのよね?』

「当然。というか、ミリアは追い込むだけでいい。倒すのは俺がやる」

『なら、任せなさい』

「助かる」


他にも路地裏から誘い出したところを魔法で撃ち抜いたり、逆に路地裏に誘い込んで背後から斬ったりと、好き勝手やっている。また、アンデット側が何故か町を破壊しようとしないので、ソラ達はかなり楽していた。

ただ、それでも……


「……多すぎるな」

『ええ。1000や2000じゃないわね』

『どうするの?』

「撒くぞ。近くの奴らが個々に向かってきている状態だから、1度抜ければ減るはずだ」

『分かったわ。タイミングは任せるわよ』

「ああ。フリス、俺の合図と同時に、雷魔法を指定した通りに放ってくれ」

『うん、任せて』


ミリアとフリスへ説明をしつつ、ソラはタイミングを探る。そしてアンデットに増援が来た瞬間、動いた。


「……今だ!」

「清め、降り注いで、メテオフレイム!」


フリスがそう叫ぶと、天から数百の火の玉が落ちてきた。それらはアンデットに触れると、他の物を燃やさない、浄化のみに特化した炎を撒き散らす。

光魔法が使えるフリスでも、神気を加えてしばらく集中すれば、これくらいの魔法は使える。攻撃範囲や魔力効率は普通の魔法に劣るが、今はとても有用だ。


「退くぞ。ミリア、殿は任せる」

「ええ。それより、しっかり先導しなさいよ?」

「分かってる……ん?」

「どうしたの?」

「この集団の外だが、何ヶ所かに数十体ずつアンデットが固まってる。何故だ?」

「本当ね。何か重要なものでもあるのかしら?」

「でも、そんなものってあるの?」

「さあな。だが、調べてみる価値はありそうだ」


先ほど戦った様子だと、アンデットはただ襲ってくるだけだった。このため使役者はいないと考えていたが、守っているなら話は変わり、調べる必要が出てくる。

だが、この話はそんなに簡単では無かった。


「あれ?増えた?」

「アンデットって、こんなに簡単に増えたりしないわよね?」

「そのはずだ。他の魔獣と違って、発生には死体が必要になる。確か人型で無くても良いとはあったが……」

「詳しいことは分かって無かったよね?ゾンビとかスケルトンとかは分かりやすいけど、Sランク以上だと全然分かんないんだもん」

「ゴーレムもそうだが、非生物型の魔獣は分かりにくいからな……っと、そろそろか」

「20体いるわね。Sランク以上は9体よ」

「みたいだね。やっちゃう?」

「すぐに片付けて、建物を調べるぞ。どうやら、増えたのは中らしい」


20体程度すぐに蹴散らし、2人が建物へ入る。ソラが外、ミリアとフリスが1階を調べたものの、特に何も無かった。


「1階には何も無いわね」

「こっちもだ」

「増えたのって2階だったよね?」

「ああ。さて、何があるか……」


老朽化した階段に注意しつつ、ソラ達は上の階へ登る。そこで3人が目にしたものは……


「嘘……」

「そんな……」

「……ふざけやがって」


ベットに寝転がった遺体から生えてくるデュラハン、アンデットだ。そしてこの光景から、どうやってアンデットがあれだけ増えたのか、ソラ達は察した。

魔力探知で確認した1体も含め、このスピードだと1年もすればこの町を埋めてしまいそうだが、恐らくソラ達が大暴れしたせいで早まったのだろう。そんなこと今は関係無いが。

3人はすぐさまデュラハンを倒し、遺体を燃やす。ちゃんとした葬儀をすることはできないが、利用され続けるのを見るのは3人とも耐えられなかった。


「遺体をアンデットにするわけじゃなく、遺体から増やすか……遺体を使うだけでも許せないんだが」

「遺体からアンデットを作るのは魔人とか、高位のアンデットしかできないから……そういうのがやったんだよね」

「ただ、そうだとしても……変だな」

「変?」

「ああ。こんな風に無限に増え続けるアンデットなんて、聞いたことあるか?」

「……1つだけあるわ」

「あるのか?」

「でも……神話の中よ。何でここに……」

「神話か……まさか」

「どうしたの?」

「あの神殿、石柱が関係しているかもしれない。神話と神気という違いがあるとはいえ、神と魔獣という意味ではピッタリだ」

「確かにそうね……でも、神気なんて感じないわよ?」

「それが問題だな……ただそれが正しいとすると、とんでもないものが待ち構えてる気がする」

「とんでもないものって?」

「分からない。それでも……」


無関係ではいられないだろう。だが今、考えに浸る時間は無い。


「ソラ、ゆっくりはしてられないわよ」

「来たみたいだな。恐らく、ここと同じ状況は他にもある。探すぞ」

「うん。残したりなんてできないもん」


人の遺体で兵器を作る。この行為はこれと全く同じだ。ソラ達3人とも、こんなことは許せなかった。














ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー















「燃えて!」

「やぁぁ!」

「ミリア、下がれ」

「面倒ね、まったく!」


横の壁から出てきたスペクターとレイスを切り捨て、アンデットの群れへ突撃するミリア。それをフリスは援護し、ソラは後ろから来るアンデットに対処していた。

ゴースト系のアンデットは壁を通り抜けることができるため、障害物は意味を成さない。ただ3人にとって幸いなのは、ゴースト系はSランク以下にしかいないことか。


「それにしても、こんな迷路みたいになってるなんて思わなかったわ」

「迷わせるような作りでは無いから迷路では無いが、確かにそれに近いな。大方、侵入してきた敵をここで足止めするためだろう」

「この後ろは重要だもんね」

「町の中に砦みたいな建物が残ってるっていうのも珍しいけどな」


王宮の北側、大通りを塞ぐような位置にあった砦らしきもの。その中をソラ達は探索していた。

大通りそのものは砦の横を通るようにできているが、敵の勢いが削がれることは間違いない。古いものだとしても使えないことは無いだろう。

そして、どうしてこんなものが残っているかについて話が飛んだのだが……


「文化財的な扱いだったのか、実用性を求めたのか……ただまあ、ここで戦いが起こったことは間違いない」

「血がべったり付いてるもの。間違いないわよ」

「砦だもんね。でも、どうやったのかな?」

「派手に攻撃して魔獣を引き付けたのかもな。進み方がいくつもある以上、魔獣の目を集めることが重要だ」

「でもそれ、犠牲になるってことよね?」

「兵士は民を守るためにいるってことだろう。冒険者とは違う」

「そこは真似できないわ。私は知り合いと自分を優先しちゃうもの」

「私もだよ」

「俺もだ。人の感性はそれぞれ違うとはいえ、自分とその周囲以外のために命をかけるのは難しい。立派なことだ」


全員が全員聖人というわけでは無く、全員が英雄というわけでも無いだろう。だがその覚悟は賞賛されるべきであり、無駄死にでは無い。一気に奇襲を受けたデイルビアとは違って、相当量の住人が生き残っているのだから。


「でもそんなことよりも、今の問題はこれね」

「ああ。まさか20人が1つの部屋にいるなんてな。アンデットの発生が多すぎる」

「どうする?」

「……少しくらいなら、壊しても構わない。一掃してくれ」

「うん、良いよ。でも、壊さないから」

「頼む。ミリアはフリスの魔法の後に突撃だ」

「任せなさい」


炎がアンデットを飲み込み、道を切り開く。そこへミリアとソラが飛び込み、道を完成させた。

3人はすぐさま障害を排除し、遺体を火にくべる。するとその時、フリスが神妙な面持ちでソラへと近づいてきた。


「ねえソラ君」

「フリス、どうした?」

「……魂って、どうなるのかな?」

「魂?」

「急にどうしたのよ?」

「この人達、ここにずっと囚われてて、アンデットを作らされてたんだよね。死者の魂は天に昇り、再びこの世に生まれ落ちるって言われてるんだけど、この人達は……」

「それは分からない。俺は魂に触れることなんてできないし、魂を感じることもできない。魂そのものはあるだろうが、今どこにいるかなんては分からない」

「でも、ソラ君の世界はここより進んでたんだよね?なら……」

「前の世界は魔法無しで発展した。神秘といったものは無視されていて、魂はその最たるものだ。むしろ、存在の否定すら起こるほどにな」

「そっか……そうなんだ……」

「だが……」


俯いたフリスを、ソラは抱きかかえる。身長差で若干不恰好だが、それを気にする者はいない。


「だが気になるのなら、浄化に特化した魔法を作る。だから安心しろ」

「え?」

「俺もこの状況は気にくわない。少しでもこの人達が報われるのなら、やってやりたいと思うだけだ」

「そっか……ありがとう」

「自己満足でもある。気にするな」

「それでもだよ。ありがとう」


そういうとフリスは部屋の奥の方へ進んでいった。何か考え事があるのだろう、ソラは見送った後は視線をそらした。

その代わりに、ミリアが近づいてくる。


「やっぱり優しいわね、ソラは」

「ちゃんと俺は自己満足だって言ったぞ?」

「それでもよ。わざわざフリスを安心させるように言ってたじゃない」

「それが俺だ。むしろ、慣れて言わなくなって欲しいな」

「慣れてるわよ。ただ……」

「ただ?」

「心配な時は……いえ、心配事が無くても、好きな人に甘えたい時はあるわ」


ミリアはソラの肩に頭を乗せる。それをされたソラも、笑いながら声を返した。


「まったく、ミリアは変わったな」

「ソラが変えたのよ。責任は取ってもらってるけど」

「俺の方が得るものが少ないのは変わらないが」

「ちょっと、どういう意味よ?」

「冗談だ」


その雰囲気に当てられたのか、戻ってきたフリスの顔は明るかった。













ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー













「しっ!」

「滅んで」

「消えて!」


アンデットを斬り飛ばし、切り刻み、撃ち倒す。屋内での戦闘だが、ソラ達の動きは衰えない。むしろアンデットの方が動きづらそうで、屋外より楽だった。


「俺がやる。良いな?」

「うん」

「ええ」

「炎よ、光とともにこの者を解放せよ。聖炎歌」


そして白い炎で火葬を行う。これは神気も含み、浄化の力のみを極限まで高めた炎で、アンデットであれば触れただけでチリとなるほどだ。

魂というものに介入できるのか、できたとして意味があるのか、それは分からない。だが少しでもこの人物が報われるよう、そしてフリスの気が晴れるよう、ソラは手を尽くすつもりだ。


「何人目だっけ?」

「ちょうど600人目だ。まさか4日もかかるとは思わなかったが……アンデットもかなり減っているし、9割は終わったとみて良いな」

「町の中はこれで終わりみたいだから……後は王宮ね」

「どれくらいいるのかな?」

「多くとも100人程だろう。それ以上だと、町の中に溢れている数と合わなくなりそうだ」

「それなら、かなり楽になるわ」

「だが、王宮はあの大きさだ。それに、敵が攻めて来た時の逃げ道も考えられる。時間がかかる可能性もあるぞ」

「確かにそうかもね。気をつけるわ」

「気は張らなくて良いぞ」


この世界でそれが通用するのかは分からないが、入り組んでいる可能性は十分ある。それも考慮し、ソラ達は正面玄関から王宮へ入った。


「中はあまり荒れてないわね」

「うん。掃除すれば使えそうだね」

「町は多少壊れてたが、ここは戦いが無かったのか……ん?」


玄関の向かい側、恐らく謁見の間であった場所だろうが、そこへ続く扉が動かなかった。


「開かないの?」

「ああ。鍵が壊れてるのとは違うな。これは……結界に近い。無理矢理破るか?」

「その中にアンデットはいないし、問題無いわよ」

「だと良いんだが……いや、まずはアレをどうにかするべきだな」


視線を向けた先は、玄関を見下ろすバルコニーのような場所。そこでは遺体からアンデットが次々と生み出されていた。


「さっそくだね」

「それにしても、ペースが早いわ」

「恐らく、残りの数と反比例しているんだろう。戦力を一定に保てるようにな」

「そっか。でも、問題無いよ」

「ああ、行くぞ」

「勿論よ」


アンデットを蹴散らし、遺体を浄化する。やることは単純なのだ。3人が迷うことは無い。










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ